VOC(Voice of Customer)分析とは?実施するメリットや手順について解説
多様化する顧客ニーズに応えるためには、「VOC(Voice of Customer)」の活用が欠かせません。
商品・サービスの改善や顧客満足度の向上に向けて、これからVOC活動に取り組みたいと考えている企業も多いと思いますが、なかには「VOCの収集・活用方法がいまいちよくわからない…」と頭を悩ませている担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、VOCを企業活動に活かす分析手法「VOC分析」について詳しく解説していきます。用語の意味や導入メリットを踏まえたうえで、具体的な分析の流れを紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
VOC(Voice of Customer)分析とは
まず「VOC」とは「Voice of Customer」を略した言葉で、直訳すると「お客様の声」「顧客の声」という意味になります。たとえば、コールセンターやお問い合わせフォームに寄せられた意見や要望、アンケート調査で得られた結果など。企業に直接届くものだけでなく、SNSやレビューサイトに書き込まれた口コミなどもこれに含まれます。
そして、これらの声をビジネスに役立てるために行われるのが「VOC分析」です。さまざまなチャネルから消費者の生の声を収集・分析し、事業を成長させるためのヒントを探ります。
VOC分析を実施する3つのメリット
VOC分析を実施することで期待できる効果・メリットは、主に3つあります。
①顧客理解を深められる ②顧客満足度の向上が期待できる ③売上・利益の拡大につながる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①顧客理解を深められる
顧客のリアルな意見のなかには、想定外の不満やニーズが隠されていることがあります。
特にクレームは商品・サービスもしくは企業そのものに対する期待と現実のギャップから発生するといわれているため、深く分析することで、今まで知り得なかったようなユーザーインサイトを発見できる可能性が高いです。
なかには目を背けたくなるような厳しい声が含まれていることもありますが、ポジティブな意見だけでなく、ネガティブな意見にもしっかりと耳を傾けることで、顧客理解をより一層深めることができるでしょう。
②顧客満足度の向上が期待できる
VOC分析により顧客の真のニーズを明らかにし、それを満たせるような商品・サービスを提供することができれば、顧客満足度の向上にもつながります。
また、日常的にVOC分析に取り組んでいれば、顧客が商品・サービスに対して抱いている不満も拾い上げやすくなります。速やかに適切な対策を講じられれば、顧客離れを未然に防ぐこともできるでしょう。
③売上・利益の拡大につながる
VOC分析の結果を活かした商品開発やサービス改善などにより、顧客満足度の向上を実現できれば、売上・利益の拡大にも期待がもてます。
また、そこからさらに既存顧客との信頼関係を深めていき、彼らを企業やブランドの「ファン」へと育成することができれば、中長期的に安定的な収益も見込めるようになります。特に熱心なファンは、自発的に商品・サービスの宣伝をしてくれたり、良質なフィードバックをくれたり…と、多方面から企業活動もサポートしてくれるため、VOC分析を通じて熱狂的なファンを獲得することができれば、持続的に企業を成長させられるようになるでしょう。
こんな企業におすすめ!VOC分析の導入に向いている企業
VOC分析はさまざまな企業にとって導入メリットの大きい手法といえますが、そのなかでも特に取り入れるべき企業の特徴として、次の3つが挙げられます。
・自社の課題を明らかにしたい企業 ・商品企画・サービス企画に難航している企業 ・本格展開する前に新商品・サービスの反応を確かめたい企業 |
1つずつ解説していきます。
自社の課題を明らかにしたい企業
VOC分析は、課題解決の糸口を見つけたい企業にとって有効な施策といえます。たとえば、売上が伸び悩んでいたり、なかなかリピート率が上がらなかったり。どうにかして改善したいけれど、一体どこに原因があるのかわからない…。そんなときは、実際に商品・サービスを利用している顧客の声を分析することで、企業目線では気づけなかったような課題を導き出せるかもしれません。
商品企画・サービス企画に難航している企業
VOCには、商品・サービスに対するさまざまな意見が含まれており、そのなかには社内では生まれないような秀逸なアイデアが隠れていることがあります。ユーザーの何気ないひと言から新商品・サービスの着想を得られることもあるので、新商品・サービスのアイデア出しに難航したときは、ぜひVOC分析の導入を検討してみてください。
本格展開する前に新商品・サービスの反応を確かめたい企業
VOC分析は、テストマーケティングにも活用できます。本格展開する前の商品・サービスを試験的に展開し、その反応(VOC)を収集・分析することで、売り手側では気づけなかったような魅力や課題を客観的に把握することができるので、そこで得たデータを本番施策に反映させることができれば、販売リスクを少なからず軽減することができるでしょう。
チャネルごとに得られるデータが異なる!VOCの主な収集方法
VOCの収集方法は主に4つあり、それぞれデータの特性が異なります。
・コールセンター(コンタクトセンター) ・SNS ・アンケート調査 ・インタビュー調査 |
上から順に詳しい特徴を確認していきましょう。
コールセンター(コンタクトセンター)
VOCを集める代表的な手段として、まず挙げられるのが「コールセンター」です。ちなみに、コールセンターとは、電話応対を専門に行う部門のこと。近年では、電話だけでなく、メールやチャット、お問い合わせフォーム、ソーシャルメディアなど、多様な手段を用いて顧客応対を行う部門「コンタクトセンター」の存在も一般化しつつあります。
こうした部門に寄せられる内容は、「商品の使い方がわからない」といった問い合わせから、「不具合を改善してほしい」といった要望、「取扱説明書がわかりづらい」といったクレームまで、実にさまざま。顧客自らがわざわざ連絡するだけあって、緊急性の高い意見が多い傾向にあるため、これらを分析することで、早急に改善すべき課題が明確になります。
SNS
VOC分析を行ううえでは、SNSを活用した情報収集も欠かせません。特に、TwitterやInstagramといった匿名性の高いSNSは、消費者の本音が出やすいため、改善・改良に役立つヒントが満載。商品・サービスに関するコメントを集めることで、その評価を正確に把握することができるでしょう。
また、自社に対する評価だけでなく、自社を取り巻く環境を調査できるのも魅力の1つ。業界のトレンドや競合他社の動向など、幅広い情報を集められるので、多角的な視点から分析を行うことができます。
アンケート調査
匿名性が高いという点では、アンケート調査も消費者の本音に近づくための有効な手段といえます。紙ベースでの調査が主流だった頃は、期間もコストもかさむ傾向にありましたが、近年ではインターネットを活用して短期間かつ低コストで実施できるため、時間的・金銭的な余裕がない企業でも気軽に導入できます。
また、企業側で設問を決められるのもアンケート調査を行うメリットの1つです。誘導尋問のようになってしまうと正確な情報が得られないので、設問設計には細心の注意を払う必要がありますが、目的に応じて知りたい情報をピンポイントで尋ねることができるので、効率よくVOC分析を進めることができるでしょう。
インタビュー調査
インタビュー調査は、消費者と直接言葉を交わせる点に魅力があります。あらかじめ用意しておいた質問項目以外にも、実際に会話をするなかで気になる部分があれば、その都度掘り下げて聞くことができるので、消費者理解をより深めることができます。
人数が少ないと意見が偏ってしまう恐れがあるため、ある程度の人数を確保する必要がありますが、最近では遠方に住む消費者とも気軽にコミュニケーションがとれるオンラインインタビューも増えているので、従来よりも少ない手間で実施することができるでしょう。
分析ツールを活用すれば効率UP!VOC分析の基本的な手順
最後に、VOC分析の基本的な流れを紹介します。
Step1.目的を明確にする Step2.VOCの収集方法を選定する Step3.VOC分析ツールを導入する Step4.データを収集・分析する Step5.分析結果を施策に活用する |
詳しく見ていきましょう。
Step1.目的を明確にする
まずは、VOC分析を行う目的を明確にしましょう。
繰り返しになりますが、VOCには商品・サービスもしくはブランドそのものに対する意見・要望・質問・感想・クレーム・指摘など、多種多様な情報が含まれています。目的が曖昧な状態で闇雲にVOCを収集しても、せっかく集めたデータを持て余してしまう可能性があるため、あらかじめVOC分析の目的や方向性を明確化し、収集すべき情報の目星をつけておきましょう。
Step2.VOCの収集方法を選定する
次に、VOCの収集方法を選定していきます。
前述したように、VOCの集め方は複数存在し、それぞれデータの特性が異なります。収集・分析にかかる期間やコストも変わってくるため、スケジュールや予算なども踏まえたうえで、目的に応じて最適な手段を選択するようにしましょう。
なお、収集方法は必ずしも1つに絞ることはありません。複数のチャネルを活用し、さまざまな購買層の意見を集めることで、顧客理解をより深められるようになるため、時間やコストが許すのであれば、複数のチャネルでVOCを収集してみましょう。
Step3.VOC分析ツールを導入する
VOC分析は、次のようなツールを活用することで効率的に進められるようになります。
・音声認識・音声分析ツール ・テキストマイニングツール ・CRM(顧客管理システム) ・ソーシャルリスニングツール ・アンケート作成ツール |
もちろん、人の手で分析することも不可能ではありませんが、膨大なVOCを自力で分析するのはあまり効率的とはいえません。人力の場合は、多大な時間と手間を要するうえに、分析精度も落ちてしまう恐れがありますが、ツールを活用すれば、ヒューマンエラーを回避し、高精度な分析を実現できるので、ぜひ導入を検討してみてください。
それでは、各ツールの特徴を簡単に確認しておきましょう。
音声認識・音声分析ツール
音声認識・音声分析ツールとは、人工知能(AI)によって音声データを自動でテキスト化できるツールです。顧客との通話内容を文字に起こせるだけでなく、その後の分析まで対応できるツールが多いため、コールセンターで収集したVOCを効率よく分析することができるでしょう。
テキストマイニングツール
テキストマイニングツールとは、大量のテキストデータを分析し、目的に応じて有益な情報を抽出し可視化できるツールを指します。
ちなみに、テキストマイニングとは、統計学やパターン認識、人工知能(AI)などを用いて膨大なデータの中に隠れた法則性や相関関係を発掘する技術「データマイニング」の一種です。その名の通り「テキスト」を分析対象とした手法であり、一般的に次のような文章を分析して、新商品開発や顧客満足度向上に役立てられるような有益な情報を探し出します。
・SNSの書き込み ・アンケート調査の自由記述欄 ・レビューサイトに寄せられた口コミ ・コールセンターやチャットの対応ログ ・お問い合わせメール ・会議の議事録 ・営業日報 |
ただ、一口に「テキストマイニングツール」といっても、その特徴はさまざまです。SNS分析に特化したもの、コールセンターに特化したものなど、製品によって強みが異なるため、VOCの収集方法に応じてツールを選択するようにしましょう。
CRM(顧客管理システム)
CRMとは「Customer Relationship Management」の略称であり、国内では「顧客管理システム」とも呼ばれています。最大の魅力は、膨大な量の顧客データを手軽に管理・分析できる点です。顧客との関係構築に役立つさまざまな機能が搭載されており、そのなかには外部から寄せられる質問や相談を一元管理できる「問い合わせ管理」機能も含まれているため、VOC分析にも十分活用できます。
ソーシャルリスニングツール
ソーシャルリスニングツールとは、TwitterやInstagram、Facebook、レビューサイトといったソーシャルメディアで発信された情報を収集・分析できるツールです。ソーシャルメディアに投稿された情報を人力で集めようとすると莫大な時間がかかりますが、このツールを活用すれば、複数のメディアの情報を手軽に収集できるため、スピード感をもって分析を行うことができます。
アンケート作成ツール
アンケート作成ツールは、Web上でアンケート調査ができるツールです。アンケートの作成から公開、回答の収集までを1つのツールで完結できるようになっており、オンラインで手軽にアンケートを実施することができます。無料で使用できるツールも多く、コストをかけずに導入できるので、費用が限られている企業でも比較的利用しやすいでしょう。
Step4.データを収集・分析する
施策の方向性が固まったら、実際にデータを収集・分析していきます。なお、分析結果は他部署にも共有できるよう、レポート化しておくと安心です。
Step5.分析結果を施策に活用する
分析作業が終了したら、そこで得られた結果を施策や業務に活用していきましょう。
なお、VOC分析は一時的に行っても意味がありません。改善前と改善後ではVOCの内容も変わってくるため、継続的にVOC分析を実施し、中長期的な目線で商品・サービスの品質向上を目指していきましょう。
VOC分析を実施して顧客の声に耳を傾けよう
ここまで紹介してきたように、VOCのなかには、ビジネスを成長させるためのヒントがたくさん隠されています。もちろん、好意的な意見だけでなく、否定的な意見も含まれていますが、ネガティブな声にこそ企業側で気づけなかったような欠陥が隠されている可能性が高いです。前半でお伝えしたように、クレームや指摘といった厳しい意見は、企業へ対する期待と現実のギャップから生まれるともいわれているため、彼らの声にも耳を傾け、商品・サービスの改善に活かしてみてください。
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