スーパーハンコアーティスト安東和之さん―明日死ぬかもしれないから嫌なことはしない
スーパーハンコアーティストの安東和之さんへインタビューしました!「スーパーハンコアート」とは、ハンコを使って点描のように作品を描くこと。その生みの親である安東和之さんはテレビ出演なども多く、各方面から注目されています。
目次
スーパーハンコアートと安東和之さん
「スーパーハンコアート」というものをご存じでしょうか。線ではなく点の集合によって表現する技法を「点描」といいますが、ハンコを押し続けて点描のように描いた作品のことをいい、創案された安東和之さんのオリジナルアートです。
安東さんは『ヒルナンデス!』(日本テレビ系列)をはじめ、多数のテレビ番組に出演もされているので、ご覧になったことがあるという方もいるかもしれません。
こちらは「印鑑はんこSHOPハンコズ」を運営する株式会社岡田商会と安東さんがコラボして誕生した「捺すアート」というスーパーハンコアートのキット商品を紹介する動画ですが、こういった具合にハンコを連打して創作されています。
今回はその安東和之さんに、スーパーハンコ作家になるまでの経緯やユニークな発想の源となる日々の思考のかけらをお伺いしました。
“アーティスト”になった経緯
―アーティストになった経緯についてお伺いできますか?
スーパーハンコアーティスト 安東和之さん(以下、安東さん):そうですね……よくわかんないです(笑)。
「アーティスト」って名乗っていますけど、「なろう」と思ったことはなくて、今もなれているのかわからないですし、たぶん「それを仕事にしよう」と思っているわけではないんですよね。
でも作品を作ろうと思い始めたときについては東京に来てからのことなので、18年くらい前です。
―実は東京に行くって決めたときのことを書かれたブログを拝見したんですけど、両親に猛反発されて、ある日、埒が明かないから相談というかたちではなく「行く」という決意の報告をしようと思ったら、お父さんがそれを察していた、という……。
安東さん:めっちゃ読んでくれているんですね(笑)。うれしいです。
―おもしろくて、ついほかの日もいろいろ遡って読んじゃいました。
安東さん:ありがとうございます(笑)。
当時は「アーティストになろう」っていうより、とにかく「東京に行きたい」「一人暮らしをしたい」っていう憧れが強かったんです。
それで2年間くらい親に交渉していたんですが、ずっと反対され続けるので、「もう家出するしかない!」って覚悟を決めたら、父にはその気持ちがお見通しだったんですよね。
―目的地を東京に絞っていたのは、なにか理由があったのでしょうか?
安東さん:とりあえず東京に行けばなにかあるかなって思ったんですよね。
一人暮らしをしたことないからやってみたい、だったら東京で決まり!みたいな感じです。
その後、あまり地元に帰ってはいないですが、初めてテレビに出演することが決まったときに親に報告したら、すごく喜んでくれましたね。
「スーパーハンコアート」の誕生
―スーパーハンコアートを始めたきっかけ、その発想にいたったきっかけはなんだったのでしょう?
安東さん:ぱっと、15,6年前くらいに思いついたんですよ。
毎年同じ学校のOB・OGたちと開いている展示があるんですけど、毎回僕は2か月前くらいになってから、なにをつくるか考えて、思いついたものをやっていたんです。
でも3年目くらいに、それはあんまりよくないな、と思って、「自分はもっとできるはず」「みんなをもっと驚かせたい」「褒められたい」という気持ちから一生懸命考えて、思いついたのがそれだったんですよね。
―なぜハンコを使う、というところに辿りついたのでしょうか?
安東さん:身近にあるものでなにかできないかな、と考えたんです。
もし絵がめちゃめちゃうまいとか、立体作品をつくるのがすごく得意とか、そういうタイプだったら、たぶんそれを突きつめていたと思うんですけど、そうじゃなかったし、「人と違うことがしたい」「だれも使っていないものを使いたい」みたいな気持ちが強かったので、そういうところから見つけました。
ひとつの作品に複数の思いが見える
―ご自身の思う代表作はなんでしょうか?
安東さん:『絶望の契約』ですね。
婚姻届を72枚貼り合わせた大きな作品にハンコをたくさん押しています。
―以前個展で拝見したことがあります!
ハンコの言葉の意味が一部反転していましたよね?
安東さん:はい、青い「絶望」という文字のハンコを押しているんですけど、目玉の部分だけ緑色の「希望」という文字のハンコに変えています。
―安東さんにとって結婚は「絶望の契約」なんでしょうか?
安東さん:10年以上前の作品なんですけど、当時は結婚っていいものなんだろうなって思っていたんですよ。
特に結婚願望があったというわけではないんですが、人を好きになって、付き合って、その先にある「もっと幸せなもの」なんだろうなー、と漠然と思っていました。
でも既婚者の知り合いから話を聞いたり、結婚の名言を調べたりすると、絶望的なものが多いんですよ(笑)。
それで、「思っていたのとは違うなー」と、僕こそ絶望しました。
でもみんな「大変だよ」とか「するもんじゃないよ」とか言いながら、どこか楽しそうに話すんですよね。
なので、希望はあるのかな、と思って、目の奥にそれを抱かせたという感じですね。
ユニークな発想の源は?
―『絶望の契約』もそうですが、タイトルやハンコも作品の独創性を高めている要素ですよね。
普段からユニークな発想を養うために心がけていることやルーティンなどはありますか?
安東さん:いえ、特に決まったルーティンはないですね。
言葉が好きなんです。
小学生のころから文字や文を考えるのが好きでした。
―ハンコはどういうふうに選んでいるのでしょう?
安東さん:実はタイトルやハンコの言葉のほうが先に決まったという作品が多いんですよね。
今までつくってきた作品の半分か、それ以上か……。
『絶望の契約』は僕の作品の中では、ひねりのないストレートなタイトルですけど、おもしろい言葉の組み合わせを見つけて、そこから作品をつくることが多いので、ビジュアルは後なんですよね。
―たしかにハンコの言葉もタイトルも、作品を築くとても大きな要素ですもんね。
特につくっていて楽しい作品はありますか?
安東さん:つくっている最中は等しく苦痛なんですよ(笑)。
特に体力的に、すごく肩がこって疲れるので……。
でも半分くらい完成に近づいたときに見てみると「おお……」と感動するし、できあがった瞬間は快感ですよね。
最初は「これからどれだけ押せばいいんだ」っていう絶望した気持ちでつくりはじめ、最後、完成した瞬間が一番気持ちよくて、そのためにやっているという感じです。
―毎回作品をつくるために何回くらい押しているんですか?
安東さん:ちょっと数えていないので正確にはよくわからないんですけど、『絶望の契約』は一度数えてもらったことがあって、8万数千回らしいです。
―肩もこるはずですね……。
インクもなくなっちゃいそうです。
安東さん:あ、インクは1時間に1回くらいの間隔で補充しているんですよ。
―そうなんですね。
今までインクの補充をしたことがないので、もっと持つものだと思っていました……。
安東さん:たしかに普通は、人生でハンコのインクを補充する機会ってあんまりないですよね(笑)。
スーパーハンコアーティストとしての苦労
―いろんなアートがありますが、創作中の疲労度合でいったらかなり高いものですよね。
安東さん:そうですね、でも正直描くものが決まれば、あとは押すだけなので、言ってしまえば単純作業みたいな感じです。
ラジオを聴きながら、気持ちの面では楽につくっています。
大きな作品をつくるときは何週間も毎日ハンコを押しているので、肩がおかしくなりますけど……。
―全部右手だけで押しているんですよね?それは大変そうです。
安東さん:たしかに両手で押せたらいいですね。
おもしろいかもしれない……今度練習してみようかな。
―多少は右肩の負担が減りそうですよね。
創作にかかる期間は最長どのくらいですか?
安東さん:一番長くかかったのは最初の個展のときですかね。
押すスピードがまだ遅くて、1か月半くらいかかりました。
大きさもたぶん僕の作品の中で一番大きくて、横10m、縦2.5m……。
―その大きさは保管も大変ですね。
安東さん:その作品はもう処分してしまって、保管していないんです。
ティッシュをつなげて制作した作品だったので……。
まずまっすぐになるようにティッシュの上に重しをのせて1日くらい置いて、ピンッとなったらハンコを押して、それぞれつなげていく、というふうにつくりました。
なので、保管も難しくて、特にその作品はそのときの会場に合わせてつくったものなので、今後ほかに展示できる機会もなさそうだな、と思って処分しました。
―あまりご自身がつくったものに執着はしないですか?
安東さん:あ、でもほかの作品は保管のことも考えながらつくっています。
大きい作品のほうが好きでよくつくるんですけど、毎回展示が終わったあとに収納しやすいよう、小さい紙をつなげて制作するようにしているんです。
なのでその作品以外は全部残していますよ。
愛情は強いです!
―作品への愛情はとても伝わります!
ちなみになぜそのときはティッシュを選んだのでしょうか?
安東さん:その作品もまずタイトルから先に思いついたんです。
『普通の人』っていうんですけど、自分は飛びぬけた才能があるわけではなく普通の人間だなっていうのがずっとコンプレックスで、でも僕はこのまま生きていかなきゃいけないし、楽しく生きるためにはコンプレックスもさらけ出したほうがいい、そのうえで武器にできたらいいなと思って、普通であることを表現する展示を考えました。
そこで、まぁほかの紙を使っても「普通」は表現できるんですけど、より日常的なものを使おうと思って、毎日よく使う、親しみのあるティッシュを選びました。
見てくれた人が「これティッシュなの!?」って驚いておもしろがってくれたらいいな、っていう気持ちもありましたね。
―たしかにおもしろいです。
「普通」って聞くと、いつでもそばにあるものという安心感がありますが、それがすぐに破れたりよれたりしてしまいそうな儚いもので表現されるっていうのもアンビバレントな感じがして、魅力的です。
スーパーハンコアートの魅力
―安東さんの思うスーパーハンコアートの魅力はなんでしょうか?
安東さん:ぱっと見たときは絵であって、既にこの時点で意味が発生しているんですけど、近づくと、ハンコで描かれていることがわかり、そこには言葉があるので、また別の意味が生まれるっていうのがおもしろいところだと思っています。
個展でも「なるほど~」といった反応を見せてくださる方が多くてうれしいです。
あとテレビなどで取り上げていただけるのは、だれもやっていないことをやっているからかな、と思っています。
僕自身もほかに同じことをやっている人は見たことないので。
真似されることはたまにありますけど(笑)。
―絵と言葉で2つの意味を持たせられるというのは、ちょっとなぞかけに似ていますね。
安東さん:近いかもしれませんね。
でもどちらかというと、大喜利っぽいかもしれません。
―たしかに、お題もありますもんね。
それだけ言葉がお好きで、アート活動を始める前にライティングなどの方面からお声がかかることはなかったですか?
安東さん:短期でwebサイト内に文章を書く連載をさせていただいたこともあったんですけど、毎回文章を書くのにすごく時間がかかっちゃうんですよ。
スーパーハンコアート作品をつくるときみたいに、一言だけとか、2つの言葉をつなげるとか、短いものだったらぽんっと出るんですけど……。
―なるほど、得意なものを突きつめてスーパーハンコアートに行き着いたんですね。
“みんなに会いたい”から作品をつくる
―今はなにか制作中ですか?
安東さん:つくろうと思っているものはあるにはあるんですけど、まだ具体的じゃないですね。
そういう機会がないときは、インプットの期間だと思っています。
といっても、「インプットしよう!」と思いながら行動するわけじゃなくて、好きに過ごしています。
―普段の生活というと、安東さんはSNSの投稿もおもしろくていつも拝見しています。
一時タピオカにはまってよく投稿されていたと思いますが、そのころ『タピオカ通り』という作品をつくられたり、日常的にSNSを利用しているなかで、それが作品に投影されるというのも現代的だな、と……。
安東さん:でもSNSはみんながやっているからやっているという感じですよ(笑)。
僕自身は実はそんなに作品とSNSがリンクしているという感覚はなくて、なので、たぶん自然とそういう方向に向かっているんだと思います。
―Instagramのストーリーズ上で安東さんの超個人的な質問だけを出題する「安東クイズ」も好きです。
安東さん:ありがとうございます(笑)。
僕は、みんながやっていることをやりたいタイプなので、SNSもそれでやっているという感じですね。
そのなかで、いろんな人に見られたいとか、いいねが欲しいとか、そういう「構ってほしい」という気持ちから、クイズを出してみたり、どういう投稿をしようか考えたりしているので、もしかしたらそういうところが作品づくりとつながっているということはあるかもしれません。
展示をするときも、「みんなと会いたい」とか「みんなに作品を見てほしい」っていう理由で開いている気がします。
アイドルになりたい
―コンカフェ(※)に勤めていたのも同じ理由でしょうか?
※ コンカフェ:「コンセプトカフェ」の略称。そのお店のコンセプトに沿ってキャスト(店員)それぞれが独自の世界観を演出するカフェのこと。 安東さんは2020年~2021年、渋谷のコンカフェ「Cafe&Bar Baby Swan」に勤めていました。 |
安東さん:そうかもしれないです。
昔から前に出る人になりたくて、アイドルとか、タレント、芸能人に憧れているんです、今も(笑)。
でも年齢的にも機会がないと思っていたところに、友だちがお店をオープンして、年齢制限もなかったので応募したら採用してもらえました。
―なるほど。個人的にはSNSなどで全世界へ発信する、それこそアイドルのような「みんなの安東さん」というふうに捉えていて、コンカフェは世界観が統一されていてある意味クローズドな印象もあるので、少し意外に思う部分もあったんですけど、むしろつながっている部分だったんですね。
安東さん:そうですね。コンカフェでできる「面と向かって話す」という体験こそがSNSをやっている目的かもしれないです。
もちろんいっぱい反応をいただけるのも楽しいですけど、それをきっかけに展示に来てくれて、いろんな人と接することができたら、それが一番うれしいことですね。
勤めたのは10か月間くらいですけど、コンカフェでの経験はとても新鮮でした。
一緒に働くスタッフも、来てくれるお客さんも、普段生活するうえで出会わない方々なので、新しい世界を知ることができて、本当によかったです。
―今も一緒に働いていた方たちとお話しされているのをSNS上で拝見して、楽しそうだな、仲いいなってほっこりします。
安東さん:そうなんです、みんなとても仲良くて、本当に楽しかったです。
今も月1ペースで会っている人もいます。
独立することに不安は一切なかった
―今回のインタビューは、独立を考えている会社員の方にもお読みいただきたいな、と考えているんですが、そういった方へ、なにかアドバイスなどいただけますか?
安東さん:会社員って、もちろん毎日やらなきゃいけないことがあったり、それに焦ったり、嫌だなと思うことがあっても辞めるって伝えるのは勇気が必要だったり、いろいろあるとは思うんですけど、嫌々働いている人を結構見てきて、そんなに我慢しなくていいのになって思うんですよね。
「いつか死ぬやん」って思うんです。
それが明日かもしれないじゃないですか。
そしたら嫌なことなんて、毎日毎日、何年間もやっていられないですよね。
辞めた先でどうなるかはわからないですけど、でも今が嫌なんだったら、行動したら少なくとも今よりは良くなると思います。
ため息つきながら仕事するよりはいい。
もちろん、好きでやっている人や、そこまで嫌々ってわけじゃないっていう人はそのまま続けたらいいと思いますけど、もし今「楽しくない」とか「このままでいいのかな」とか思うんだったら、すぐに行動したほうがいいんじゃないかなって思っています。
「いま死んでも後悔しない」っていう生き方をしたいんですよね。
悩んでいる人にも、行動しなかったことで後悔してほしくないです。
一歩踏み出すと、めっちゃ不安になるかもしれないですけど、案外なんとかなるんですよ。
僕もなにも考えずに「東京に行きたい」っていう気持ちだけで、後先なにも考えずに出てきましたけど、いま楽しく生きているし、本当にめちゃくちゃなんとかなるんですよね。
だから「今の仕事よりやりたいことがあるんだよなー。でも先に進むのは不安だなー」って思っている人がいたら、「めっちゃなんとかなるから進んでみて!」って言いたいです(笑)。
―力強いエール!
たしかに安東さんはいつも楽しそうで、見ていてこちらも楽しくなります。
安東さん:いろんな人に「楽しそう」って言われて、「本当はいろいろあるよ」って言いたいけど、「たしかに楽しいしな~、どうしよう」って思います(笑)。
―なによりです。
なにをもって「ハッピー」と思うかって人それぞれで、つまり本人が楽しいと思えば、それ以上の楽しさはないと思うので、幸せって思っちゃった者勝ちですよね。
「笑う門には福来る」といいますか。
とはいえ、東京に来たばかりのころは一人で不安になることもあったのではないでしょうか?
安東さん:5年間正社員をしていたんです。
なので、いろんな人から「5年間勤めていたところを辞めて、上京して学生になるってすごく勇気があるね」って言われたりもしたんですけど、僕としては「東京に行ったら楽しいだろうな~!」「一人暮らし楽しいだろうな~!」って、楽しみしかなかったんですよね。
鈍感なのはよしあしで、それが良くないときもあるから、鈍感ではない人がいるんだと思うんですけど、でも僕の場合は、そのおかげで不安に感じることはなかったですね。
制作者として盗作問題に向き合う
―先ほど「真似されることがある」とおっしゃっていましたが、今やSNSなどで無料でクリエイターの作品を見られることに慣れてしまったということもあるのか、気軽にそれを転載してしまったり、真似してしまったりする盗用問題は残念ながら尽きないですよね。
本来は盗用されにくいシステムづくりや規制を行うなど、プラットフォームや法律が対応すべき問題だとは思うので質問するのが難しいんですが、制作者として対策している点などはありますか?
安東さん:真似されてしまったときの対応としては、正直どうすればいいのかわからないんですよね。
もちろん、同じようにハンコをいっぱい押して作品をつくって、「自分で編み出しました!」と紹介していたり、それを使って商売をしていたりしたら、「僕のほうが先にやっています」って主張はしますけど、未然に防ぐにはどうしたらいいんでしょうね……。
もはや僕には「見せない!」という方法しかないような気がします。
なので、法律なのかなんなのかわからないですけど、なにかしらが変わらないと、難しいのかなと……。
ただ別の面でお話しすると、自分自身が盗用しないように気をつけていますね。
依頼を受けてつくるときも、モチーフになる素材の写真の出所など、きちんと事前に確認するようにしています。
みんながつくるときに気をつければ、盗用自体がなくなるわけじゃないですか。
だから少なくとも自分は気をつけたいですね。
アーティストであることにこだわりはない
―では最後に、今後の展望についてお伺いできますか?
安東さん:うーん、自分がアーティストということにこだわりはなくて、幸せでいたいですね。
なので、もしかしたら今とはまったく違うことをやって、楽しいって思えたら、そっちの道に進むかもしれないです。
スーパーハンコアートを続けるうえでは、もうちょっと売れてみたい、ですかね。
テレビに出演して紹介してもらうっていうのもすごくうれしいんですけど。
始めたばかりのころ、自分の思いつきで生まれたものがお金になるっていうのが信じられないくらいうれしくて、すごくおもしろい感覚だったんですよ。
だからそれでお金持ちになれたら、もっとおもしろいなと思います。
あとはいずれ弟子みたいに入門してくれる人がいたら、みっちり教えて、僕の代わりに押してもらう……とか(笑)。
―そしたら肩もこらなくなりますね(笑)。
新しさを生み出す組み合わせとは
話題のアイドルを「Bから始まる◯文字のグループ」と思い出すか、「黒を基調とした衣装で4人くらいの人数で……」と思い出すか、あるいはなにか企画を立てるときにキャッチコピーのようなフレーズから浮かぶか、キービジュアルから浮かぶか、おそらく2つに分かれるのではないかと思います。
本当はもっと多様な記憶の仕方、発想方法があるのかもしれませんが、経験上、その2種類の人にしか会ったことがないので、ここでは絞って言及することとします。
筆者に関しては完全にテキスト型。昔からなんでも言葉を思い出し、言葉で発想するタイプだったので、自然と言葉が好きになり(好きになるほうが先だったのかもしれませんが)、現在ライターになっているという状況です。
一方、周りを見ると、映像や写真を扱ったり、アパレルをデザインしたり、イラストを描いたり、といった、視覚的なものを生業にしている友人たちは、みんなビジュアル型であることがほとんど。
もちろん時と場合によって変動することはあると思いますが、同じものの話をしていても、その相手が“ビジュアル製造”業界にいる人であれば、「あ、今この人は脳の中で再現されたビジュアル基点で話しているんだなぁ」と感じることが多いです。
さて、思いつくものの形がテキストであれば、当然ながら言語化もしやすいのではないかと思います。原材料もプロダクトも言語なので、同じパイプを通って形成されるという感じですね。それはビジュアル型の場合も同様かと思います。
今回安東さんのお話を聞いていておもしろいなと思ったのは、テキストが先に思いついても、ゴールがビジュアルだということ。先の例でいうと、製造過程で別のパイプを通ってつくられているわけです。
インプットとアウトプットに関しては、それぞれ右脳と左脳を使い分けている方は少なくないと思いますが、自身の中で生まれたアイデアを具現化するときは、アイデアと創作物のどちらも同じ形式でないと難しいのではないか、なんて思います。
どちらの思案も生き続けたまま作品がつくられるというのは、個人的には驚くことのように感じました。自身も時々あることなのですが、文章を書いていて、イメージは沸くけれど言葉が掴みきれないとき、そのイメージを一旦クリアに消し去ることに注視しているのです。
なにかをつくろうとしたとき、当然ながら発想は制限しないほうが多方面に大きく広がっていくでしょう。安東さんの行っているクリエーションはつまり、より新しさのギアを上げるというアクションなのではないでしょうか。
▼『SUNGROVE』がマーケティングを主軸に発信するメディアであることから、音声広告にちなんで20秒間、自身のPRをしていただくという当特集恒例企画に、安東さんにもご参加いただきました!
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