
エリアマーケティングとは?戦略の立て方・手法・導入事例を紹介
地域で愛される店舗をつくるためには、出店エリアの特性を理解したうえで、そこに住む顧客のニーズを満たすような施策を展開することが重要です。
しかし、いざ施策を考案しようと思っても、何をすべきなのかいまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、地域に密着したビジネスを展開するうえで必要不可欠なマーケティング手法「エリアマーケティング」について解説していきます。実施することで得られるメリットや具体的な戦略の立て方など、すでに取り入れている企業の成功事例とあわせて確認していきましょう。
目次
エリアマーケティングとは?

エリアマーケティングとは、各地域の特性に応じて展開するマーケティング手法です。
たとえば、大都市と地方都市では消費者のニーズや購買行動が異なるため、一律のマーケティング施策では十分な成果を得られないことがあります。エリアマーケティングを活用することで、地域ごとの特性に合わせたアプローチが可能となり、無駄なコストを削減しつつ、より効果的な戦略を立てることが可能です。
全国一律ではなく、各地域の生活様式や土地柄、交通インフラなどを考慮したうえで、地域ごとに施策の内容を変更・対応させることから「地域密着型マーケティング」とも呼ばれています。
エリアマーケティングで戦略を立てるべき人
まずは自社がエリアマーケティングで戦略を立てるべきなのかを判断する必要があります。以下のような人々にはエリアマーケティングは特に有効です。
- 店舗ビジネスを運営している人(小売業・飲食店・美容院・ジム・治療院など)
- これから地方や特定エリアに事業展開を考えている企業の経営者
- すでに地域密着型ビジネスを展開している企業
- 地域特性を活かした差別化戦略を模索しているマーケティング担当者
このように、エリアマーケティングは地域に根差したビジネスで成功したい人には不可欠な手法となります。
エリアマーケティングが必要な理由
エリアマーケティングが求められる最大の理由は、地域ごとに市場環境が異なるためです。
消費者の年齢層・所得水準・ライフスタイルはエリアによって大きく異なり、全国一律の戦略では十分な成果を得られない可能性が高くなっています。そのため、同じ商品やサービスであっても、訴求の仕方を変えなければ十分な成果を得られません。
また、競争が激化する現代においては、無駄な広告費を抑えながら確実にターゲット層へアプローチすることが求められます。エリアマーケティングを活用し、戦略を立てることで効果的な集客が実現できるでしょう。
エリアマーケティングを行う3つのメリット

では、地域単位でマーケティング戦略を変えることにより、実際にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
①自社の現状を把握できる ②需要・売上予測を立てられる ③適切な広告・販売戦略を立案できる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①自社の現状を把握できる
実店舗の経営を軌道に乗せるためには適切な商圏の把握が欠かせませんが、エリアマーケティングではターゲットとなる客層の居住地域を特定する過程で、顧客情報や競合店舗の位置を地図にマッピングするため、現時点での自社の商圏を的確に把握できます。地図上で可視化することにより、強みや弱みも明確になるため、施策の方向性も決めやすくなるでしょう。
②需要・売上予測を立てられる
エリアマーケティングで商圏分析を行うことにより、当該エリアの需要と店舗の売上を予測することができます。新店舗の出店候補地の選定や既存店舗の統廃合など、重要な意思決定を客観的なデータやエビデンスに基づいて下せるようになるため、現状把握の精度向上および経営判断のスピードアップが期待できるでしょう。
③適切な広告・販売戦略を立案できる
出店地域に応じて広告・販売戦略を最適化できるのもエリアマーケティングを行うメリットの1つです。自社で所有しているデータと商圏内の統計データをかけ合わせることで、店舗周辺の地域特性を把握できるほか、これまで見落としていた潜在顧客の存在にも気づけるようになるため、より効果的なマーケティング戦略を立てられるようになります。
エリアマーケティングの基本的な手順

エリアマーケティングの基本的な手順は以下の通りです。
Step1.商圏分析を行う Step2.分析結果をもとに需要・売上の予測を立てる Step3.広告・販売戦略を練る Step4.定期的に施策の効果を検証する |
1つずつ解説していきます。
Step1.商圏分析を行う
まずは、その地域への理解を深めるために商圏分析を行いましょう。
※商圏分析の進め方については、以下の記事をご確認ください。
このときに重要なのは、複数の切り口で分析を行うことです。切り口が少ないと集客率を左右するような重要な要素を見落としてしまう恐れがあるため、最低限以下の3項目は押さえておくようにしましょう。
①マクロ環境 ②地域特性 ③競合 |
それぞれ解説していきます。
①マクロ環境
「マクロ環境」とは、経済環境(景気動向・株価など)、技術環境(技術革新・特許など)、政治環境(法律・税制・政治動向など)、社会環境(人口動向・流行など)といった企業の力では制御できない部分でありながら、事業に大きな影響を与える外部環境のことを指します。
顧客動向や競合状況などマクロ環境よりも絞った領域「ミクロ環境」の調査・分析も大切ですが、エリアマーケティングにおいては対象地域の将来性まで見越しておくことが重要であり、例えば以下のようなデータを分析することにより、その地域の長期的な動向を把握することができるため、安定した経営を実現するうえでは、このマクロ環境の調査・分析を欠かすことができません。
(例) ・人口総数 ・人口分布 ・人口動態(出生率・死亡率・婚姻件数・離婚件数など) ・昼夜間人口差 ・世帯構造 ・産業構造の変化 など |
なお、これらのデータは、総務省統計局より公表されている「国勢調査」や「経済センサス」などの統計データや推計データで確認することができます。経済産業省および内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供する「RESAS」や、総務省統計局が運営する「jSTAT MAP」など、分析に役立つツールも公開されているので、これらのシステムもぜひ活用してみてください。
②地域特性
その地域にとって最適なマーケティング戦略を立案するためには、商圏内の土地柄やそこに住む消費者のライフスタイルを調査・分析することも大切です。
例えば、車移動が主流となっている地域では、駐車場の有無やその広さが店舗を選択するうえでの重要な判断基準となることが予想されます。しかし、電車やバスなど公共交通機関での移動が多い地域では、駐車場の有無よりも駅やバス停からの距離の近さが重視される可能性が高いです。
また、食料品1つをとっても、関東は濃い口、関西は薄口といわれるように、地域によって好まれる味つけが異なります。仮に複数の地域で同じ商品を発売するのであれば、販売店舗によって味つけを変えたほうがよいかもしれません。
このように、消費者のニーズは地域によって異なります。その土地に根付いた生活文化を理解しておかないとニーズを見誤ってしまう可能性があるため、消費の傾向や移動手段など地域住民の文化や生活様式を明らかにしたうえで、当該地域の特性に合った戦略を立てるようにしましょう。
③競合
安定した集客を得るためには、競合他社の調査・分析も欠かせません。
取扱商品・サービスや売場面積、立地、営業時間、販促手段といったさまざまな情報からライバル店舗が選ばれている理由を明らかにし、それに勝るような戦略の立案を目指していきましょう。
Step2.分析結果をもとに広告・販売戦略を練る
商圏分析が終わったら、その結果をもとに具体的な戦略を練っていきましょう。
「新規顧客を獲得したい」「リピーターを育成したい」「若年層への認知拡大を狙いたい」など、目的やターゲットによって、効果的な手法や注力すべきエリアが異なるため、あらかじめゴールを明確にしたうえで、それを実現できるような戦略を講じてみてください。
Step3.定期的に施策の効果を検証する
実際に施策を展開したら、その効果を定期的に見直しておきましょう。
ポジティブな結果にしろ、ネガティブな結果にしろ、効果検証を行うことにより、その施策の良かった点と改善すべき点が明確になるため、その結果をもとに次の施策をブラッシュアップさせることができます。
大型施設や競合店の進出などによって商圏が歪み、これまでは効果的だった施策では反響を得られなくなるというケースも考えられるため、継続的に振り返りを行い、改善を加えていきましょう。
エリアマーケティング分析後に実施すべき主な手法

エリアマーケティング分析によって得られた地域特性や顧客ニーズを把握すると、ターゲットに最適な施策を実施することが重要です。以下は、分析結果に基づいて実施できる具体的な手法になります。
- チラシ・ポスティングを行う
- MEO対策を行う
- SNS広告を行う
- リスティング広告を行う
それぞれ、くわしく解説します。
チラシ・ポスティングを行う
エリアマーケティングにおいて、チラシやポスティングは特定地域のターゲットに直接アプローチできる手法です。特に、店舗型ビジネスや地域密着型サービスでは、近隣住民への認知度向上に効果的になります。
配布物の内容は、分析で得られたデータをもとに最適化できます。例えば、年齢層、世帯構成、収入レベルに応じて、デザインや訴求ポイントをカスタマイズすることが可能です。
また、配布する曜日や時間帯を選んで、ターゲットに見てもらえるように工夫することも意識しましょう。
看板を設置する
視認性が高く、地域住民に継続的にアプローチできる手法として、駅前や交差点、商業施設の近くなどに看板を設置するのも有効です。特に、人通りの多い場所に設置することで、潜在的な顧客層への訴求力が高まります。
ただし、設置場所によって広告を目にするターゲット層が異なるため、慎重に選定する必要があります。また、看板広告はデータ収集が難しいため、事前に効果測定の方法を検討しておくことも重要です。
MEO対策を行う
MEO対策(Map Engine Optimization)とは、Googleマップ上で自社の店舗やサービスを検索上位に表示させる施策です。
多くのユーザーは、店舗やサービスを探す際に「地域名 カフェ」や「地域名 ジム」のように地域名とサービスを組み合わせて検索します。MEO対策で上位表示することができれば、集客につながる可能性があります。
エリアマーケティングで得た分析データをもとに、キーワードの最適化や地域に関連する情報を発信することが重要です。
WEB広告を行う
Web広告にはリスティング広告やSNS広告などがあり、特定エリアを対象に広告を配信できます。
リスティング広告(検索連動型広告)は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで特定のキーワードを入力した際に上位表示される広告のことです。「〇〇市+サービス名」といった地域名を含むキーワードで広告を出稿し、地域特化の集客を行います。エリアマーケティングで得たデータをもとに地域を限定して広告を行うことで効果を期待できます。
SNS広告は、Facebook・Instagram・X(旧Twitter)・TikTokなどのプラットフォームを活用し、エリアのターゲットに向けた広告を配信する手法です。たとえば、『20代女性限定のエリアクーポンを配布』といった広告を配信するなど、細かいターゲティングできます。エリアマーケティングの分析データを活用し、年齢・性別・地域情報を組み合わせることで、より精度の高い広告運用が可能です。
それぞれ特徴が異なるため、ターゲットに適したWeb広告の手法を選ぶことが重要になります。
エリアマーケティングの導入事例

最後に、エリアマーケティングを取り入れている企業の事例を3つ紹介します。
関東圏にある某衣料品店|エリアマーケティングで電子チラシの配信エリアを最適化
神奈川県を中心に関東圏へ複数の店舗を出店している某衣料品店は、これまで新聞の折り込みチラシで新規顧客を獲得してきましたが、新聞購読率の低い世代にも情報を届けられるように電子チラシを導入しました。
オンラインでチラシを配信すると同時に、スマホの位置情報を活用して来店者がどこから来たのかを可視化できるサービスを利用したところ、各店舗の商圏を的確に把握できるようになり、そのデータをもとにして効率的に配信エリアを調整できるようになったそうです。
(参照:Shufoo!(シュフー)「導入事例|【ファッション・タカハシ】折込チラシでリーチしにくい40代以下の主婦層に認知! 来店検知で配信エリアを最適化!」)
千葉県に拠点を構える某不動産|空室対策にエリアマーケティングを活用
千葉県内で不動産業を営む某企業は、ファミリー向け築古マンションの空室が埋まらない原因を探るべくエリアマーケティングを行いました。
手始めにマンション周辺の物件を調査したところ、その地域は某ハウスメーカーの勢力圏であり、似たような賃貸アパートが大量に展開されていることが判明。賃料を下げずに空室を改善するためには競合物件との差別化を図る必要があると判断し、当該マンションのリノベーションを計画しました。
エリアマーケティングにより得られた結果をもとにターゲットを設定し直し、彼らに刺さるような間取り・デザインへと変更したところ、賃料をあげた状態で満室を達成し、見事収益を改善することに成功したそうです。
(参照: OWNER’S AGENT「事例集一覧 |ベルエステート株式会社」)
全国展開する某スーパー銭湯|エリアマーケティングにより出店立地を厳選
全国に多数の店舗を展開する某スーパー銭湯は、新店舗の出店地を選定する際にエリアマーケティングを取り入れています。
第1段階として、国勢調査や家計調査などのデータを用いて候補物件を絞り込み、第2段階として、ドライブ商圏での詳細な分析を実施。競合店の情報も落とし込み、その店舗へ出店した際の競合店影響度を推定することで、より的確なマーケティングを実現できるようになったそうです。
(参照:マップマーケティング株式会社「導入事例|株式会社極楽湯」)
エリアマーケティングを取り入れて自店に最適な戦略を展開しよう!

店舗経営において、安定した売上を得るためには安定した集客が欠かせません。そして、安定した集客を得るためには、自社の商圏を把握し、そこに住む消費者の来店意欲を掻き立てられるような施策を展開する必要があります。
しかし、商圏の範囲はその店舗によっては異なり、出店する地域によって効果的な施策も変わってくるため、実店舗ビジネスを成功させるためには、周辺地域の特性を自ら調査・分析し、自社にとって最適な施策を講じるほかありません。
前述したように、消費者のニーズは地域によって異なり、全国で通用するような施策が必ずしもそのエリアで成功するとは限らないため、来店客数が減少していたり、売上が停滞していたり…と、店舗経営に何かしらの悩みや課題を抱いている方は、エリアマーケティングを実施して戦略を練り直してみてはいかがでしょうか。
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