チャーンレートとは?計算方法や平均値、下げる施策まで解説
SaaSビジネスを行っていくうえで重要な指標となるのがチャーンレートです。このチャーンレートが具体的にどのような意味を持ち、なぜ指標とするべきなのか、実はよく分かっていない方もいるかもしれません。そこで今回は、チャーンレートの重要性や種類、平均値、計算方法、下げるための施策等々詳しく解説します。
目次
チャーンレートとは
チャーンレートを日本語に訳すと“解約率”です。顧客離脱率や退会率と呼ぶこともあります。チャーン(churn)という言葉は本来「かき混ぜる」という意味です。このことが転じて契約会社を次々に乗り換える移り気な顧客のことを「チャーン」と呼ぶようになりました。つまり、チャーンレートとは企業から見た移り気な顧客がどれくらいいるのかを示す値です。
チャーンレートが重視される理由
チャーンレートがとりわけSaaSビジネスを行う企業にとって重要な理由は3つあります。以下、それぞれ言及します。
利益を得るため
まず挙げられる目的は、ビジネス収益の獲得です。そう、つまりは利益を得ることを理由にチャーンレートが重視されています。多くの場合、SaaSビジネスでは新規顧客を獲得しただけでは黒字になりません。彼・彼女らが継続してサービスを使い続けてくれて初めて利益が生まれます。裏を返せば、解約数が多ければたちまち赤字へと陥ります。
顧客を理解するため
サービスに満足できない顧客は、遅かれ早かれ離れていくものです。それゆえ、チャーンレートの数値はまさに顧客満足度を図る指数といっても過言ではありません。重視されるのも当然です。それを把握していない企業は、顧客理解が乏しいといわざるを得ないでしょう。
競合他社への顧客流出を防ぐため
競合ひしめく市場で戦っている場合、チャーンレートが高いと他社に顧客を奪われている可能性も考えられます。自社サービスを磨くだけでなく他社への目配りまで不可欠な状況下で、チャーンレートの重要性はいうまでもありません。明確な数値の把握はもはや必須です。
チャーンレートの種類
チャーンレートは基準項目によって大きく2種類に分けられます。それぞれ以下のとおりです。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは、顧客数をベースにした解約率です。チャーンレート自体、一般的にこのケースを指します。なお、BtoB企業のあいだではアカウントチャーンレートと呼ばれることもあります。これは、企業だと特に、複数のアカウントを提供することが多いからです。この場合、チャーンレートはアカウント数を基準に算出されます。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは、収益をベースにしたチャーンレートです。MRRチャーンレートと呼ばれることもあります。
また、レベニューチャーンレートはさらに細分化される点も特徴です。具体的には、グロスチャーンレートとネットチャーンレートに分けられます。前者は解約やダウングレードによる経常収益の損失が基準です。一方、後者は経常収益にアップセルやクロスセルまで考慮のうえ算出されます。
計算式に関して詳しくは後述しますが、ネットチャーンレートの場合、マイナスの値になれば、獲得収益が損失分を上回る状態、とりもなおさずビジネス良好を意味します。俗にネガティブチャーンと呼ばれるものです。
チャーンレートの平均値
チャーンレートの平均値や適正値がどれくらいなのかは、業界やサービス内容によって異なるため一概にはいえません。ちなみに、アメリカの調査会社であるRecurly Researchが2018年に1,500以上のサブスクリプションサイトを調査したレポートによると、BtoBサイトで平均5.00%、BtoCサイトで平均7.05%と計上されています。
あくまで目安にする材料として扱うといいでしょう。
チャーンレートの計算方法
以下、チャーンレートの計算方法について、種類別に説明します。
計算式を覚えることはもちろん、想定し得るシチュエーションのもと数字を当てはめるなど、実践的な理解・習得に努めるようにしましょう。
カスタマーチャーンレートの計算式
カスタマーチャーンレートの計算式は次のとおりです。
期間内の解約した顧客(あるいはアカウント)数÷期間の初日の顧客(あるいはアカウント)数×100 |
期間は年次と月次がよく使われます。たとえば、1年前の契約数が200でそのうち50の解約があったとします。その場合「50÷200×100」で年次のカスタマーチャーンレートは25%です。
なお、月次を単純に12倍すると齟齬が生まれるため、年単位、月単位ときちんと分けて計算するようにしましょう。
グロスチャーンレートの計算式
レベニューチャーンレートの一つ、グロスチャーンレートの計算式は次のとおりです。
当月に解約やダウングレードによって失われた収益÷前月の月次収益×100 |
仮に今月の損益を100万円、前月の収益を1000万円と仮定した場合「100万÷1000万×100」でグロスチャーンレートは10%と算出されます。
ネットチャーンレートの計算式
収益にアップセルやクロスセルによる収益を反映させたネットチャーンレートですが、計算式は次のとおりです。
(当月の失われた収益-当月のアップセルやクロスセルで得られた収益)÷前月の月次収益×100 |
前述のグロスチャーンレートと同じ条件で、そこに200万円のアップセルがあった場合「(100万-200万)÷1000万×100」でネットチャーンレートは-10%です。そう、この数字はネガティブチャーンに該当します。
チャーンレートが高くなる原因
チャーンレートを低く抑えるためにも、チャーンレートが高くなる原因を究明することは大切です。以下、考えられるものについて列挙します。
価値を提供できていない
まずは、シンプルに顧客に満足してもらえていないことが挙げられます。お客様はサービスを通じて何らかの課題解決を望んでいるはずです。その期待に応えられなければ、解約という決断に至るのも当然でしょう。チャーンレートの上昇を食い止めるには、ニーズに沿った価値をどこまで提供できるか、真摯に向き合う必要があります。
競合他社に負けている
顧客は常に、ほかにもっと良いサービスはないかと探しているものです。
そう考えると、チャーンレートが高い原因は自社サービスを利用していた顧客が他社に流出してしまっているからかもしれません。ゆえにライバルの動向はしっかり把握しましょう。そのうえで商品内容、サポート体制などの見直しが肝要です。
妥当な価格を設定できていない
いくら優れたサービスであっても、費用面を理由に顧客が減るのは、当然あり得ます。とりわけ解約にまでは至らなくともダウングレードが多い場合は、サービスに対して割高な印象を与えていることがほとんどです。
支払った金額以上の成果につながらなかったり、維持するだけの予算を確保できなかったりと、コスト要因でチャーンレートが上がってしまうことをしっかり念頭に置き、価格の妥当性を今一度確かめるようにしましょう。
チャーンレートを下げる施策
チャーンレートを下げるためにはどうすればいいか。
以下、有効な施策をいくつか紹介します。
解約の理由を明確にする
まずは顧客がなぜ解約するのか、理由を明確にすることが大切です。サービスのどこに不満があるのか、またはどのような要望があるのかを、解約のタイミングでアンケートをとるなどして、しっかり回収できる体制を整えておきましょう。
カスタマーサクセスを重視する
たとえばBtoBビジネスの場合、解約に至るケースの多くが初期の段階だといわれています。この結果から考えられることは、とりあえず登録はしたけれどもサービスを使いこなせず解約に至っているケースです。さらに述べると、サービス理解をきちんと促進できていれば防げたことかもしれません。
そのうえで必ずやっておきたいことは、スムーズに問い合わせできる仕組みづくりです。いわゆるカスタマーサクセスに注力できれば、チャーンレートをいたずらに高めることなく、加えて顧客満足度の向上にもつながる期待が持てます。
解約しそうな顧客の行動を注視する
多くの顧客はある日突然解約するわけではありません。解約前にその兆候が表れることも少なくないのです。利用頻度の減少や、サービスの人気に陰りがみえれば、すかさず次の一手を考えるようにしましょう。また、問い合わせ時の対応にも気をつけなければなりません。費用や機能について急に質問してきた顧客は、そのサービスに対して懐疑的になっている可能性があります。ここでの回答を間違わないよう、しっかりコミュニケーションを図ることが大事です。
チャーンレートに関係の深い指標
チャーンレートを理解するうえで、知っておきたいのが以下の指標です。
施策を講じる場合などに、あわせて考慮するケースも少なくありません。チャーンレートと関係が深い分、確実におさえておきましょう。
LTV
まずはLTV(Life Time Value)です。日本語で顧客生涯価値と訳されるとおり、一人の顧客がサービスの利用開始から終了までにもたらす収益を指します。一般的な計算式は「平均購買単価×平均購買頻度×平均継続期間」です。サブスクリプションの場合は「平均購買単価(プラン)×平均継続期間」で算出されます。たとえば、顧客の平均購買単価が毎月1,000円で平均継続期間が1年間の場合、LTVは12,000円です。
解約MRR
MRRは経常利益を指します。解約MRRとは、解約によって失われた収益を示す指標です。チャーンMRRとも呼ばれます。
仮に、顧客の減った数が10人と5人の月があったとしましょう。一見、紛うことなく前者の損失の方が多いわけですが、ここに別の条件が加わると話は変わります。10人減ったとしても皆、月1,000円のプランに加入していたのに対し、別の月に減った5人がそれぞれ5,000円のプランに加入していたならば、当然後者の方が大きな痛手です。
チャーンレートを理解し、上昇を抑えよう!
いうまでもなく、チャーンレートの上昇を抑えることは収益の向上につながります。
が、未然に解約の動きを阻止することはなかなか困難です。そうしたなか、やはり顧客心理を把握することがカギを握ると筆者は考えます。拙稿でも打開策をいくつか紹介しましたが、総じて重要なポイントは、顧客の行動をいかに解像度高く捉えられるかです。そのことを普段から意識しながら、より良い商品・サービスを提供するのが、つまるところ一番の解決方法でしょう。まさに、チャーンレートを本質的に理解したうえでの取り組みだといえます。
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