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コンプライアンス

SNS全盛の現在、企業が行うべきコンプライアンス対策とは?

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SNSが普及し続ける現在、あらゆる企業にとってコンプライアンス対策の重要度が増しています。法令違反や各種ハラスメントなどの不祥事をはじめ、コンプライアンス意識に欠ける企業のふるまいは、SNSを通じてすぐさま世間に広まり、企業イメージに根深いダメージを与えます。

コンプライアンスに対する意識は企業の経営者層だけではなく、従業員一人ひとりが身につけなければならないものです。従業員の個人的なSNSアカウントの投稿が、企業を窮地に追い込むことも珍しくありません。

ここでは、企業のコンプライアンス対策として気をつけるべきポイントを解説していきます。この掴み取りにくい言葉を正確に捉え、SNS時代の経営において必須となる観点を身につけていきましょう。

コンプライアンスとは?

クエスチョン

コンプライアンスという言葉が常用されるようになって久しいですが、その正しい意味を理解し、実践している企業はそう多くないかもしれません。

コンプライアンス(英:compliance)は「法令遵守」を意味する言葉であり、狭義には企業運営に関わる法律(商法や独占禁止法、不正競争防止法など)を守ることを指しています。適正なコーポレートガバナンス(企業統治)を行うにあたり、大前提となる考え方と言えるでしょう。
とはいえ「法律を守ろう」というだけなら、わざわざ横文字にして掲げる必要もありません。コンプライアンスという言葉にはさらに広い意味として、「社会通念や常識に合致した経営指針を持つ」といったニュアンスが含まれています。

抽象的な説明だけではわかりにくいので、具体的にどのような事柄が「コンプライアンス」の領域となるかを見ていきましょう。

法律を守っているだけでは不十分?

法律に違反していないからといって、「ウチは十分コンプライアンスを守れている」と考えるのは早計です。
コンプライアンスという言葉は、多くの場合「法律に則した経営をするための体制づくり」といったニュアンスを含んでいます。
たとえば労働基準法であれば、「記録上の残業時間を法律の範囲内に収める」というだけでなく、「タイムカードの時間と、実際の社員の出退勤時間にズレがないようにする」など、管理体制のあり方にも関わる言葉であると言えるでしょう。
決算・会計や景品表示、情報管理や労務など、あらゆる面で「クリーンな経営を実現する管理体制」が、コンプライアンスの観点から重要になります。

コンプライアンスと「世間の常識」

コンプライアンスという言葉が捉えにくいのは、それが「法律」という客観的な規則に関わるだけではなく、「社会通念」や「常識」など、はっきりと確認することができないものに関わっているからです。
パワハラやセクハラに代表される各種ハラスメントや、ジェンダーや人種をめぐるポリティカル・コレクトネスなど、時代とともに変容する「常識」のあり方を捉える必要があります。

多様性を重んじる時代に、「何に気をつければよいかわからない」という企業も多いでしょう。実際に大手メーカーや有名ブランドであっても、その広告が「女性を軽視する観点が含まれている」「人種差別的な表現を含んでいる」と指摘されるなど、思わぬところからダメージを受けることもしばしばです。

SNSの時代において、「思わぬところ」からのダメージを防ぐためには、「コンプライアンスの問題がどこから生じる可能性があるか」ということを見定めなければなりません。それでは具体的に、どのような原因からコンプライアンス違反は起きているのでしょうか。

コンプライアンスは経営者の問題だけではない?

コンプライアンス

これまで確認してきたように、コンプライアンス対策には、「明文化された規則を守る」ことはもちろんですが、「経営の体制をクリーンにする」こと、さらに「企業としての方針を社会通念に合致したものとする」ことなど、多くの角度から物事を捉えることが必要です。
SNS全盛の現在、「社会通念」という観点はかつてないほど重要性を増しています。ひとたび「この企業は社会通念を守れていない」というイメージが定着してしまうと、不買運動やクレームなど、経営に多大なダメージをもたらすことになるでしょう。
社会通念をめぐる企業のイメージは、マスメディアで紹介される広告や経営者インタビューなどによってのみ左右されるのではありません。従業員の個人的なSNS投稿により、企業全体のイメージが低下するケースも散見されます。

SNS投稿によって企業イメージを損なうケース

個人のSNS投稿が拡散され、企業イメージの低下につながるケースは多々ありますが、概ね以下の三つに分類されるでしょう。

(1)著しく常識に反する投稿

迷惑行為を動画で投稿したり、差別的な発言を繰り返したりと、世間の反感を買うような投稿を従業員が行っているケースです。問題行動が拡散されると、たとえSNS上で所属する企業名を公開していなくとも、過去の投稿画像などから勤務先を特定され、企業名がネット上で広まっていく可能性があります。
飲食店などのサービス業であれば、「有名人の●●が来た」といった投稿により、企業の信用が失墜するケースも見受けられます。

(2)法令違反やハラスメントの告発

いわゆる「ブラック企業」の実態や、社内のセクハラ・パワハラなどを従業員がSNS上で公表するケースです。こちらも投稿に企業名が記載されていなくても、投稿者の勤務先が特定される可能性があります。

(3)機密情報の流出

テレワークで持ち帰った資料がSNSにアップした画像に写り込んでいたり、インサイダー情報を無自覚に投稿したりといったケースです。これらは一般消費者へのイメージ低下よりも、株主や取引先に対する信用を低下させるものであり、経営基盤に直接的なダメージを与える危険があります。

SNSにおけるこうしたトラブルを防ぐためには、従業員一人ひとりが「この会社の看板を背負っている」という意識を持つことが必要です。SNSの利用法についてあらためて自覚を促すためには、企業内でのコンプライアンス研修など、何らかの対策を講ずる必要があるでしょう。

コンプライアンス研修は従業員全員が受けるべき?

研修

これまで見てきたように、従業員一人の行動によって会社全体が損失を被るというケースが近年増加しています。社内のふるまいだけではなく、従業員の個人的なSNSアカウントでの投稿や、プライベートでのふるまいが、所属する企業の責任問題となることもありますので、コンプライアンス研修はなるべく「従業員全員」が受けるようにしたいところです。

コンプライアンス研修を受けるメリットは?

研修を受けるべき理由やメリットについて、観点別に詳述していきます。

(1)「使用者責任」の観点から

「使用者責任」について定めた民法の第715条では、「事業の執行中」における従業員の不法行為に由来する損害について、使用者側が賠償責任を負うことが定められています。
「事業の執行中」というのは勤務時間中に限らず、事業に伴うあらゆる時間を含んでいます。会社の車を使っての通勤中に生じた事故や、会社の飲み会におけるハラスメントなどについても、使用者は責任を問われる可能性があるということです。
たとえば現在、「煽り運転」の映像がしばしばSNSで拡散されていますが、万が一映像に会社名の入った車が映っていれば、やはり大きな話題となるでしょう。最悪の場合、「●●社の営業車が煽り運転で事故を誘発」などという形で情報が広まり、会社側の責任が問われるということも考えられます。

このように「個人の行動」と「会社の責任」が結びついていることを理解するうえで、研修は大きく役立つはずです。

(2)「企業イメージ」の観点から

個人がどのような思想を持ち、それをどのように発信するかということについては、憲法上大きな自由が認められています。そのため個人のSNSでどのような発言をしようと、会社には関係がない、と考えてしまうかもしれません。

けれども現在、SNSで問題行動を投稿した個人のアカウントから、所属する会社が特定され、大きく企業イメージを損なう、というケースが散見されます。
「個人の思想は制限されないけれども、SNSという場で情報を世の中に発信する以上、一人の社会人としての立場をわきまえる」という意識を一人ひとりが身につける必要があります。

コンプライアンス研修を実施することで、公私が入り乱れがちなSNSの場でどのようなことに注意すべきか、理解を促すことができるでしょう。

(3)「管理体制」の観点から

さまざまな部署に所属する、数多くの従業員のふるまいについて、少数の責任者が正確に把握することは現実的に困難と言えます。ハラスメントやモラル違反は、責任者の目が届かないところで生じることがほとんどです。

コンプライアンス研修は、従業員個人の意識を向上させるだけでなく、「管理体制の強化」という面でも役立ちます。他の従業員の行動について「それはコンプライアンス的にまずい」と多くの人が気づけるようになることが、研修の大きなメリットです。
「チェックする側」の目線が増えることで、問題の所在を迅速にキャッチできるようになり、社内全体の意識もさらに向上していく、という好循環が見込めます。

研修以外のコンプライアンス対策は?

従業員の意識を高めるうえで研修は非常に有効ですが、それ以外にも社内のコンプライアンスに対する意識を改善する方法は存在します。組織の管理・共有体制を整えておくことで、一人ひとりが「どう動けばいいのか」を明確にしておくことが大切です。

(1)ハラスメントなどの相談窓口を設ける

匿名で相談できる窓口を設けることで、管理職の目に入ってこないトラブルやハラスメントを把握できるようになります。
相談窓口が形だけのものにならないよう、相談する側が信頼感を持って利用できる環境を整えることが大切です。「情報は絶対に漏れることはない」「問題に誠実に向き合い、適切な対処をする」という二点について、利用する側が安心できるような形をとりましょう。

(2)有事の際のガイドラインを定めておく

従業員のSNSアカウントを普段から管理しておくことはできませんから、「万が一」のための備えをしておくことも必要です。従業員の投稿により、会社の責任が問われるようなケースを想定し、メディア対応やクレーム対応などに関するガイドラインを作成しておくことが望ましいでしょう。

一人ひとりの「意識の定着」が最大のコンプライアンス対策

オフィス

ここまで見てきたように、SNS全盛の現在、コンプライアンスという概念を一様に捉えることは難しく、企業には「時世に合わせた対応」が求められています。「社会通念」という形にならないものを把握するうえで、もっとも重要なのは「世間では今どのようなことが問題とされているのか」を知ろうとする意識です。
この意識は経営者層だけではなく、アルバイトやパートを含む従業員一人ひとりに定着させなければいけないものです。「バイトテロ」が一時期社会問題となったように、所属する会社に対する責任感の希薄さから、あえて会社の信用を失墜させるような行為をSNSで拡散するという事態も見られます。

あるいは、ステルスマーケティング(通称:ステマ)がSNS上で非難の対象となったように、現在は「企業としての体質」に対する世間の目も非常に厳しくなっています。ステマのように、「必ずしも法律に違反しているわけではない」ものであっても企業イメージを大きく損なう可能性があることについても理解しておく必要があるでしょう。

このようにコンプライアンス対策は、「法律に違反しないよう、経営者が気をつける」というだけでは十分に行うことができません。従業員一人ひとりの意識に関わる問題として捉え、誰もが「やってはいけないライン」を見定められるよう、法律やモラルについて学ぶ機会を作ることが重要です。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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