コーピングとは?意味や種類、リスト作成、スキルの上げ方など
ストレスを抱えやすいといわれる現代社会。多くの情報が氾濫し、コミュニケーション一つをとっても技術の進歩(功罪)は時に仇と転じ、少なからずそうした世相に作用していると思われます。だからこそ、対策が必要です。そこで本記事では、今注目を集めている「コーピング」と呼ばれる手法について取り上げます。おさえておきたい心理学の一つであり、もはやビジネススキルになり得る貴重な概念です。
以下、実践に役立つところまで解説します。ぜひ、参考にしてみてください。
目次
コーピングとは何か
コーピングとは、アメリカの心理学者ラザルスが提唱した「ストレスへの対処」を指す行動、考え方です。そのためストレスコーピングと呼ばれることもあります。
コーピングを行ううえでまず大切なことは、ストレス因子の究明です。ストレスをもたらす刺激が何なのか?いわゆるストレッサーをはっきりさせることが必要です。
ストレッサーはいくつかのタイプに分けられます。
高温あるいは低温、騒音などによる刺激は、物理的ストレッサーに属します。
公害物質や薬物などによる刺激は、化学的ストレッサーです。
飢えや睡眠不足などによる刺激は、生理的ストレッサーに当たります。
そして、職場や家庭の人間関係、恋愛問題などによる刺激。そう、現代社会で顕著な心理的・社会的ストレッサーです。
心理的・社会的ストレッサーについては、時々自覚していない方も見られます。裏を返せば、心が深く蝕まれているにもかかわらず、そのことに気付いていないのです。普段から我慢を美徳とする考えが無意識的(潜在的)に根付いている可能性もあるでしょう。もちろん、そうしたマインドは決して褒められるものではありません。
コーピングが大事にするのは、何よりストレッサーと正しく向き合う姿勢です。
コーピングの必要性
コーピングの目的は、一言で述べるならストレスがもたらす不調の予防や改善です。日々の生活で蓄積されていくストレスが軽減されなければ、当然ながら身体は緊張で覆われます。その状態のまま、交感神経と副交感神経のバランスが乱れた先に引き起こされるのは、自律神経失調症です。
自律神経失調症は、軽度であれば頭痛やめまいに悩まされる程度です。しかし、症状が進行すればうつ病やパニック障害といった精神疾患を併発することもあります。また、一度発症すれば生涯治療を続けなければならない可能性も出てくる病気です。
上述した状況に見舞われてしまえば、無論、休職・退職せざるを得ないでしょう。収入減も相まって、家族全員が苦労する境地に立たされます。たとえば子育て中の家庭であれば、進学や就職についての考え方を見直さなければならないでしょう。そうやってやむを得ず人生を狂わされてしまうほど、ストレスは脅威なのです。それゆえ、コーピングを行う価値は大いにあります。
企業がコーピングを積極的に行う理由も、不調によってもたらされる負の要素を取り除くためです。事務的な話をすると、従業員が過度なストレスを抱えて離職すれば、手当の支払いや人員補充をしなければなりません。そこで発生するコストは、経営を圧迫します。もちろん、世間体よりも個人へのケアに目を向けるべきですが、従業員が次々と不調を訴える職場というのは、やはり外部から見れば劣悪な労働環境に映るでしょう。(従業員の容態が第一とはいえ)企業にとっては当然、避けたいことです。ゆえに、ストレスチェック、メンタルヘルス対策に加え、コーピングの必要性が分かります。
コーピングの種類
コーピングのアプローチは一つに限りません。
具体的には次の通りです。
問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングは、ストレスをもたらすストレッサーに対して働きかけていく方法です。仮にノルマのある仕事がストレスになっているのであれば「ノルマを達成するためにやり方を変える」「上司や同僚にアドバイスをしてもらう」「ノルマの再設定を行う」といった具合にアプローチしていきます。いろいろと試してもなお問題が解決しない時は「その仕事を辞める」「別の仕事を始める」などの手段もこのタイプのコーピングです。
社会的支援探索型コーピング
問題焦点型コーピングに内包される形で、社会的探索型コーピングと呼ばれるものが存在します。自力での問題解決ができない時には、周囲の人や社会に助けてもらうやり方です。根底には、一人でどうにもならない問題は迷わず助けを借りるべきだという考え方があります。
たとえば、高齢の親の介護で苦しんでいる時に、自治体のサポートや親族の援助を受けることなどです。実際のところ、そうやって何かに頼ることで、ストレスは如実に軽減されます。
情動焦点型コーピング
ストレスの要因に対して自身の思考を変えるアプローチを、情動焦点型コーピングと呼びます。仕事で失敗した時、上司からの評価や今後の仕事への影響を心配する方は少なくないはずです。そうなると当然、ストレスが溜まります。
そこで「一度や二度の失敗は何でもない」と楽観的であろうとするスタンスが、まさに情動焦点型コーピングです。失敗の原因を分析することこそ大事ですが、思い悩む必要はないと割り切っていく態度を示します。
情動処理型コーピング
情動処理型コーピングは、抱え込んでいる悩み・不安を表に出すことで発散するアプローチです。たとえば企業で見られるメンター制度は、まさにこのタイプに該当します。相談を通じて、従業員のストレス発散へとつなげていく場です。
気晴らし型コーピング
気晴らし型コーピングは、趣味に没頭したり体を動かしたり、あるいは旅行など日常から離れたりすることでストレスの軽減を図るアプローチです。特に意識せずとも、楽しいひと時を過ごすことで結果的に気晴らし型コーピングになっているケースも少なくありません。
認知的再評価型コーピング
認知的再評価型コーピングとは、ストレッサーから今まで気づかなかった価値を見出し、自分自身の認知の歪みを変化させていくやり方です。
ストレッサーに対する捉え方を修正していくという点では、情動焦点型コーピングと共通する対処法といえます。
たとえば、仕事で責任のあるミッションを任された時、過度に失敗を恐れたり、厄介に感じたりするのではなく「期待されている」と捉え方を変えることが認知的再評価型コーピングです。
人は性格や価値観に依存してしまうばかりに袋小路に陥ることが多々あります。事態を無理に一人で打開しようとするのではなく、誰かに相談し、そこで気付く新たな視点もまた心への負担を抑えることにつながるはずです。
コーピングの実践
コーピングについての知識を学んだ後は、いよいよ実践です。ここでは、コーピングを行う際に必要なセルフモニタリングやリストの作成、スキルアップの方法を解説していきます。
セルフモニタリング
コーピング時に行う現状を把握するための分析をセルフモニタリングと呼びます。
まず、上司やクレーム処理などストレッサーに当てはまるものを一つひとつメモに書き、それらに対して、どのような感情を抱いているのかを考えます。
たとえば、ストレッサーを嫌味な上司とした場合、発言に腹が立った、傷ついたなど出てくるはずです。
次に「その時身体にどのような反応が現れているか」「その負担を振り払うためにどういった行動を起こしているか」を挙げていきます。
そうこう言語化することで、コーピングの方向性が明らかになるでしょう。
リストの作成
セルフモニタリングの内容は、(そこに行き着くプロセスを含めた)いわば自分のストレス解消法です。ここからは具体的にリストアップしていきます。たとえば、美味しいものを食べることでストレス発散をしているのならば、お店やメニューも詳細に書き出しましょう。なお、リスト作成の目安は100個です。あらゆるシチュエーションに対応できるよう細かく分析し抽出することをおすすめします。
コーピングスキルの研鑚
コーピングスキルとは、自身を客観的に分析できる力です。この能力が向上することでセルフモニタリングやリスト作成の精度も上がります。そのためには、普段から他人を注意深く観察することが大切です。困っている人がいれば適宜サポートしていくことも経験値として磨かれるでしょう。その際は、あくまで自分事化し、不安を与えないよう接することを心がけてみてください。反応が良ければその行為は自他問わずコーピングにおける一つのノウハウになり得ます。
コーピングはビジネスの現場でも重宝される!
現代社会において、ストレスと無縁の生き方をすることは難しいでしょう。とりわけビジネスシーンでは重くのしかかってくる問題です。裏を返せば、だからこそ今、コーピングが重宝されているともいえます。
もちろん、コーピングを取り入れればすぐにストレスのない組織が生まれるわけではありません。が、それでも導入しないわけにはいかないでしょう。そう高らかに宣えるほどには有効な手法だと考えます。
肝要なのは学ぶこと。基本概要を知り手順に沿ってコツコツと実践を重ねれば、きっと変化、すなわち成果は見られるはずです。
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