異業種コラボレーションのメリットはどこにある?成功例も紹介
他社との協業は、ビジネスを発展させるうえでの有力な選択肢です。利害の一致する企業と関係を結ぶことで、自社のリソースを削減したり、新たなシナジーが生まれたりといった効果が期待できるでしょう。
さらに近年では、業種の異なる企業同士が協力関係を結ぶ「異業種コラボレーション」の例が多く見られるようになりました。意外性のある組み合わせにより、それまでになかったサービスや取り組みが生まれ、世間の注目を浴びるケースも目立ちます。
この記事では、異業種コラボレーションの概要やメリットをふまえ、実際の成功例について紹介していきます。
目次
異業種コラボレーションとは
異業種コラボレーション(異業種コラボ)とは、業種の異なる2社以上の企業が協力関係を結び、ビジネスを展開することを指す言葉です。
コラボレーションの形態はさまざまであり、合同でキャンペーンを開催する一時的な施策から、生産体制やサービス体制などを深く共有する継続的なプロジェクトまで多岐にわたります。
同業種間でのコラボレーションと比べ、異業種コラボは製品開発やターゲティングなどの面で、斬新なアイデアが生まれやすい傾向があります。独特の組み合わせによって新しい視点がもたらされ、「独創性」や「新規性」の強いプロジェクトがさまざまに展開されているのです。
異業種コラボが注目される背景
2010年前後から、SNSが世界的に普及することにより、消費者の間で「意外性のある話題」が爆発的に共有されるケースも珍しくなくなりました。企業が認知を広げようとする際にも、意外性や新規性は重要なファクターであり、異業種コラボを通じてインパクトを与えることのメリットは大きくなっていると考えられます。
さらに近年では、ビジネスソフトウェアのオープンソース化をはじめ、開発環境や管理体制のベースとなるシステムが広く共有されるようになりました。これを一因として、差別化されていたブランドや製品が、類似商品の増加により一般化していく「コモディティ化」の現象も加速しているといえるでしょう。
こうした背景から、同業種間での差別化がしだいに困難になっていくなかで、「新規性の高いプロジェクト」によって既存のモデルを転換していく必要性が高まっています。この点で、既存の体制に新しい風を吹き込む異業種コラボが注目されているのだと考えられます。
異業種コラボのメリット
異業種コラボにおいては、業界の枠を超えた関係が取り結ばれるがゆえに、従来とは異なる観点からビジネスを設計していく必要があります。
新たなモデルの構築には発想力や柔軟性が求められ、成功までの道のりは決して平坦ではありません。一方で、コラボを通じて想像以上の化学反応が生まれ、大きなメリットを引き出せる可能性もあるでしょう。
以下では、異業種コラボの具体的なメリットについて考察していきます。
新規性の高いプロジェクトの展開
異なる業種の企業とタッグを組むメリットとして、それまでは着手しえなかった方面にプロジェクトを展開しうる点が挙げられます。とくに新規性の高い事業に取り組む場合には、開拓されていなかった市場を切り拓くチャンスになるでしょう。
また、個人のレベルでも、他業種に身を置いている人物との深いコミュニケーションが生まれることにより、普段触れている価値観とは別の角度からの刺激がもたらされるはずです。各人のインスピレーションは、企業としての創造性につながり、革新的なビジネスを生み出す地盤になると考えられます。
さらに、新しい分野に踏み出すことは、ビジネスを拡大するチャンスであるとともに、自社の現状をあらためて把握する契機にもなります。たとえ1つのプロジェクトが想定通りに進まなかったとしても、その経験を通じて「新しい判断材料」が得られ、将来を展望するための足がかりができるのです。
認知度の向上
異業種コラボを通じて生まれるプロジェクトは、業界の枠を超えた新しい取り組みとして捉えられるケースが多くあります。これにより、それぞれの企業が抱えている既存顧客はもちろん、それまで自社の業界に関心をもっていなかった層にもアプローチしうるメリットが生じるでしょう。
さらに、コラボを通じてイノベーティブなプロジェクトを展開できれば、「チャレンジ精神にあふれる企業」としての認知が広がり、潜在顧客のほか投資家などから注目されるきっかけにもなると考えられます。
新たな収益構造の獲得
リソースやコストの削減は、同業種間での協業において大きなメリットとなりますが、異業種コラボにおいても同じことがいえます。まったく強みの異なる企業同士がうまく連携することで、生産や流通、広告など、さまざまな面での負担を軽減することにつながるでしょう。
また、後に紹介する「0円タクシー」のように、ビジネスモデルの設計しだいでは革新的な収益構造が生まれる可能性もあります。
資金調達の面でも、異業種コラボの話題性は有利に働くと考えられます。たとえ規模の小さい事業者間のコラボレーションであっても、独創的なビジネスアイデアを打ち出すことで、クラウドファンディングなどを通じてスムーズに資金を調達できるケースもあるでしょう。
異業種コラボの成功例
一口に異業種コラボといっても、ある程度関連性の高い業種間の協業から、一般には到底イメージできない業種間の連携まで、実にさまざまな関係性があります。
コラボレーションを通じてイノベーションを起こす可能性は無限に広がっており、着眼点しだいで大きなチャンスを切り拓くことができるでしょう。
以下では実際に、異業種コラボによって新たなステップを踏み出している企業の例を紹介します。
アパレルと研究機関の異業種コラボ
セレクトショップとして知られる「株式会社ビームス」は、2019年に「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」とコラボし、野口聡一宇宙飛行士が宇宙で長期滞在する際の衣服を製作。国際宇宙ステーションで宇宙飛行士が着用する衣服を民間企業が手がける初の事例となりました。
製作にあたっては、国際宇宙ステーションに滞在するうえで求められる機能を反映しながら、愛知県の繊維商社である「豊島株式会社」とともに製品開発を進めました。デザインの面では、チノパンやフリースパーカーなど、ビームスの得意とするアメカジ路線を踏襲し、宇宙服のイメージを一新しています。
このコラボレーションを通じて、ブランド側は、強いインパクトによって認知を広げることに成功したといえます。「宇宙空間での長期滞在に耐えうる服」として、自社商品の品質をアピールできた点も大きなメリットとして働いているでしょう。
一方のJAXAは国立研究開発法人ではあるものの、近年は民間企業とのコラボレーションを通じて、開発環境の改善や認知向上など、多方面に施策を展開しています。この事例においては、カジュアルな衣服を宇宙空間で着用することにより、宇宙がより身近な存在として認知されるようになったり、宇宙飛行士の滞在環境を向上させたりといったメリットがあると考えられます。
(参照:BEAMS「野口宇宙飛行士の国際宇宙ステーション滞在ウエアを製作 日本初、民間企業による総合プロデュース」)
銀行と異業種間のコラボ
金融業は長らく「法的規制の厳しいフィールド」であり、業種の枠を超えることがなかなか難しい業界だったといえます。しかし現在では、IT化の動向を受け、金融サービスに関する業務が銀行以外の事業者にも開放されはじめ、銀行と他業種企業とがコラボレーションする事例も見られるようになりました。
たとえば「住信SBIネット銀行株式会社」は、Tポイントで知られる「カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社」のグループ企業「株式会社Tマネー」に対し、自身の銀行機能であるNEOBANK(R)を提供。銀行取引などにともないTポイントが発生する「T NEOBANK」のサービスを開始しています。
銀行側にとっては、商業施設などで利用されることの多いTポイントと連携することで、銀行サービスの利用頻度を向上させられるメリットが見込めるでしょう。一方のTマネー側にも、消費者の経済行動にさらに密着したサービスを展開できる利点があります。
(参照:CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社「7,000万人のT会員に向けたネオバンク『T NEOBANK』を始動!」)
その他、地方銀行が地域課題の解決に向けて異業種コラボを展開する例も見られます。
たとえば山口フィナンシャルグループに属する「もみじ銀行」では、店舗スペースに他業種の施設を併設することで、相乗効果を目指す施策を展開。コラボしている業種はさまざまであり、児童施設や学習塾、カフェや美容院など多岐にわたります。
銀行側には、これらの施設の待ち時間を利用して金融相談に対応できるなどのメリットがあり、施設側にも利便性の高い土地でビジネスを展開できる利点があると考えられます。
(参照:もみじ銀行「店舗・ATM>コラボ店舗のご紹介」)
タクシー配車アプリと食品会社の異業種コラボ
2021年、タクシー配車アプリを提供する「DiDiモビリティジャパン株式会社」は、「日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社」と協同し、「走れチキンタクシー!」というキャンペーンを展開しました。
「チキンタクシー」とは、車体や車内にフライドチキンの画像をプリントしたタクシーです。配車アプリを利用し、偶然このチキンタクシーが配車された場合には、乗車料金0円で利用できることから、大きな話題を呼びました。
(参照:DiDiモビリティジャパン株式会社「【大阪市限定】フライドチキンだらけのタクシーが登場! 運よく乗車できた方は、乗車料金が0円に! 『ケンタッキー×DiDi Foodコラボレーションタクシー』 11月12日より期間限定走行」)
ビジネスモデルとしては、スポンサーによる広告収入によって乗車運賃をまかなう構図です。なお、同様の「0円タクシー」の施策は、かつて「株式会社ディー・エヌ・エー」と「日清食品株式会社」による「どん兵衛タクシー」においても実施例があります。
(参照:朝日新聞デジタル「幸運の赤いタクシー DeNA 都心限定で『0円』配車」)
これらのケースにおいては、配車アプリを手がける側に利用者数上昇のメリットが、スポンサー側には認知向上のメリットがあると考えられるでしょう。
タクシーやバスなど、街中を走る車両には少なからず広告塔としての効果が期待できます。上の施策はいずれも期間とエリアを限定して行われたものですが、スポンサーとの関係により、新たなサービスが生み出される可能性も十分に考えられるでしょう。
異業種コラボにおいては、消費者や企業、自治体や教育機関などさまざまな経済主体が抱えているニーズや課題を発見する視点が求められます。誰が何を解決したいと思っているのか、その解決に自社はどのように関われるのかを見定めながら、パートナーと協力体制を作っていく姿勢が重要です。
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