キュレーションメディアの作り方~知っておきたい記事サイト運用法~
キュレーションメディアという言葉をご存知でしょうか。人によってはあまり聞き慣れていない方もいるかもしれませんが、インターネット利用者であれば、そのほとんどにおいておそらく一度は触れているはずのメディアです。
マーケティング担当者であればもはやお馴染みでしょう。しかし、「実際に運用したことがない」「これから作ろうとしている」のであれば、ぜひ本記事を参考にしていただきたいと思います。
目次
キュレーションメディアとは?
キュレーションメディアとは、主に、あるテーマにおけるコンテンツについてインターネット上にあふれる情報を収集・精査し、独自に新しくまとめ直して公開するウェブサイトのことを指します。
2012年頃から台頭しはじめ、今では多くのネットユーザーが利用するようになりました。ちなみに、キュレーションメディアという名前の由来は、キュレーターという企画テーマに合わせて展示物を選ぶ美術館や博物館の職員になぞらえたものです。
キュレーションメディアの役割とメリット
キュレーションメディアは、うまく運用することで、多くのアクセスを獲得できる側面があります。
既に存在する情報のまとめという性質上、他のウェブサイトに比べるとオリジナリティは少ないように思えます。しかしながら、今や多くの人々に受け入れられるメディアに成長しました。一体なぜでしょうか。
その答えは、インターネット自体の性質にあるといえます。日々膨大な数の情報が流れ込んでくるインターネット上で、自分にとって本当に必要な情報を得るためには、時間も手間もかかります。調べ物をしていて、複数のサイトをいくつも回り、多くの時間を費やしてしまったという経験は誰もが持っていることでしょう。
したがって、あらかじめ必要な情報がピックアップされているキュレーションメディアは、ユーザーのそうした手間や時間を省いてくれるため、多くの人に重宝されているのです。
一方で運営する側にとっての恩恵もあります。
先述したようにオリジナルの記事を作る必要がないため、手間とコストをおさえた運用が可能です。
加えて、他のサイトと比べるとユーザーの利用頻度が高い傾向にあり、収益への期待が持てます。広告収入や課金、商品購入などにつながることは、期待できるメリットです。
特定のターゲットに絞りアプローチする広告ならではの機能を活用すれば、さらに利益を生むことができるかもしれません。
取り扱うテーマやコンテンツの種類によってはサイト訪問者の性質が異なります。だからこそ、各属性に対して配信を行うことで、より効率的な運用となるでしょう。
キュレーションメディアの種類
キュレーションメディアには、大きく分けて二つの種類があります。
それぞれの特徴を理解しておくと、いざ作る際に、適切な選択ができるでしょう。
総合型
まず一つは、総合型と呼ばれるジャンルを特定しないタイプです。様々なジャンルの記事を取り扱うため、ユーザーのニーズに幅広く対応することができます。
新聞社や出版社に限らず、個人のブログやSNSなどからも情報を収集するため、多くの人が興味を持ちやすいのも納得です。
目的の記事以外もついつい読んでしまうケースは少なくありません。
以下、代表的なメディアを紹介します。
Smart News
国内でも大手のキュレーションメディアです。扱う情報はチャンネルごとに政治、経済、エンタメ、スポーツなど幅広く、ユーザーは好みのチャンネルを自由にカスタマイズすることができます。チャンネルはタブごとに分けられているため、ストレスなくジャンルの切り替えが可能。一度ニュースを取得しておけばオフラインでも使えます。記事の読み込み速度も非常に速く、世界で人気を集めています。
グノシー
Smart Newsとほぼ構成は同じですが、エンターテイメント性の高い記事が多い印象です。既読記事の傾向を分析したうえで、配信されるニュースは自動で調整。常に読みたいと思わせてくれる記事が優先して表示される仕組みとなっています。
ジャンルごとにランキングを設けているため、人気記事が一目で分かることも特徴の一つです。
NAVERまとめ
LINEの子会社が運営する、言わずもがなの有名まとめ記事サイト。運営側がまとめて記事を配信する上記の二つとは異なり、こちらはユーザー自身で情報をまとめて発信することができます。引用元のURLをコピーするだけでもOK。
誰でも簡単に記事を作れることも相まって、人気を博すメディアです。
そんななか、2020年9月30日を以て、作成機能は停止され、下書きや非公開のものも含め全ての記事が閲覧できないようになります。
2009年にサービスは開始され、2014年にはサイト全体で月間23億PVを達成するなど著しく成長を遂げてきたビッグメディア。
その特性上、賛否はあったものの、実際に無くなるというのはちょっと寂しいものですね。
ジャンル特化型
もう一つは、文字通りジャンルに特化したタイプです。
あるジャンルに対して強い興味や関心を持っているユーザーは、質が高く深い情報を求める傾向にあります。グルメ、旅行、美容、ビジネス……等々、それぞれのテーマに関して網羅性の高さが特徴です。
MERY
女性向けのキュレーションメディアです。女性が興味を持ちやすいファッション・美容・恋愛に関する記事が多く掲載されています。記事内の画像をクリックすると、たとえば関連するSNSへと遷移することも可能です。視覚的に訴求してくる点など、マーケティングの巧みさがうかがえます。
macaroni
macaroniは「食」に特化したキュレーションメディアです。美味しいお店の紹介はもちろん、食材に関する豆知識や料理のレシピ、ダイエットまで、食にまつわること全般を取り扱っています。キュレーションメディアですが独自にレシピを公開するなど、自社制作のコンテンツにも力を入れているのも特徴です。他サイトとの差別化を積極的に行っているメディアといえます。
キュレーションメディアを作るにあたって
上述した通り、さまざまな種類が存在するキュレーションメディアですが、実際に作るにあたっては何から始めたらよいでしょうか。
そういうわけで本章では、準備段階から運用方法まで説明します。
準備に必要なこと
まずは、ジャンルの選定です。
ここで注意してほしいのが、ニーズの有無。メディアの構築を始める前に、必ず入念に調査をするようにしてください。需要がなければ多くのアクセスは見込めません。
「事前に希望されるジャンルはどの程度のニーズがあるのか」
「ライバルとなる他のメディアがどのようなテーマ、キーワードに注力されているのか」
こうした点はしっかりと確認しましょう。
競合サイトに至っては更新頻度や、検索順位などもチェックしておきたいポイントです。
そして、確実に知っておきたいのは、ウェブ上には類似サイトが溢れているということ。
キュレーションメディアはすでに数多く存在し、もはや飽和状態といってもいいでしょう。
したがって、差別化を図れるメリットが必要となります。
独自の強みやウリを確立するまでは、結果はあまり期待できないかもしれません。
いずれにせよ、キュレーションメディアで成功することはそう簡単ではないのです。このことは、あらかじめ覚悟しておいてください。
メディアの構成
ジャンルやテーマが決まったら、どのようにアクセスを増やすか考えましょう。
キュレーションメディアは自然検索よりもSNSとの親和性が高いケースが多いです。確かに、推薦や紹介が主な役割であるキュレーションメディアは、同様に拡散力を湛えるSNSの特性とは相性が良いと考えられます。
うまくハマれば、アクセスは一気に増えるはずです。そのため、サイトと連携させるべくSNSボタンの設置は必須となります。
しかし、せっかくこうしてアクセスを増やす仕組みを整えても、メディア自体に魅力がなければ成果はついてきません。
質の高いコンテンツ、メディアサイトとして論理的な構成、これらを踏まえたうえで運用するようにしてください。
たとえば、読みやすさへの意識一つだけでもユーザーの反応は変わってきます。また、使用する画像やサムネイルにも気を使いたいところです。こうした配慮によって、より興味を引きやすいメディアになると思います。
運用について
確実に言えるのは、更新頻度はとても重要です。日々、新たなコンテンツを追加することが運用においては欠かせません。
ここで難点に挙げられるのが、リソースです。更新や編集、効果測定まで行える体制を築くべく、適宜、専門スタッフを用意しましょう。サイトの品質向上にも関わってくる大事なポイントです。
キュレーションメディアの問題点
キュレーションメディアは確かに便利です。しかし、同時に問題点も孕みます。
扱う際は、どうしたって慎重にならざるを得ないでしょう。
以下、確実におさえておきたい注意事項です。
信頼性・専門性
キュレーションメディアはタイムリーな話題をいち早く発信することで、多くのアクセスが期待できます。しかし、そうした背景から無理に記事を作成し、きちんと精査しないまま誤った情報まで流してしまうケースがあるのも事実です。しかも決して少なくありません。とあるサイトではスピードとコストを重視しすぎた結果、信憑性の欠片もない醜悪な記事を掲載してしまい、閉鎖に追い込まれてしまいました。ユーザーを欺いたわけですから当然の報いです。そうこう根拠のない不確かな情報記事や偏った見方であふれたハウツー系コンテンツが跋扈し問題となったことで、キュレーションメディアに対して懐疑的な向きが増えているのは否めないでしょう。
著作権
キュレーションメディアを語る際に切っても切り離せないのが著作権の問題です。別のライターが書いた記事や画像を無断転載することはもってのほか。頻繁に議論の的となるのが引用の度合いです。
他人の記事の一部を参照や補足に使用することは許容範囲にせよ、引用まみれである記事もいかがなものかと考えます。なかには引用元を記載しない悪質な記事も見受けられます。画像も同様です。
著作物にはくれぐれも気を付けましょう。
愛されるキュレーションメディアにするために
キュレーションメディアは、うまく活用できれば収益につながる一方で、取り扱いには慎重にならなければなりません。信頼性や著作権に関わる問題が起きやすいというのは拙稿でもお伝えした通りです。
とにもかくにも、読者にとって本当に有益なものを届けることが大事だと考えます。
そのためにはリサーチから、実際の記事の作成、サイトの構成、継続した更新、管理・運用までこれらすべての段階で誠心誠意、サービス精神をもって取り組むべきです。
正直、キュレーションメディアの現状は、「NAVERまとめ」終了の件に象徴されるように、以前と比べ翳りがみえているように感じます。
この先キュレーションメディア自体が衰退するのなら、たとえ作り方、運用法を心得たとしても意味がなくなるかもしれません。
では、ここから再び信頼を得るためには、どうすればよいか。
当たり前の話とはいえ、運営する側一人ひとりの良心が鍵となると思います。
市場全体で好循環が生まれるように、まずは自身の作るものに対して、最大限真摯に向き合いましょう。
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