顧客分析とは?フレームワークや分析方法もわかりやすく解説
マーケティングの効果を高めるには、顧客のニーズや行動パターンに対する理解が欠かせません。そのうえで重要なのが、客観的なデータにもとづく「分析」の作業です。
顧客への理解を深めるために、現在ではさまざまな「顧客分析」のフレームワークが存在しています。状況に応じて適切なものを用いることで、顧客の行動や心理へと的確に迫っていけるでしょう。
この記事では、顧客分析の概要をわかりやすく解説したうえで、実際のフレームワークや進め方についても紹介していきます。
目次
顧客分析とは
顧客分析とは、顧客の行動履歴や属性といったデータをもとに、顧客の嗜好やニーズ、行動パターンなどを理解していく作業を指します。
一般に、顧客分析は特定の条件から顧客を「グループ」に分け、それぞれの特性を捉えていくという流れで進められます。顧客層ごとのニーズや傾向を把握することで、マーケティングを最適化したり、商品・サービスを改善したりといった目的に役立つのです。
顧客分析に用いられるフレームワークはさまざまであり、顧客が「何を」「いつ」「どこで」「どのように」購入するかについて、適切な観点から顧客を区分し、分析していくことが重要になります。
顧客分析を実施するメリット
上述のように、顧客分析は基本的に顧客をグルーピングすることで進められます。顧客をいくつかの層に分け、それぞれの特徴を捉えることにより、以下のようなメリットが生じると考えられるでしょう。
顧客ニーズに対する深い理解
顧客分析を適切に行うことで、「自社商品がどのような層に受け入れられているか」「どんなタイミングで購入されているか」といった点が明確になります。こうしたポイントを把握できれば、おのずと「顧客が何を求めているか」も見えやすくなるでしょう。
年代や性別、職業や趣味嗜好など、さまざまな観点から顧客を分類し、それぞれの購買行動の傾向を知ることで、「自社商品のどんなところが気に入られ、どこに価値を見出されているか」も浮き彫りになると考えられます。
反対に、「自社商品が訴求できていない層」についても理解を深められるため、今後の課題を明確化することにもつながるでしょう。
優良顧客の発掘
顧客分析の大きなメリットは、「自社に対して大きな価値をもたらしている顧客」が可視化される点にあります。
たとえば「購入金額が大きく、購入頻度も高い顧客」のグループを分析することで、「自社にとってどのような属性の人たちが最大のターゲットになっているか」が見えてくるでしょう。
このような「優先度の高いターゲット」の嗜好や行動パターンを深く理解できれば、マーケティングや商品開発などにおいて、きわめて強力な指針が得られると考えられます。
アプローチの最適化
現状では大きな売上につながっていない顧客グループについても、購買行動のパターンを知ることにより、今後のアプローチを最適化していけると考えられます。
たとえば「普段は自社の商品を購入していないけれども、特定の時期にまとまった額を購入する顧客」がいれば、その時期にリテンションを強化するなど、顧客層ごとのきめ細かいアプローチが可能になるでしょう。
顧客分析のフレームワーク7選
顧客分析を効率的に進めるうえでは、「どのように顧客を分類するか」という観点が非常に重要です。顧客の分類方法はさまざまに考えられますが、以下のようなフレームワークに従って区分していくと、分析に見通しがつきやすくなるでしょう。
デシル分析
デシル分析は、「購入金額」ごとに顧客をグループへと分類することにより、「どのグループがどれだけ売上に貢献しているか」を可視化する方法です。
デシルはラテン語で「10分の1」を意味する言葉であり、実際のデシル分析においては、購入金額を高い方から10個の階層に分けていきます。
具体的には、Excelなどのソフトを使い、購入金額でソートしたあと、上から「全顧客の10分の1にあたる数」ごとにグルーピングします。その後、グループごとに購入金額の合計値を算出し、同時に売上全体に占める割合も出しておくとよいでしょう。
このように、メインの購入価格帯を知ることで、注力すべき顧客層を明確にし、マーケティングに活かしていくことがデシル分析の目的です。顧客ごとの売上データがあれば、比較的手軽に実施できる点もメリットだといえます。
セグメンテーション分析
セグメンテーションは「区分」を意味し、顧客を「属性」や「行動パターン」など多様な観点から分類する手法です。上のデシル分析が購入金額という「数値」のみを使っていたのに対し、セグメンテーション分析は「任意の観点」から顧客を分類していきます。
分類する際の切り口としては、大きく「地理的変数」「人口動態変数」「心理的変数」「行動変数」のいずれかが適用されるケースが多いでしょう。具体的には、以下に挙げる切り口のうち、自社の商品・サービスにとって重要な切り口を選定し、顧客を分類します。
- 地理的変数
顧客の居住地や、その都市の規模、気候や文化的特性など、ターゲットが置かれている地理的な特性や要因を表す観点です。都市部か地方か、関東か関西かなど、「顧客の生活地盤がどこにあるのか」という切り口から分類していきます。
- 人口動態変数
いわゆる「属性」による分類であり、年齢や性別、職業や家族構成といった切り口から顧客をグルーピングしていきます。とくに年齢層と性別によるセグメンテーションは、多くの場面で取り入れられている一般的な手法だといえるでしょう。
- 心理的変数
顧客の価値観やライフスタイルなど、「その人が何を大事にしているか」という観点から分類していく方法です。「家族に対する考え方」「趣味や健康への価値観」「仕事への姿勢」など無数の切り口が考えられるので、自社の性質をふまえて分類の仕方を考えていく必要があります。
- 行動変数
購買履歴やリピート状況など、顧客の行動パターンをもとに分類するための観点です。「新規顧客かリピーターか」「購入はオンラインか店舗か」など、「いつ、どこで、どのように自社と接触したか」という切り口が用いられます。
これら4つの変数のうち、複数の項目を用いて分類することも可能です。簡易的な可視化の方法としては、たとえば「居住地」と「家族構成」など、2つの項目をX軸とY軸にとり、象限図の形式で表現するとわかりやすいでしょう。
CTB分析
CTB分析は、顧客の「嗜好」を分類するためのフレームワークであり、「Category(カテゴリ)」「Taste(テイスト)」「Brand(ブランド)」という3つの観点から顧客を区分していきます。
顧客の好む雰囲気やカラー、ブランドなどを把握することにより、今後の購買行動に対する予測や、自社の商品・サービスの改善などに活かせるでしょう。
- カテゴリ
自社の商品が属する「市場のカテゴリ」を明確にします。必要に応じて、「飲料」「食品」「衣類」といった大分類と、さらに下層としての「ソフトドリンク」「アルコール」などの小分類を設けていきます。
- テイスト
自社が属する市場カテゴリについて、「どのような雰囲気のものが好まれているか」を分析します。ファッションであればカラーや質感、素材など、食品であれば味や食感などといった観点から、好まれる傾向を把握しましょう。
- ブランド
自社が属する市場カテゴリを中心に、どのようなブランドが選ばれているかを明確にします。競合や自社の認知度やシェア率を調べながら、高級感や親近感など、その市場において「ブランドを定着させるには、どんなイメージを与える必要があるか」を見通していくことが大切です。
RFM分析
RFM分析は、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つのデータをもとに、顧客をグルーピングする手法です。
実際の購買行動を表す3つの観点から顧客をグループに分けることで、「購入金額は高いが購入頻度の低い顧客」や「かつて頻繁に高額商品を購入していた休眠顧客」など具体的な状況が可視化されます。
これにより、それぞれのグループに対して異なるアプローチを編み出していけるでしょう。
グルーピングの方法はさまざまに考えられますが、なるべくシンプルな形式を採用するには、3つの指標それぞれを高・中・低の3段階から評価し、合計9つのグループに分けていく方法が考えられます。
たとえば「最終購入日:高、購入頻度:低、購入金額:高」というグループは、今後のリピート状況によって優良顧客となる可能性があるので、リテンションの早期対策が必要でしょう。
LTV分析
LTV分析は、「顧客が生涯のうちに自社にもたらす価値(顧客生涯価値:Life Time Value)」の観点から、顧客1人あたりの収益性を明確にし、マーケティング上の課題を浮き彫りにするための手法です。
LTVの算出方法には複数の種類があり、自社のビジネスモデルによって使い分ける必要があります。代表的なものとしては、以下の式が挙げられます。
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
LTV=(売上高-売上原価)÷購入者数
ただし上記の式はあくまで「平均値」を算出するものであり、個々の顧客の購買行動を分析することには向いていません。顧客をグルーピングしたい場合には、個々の顧客ごとにLTVを算出し、その額の高低によって区分していくことも有効です。
その場合、個々のLTVを求める式としては、以下のような形式が考えられるでしょう。
- LTV=購入単価×購入回数×収益率
コホート分析
コホート分析は、顧客を一定の条件によってグループに分け、「時間の推移のなかでそれぞれのグループがどのような行動を起こすのか」を観察・分析する手法です。
任意の期間における顧客の行動パターンを知ることで、ある施策の効果を確認したり、ある時期から生じた問題の原因を特定したりすることに役立ちます。
とくに現在では、Web上の顧客行動を分析する際に取り入れられており、たとえばGoogle Analyticsにはあらかじめコホート分析の機能が備えられています。
Google Analyticsでは、アクセスしたユーザーの地域や性別、端末の種類などを条件にグルーピングを行い、任意の期間におけるアクセス数や収益などを参照することが可能です。
なお、コホート分析の機能はメニューの「探索」から「テンプレートギャラリー」を選択し、「コホートデータ探索」を開くことで利用できます。
行動トレンド分析
行動トレンド分析は、顧客の行動に大きな変化が生じる「時期」に焦点を当てた手法であり、適切なタイミングでキャンペーンなどを展開するうえで欠かせないフレームワークです。
具体的には、まず期間ごとの売上データなどをもとに、「どのタイミングで売上が伸びるか」といった点を明らかにします。その後、大きな売上につながっている顧客層を把握するため、顧客を年代や性別などの属性からグルーピングし、それぞれの売上高などを確認します。
たとえば「曜日ごとの売上の変化」と「年代・家族構成」をデータ化し、「土日に30代の子連れ家族による購入が増える」といった傾向が見られれば、「3点購入で10%オフ」など追加購入を促す施策を導けるでしょう。
顧客分析を効果的に進める方法
上に挙げたフレームワークは、それぞれ顧客分析にとって重要な観点を提供してくれます。しかし実際の分析を的確に進めていくには、状況に即したフレームワークを選び、効果的な切り口から顧客を分類していくことが求められるでしょう。
以下では具体的に、顧客分析をスムーズに進めていくための流れをわかりやすく解説します。
目的にあわせたフレームワークの選定
上述のように、顧客分析を効果的に実施するには、状況に適したフレームワークを選ぶことが重要です。そのために、まずは「新規顧客の発掘」や「キャンペーンの方針策定」など、分析の目的を明確にしておきましょう。
さらに定めた目的をふまえ、「どのような情報を知りたいか」もはっきりさせておくとよいでしょう。たとえばキャンペーンの効果を高めるには、「購買行動が促進されるタイミング」や「一度にまとまった額を購入する顧客層」などの情報が有効だといえます。
このように必要な情報にあわせて、分析フレームワークを選んでいきましょう。上の「キャンペーン」という例であれば、時期ごとの変化を追う行動トレンド分析や、購入額や頻度を整理するRFM分析などが適していると考えられます。
データの収集・整理
選択したフレームワークにあわせて、必要なデータを集め、分析に使えるよう整理していきましょう。なおフレームワークを選択する際は、「自社にどんなデータが蓄積されているか」という点も考慮しておくとよいでしょう。
顧客データを効率的に蓄積し、分析に活用していくには、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)のツールを導入することも選択肢になります。
顧客の属性や行動履歴などのデータを一元的に管理し、組織内で共有できるので、顧客分析はもちろん日頃の業務効率化にも有効です。
グルーピングの「切り口」を決める
実際にデータを分析していく際には、顧客をグルーピングする際の「切り口」が非常に重要です。目的にあわない切り口から顧客を区分してしまうと、参考になる結果が得られず、実際の施策にもブレが生じる可能性があります。
グルーピングの切り口は「分析の目的」に照らして考えることはもちろん、実際のデータを確認しながら考えていくことも大切です。
たとえば「年代別」に区分するよりも「家族構成別」に区分した方がグループ間の差が顕著になる場合には、家族構成別の区分を採用するなどの進め方が考えられます。
分析結果の可視化・フィードバック
顧客分析の成果を組織内で共有できるよう、グラフや表などのわかりやすい形にアウトプットします。そのうえで、改善点や今後の方針など「その結果を今後どのように活かしていくか」について話し合っていくとよいでしょう。
分析結果を実際の施策に反映したあとも、定期的に効果測定やフィードバックの場を設けることが重要です。時とともに顧客のニーズや市場のトレンドは変わっていくため、状況にあわせた観点を取り入れつつ、顧客分析を反復していきたいところです。
まとめ
顧客分析とは、顧客の行動履歴や属性などのデータをもとに、顧客のニーズや行動パターンを理解するための分析作業です。顧客をさまざまな切り口から区分し、それぞれのグループの特性を知ることで、「誰にどうアプローチすればよいか」が見えやすくなるでしょう。
顧客分析を効率的に進めていくには、分析の目的にあったフレームワークを選ぶことが欠かせません。目的に照らして「どんな情報が必要か」を検討し、それに適した切り口から顧客をグルーピングしていくことが重要です。
現在ではWeb上の行動履歴やPOSデータをはじめ、顧客分析に活かせるデータを利用しやすい環境が整っています。Google Analyticsなどの分析ツールはもちろん、CRMなどの顧客管理を効率化するツールを用いながら、定期的にさまざまな指標をチェックしておきたいところです。
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