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CX(カスタマーエクスペリエンス・顧客体験)とは?事例から価値を解く

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この記事ではCX(カスタマーエクスペリエンス)とはどのような概念であるかを解説します。

CXは会社とその顧客の関係において、顧客が得る体験のことを指す言葉です。近年のマーケティングシーンにおいて、従来的な企業主体の経営戦略に新たな視点をもたらすものとして重要視されている概念でもあります。

CXの概要

カフェで注文

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、日本語では一般的に「顧客体験」または「顧客体験価値」と訳されます。「顧客体験」というとおり、自社と関わることで顧客が経験する行動・感情両面の体験すべてを指す言葉です。

企業と顧客との接点は商品やサービスが主ですが、「セールスを受けた際の行動」や「サービスの利用開始後にサポートを受けた際の気持ち」など、企業と顧客の関係性で生まれるあらゆる体験が含まれます。

経営戦略のコンセプトの一種であり、従来的な「商品やサービスの機能的な価値を最大化すれば顧客がついてくる」という考え方に対し、「商材の機能に加え、顧客の満足度も追求することで商品やサービスに新たな価値が生まれる」という考え方を持つのが特徴です。

CXがビジネスにどう役立つか

CXの考え方はビジネスのコモディティ化を避けるために有益です。コモディティ化とは、市場参入当初は新規性・優越性があった商材でも、他社の参入や伸長によって独自性が保てなくなることをいいます。

商品の機能的価値を追求するだけでは他社との差別化が難しい場合、CXを改善することで商材に新たに「感情的な価値」を上乗せし、他社との差を作ることが可能です。

UXとはどう違うか

CXに似たコンセプトとしてUX(ユーザーエクスペリエンス)という考え方がありますが、UXの方がCXよりも表す内容が狭いといえるでしょう。

顧客の体験を表すことはどちらも変わりませんが、UXは「ある一つの商品・サービス」を対象にその利用者が得た体験を表す言葉です。

CXが企業の経営方針全体の改善につながるのに対し、UXは個別の商材の価値を高めるのに役立つ指標といえるかもしれません。

CX改善の事例

カフェ店内

良好なCXを顧客に提供できれば、当然ながら企業の価値は高まります。

しかし問題のあるCXを放置していると、どんなに商材が良くても顧客は定着しにくいでしょう。一度自社と関わりを持ったユーザーを手放さず、確実にファン化させるにはCXの改善が必要です。

CXを改善し「顧客に愛される企業」となった事例を3つ紹介します。

PayPay

PayPayはいわゆる「スマホ決済アプリ」として2018年に登場して以来成長を続け、2022年1月には4,500万ユーザーを獲得。国内のキャッシュレス決済シェア45%以上を占め、国内第一のバーコード決済サービスとなりました。

(参考:MMD研究所「最も利用しているQRコード決済サービス、トップは「PayPay」で45.4%、次いで「d払い」「楽天ペイ」が16.7%」

PayPayをはじめとするバーコード決済サービスが登場した当初は対応している店舗数が少なく、「一部の新しもの好きなユーザーが使っているもの」という印象が強いサービスだったように思います。

しかしPayPayはサービス開始後およそ1年で加盟店数が100万箇所を突破。その後も2年目には200万箇所、3年目には300万箇所と順調に推移し、現在では非常に多くの店舗でPayPayが利用できるようになりました。

(参考:PayPayプレスリリース「「PayPay」が実施した主な取り組みと、それに伴う主要指標の推移について(2021年度上期)」

またPayPayはバーコード決済市場全体の利便性向上にも一役買っています。2021年3月にPayPayを運営しているZホールディングスとLINE Pay運営のLINEが経営統合しました。この影響で、PayPay加盟店であれば基本的にLINE Payでも決済できるようになったのです。

さまざまな店舗のクーポンが手に入ったり、オンライン請求書サービスに登録している支払先に自動で決済してくれたりと、サービスの機能面でも多くの改善が日々加えられています。

2022年4月のアップデートでは「運転免許証のICチップを使って本人認証ができる」という機能が加えられました。銀行口座からの残高チャージを行うには本人認証が必須ですが、これまで運転免許証を利用した認証には審査に3日から1週間程度と、非常に時間がかかっていましたが、ICチップを利用した場合、最短で当日に審査が完了するようです。

サービスの中核をなす部分でユーザビリティを改善していく姿勢そのものが、よいCXを生んでいるとも考えられるでしょう。

メルカリ

メルカリは消費者が不要になったものを別の消費者に直接販売できる「フリーマーケット(フリマ)アプリ」として多くのユーザーに受け入れられてきました。フリマアプリ市場では2021年9月時点で52%のシェアを占めるまでに成長しています。

(参考:マーケティングリサーチキャンプ「CtoCサービス利用経験者のうち、「メルカリ」利用率が半数超え」

メルカリはCtoC(消費者対消費者)のサービスとして、アプリUIの変更、梱包資材のコンビニ販売、メルカリ専用の配送プラン提供など、「売るのも買うのも簡単にできる」ことを重視してさまざまな改善が行われています。

また「メルペイ」という独自のバーコード決済サービスを2019年から提供しています。一般店舗での買い物の決済手段として利用できることはもちろん、メルカリ内での購買活動にも利用可能です。

同サービス内で利用する場合は、他の決済手段を使うよりもスムーズに決済できるため、自社ユーザーの利便性を大きく向上させているといえるでしょう。

ドトールコーヒー

ドトールコーヒーといえば「コーヒー1杯220円」というリーズナブルな価格で、気軽にコーヒーを楽しめる喫茶店チェーン「ドトールコーヒーショップ」がよく知られています。

当店は低価格・高回転率でサラリーマン層のニーズを狙ったブランディングを行っていますが、他にも、書店と喫茶店を融合させ新たな読書体験を提供する「梟書茶房」など、顧客の属性に合わせて多様な形態の店舗を出店しています。

また2007年には日本レストランシステムと経営統合し、高級感あふれるインテリアや食事まで充実したメニューで上質な時間を演出し客単価を高めた「星乃珈琲店」を出店。単なる喫茶店にとどまらない事業拡大を見せています。

一口に「コーヒーを飲みたいユーザー」といっても、さまざまなシチュエーションが考えられます。「安くて美味しい」を売りにしたドトールコーヒーショップという1ブランドだけで消費者ニーズに応えようとするのではなく、それぞれのニーズに合わせて次々とブランドを創出するというユーザーの生活に広く根付いていく戦略で、良好なCXを提供しています。

CX改善は「パーソナライズ」がカギ

CXの概念は「品揃えは良いけれど店員の対応が悪かったり、棚が整理されておらず欲しいものがどこにあるかわからなかったりする店」と、「品揃えは一般的だが店員が顧客に寄り添う接客を行い、店内も整理されていてすぐに欲しいものが見つかる店」と、どちらがより多くの顧客に受け入れられそうかを考えると分かりやすいかもしれません。

この質問なら、おそらく後者を「より受け入れられる店」と答える人が多いでしょう。

しかし逆に「欲しいものを買えることが最優先で、他のことは気にしないから前者がいい」という顧客も存在するはずです。

顧客が持っている価値観は一人ひとり異なるため、CXを改善するためには先入観にとらわれない顧客理解が欠かせません。

自社の顧客にはどのような価値観を持つタイプが存在するかを深く考察し、パーソナライズされたCX提供を行うことが、カスタマーエクスペリエンス、ひいては業績の改善につながっていくでしょう。

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この記事を書いた人

イワタ ヨウスケ
大学時代は外国語、宗教関連の研究に従事。コーポレートサイトやWebメディアのライティング、書籍の出版に携わる。好きな動物は猫。ちゅ〜るは歌いながらあげる派。

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