低コストで勝ち抜くために読むべき「D2C本」7選!
現在、新しいビジネスモデルのあり方として、「D2C」という形態が注目を集めています。
D2C(Direct to Consumer)とは「メーカーが直接、製品を消費者に販売する」ことを意味する言葉であり、低コストで効率的な経営を実現する手法として、アパレルや化粧品、飲食といった業界で導入されはじめています。
日本ではまだまだ馴染みの薄いD2Cですが、中間マージンを発生させることなく消費者に寄り添ったサービスを提供できるビジネスモデルとして、新時代のスタンダードとなっていくかもしれません。
この記事では、D2Cの意義や導入の際のポイントを知るうえで役立つ書籍を紹介していきます。D2Cが重要性を増している背景を捉え、経営にD2Cのモデルを取り入れたいと考えている方々の参考としていただければ幸いです。
目次
日本におけるD2C市場
D2CはEC市場の発達したアメリカ合衆国を中心に普及しはじめ、なかにはD2Cのスタートアップにより「ユニコーン企業」(創業10年以内のベンチャー企業で、未上場ながら時価総額10億ドル以上の企業)へと上り詰めた企業も複数存在しています。
近年では日本においても「D2C」という言葉が広まりつつありますが、実際にこのビジネスモデルを取り入れている企業は少なく、「D2Cはこれまでの通販システムとどう違うのか」といった点についての理解も定着していない現状があります。
ここではまず、D2Cが従来の通販とどのように異なるかを簡単に説明したうえで、日本国内においてD2Cを導入している企業の例を紹介します。
D2Cと通販との違い
SNSなどのメディアを通じて顧客層に直接アピールを行うことができる現在、従来型の通販システムとD2Cが大きく異なるポイントは、「消費者との距離の近さ」です。多額の広告費をかけることなく、消費者が身近に触れているメディア上で情報発信を行い、「ブランドのコンセプトや世界観への共感」を喚起する、というのがD2Cの基本的なモデルとなります。
Amazonや楽天といった巨大なプラットフォーム上で「無数の商品のうちの一つ」となるのではなく、顧客との直接的なつながりによって「独自の価値を提供する」関係を構築することが、D2Cの本質であるといえるでしょう。企業規模が大きくなくとも、「自社の製品を必要としている顧客に、的確に製品や情報・サービスを届ける」ことを可能とするモデルとして、今後は多くの企業に取り入れられていくと考えられます。
日本企業によるD2Cの事例
現在、日本においてD2Cの導入例が多く見られる業界は、視覚的に商品の魅力を伝えやすいアパレル業界や、口コミで情報が広まりやすいコスメやフード関連の業界です。成功している企業に共通しているのは、やはり「ブランドのコンセプトや世界観」を適切に伝達できている、という点だといえるでしょう。具体的に、D2Cの導入に成功した企業がどのようなブランディングで市場を開拓したかを見ていきます。
アパレル業界:foufou(フーフー)
もっとも身近な自己表現の場である「ファッション」の市場においては、「みんなと同じものは身に着けたくない」という需要は多く、独自のコンセプトや世界観を打ち出すD2C企業にとっては参入のチャンスが大きいと考えられます。
レディースファッションを専門に取り扱う「foufou」は、「健康的な消費のために」というコンセプトのもと、シンプルに生活に馴染む製品を手に入れやすい価格で提供するD2C企業として、SNSなどで評価を得ています。InstagramやTwitter上での情報発信はもちろん、公式note上で「ものづくりに対する考え方」などについても頻繁に発信している点が、ブランディングにおける特徴です。顧客を選択の主体として扱うブランド方針が、D2Cという形態にマッチし、成功を収めているケースだといえるでしょう。
コスメ業界:バルクオム(BULK HOMME)
コスメ業界もD2Cの参入事例が多く見られますが、「株式会社バルクオム」はメンズコスメという競合の少ない分野で成功を収めた企業の一つです。D2Cという言葉も定着していない2013年から直販サービスを展開し、モノトーンを基調としたシャープなブランドイメージの形成や、SNSなどを通じた効果的なマーケティングの展開により、日本のD2Cを代表するモデルとなっています。
飲食業界:Mr. CHEESECAKE
「Mr. CHEESECAKE」は、ミシュラン三ツ星店で修業を積んだシェフ・田村浩二氏が、趣味で作っていたチーズケーキをSNSにアップし好評を博したことをきっかけに、ネットでの限定販売を開始したD2C企業です。レアチーズケーキとベイクドチーズケーキを組み合わせた新しい食感など「スイーツとしての魅力」はもちろんですが、SNSに掲載される洗練された写真や、レシピ情報をはじめとするユーザーフレンドリーな情報発信、曜日限定販売のプレミア感などが功を奏し、毎週の予約受付で即時完売が続いている状況です。D2Cのモデルを成功させるうえでは、企業規模に適したブランディングも重要だといえるでしょう。
おすすめのD2C本
ここからは具体的に、D2Cに関連する書籍について紹介していきます。同様のテーマを扱っていても、その切り口はさまざまであり、目的によって参考にすべき書籍は異なります。
「なぜD2Cが注目されているのか」という背景から、「D2Cとは具体的にどのようビジネスモデルを指すのか」という概要、さらには「D2Cを導入するためにはどうしたらいいのか」といった実践面まで、項目に分けて紹介していきます。
D2Cが重要性を増している背景を捉える
「時代や技術の変化によって、ビジネスモデルはどのように変化していくか」という観点から書かれた本を二冊紹介します。
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』日経BP、藤井保文・尾原和啓 著、2019年
あらゆる消費者行動がデータ化され、分析対象となった「アフターデジタル」の時代において、ビジネスはどのようにありうるのかを俯瞰的に捉えた一冊。中国などの海外事例をもとにしながら、今後の国内ビジネスの構造転換を見据え、新時代を生き抜くために必要となる視点を提供する内容です。
AIやIoTなど、ビッグデータをめぐる技術の現状を捉えながら、ビジネスモデルがどのように移り変わっていくかが示されています。D2C導入をはじめ、経営における大局的な方針を定めるうえで読んでおきたい一冊だといえるでしょう。
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』日経BP、藤井保文・尾原和啓 著、2019年
2030年アパレルの未来: 日本企業が半分になる日』東洋経済新報社、福田稔 著、2020年
デジタル化によるアパレル業界の構造変化を予測しながら、今後の市場において生き残っていくために必要となる観点を紹介する書籍です。アパレル業界がテーマとされていますが、ビジネスモデルの変化や今後の経営における課題など、業界を問わず参考にできる内容が盛り込まれています。
これからの市場をどのように読み解き、どのような戦略を立てていけばよいのか、さまざまな示唆を与えてくれる一冊となっています。
2030年アパレルの未来: 日本企業が半分になる日』東洋経済新報社、福田稔 著、2020年
「D2Cとは何か」を知る
D2Cというビジネスモデルがどのようなものであり、またそこで成功を収めるにはどうしたらよいのか、といったD2Cの概要を伝える書籍を二つ紹介します。
『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』NewsPicksパブリッシング、佐々木康裕 著、2020年
D2Cというビジネスモデルを展開するにあたって必要とされる、ビジョンの形成や環境構築のポイントを広範に示している入門書です。D2Cのブランディングにおいて、「世界観」という新たな価値基準が差異化のポイントとなることを示しながら、「従来の経営スタンスからどのような変化を遂げるべきか」という視点を与えています。
D2C導入に成功している海外企業の事例も取り入れながら、D2Cというビジネスモデルにおいて要求されるブランディングのあり方をわかりやすく解説しており、「D2Cがどのようなものか知りたい」という方にうってつけの内容となっています。
『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』NewsPicksパブリッシング、佐々木康裕 著、2020年
『DtoC After2020 日本ブランドの未来』宣伝会議、株式会社フラクタ 著、2020年
さまざまなD2Cブランドの設立支援を手掛けてきた「株式会社フラクタ」によるD2C解説書です。ビジネスモデルとしてのD2Cが有する可能性や、D2Cにおいて必要となる経営視点を包括的に説明しながら、従来のECサイトなどとの違いをわかりやすく提示する構成となっています。D2Cに造詣の深い実務家のインタビューも取り入れており、時代の変化にともない到来するビジネスチャンスをどう掴むか、という点について深い示唆を与えています。
「Kindle Unlimited」会員は無料で読めるため、D2Cの基本思想を押さえておきたい方にぴったりの一冊です。
『DtoC After2020 日本ブランドの未来』宣伝会議、株式会社フラクタ 著、2020年
ブランディングのノウハウを知る
D2Cを成功させるうえで必須となるのが「ブランディング」です。ここでは、D2Cの導入にあたってどのようにブランディング戦略を立てていくか、という観点から二冊の本を紹介します。
『ブランディング・ファースト――広告費をかける前に「ブランド」をつくる』クロスメディア・パブリッシング(インプレス)、宮村岳志 著、2020年
顧客との直接取引が行われるD2Cにおいては、自社によるブランドイメージの構築が成功のカギを握ります。
この本では、ブランドイメージ形成までのプロセスを「情報収集」「開発」「具体化」の三つの段階に分け、それぞれにおいて必須となる要素をクリアな観点から解説しています。アートやデザインといったクリエイティブ要素を経営理論と協働させながら最適化していく「ネクストブランディング」という手法について、簡明な図解とともに説明した「ブランディングの入門書」といえる書籍です。
『ブランディング・ファースト――広告費をかける前に「ブランド」をつくる』クロスメディア・パブリッシング(インプレス)、宮村岳志 著、2020年
『ブランディングが9割』青春出版社、乙幡満男 著、2020年
ブランディングの基本的な理論や原則を体系的に整理したうえで、実践に役立つノウハウを具体例とともにまとめています。限られた予算内で的確にブランドイメージを構築していくためのアドバイスも紹介されており、企業規模にかかわらず実際の経営に取り入れられる手法が網羅的に提示されています。
ブランディングのコンセプト部分だけではなく、具体的な実践方法についても示唆を得たい方にとって必見の一冊だといえるでしょう。
『ブランディングが9割』青春出版社、乙幡満男 著、2020年
D2Cの販路を構築する
顧客との直接的な関係を構築していくために、どのような方法を取ればよいのかを示した一冊を紹介します。
『新規顧客が勝手にあつまる販促の設計図 「営業スタッフを使わない」「下請けもやらない」中小企業が売上を伸ばすための法則』翔泳社、中野道良 著、2020年
中小企業にとってスタンダードなビジネスモデルだった「下請け」の形態を抜け出し、顧客との直接取引のモデルを構築していくための指南書です。コーポレートサイトの構築から流入経路の設計、顧客獲得からその後の追跡までのフローを整理し、自社に適した販促モデルを形成していくことを目的としています。
見開きページが本文と図解で構成されており、一つ一つのポイントを視覚的に理解できるため、応用の利く形で販促のためのノウハウを蓄積していくことができるでしょう。D2Cを導入するにあたって、「顧客の発掘から獲得、追跡までのシステムをどのように整えればいいか」という知識を得たい方に適した書籍となっています。
『新規顧客が勝手にあつまる販促の設計図 「営業スタッフを使わない」「下請けもやらない」中小企業が売上を伸ばすための法則』翔泳社、中野道良 著、2020年
まとめ
インターネットの普及により消費行動における情報の集め方は多様化し、企業はさまざまな方法で情報を発信できるようになりました。
情報発信の地盤が整っている現代においては、企業規模の大小にかかわらず、商品の魅力やブランドイメージを潜在的な顧客層にアピールすることが可能です。こうした背景のなか、「顧客との直接的なつながり」を構築するD2Cは、新時代を象徴するビジネスモデルであるといえるでしょう。
時代の変化を捉え、適切なビジネスモデルを構築していくために、書籍を参照するのは非常に有効な方法です。マインドセットの部分から具体的な方策まで、詳細なノウハウを自分のものにすることで、ビジョンや行動に軸が据えられていくでしょう。
D2Cビジネスは今後、参入していく企業が増えていくと予想され、それにともない新たなノウハウの蓄積や、細かな状況の変化への対応が必要になってきます。紹介した書籍などから得られた知識をベースに、情報収集を続けていくことが大切です。
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