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デプスインタビュー

デプスインタビューとは?やり方・質問項目・まとめ方を徹底解説!

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企業のマーケティングにおいては、消費者の購買行動や心理を把握するためのリサーチが欠かせません。現在ではIT技術の進展により、アクセス解析をはじめとする統計的な調査が身近なものになり、戦略立案や施策改善に活かしている企業が多く見られます。

一方で、消費者心理を掘り下げて理解するうえでは、「ミクロな視点」からの分析も必要になるでしょう。そのような手法の1つとして、個々のインタビュー対象の考えや価値観を深掘りする「デプスインタビュー」が挙げられます。

この記事では、デプスインタビューの概要やメリットをふまえ、やり方や質問項目についても解説していきます。

デプスインタビューとは

デプスインタビュー

デプスインタビューとは、市場調査において用いられる手法の1つであり、消費者から商品の購入動機などを詳しく聞き取ることを趣旨とする面談方法です。「インデプスインタビュー」とも呼ばれ、英語圏においては一般に“In-Depth Interview”と表記されます。

デプス(depth)とは「深さ」を意味し、マーケティングにおいて「消費者心理の深層」へとたどり着くことを目的としています。基本的には1対1の面談形式で行われ、クローズドな対話を通じて、インタビュー対象の価値観や行動の背景、動機など、「定量的な調査では見えない部分」を掘り下げていくのです。

消費者は1つの商品を購入するにあたっても、予算や商品特性などのほか、当人の環境に特有の効用や、固有の思い入れなど、さまざまな角度から意思決定をしています。デプスインタビューはそうした意思決定の深みから、潜在的なニーズを浮かび上がらせ、マーケティングや商品開発に活かしていくための手法として位置づけられるでしょう。

デプスインタビューとパーソナルインタビューの関係

デプスインタビューは1対1の面談形式をとる点で、「パーソナルインタビュー」の一種としても捉えられます。

パーソナルインタビューは通常、複数人で実施する「グループインタビュー」との対比において用いられる言葉です。そのため力点としては、「個別の面談」というポイントにあるといえます。

デプスインタビューはパーソナルインタビューと同様の形式をとりますが、とくに「動機の掘り下げ」という面を強調した言葉です。つまりデプスインタビューにおいては、「インタビュー対象への理解を深めるための手段」として、パーソナルインタビューの形式が採用されているといえるでしょう。

デプスインタビューのメリットと注意点

質問事項

個々のインタビュー対象に時間をかけて向き合うデプスインタビューは、マーケティングにおいて頻用される統計的なデータ解析に比べ、「古典的」「非効率的」と捉えられる面があるかもしれません。

しかし一方で、膨大なデータには還元されない「主観的な感覚」に光を当てることで、思わぬ角度から気づきを得られる可能性もあるでしょう。以下ではデプスインタビューのメリットと注意点について解説していきます。

デプスインタビューのメリット

現在マーケティングにおいて主流になっているアクセス解析などの定量調査は、消費行動をめぐるマクロな傾向を読み取ることを目的としています。ここから得られる情報は基本的に「大局的な動向」に関わるものであり、マーケティングの基本指針を定める際に有効な材料となるでしょう。

一方で、デプスインタビューのメリットは、消費者個人の心理に焦点を当てることで、実際の消費行動における選択の基準や、購買決定のトリガーについて内面的に理解できる点にあります。数字には表れない思考や感情を観察する定性調査を通じて、商品の認知から購買、その後の使用まで、主観的な体験をもとにしたヒントが得られるのです。

このように分析的な視点を離れ、個々の消費者に目線を合わせることにより、「実際に選ぶ側になってみないとわからないポイント」が見えてくることもあるでしょう。こうした「気づき」の積み重ねが、マーケティングや商品開発における差別化につながっていくと考えられます。

デプスインタビューの注意点

デプスインタビューにおいては対象者の思考プロセスや判断基準に深く迫っていくため、1人につき相応の時間を要することになります。さらにインタビュー対象を選定し、実際に面談の許諾を得るまでにもリソースが必要であり、実施に際しての負担は決して小さくありません。

また、対象者を適切に選べなかったり、進行に不備があったりしては、割いたリソースに見合うだけの材料が得られないケースも考えられます。

とくに対象者の選定においては、選ぶ側のバイアスの影響を受けやすいため注意が必要です。アクセス解析のように膨大な数のユーザーをサンプルとすることはできませんので、得られる結果は個々のインタビュー対象の主観によって左右されるのです。ここから、回答を「参考意見として取り入れるべきかどうか」についての判断が難しくなることもあるでしょう。

たとえば自社がもともとターゲットとしていた層の相手を選んだ結果、とくに目新しい意見が聞かれないという可能性もあります。ターゲットが狙い通りの消費行動をとっていることを追認することも1つの収穫ではありますが、今後の改善や発展に向けての参考とするうえでは、なるべく多様な角度からの意見を取り入れたいところです。

デプスインタビューのやり方

デプスインタビュー

デプスインタビューを通じて改善に向けたヒントを得るには、十分な対策と準備が必要です。以下ではデプスインタビューの準備から実践までの流れを解説します。

インタビュー対象と方法の選定

まずは調査の目的に応じて、「誰にインタビューするのか」「どのようにインタビューするのか」という形式面を明確にしていきましょう。

たとえば「特定の商品についてリアクションを知りたい」という場合であっても、条件や環境によって対象とすべき層は異なります。「店頭でその商品が選ばれている理由」を知りたいのであれば、購入から時間の経っていない消費者が主な対象となるでしょう。あるいは「実際の使用感や体験価値」を知りたい場合には、ある程度購入から時間が経っている顧客がターゲットとなると考えられます。

このように、知りたい情報に応じて対象者を絞り込んだうえで、条件に該当する層にコンタクトする方法を探していきましょう。快くインタビューに応じてもらうために、自社商品や金券などの謝礼を用意することも1つの手段です。

ただし、あらかじめ「インタビュー回答で○%オフ」などと記載してしまうと、それ自体が購入動機の1つとなりうるため、「なぜそれを選んだか」について自然な回答が得られにくくなる面もあります。誰を対象とするのかに応じて、コンタクトをとるべき場面や方法を検討することが求められます。

質問項目のリストアップ

デプスインタビューを準備する際には、聞きたい内容に応じて、あらかじめ質問項目をリスト化しておくことが望ましいでしょう。

ただし、質問の内容を完全にテンプレートに落とし込んでしまうと、デプスインタビューの利点を十分に引き出せない可能性があります。個々のインタビュー対象によって「多種多様な視点からの回答」が得られる点がデプスインタビューのメリットですから、話の流れに応じて柔軟に相手の考えを掘り下げていくことも重要です。

話の方向性をある程度定めるために、「商品を見たときの印象について」「購入を決めるまでのプロセスについて」など、聞き出したい内容をカテゴライズし、項目として整理しておくとよいでしょう。これにより、インタビュー中に話題が逸れてしまっても、本筋へと話を戻しやすくなると考えられます。

なお、質問のしかたはなるべく「オープン・クエスチョン」になるよう意識するとよいでしょう。たとえば「この商品について知っていましたか?」などイエス・ノーで答えられる質問ではなく、「この商品についての印象を教えてください」というように、相手の考えを引き出していきたいところです。

インタビュー時の注意点

実際にインタビューを行う段になったら、まず対象者に「なぜインタビューを行うのか」「得られた回答は何のために用いるのか」「プライバシーをどう扱うか」といった点を説明し、同意を得たうえで始めましょう。あらかじめ大まかな所要時間を伝え、音声を録音する場合などは了承を得ておくことも大切です。

その際、インタビューの進め方や、上記の留意点、質問内容などをあらかじめ書面にまとめ、それを見てもらいながら進行するのも有効でしょう。

先述のように、質問は用意したものを聞いて終わりではなく、なるべく回答を掘り下げていくことが求められます。たとえば購入の決め手についての質問に対し「オシャレに見えたから」と回答があった場合、「どんなところがオシャレに映りましたか」というように、なるべく動機の深い部分の言語化を促していきましょう。

インタビュー内容のまとめ方

ミーティング

デプスインタビューの回答内容は相応のボリュームになると考えられ、また対話形式のため話の流れを整理しにくいケースもあります。ここで得られた材料をどのようにまとめるかによって、「その後にどう活かせるか」も変わってくるでしょう。

以下ではインタビューで得られた材料をどのように整理し、分析していくのかを解説していきます。

データ上に整理する

まずはインタビュー内容を書き起こし、エクセルシートなどに整理していきましょう。後から編集しやすいように、共通の質問への回答内容や、インタビュー中の反応、その他の備考など、項目ごとに整理して記載していくとスムーズです。

回答を記述する際には、シートを総覧しやすいよう、できるだけ要点をピックアップすることが望ましいでしょう。ただし、表現の細かなニュアンスやトーンが重要な意味をもつこともありますので、言葉上の意味だけではなく感情面の動きにも注意を向けることが求められます。

グルーピングする

整理したデータをもとに、共通して聞かれた内容やワードをグルーピングしていきます。

グルーピングの際にはなるべく1つの視点からではなく、「商品への印象」や「購買プロセスにおける感情の動き」、「購買のトリガー」など多角的な視点から捉えることが望ましいでしょう。その際、グルーピングの視点ごとにシートを変更し、「印象」「購入理由」など観点別に分類していくことも有効です。

たとえば商品の印象についてのシートであれば、「かわいい」「オシャレ」「気分が上がる」などのように、「それが回答者の心をどのように動かしたのか」という観点からグルーピングしていきます。

あるいは商品の購入理由であれば、「便利そうだから」といった効用面の理由と、「所有欲が満たせそうだから」といった感情面の理由とに分けるなど、商品の特性や分析の目的に応じて分類を進めていきましょう。

グルーピング結果の分析

グルーピング内容をふまえ、自社の商品がどのように受け止められているのか、どのようなニーズから選ばれているのかといった視点から分析していきます。商品特性やイメージ、ターゲット層についての自社の認識と対照しながら進めていくと、気づきが得られやすいです。

分析の際は、なるべく複数人で行うようにしましょう。回答から何が読み取れるのかについて、意見を交換する場を用意し、得られた気づきをまとめていくことが大切です。

年齢や性別、その他の属性によって回答に一定の傾向が見られるかどうかも重要なポイント。属性による有意な差が認められる場合には、その違いをグラフなどにより可視化するとよいでしょう。

分析においては、回答結果を消費者行動のフレームワークに当てはめながら考察してみることも有効です。たとえば消費者の商品認知から購買までを5つの段階に分けた「AIDMA(アイドマ)」や、その新しい形態である「AISAS(アイサス)」および「ALSAS(アルサス)」などの枠組みから整理する方法などが考えられます。

最後に、分析結果はレポートにまとめ、担当者間で共有するとよいでしょう。ここで得られた材料は、その後もさまざまな分析において活用可能です。たとえば「自社の強みと弱み」を外部環境における「機会と脅威」に照らしながら明確にしていく「SWOT分析」のフレームワークなどにおいて、実際の消費者からの意見は大いに役立つはずです。

デプスインタビューの回答内容は、いずれも主観的な意見であり、「回答をどのように解釈するか」「どの回答を参考意見として重要視するか」によって得られるフィードバックが大きく異なります。マーケティングに活かしていくうえでは、その他の定量調査などの結果と組み合わせながら、分析に「意図しない偏り」が生じないよう意識することが求められます。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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