デザインの提案の仕方について~提案書作成や説得方法をご紹介~
デザイナーの現場では、企画力やデザイン力が問われるのはもちろん、プレゼンテーション能力も求められます。スムーズに提案を通すためには、効率よく作業を進めながら、さまざまな場面で上手な説得を繰り返さなければなりません。
では、どのような提案書を作成し、どのように自社の上司やクライアントを説得していけばよいのでしょうか。本記事では、そうした悩みに応えるべく、デザインを提案する際の効果的な方法について解説します。
目次
デザインを提案するまでの流れ
まずデザインにどのような役割を持たせればよいのかを考え、わかりやすく定義づけることが大事です。ここを疎かにしてしまうと、軸がぶれ中途半端に堕するおそれがあります。
きちんとテーマを示して、誰もがイメージしやすい役割をデザインに持たせることは、非常に大事です。
次に誰へ向けて発信するのか、ターゲットを明確にします。デザインの提案でついやってしまいがちなのが、デザイナー自身やその周囲の好き嫌いを視点の中心に置くことです。あくまで、意識すべきは実際に利用する顧客にもかかわらず、独りよがりなデザイン案を組み立ててしまっては正しい答えにたどり着くことはないでしょう。
ターゲットが定まれば、テーマと与えたい印象を設定します。このとき、同時にコンテンツやコピーの方向性が決まってくるといってもいいでしょう。
続けてやるべきは競合調査です。同様のターゲットやテーマで作られた他のデザインを参考に、共通パターンを探ります。コンセプトとクライアントのニーズに齟齬が生じていないかを確かめる意味でも、リサーチを細かく行うことは大事です。模倣にならず、あくまでも過去に成功した形や、トレンドの傾向を抽出するよう努めましょう。
そうやって目指すべきは、セオリーを踏まえ、独自のデザインに落とし込むことです。そのビジョンを引っ提げプレゼンに臨めば、説得力は自然と帯びてくるでしょう。
つまり、誰に対して何のテーマをどう印象付け、何の裏付けでどう見せるか。
この点がクリアになれば、他人に対して伝わりやすい提案ができるはずです。
提案書とは何か?
提案書とはクライアントや顧客など、相手の抱えている課題や要望などを整理したうえで、どのような解決策を講じられるかを示すための資料です。提案内容だけでなく、方向性やおよそのスケジュール、予算なども同時に記載します。
扱うトピックを単純に羅列しただけでは伝わりにくい一方で、端的に訴求するポイントを整理することも求められます。
企画書とも混同しないようにしましょう。何もないところから事業の企画を立案する文書が企画書、相手が抱えている課題に対して、どのような手段によって改善を導くか提案するものが提案書です。
いうなれば、ゼロからプラスを目指すのか、マイナスからプラスを目指すのかという違いがあるととらえれば、わかりやすいでしょう。
クライアントへの提案書は、その内容が受け入れられればビジネスが成立します。そのため契約を見越した認識で作成するものです。確かに、作成時にはおよそのスケジュールや予算にならざるを得ないとは思います。しかし、いざ動くとなってから、あまりにかけ離れていると信頼を損ねてしまうので注意が必要です。
基本的な提案書の作り方とは?
提案書は最初に何を見せるかが肝心です。デザインの提案であれば、デザインそのものを伝えると効果的だと考えます。というのは、提案書を開いて最初に目にする部分はインパクトを与えるにはもってこいなのです。が、ここで丁寧にプロローグ的なエクスキューズを入れる提案書が意外と多いのも事実。実際のところ、どちらが正解というものではありませんが、筆者は、はじめに最も伝えたいことを載せるやり方を推奨します。
もちろん、その提案に至った理由もしっかり述べる必要があります。ロジックが破綻しないよう、読み手に誤解されないよう、慎重に言葉を選ばなければなりません。加えて、図表をうまく活用しましょう。
そして、大前提、とりわけコンペに際して、あらかじめクライアントと共有していた要望や課題について言及することは必須です。しっかり答えを用意してあげるようにしてください。
採用された際に発生するおよその費用やスケジュールなどについても、可能な限り詳細に記載しましょう。また、注意事項も提案時点で極力含めた方がいいです。
クライアントの心をつかむデザインの提案とは?
デザインの提案で注意しなければならないのが、誰のための提案で、誰に納得されるかをきちんと区別しなければならないのかという点です。
たとえば、商品のデザインを提案する場合、採用を判断するのは目の前の担当者であるとはいえ、提案自体は商品を実際に購入するエンドユーザーをターゲットにした論理展開であるべきです。
「どういったデザインが購買意欲を掻き立てるのか」
「どういったプレゼンが人を惹きつけるのか」
提案時、両方を意識することが求められます。強いてコツを挙げるならば、提案の場に参加される方々の属性は把握しておきたいところです。そのうえで臨機応変に言い回しを工夫するのがベターだと考えます。
たとえば、桜をモチーフにしたデザインを、「多くの女性に人気のピンクを基調としたかわいらしいデザインです」と説明しても、同席者が男性ばかりではあまり関心を持ってもらえないでしょう。しかし「緑をバックにピンクの色を映えさせることで、これまでよりも20%以上目に留まりやすくなります」と、普遍的に通用するようなロジックで説明ができれば、メリットを感じてもらいやすいはずです。
デザインをアピールするために必要なこと
デザインをアピールする際に気を付けたいのが、主観を前面に出さないことです。デザイナーがよいと思ってデザインしたのだからよいものに決まっているという意見は、ビジネスの場では通用しません。
極論、依頼時のヒアリング内容を正しく汲み取り、表現にうまく適用したデザインこそが正義です。そこへ行き着くスキルがデザイン力として評価されます。
残念ながら、個性やテイストを打ち出した自分本位のデザインは得てしてアピールが逆効果になります。それでも自身のカラーでその味わい深さをアピールしたいなら、最低条件としてニーズを明確にし、そのデザインである必然性を盛り込むようにしましょう。
自社の上司をいかに説得するか
さて、自身の上司を説得するためにはどのような提案が有効でしょうか。
見た目がいくら丁寧に仕上げられていても、それだけでは厳しいでしょう。といっても上司の嗜好に合わせた内容にする必要はありません。ポイントは自社にとっての利益が何かを判然とさせることです。
意思決定者の心を動かすとき、決め手となるものを差し出さなければ決済は下りません。それが提案書に記載されているかはもちろんのこと、補足説明なしで完結するのが望ましいでしょう。上司もまた誰かを説得しなければならないかもしれません。提案理由や課題解決の方法などが、理路整然と述べられ、なおかつその先にあるのが自社の利益であれば、どうしたって説得力は増すはずです。
受注につながるプレゼンテーションのコツ
デザインであれば視覚に訴求するため、ある程度、提案書の内容だけでも結果を左右しそうですが、やはり受注につなげるためにはプレゼンテーションまでが必要です。
相手に伝えたいことをわかりやすく話し、強い関心を持ってもらい、最後まで飽きずに聞いてもらう。言葉にすればシンプルな一連の流れも、実際はそう容易ではありません。
たとえば、プロジェクターにスライドを映し、淡々と説明しているだけでは、冗長な時間となり眠気を触発し集中が途切れる可能性が高いです。そうならないように話す声の大きさに強弱を付けたり、目線を意識的に別の場所に移す仕組みを取り入れたりしてメリハリをつけましょう。
わかり切ったことをだらだらと説明すると、相手はその時点で関心を失います。だからこそテンポやリズム感が大切です。短いキャッチフレーズなどを効果的に忍ばせ、ポイントを絞るのも一つの手として印象づけやすいと思います。
ニーズに応えるデザインと、利益の提示が大事!
デザインを提案する際、つい見た目を重視する傾向にありますが、実際は相手の心情をいかにうまく慮れているかが肝要です。
自社内においてもそう、クライアントに対してであれば言わずもがな、結局は何が求められているのかを推察し、解決すべき課題を抽出し、それらを正しく汲み取って、デザインへと昇華しなければなりません。さらにプレゼンテーションの場では、相手の思いを受け止めてデザインに生かした点をしっかり伝えることを意識しましょう。
ニーズに応えるデザインと利益の提示がうまくかみ合ったとき、きっと素晴らしい提案になるはずです。
RANKING ランキング
- WEEKLY
- MONTHLY
UPDATE 更新情報
- ALL
- ARTICLE
- MOVIE
- FEATURE
- DOCUMENT