ELYZA LLM for JP(旧elyza pencil)の使い方を解説!無料デモでできることや料金を紹介
2022年にChatGPTがリリースされてから、IT関連で特に話題となっているのが生成AIです。2024年3月には東大発のベンチャー企業であるELYZA(イライザ)が、日本語に特化した生成AI「ELYZA LLM for JP」の無料デモを公開して注目を集めています。
本記事では、日本語の機械学習を重ねて作られた大規模言語モデルELYZA LLM for JPの特徴と無料デモの使い方を解説します。
目次
ELYZA LLM for JPとは
ELYZA LLM for JPは、日本のスタートアップ企業ELYZAが開発した、日本語テキストの生成や分析を可能とする生成AIエンジンです。Meta社が開発した大規模言語モデル「Llama-3.1-70B」をベースに日本語の追加学習を行うことで、より日本語に特化したLLMとして注目されています。
ELYZAは、日本におけるAI研究の第一人者としても知られる東京大学の松尾豊教授の研究室から発足したスタートアップ企業で、2024年3月にKDDIの出資を受けて連結子会社となりました。今後は、金融業や小売業などとの提携やサービス提供を視野に、APIやSaaSの開発を進めるとしています。
ELYZA LLM for JPは主に企業とELYZAが共同開発して実務に活用することを主目的としていますが、2024年3月には無料のデモ版が公開され、ユーザー登録などの手続きなしに自由に利用できるようになりました。
LLMとは
LLMとはLarge Language Modelsの頭字語で、日本語に訳すと「大規模言語モデル」となります。LLMは、日本語や英語など人が日常的に使っている自然言語の処理に用いられる人工知能(AI)で、ELYZA LLM for JPもその一つです。
大規模言語モデル(LLM)は大量のデータを機械学習することで、特定の言語の文法や単語の意味、表現パターンを理解し、人間から与えられるさまざまな言語に関するタスクを実行します。
生成AIには画像や動画、音声の生成も行うものがありますが、LLMは言語に特化した生成AIです。自然言語は文法や単語の意味で構成されるだけでなく、文脈によってさまざまなニュアンスが付加されます。大規模な深層学習によって自然言語のニュアンスをどこまで理解し、表現できるかがLLM開発者のテーマになっています。
70Bモデル・8Bモデルとは
ELYZA LLM for JPはELYZAが開発した大規模言語モデルの総称で、実用性を重視した70Bモデルと、柔軟性の高い8Bモデルが存在します。
70Bモデルは、約70億個のパラメーター(変数)を使用する「Llama-3.1-ELYZA-JP-70B」で、デモ版でも使用されています。
8Bモデルは、約8億個のパラメーター(変数)を使用する「Llama-3-ELYZA-JP-8B」で、モデルがオープンソースとして公開されています。使用ポリシーに従えば、誰でも自由に研究や商用目的に使うことができます。
モデル名にLlama-3.1あるいはLlama-3とあるのは、ELYZA LLM for JPが、Meta社(旧Facebook)が開発したオープンソースの大規模言語モデルLlamaをベースとして開発されているからです。
Llamaは、自然言語処理タスクにおいて高い性能を発揮する大規模言語モデルで、オープンソースとして開発者に広く利用されています。そのため、ELYZA LLM for JPはLlamaの持つ優れた基盤技術を活用しつつ日本語に特化した独自の改良を加えることで、より日本国内で活用しやすくなったモデルとなっています。
ELYZA LLM for JPの無料デモで使える機能
ELYZA LLM for JPの無料デモでは、次の機能を使うことができます。
- プログラミング
- 複雑な処理
- 情報の構造化
- 長文の処理
それぞれ、どのような機能なのかを解説します。また、様々な企業が各機能を基にELYZAと共同開発して業務に役立てているため、実際の活用事例についても紹介します。
無料版の機能では実務の業務に活かすところまでは難しいですが、開発することでELYZA LLM for JPをどのように活用できるのか参考にしてみてください。
プログラミング
プログラミングでは、簡単な計算、データ処理、Webページの構築など、指定した内容を以下のようなコードで出力することが可能です。
- Python
- JavaScript
- HTML/CSS
- Java
- C++
- C#
- Ruby
- PHP
- SQL
既存のコードのバグを修正する、コードを最適化するなどの修正も可能で、PythonからJavaScriptに翻訳するなど、別の言語にコードを翻訳できます。
高度な機械学習アルゴリズムの実装や大規模なWebフレームワークを使用したシステム設計のような複雑なコードを必要とする開発や、特定のライブラリを活用したコードの作成はできませんが、通常は数時間かけて行うようなコード作成を数分で完了させることが可能です。
複雑な処理
複雑な処理では、文章の生成や文章同士の比較、問題に対する解決案の提案などが可能です。
特に、日本語による新たな文章の生成は、日本語特有の文法や語彙の使い分けや前後の文章の整合性、感情表現など高度な調整が求められるため、ChatGPTでは難しい作業の一つです。
しかし、ELYZA LLM for JPはAI学習を日本語に特化させることで、より自然でビジネスにも活用できる水準の開発に成功しています。
実際に、マイナビは求人原稿の素案としてELYZA LLM for JPを活用しており、文案作成や校正の時間を30%近く削減しています。
ELYZA LLM for JPは日本語に特化したLLMだからこそ、他のAIと比べても精度の高い文章作成が期待できるのです。
情報の構造化
情報の構造化では、文章に含まれる情報を整理し、表やJSON形式でまとめることができます。例えば議事録を整理してトピックごとに内容を整理したり、テキストベースで作成された売上レポートを、表で整理したりすることが可能です。
情報の構造化を活用した事例として、JR西日本カスタマーリレーションズが挙げられます。月間で約7万件の電話問い合わせがあるJWCRは、対応記録をテキスト化・要約してフォーマットに合わせて保存しています。ただし、人力で行うのは業務負荷が発生するため、ELYZAを導入して最大で54%もの作業時間圧縮に成功しています。
もちろん手直しが必要なケースもありますが、情報の構造化は実務の効率化に大きく貢献しています。
長文の処理
「長文の処理」では、与えられた長文テキストの要約や文章の翻訳、比較、要素の抽出などが可能です。日本語は国際的にみても難しい言語とされており、ChatGPTのような他のAIを活用しても適切に要約されないケースがあります。
ですが、ELYZA LLM for JPは日本語に特化しているため、より高い精度で長文の処理が可能です。そのため、上述したJR西日本カスタマーリレーションズでも、まずは「会話内容の要約」が長文の処理として活用されています。
ELYZA LLM for JPの使い方と実際の活用例
ELYZA LLM for JPはELYZA LLM for JP (デモ版)にアクセスすることで、ログインせずに無料で使用できます。
最初の画面で使用規約に同意すると「私は日本語に対応したAIアシスタントです。あなたの質問にチャット形式で回答します」というチャットページが表示されます。
ページ下部にある「AIアシストに依頼」という入力欄にリクエストの文章を入力して送信ボタンの「↑」をクリックすると数秒で回答が表示されます。また、各項目を選ぶと入力の例が表示されます。
ここからは、実際に使ってみた結果についても出力内容と合わせて紹介します。
プログラミング
プログラミングの出力を行う場合は、入力欄にプログラミング言語の種類を指定してコード化したい文章を入力することで、コードが生成されます。例えば「C++で『吾輩は猫である。名前はまだない』をコード化してください」とリクエストすると下記の回答が得られました。
ただし、生成されたコードが正しいかどうかは、実際にコードを実行してみる、レビューするなどで確認する必要があります。
複雑な処理
複雑な処理では、具体的に何を欲しいのかをテキストにまとめて入力します。今回は三権分立について、だ・である調で小学生でもわかるように200文字程度で文章作成を依頼してみました。
「小学生でもわかるように」と指示したため、わかりやすい語彙や表現を使用していますが、語尾や文字数は指示とは異なる出力がされました。語尾については「だ・である調」でも「常体」でも同じだったため、学習がされていないのかもしれません。
細かい調整は必要ですが、素案としては十分に活用できるかなと思います。
情報の構造化
情報の構造化では、テキストの正誤判定を表でまとめてもらいました。出力方法は表にまとめられましたが、正誤判定では一部で誤りも見られました。AIの共通する課題はファクトチェックにあると言われているので、ELYZA LLM for JPもファクトチェックの必要性は感じます。
それでも、テキストの内容を理解する力や表としてまとめる能力は活用できると感じます。
長文の処理
最後に、長文の要約を実行しました。活用した文章は、総務省が公開している「国産LLMの開発」についてです。
結果的に、1100文字程度の文章が300文字程にまとめられました。ただ、各見出しを箇条書きにしてテキスト化したような内容になっているほか、全体をまとめた内容は記載されていないため、あくまでも情報の抜き出しとして活用するのが良いかと感じました。
ELYZA LLM for JPの料金プラン
ELYZA LLM for JPの料金プランについては、公式ホームページや無料デモに「お問い合わせ」の入力フォームがあるのみで、具体的なプランや料金は示されていません。
お問い合わせページでは「生成AI・LLMの実用化についてのご相談」「企業・業務特化LLM開発についてのご相談」などについて回答可能である旨が記載されています。
ただし、SaaSやAPIの開発も進められているので、今後は料金プランが公開される可能性があります。
ELYZA LLM for JPは日本語に特化したLLM
インターネットで手軽に利用できる生成AIには、米国のOpenAI社が開発したChatGPT、Googleが開発したBardがありますが、どちらも英語をベースに機械学習した大規模言語モデル(LLM)です。
それに対してELYZA LLM for JPは、東大発のスタートアップ企業ELYZA(イライザ)が開発した日本語に特化したLLMで、名称中のfor JPはfor Japaneseを意味しています。
ELYZAは今後「日本語の大規模言語モデル」という特性を生かして、日本でのLLMの社会実装に取り組んでいく方針です。具体的には、SaaSの開発によるクラウドサービス、企業との共同研究や企業へのコンサルティングなどで、将来的に個人や組織の日本語の文章、文書作成に大きな変化をもたらす可能性があります。
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