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ファンマーケティングとは?代表的な手法&企業の成功事例を紹介

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インターネットの普及やSNSの発展に伴う消費行動の変化により、ファンマーケティングの重要性がますます高まっています。

しかし、企業にとって心強いパートナーとなる熱狂的なファンを育成するのは、そう簡単なことではありません。現時点でファンがいたとしても、彼らとの関係性を深めることができなければ、いつか離れていってしまうでしょう。

そんな失敗を起こさないために、本記事では「ファン」に重きを置いたマーケティング手法「ファンマーケティング」について解説していきます。期待できる効果・メリットや代表的な施策例、参考にしたい企業の成功事例など、ファンマーケティングを実施するうえで知っておきたい情報を詳しく確認していきましょう。

ファンマーケティングとは

ファンマーケティングとは、自社もしくは自社の商品・サービスに対して強い愛着を持ち、支持し続けてくれる顧客、いわゆる「ファン」を育成し、その数を増やしていくことで、中長期的な売上の維持・拡大を図るマーケティング手法です。

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが1896年に提唱した「パレートの法則(80:20の法則)」によれば、「物事の結果の80%は、全体を構成する要素のうちの20%によって生み出されている」とされており、これをビジネスに当てはめると「企業の売上の80%は、顧客全体の20%にあたる優良顧客によって生み出されている」ということになります。

あくまで経験則なので、すべての事象に当てはまるわけではありませんが、これを仮説の1つとして捉えると、ビジネスを成長させるうえでは上位20%にあたる優良顧客の存在が非常に重要であり、彼らへのアプローチを重視するファンマーケティングは、経営基盤の安定および利益の拡大を図るうえで有効な施策といえるのではないでしょうか。

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>新規顧客の獲得と既存顧客のリピーター育成、売上アップにはどちらが大事?

ファンマーケティングが重要視される背景

ここ数年で急激に注目度を増しているファンマーケティングですが、その背景にはどのような要因があったのでしょうか。

まず、1つ目の要因として挙げられるのが、人口の減少です。

日本の総人口は、2008年をピークに減少の一途をたどっており、人口が増え続けていた時代に比べて、新規顧客の獲得が難しくなっています。顧客を増やそうにも、ターゲットの母数がそもそも少ないため、新規顧客の開拓に注力するだけでは、継続的な売り上げの拡大が見込めなくなってきているのです。

こうした状況下において、企業が成長を続けるためには、既存顧客を維持するための施策が欠かせません。その手段の1つとしてファンマーケティングが注目を集めているのです。

(参照:総務省統計局「統計トピックスNo.119 統計が語る平成のあゆみ|1.人口 人口減少社会、少子高齢化」

次に、2つ目の要因として考えられるのが、SNSの普及です。

インターネットが社会に浸透する前は、主な情報収集手段がマスメディア(TV・ラジオ・新聞・雑誌など)に限られていたため、企業の発信する情報以外に、消費者が参考にできるような情報はほとんどありませんでした。

しかし、インターネットが普及したことにより、消費者を取り巻く環境が一変。消費者自身が情報を収集・発信できるようになり、膨大な情報のなかから必要な情報のみを取捨選択できるようになりました。加えて、SNSが普及したことにより、個人の発信力がさらにアップ。現代では、口コミをもとに購買の意思決定をするユーザーも少なくないため、企業側もポジティブな口コミが増えるような仕組みを構築する必要があるのです。

ファンマーケティングに期待できる3つの効果・メリット

ファンマーケティングを実施することによって期待できる効果・メリットはさまざま考えられますが、主なものとして次の3つが挙げられます。

①安定的な収益が見込める
②広告宣伝費を削減しながら新規顧客を獲得できる
③消費者のリアルな声を収集できる

1つずつ見ていきましょう。

①安定的な収益が見込める

熱狂的なファンは商品・サービスのリピート率が高く、競合製品に乗り換える「ブランドスイッチ」の可能性が低い傾向にあるため、彼らの存在があるだけでも、安定した売上の確保が期待できます。

ファンマーケティングによって自社に対する愛着心を育み、信頼関係を構築することができれば、LTVの向上にもつながるため、施策次第では売上基盤をさらに安定化させることができるでしょう。

②広告宣伝費を削減しながら新規顧客を獲得できる

前述のとおり、インターネットが普及し、消費者自身が手軽に情報を収集・発信できるようになった現代においては、テレビや新聞といったマスメディアだけでなく、口コミによる影響も軽視できません。

いまや商品・サービスを購入する前にWebやSNSなどで口コミを検索するという行為が当たり前になりつつあり、企業が発信する情報よりも個人が発信する口コミのほうが信頼されやすいとさえいわれています。

こうした状況下において、心強い味方となるのがファンの存在です。特に熱心なファンは、SNSや口コミサイトなどで気に入った商品・サービスの情報を積極的に発信する傾向にあり、さらに、彼ら(第三者)の意見には説得力があることから周囲にもたらす影響力も強いため、高い宣伝効果を期待できます。

つまり、企業からすれば、広告宣伝費を削減しながらも新規顧客の獲得を見込めるようになるというわけです。

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③消費者のリアルな声を収集できる

ユーザー目線の客観的な意見を収集できるのも、ファンマーケティングを行うメリットの1つです。

商品・サービスへの愛着が強いファンは、企業自身も把握しきれていないような魅力や欠点に気づいている可能性が高いため、彼らの声に耳を傾けることで、顧客ニーズを的確に把握できます。

そこで得た有益なフィードバックをもとに商品開発やマーケティング戦略などをブラッシュアップし、顧客ニーズとの「ズレ」を修正していくことができれば、顧客満足度の向上につなげられるでしょう。

ファンマーケティングの注意点・デメリット

ファンマーケティングには、以上のようなメリットがある一方で、次のような注意点・デメリットも存在します。

・ファンの育成に時間と労力がかかる
・炎上のリスクを伴う

それぞれ確認していきましょう。

ファンの育成に時間と労力がかかる

ファンマーケティングを実施するにあたって、まず理解しておかなければならないのが、ファンを育成するのには時間と労力がかかるという点です。

この手法は、始めてすぐに成果を得られるようなものではありません。企業に利益をもたらしてくれるような熱心なファンを育成するためには、それ相応の時間と手間を要します。

成果に焦って対応が雑になってしまっては、顧客との関係性を深められないため、あらかじめ時間がかかることを理解したうえで、顧客との信頼関係をゆっくり育んでいきましょう。

炎上のリスクを伴う

ファンマーケティングでは、イベントやSNSなどで顧客と直接交流することも少なくありません。

顧客との距離を縮めるために、あえて個人的な意見を述べたり、カジュアルな言い回しを使ったりすることもあると思いますが、距離感を誤ってしまうと、炎上につながる恐れがあるため要注意。本人には悪気がなくとも、些細な一言で反感を買ってしまい、炎上トラブルに発展するケースもあるため、顧客とコミュニケーションをとる際は発言や態度に細心の注意を払うようにしましょう。

ファンマーケティングを成功へ導くための4つのポイント

それでは、実際にファンマーケティングを実施する場合、企業側はどのような施策を講じればいいのでしょうか。ここで、施策立案時に意識しておきたいポイントを4つ紹介します。

①ファン層を的確に把握する
②顧客との接点(タッチポイント)を増やす
③ユーザー同士で交流できるコミュニティを設ける
④定期的にキャンペーンを開催する

それぞれ詳しく確認していきましょう。

①ファン層を的確に把握する

ファンマーケティングを軌道に乗せるためには、現状のファン層を的確に把握し、彼らに対して適切なアプローチを行うことが重要です。むやみやたらに顧客との接触を図るだけでは、期待するほどの効果を見込めないため、あらかじめ顧客分析およびファンの定義付けをし、ターゲットを明確にしておきましょう。

②顧客との接点(タッチポイント)を増やす

顧客との信頼関係を深めるためには、まず彼らとの接点を増やす必要があります。

インターネットが一般化した現代では、実際に顔を会わさずとも、SNSなどを活用してオンラインで気軽に交流することができるため、積極的に顧客との接触を図ってみてください。

たとえば、SNSで自社に関する投稿に「いいね」や「コメント」などのリアクションをしてみたり、定期的にライブ配信を行って視聴者とコミュニケーションをとってみたり。1つの手段にこだわらず、WebサイトやSNSなど、複数のプラットフォームを用いながら、顧客との接点(タッチポイント)を増やしていきましょう。

③ユーザー同士で交流できるコミュニティを設ける

顧客のファン化を促進するためには「信頼」だけでなく、顧客が企業に対して抱く「共感」や「愛着」を強めることも忘れてはいけません。

リピート率の高い優良顧客であったとしても、購入している商品・サービスの性能や価格に価値を感じている場合は、それ以上に魅力的な商品が他社から発売された際に、そちらへ流れてしまう恐れがあります。

しかし、企業やブランドが大切にしている理念や価値観に共感し、そこに愛着を抱いているユーザーは、企業やブランドそのものに価値を感じているため、競合他社の動向にかかわらず、自社を支持してくれる可能性が高いです。

そのため、ファンマーケティングを実施する際は、企業やブランドへの「信頼」「共感」「愛着」、この3つを育めるような施策を講じることが重要になります。そして、これらを強めるための施策として有効なのが、企業と顧客、そして顧客同士で交流できる「コミュニティ」の構築です。

企業側から一方的に情報を発信するのではなく、新商品・サービスのアイデアを募集したり、コミュニティ内で意見交換をしたり……と、コミュニケーションを取りながら自社に対する理解を深めてもらうことで、顧客ロイヤルティの向上にもつながります。ちょっとした会話からヒントやアイデアを得られることもあるので、運用リソースがあれば、1つは設けておいて損はないでしょう。

④定期的にイベントやキャンペーンを開催する

顧客とのつながりを強めるためには、彼らを飽きさせないような工夫も欠かせません。顧客を「ファン化」させることに成功したとしても、アピールを怠ってしまえば、すぐに離れていってしまう可能性があるため、企業側は彼らの心をつなぎとめるような戦略を講じる必要があります。

そのための有効な手段の1として挙げられるのが、イベントやキャンペーンの開催です。顧客にとってメリットのあるイベントやキャンペーンを定期的に開催することで、顧客の印象に残りやすくなります。前述のとおり、熱心な顧客は積極的に情報を発信する傾向が強いため、魅力的な企画を考案することができれば、ファン経由での情報の拡散も狙えるでしょう。

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>イベントマーケティングとは?代表的な手法や効果を最大化するためのポイントを紹介

ファンマーケティングの代表的な施策例

以上を踏まえたうえで、ここからはファンマーケティングの代表的な施策例を5つ紹介します。

・ファンコミュニティを開設する
・ファンミーティングを実施する
・SNSアカウントを運用する
・ライブ配信を行う
・モニターを募集する

上から順に詳しく見ていきましょう。

ファンコミュニティを開設する

繰り返しになりますが、顧客と直接交流を図れる「コミュニティ」の開設は、ファンマーケティングで成果を上げるための有効な施策となります。

オンラインコミュニティを簡単に立ち上げられるプラットフォームも多数登場しているので、ファンマーケティングが初めての企業でも比較的スムーズに始められるでしょう。

なコミュニティの立ち上げ方については以下の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方は、ぜひご覧ください。

>コミュニティマーケティングとは?成功事例と失敗しないためのポイントを紹介!

ファンミーティングを実施する

ファンコミュニティと同様に、ファンミーティングも顧客と直接的なコミュニケーションがとれる手法になります。

特徴的なのは、だれもが自由に参加できるわけではなく、特定の条件を満たした一部の顧客のみが参加できる「限定的なイベント」として開催されるケースが多い点です。

招待制で開催されるイベントも珍しくなく、ファンに「自分はこの企業に優遇されている」という特別感を感じてもらえることができるため、企業やブランドへの愛着心を育むことができます。

また、日頃から支えてくれているファンに対して、直接感謝の気持ちを伝えられるのも魅力の1つです。顧客側も商品・サービスに対して抱いている意見や感想を企業側へ直接伝えることができるので、お互いに有意義な時間を過ごせるでしょう。

SNSアカウントを運用する

顧客との接点を増やすためには、SNSの活用も欠かせません。取り扱っている商品・サービスによって向き不向きはありますが、世代によってはWeb検索よりもSNS検索を主流としている層が一定数存在するため、SNSによる情報発信をするかしないかで、ビジネスの成長速度が大きく変わる可能性があります。

情報の流れが一方通行になりがちなマスメディアとは違い、SNSでは双方向性のあるコミュニケーションもとれるため、運用方法次第では、企業とファンの間に深い関係性を構築することができるでしょう。

ライブ配信を行う

顧客との接点を築く手段として、ライブ配信を行うのもおすすめです。チャット機能などを用いて、視聴者から寄せられる疑問にその場で回答したり、視聴者の反応を見ながら柔軟に内容を変えたりできるので、オンラインながらも、対面さながらの密な交流を実現することができます。

オフラインイベントのように会場まで足を運ぶ必要もなく、遠方に住んでいる人でも手軽に参加できるので、全国のファンとの関係値を効率よく深めていくことができるでしょう。

モニターを募集する

モニターを募集し、実際に商品・サービスを利用・体験してもらうことで自社商材への理解を深めてもらうのもファンマーケティングの代表的な施策の1つです。SNSなどへの口コミ投稿を条件にモニターを募集すれば、情報の拡散も狙えるため、ファンの育成と認知度の向上を同時に叶えることができます。

参考にしたい!ファンマーケティングの企業事例

最後に、ファンマーケティングを実施している企業の成功事例を3つ紹介します。

・株式会社ヤッホーブルーイング
・株式会社ワークマン
・株式会社スノーピーク

どのような施策を展開しているのか、簡単に確認していきましょう。

株式会社ヤッホーブルーイング

「よなよなエール」をはじめとした、ユニークなネーミングのクラフトビールを製造・販売している「株式会社ヤッホーブルーイング」では、「よな友ピースプロジェクト」という施策を展開し、積極的にファンとの交流を図っています。

非日常空間でさまざまビールを味わえる大規模ビールイベントや大人向けの醸造所見学ツアー、参加型のオンラインセミナーなど、バラエティに富んだイベントの数々で顧客との関係性を深めることにより、熱狂的なファンを生み出すことに成功。公式サイトでは、実際のイベントの様子が公開されており、写真からも現地の楽しそうな様子が伝わってきます。

(参照:株式会社ヤッホーブルーイング「ヤッホーブルーイング コーポレートサイト」

株式会社ワークマン

作業服や安全靴など、高機能なプロ向けウェアやアウトドアウェアが人気の「株式会社ワークマン」は、自社製品の情報をファンに発信してもらうアンバサダー制度を導入しています。

ワークマンの製品を愛用し、積極的に応援してくれる顧客を「ワークマン公式アンバサダー」として認定し、SNSやブログなどで情報を発信してもらう代わりに、新製品の先行公開や新製品発表会への招待といった特典を提供。実際に製品を利用している彼らの情報は信頼性が高いため、企業目線で発信する情報よりも高い訴求効果が期待できそうです。

また、同社では、アンバサダーへの応募をただ待つだけでなく、SNS上で自社の製品を身に着けているユーザーや製品のレビューを載せているユーザーを探し、「アンバサダーになってもらえないか」と積極的な声がけを行っています。公式サイトで紹介されているアンバサダーの人数の多さから、こうした地道な活動も重要であることがうかがえますね。

(参照:株式会社ワークマン「ワークマンプラス公式アンバサダーご紹介」

株式会社スノーピーク

アウトドア総合メーカーとして広く知られる「株式会社スノーピーク」は、Facebookで「Snow Peak コミュニティ」というファンコミュニティを開設し、顧客同士の交流を促しています。

「野遊びで楽しんでいる様子」という広いテーマが設定されており、グループに参加すれば自由に投稿できるため、キャンプで遊んでいる様子が投稿されていたり、アウトドアイベントの情報が共有されていたり……と、発信されている情報は実にさまざま。なかには商品のレビューもあり、ファン同士でその使用感について会話している場面も見受けられるため、ファンマーケティングの成果を挙げた事例として、参考にできる部分も多いのではないでしょうか。

また、 同社ではファンとの交流を図るために、1998年から「Snow Peak Way」というキャンプイベントも開催しています。全国各地で催される大規模イベントとなっていますが、申し込みの多さから参加が抽選制になるほどの人気イベントになっているようです。

(参照:Facebook「Snow Peak コミュニティ」
(参照:株式会社スノーピーク「Snow Peak Way 2022 」

事業を拡大させるためにはファンの存在が欠かせない

インターネットの普及やSNSの発展により、消費者側がシビアに情報を選ぶようになった現代において、ビジネスを成長させるためには、企業やブランドが大切にしている理念や価値観を支持してくれるファンの存在が欠かせません。

売上基盤の安定にしても、企業の認知度向上にしても、彼らのサポートなくしては実現できないため、これを機にファンマーケティングを取り入れ、既存ファンとの関係構築およびその母数の拡大を目指してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ながた
編集プロダクションで旅行ガイドブックの取材・制作に携わった後、Webライターの道へ。お酒と激辛料理をこよなく愛するインドア派。シーズン中はもっぱら野球観戦。

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