フリーミアムモデルとは?成功できる戦略の立て方を事例から学ぶ
Webサービスには、基本機能を無料にすることで導入しやすくしたうえで、より高度な機能を利用する際に追加料金を求めるものも多いです。
このようなビジネスモデルを「フリーミアム」といいます。この記事ではフリーミアムについて、その概要と、取り入れることでどのように収益を上げられるかなど、事例と併せて戦略を紹介します。
目次
フリーミアムとは
フリーミアム(Freemium)とはFree(無料)とPremium(割増金)を組み合わせた造語です。基本的なサービスや商品を無料で提供することでユーザーを増やし、より高度な機能を解放したり、広告を非表示にしたりといった場合に都度の課金やサブスクリプションの登録を促します。
サブスクリプションとは月額使用料(定額サービス)のことです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
新規ユーザー獲得以外のメリット
フリーミアムには、無料にすることで間口を広げ、新規ユーザーを獲得しやすくする以外にも利点があります。
収益に貢献しない無料ユーザーであっても、その数が増えればクチコミの増加が期待でき、短期間でサービスへのフィードバックを多く得られるので、改善につなげられます。レビュー内容を分析することでユーザーの需要を深堀りし、素早くサービスに反映することができるでしょう。
このような対応は、実体のある商品・サービスよりも、製造設備や商流の変更などが少ないデジタル分野の事業のほうが素早く行える傾向があります。そのためフリーミアムはWebサービスと親和性が高く、多くの企業で採用されています。
フリーミアムの収益モデル
フリーミアムの収益モデルは、大きく4つに分けられます。
機能制限型
フリーミアムの基本的なビジネスモデルで、一部の機能だけを提供し、より高度な機能が必要になった際に課金を促す手法です。
たとえば、フリー画像素材の提供サイトが該当します。1,2枚であれば無料でダウンロードできますが、より多くの素材や高解像度の画像を入手するには都度課金やサブスクリプション登録が必要になることが多いです。差し込まれる広告を排除するために課金を促すサービスも同様です。
容量追加型
機能に制限がない代わりに容量に制限があるタイプのフリーミアムで、クラウドストレージサービスやスマホの通信料などが該当します。使用頻度が増えるほど課金機会が増えていくのが特徴です。
会員限定型
特定の機能を使うために有料会員になるよう促すモデルです。機能面では機能制限型や容量追加型と重なる部分がありますが、支払いのシステムがサブスクリプションなのが特徴です。会員数が増えるほど、サービスの収益が安定します。
都度課金型
月額課金ではなく、その都度課金を促すモデルです。オンラインゲームのアイテム課金やガチャなどが該当します。 必要なときだけ課金を促すので、需要に波があるのが特徴で、会員限定型に比べると収益が安定しません。
フリーミアムを活用したビジネスモデル事例
実際にフリーミアムを活用したビジネスモデルを紹介します。あまりにも生活に密着し一般化しているため、無意識のうちに活用していたというケースも多いのではないでしょうか。改めて見直してみると新たなビジネスのヒントが見つかるかもしれません。
YouTube
まずは世界中で愛されている動画SNS、YouTubeです。YouTubeはだれでも無料かつ無制限に楽しむことができるサービスです。その利便性の高さは、世界中に何十億というユーザーを獲得したのも納得だといえます。
YouTubeのフリーミアムにおけるビジネスモデルは、機能制限型と会員限定型、都度課金型がミックスされたものです。
広告を表示させない機能を解放する「YouTube Premium」はサブスクリプションなので、機能制限型かつ会員限定型ですし、スーパーチャット(投げ銭)はその利益の一部がYouTubeの手数料となるため、都度課金の一種だといえます。
お金を払ってでも快適に使いたいユーザーと、広告を見るのが気にならないユーザーの両方を満足させられるシステムが成り立つのは、フリーミアム戦略で多くのユーザーを抱えているからかもしれません。
オンラインゲーム
オンラインゲームは都度課金型や会員限定型モデルの代表といってもよいでしょう。だれでも無料でアプリをダウンロードして遊ぶことができますが、特定のキャラクターやアイテムを入手するために「ガチャ」と呼ばれる有料のくじ引きを買う必要があります。
代表的なタイトルとしては、「モンスターストライク」や「ウマ娘 プリティダービー」、「パズル&ドラゴンズ」、「ドラクエウォーク」、「Fate/Grand Order」などがあげられます。
もちろん無課金でもほぼ全ての機能を使えますが、愛着のあるキャラクターやゲーム攻略を有利にするアイテムは、ユーザーであれば欲しくなるものです。強い射幸性があり、一時期は社会問題にもなるくらいでした。
またガチャのないオンラインゲームでも、月額課金制の「ファイナルファンタジーXIV」、追加スキン(アバターの衣装など)を購入できる「エーペックスレジェンズ」や「フォートナイト」といった人気ゲームは多いです。
ゲームのタイトルによって導入されている収益モデルの種類は異なりますが、インターネット接続が前提となるゲームの多くにフリーミアムが採用されています。
各種Webツール
Webツールの多くもフリーミアムを採用しています。テレワークの一般化で広く知られるようになったZoomがその代表です。基本的にはだれでも無料で使えますが、多人数のグループミーティングを行う際には時間制限があります。
しかしプランをプロやビジネスなどに切り替えることで、参加可能人数が300人まで増えたり、時間制限がなくなったり、クラウド上に会議の動画データを残しておけるようになったりとさまざまな機能が追加されます。
また動画編集サイトCanvaも会員限定型フリーミアムで、課金することで多くの素材が使えるようになったり、背景切り抜き機能が解放されたりします。
ZoomやCanvaに限らず、ちょっと使う分には無料で十分事足りるけれど、ビジネス用途にすると無料で使える範囲の機能では物足りない、というサービスは多いものです。
Webテレビ
Webテレビは機能制限型のフリーミアムの代表的な事例だといえます。ABEMAはだれでも無料で見られますが、サブスクリプションのABEMAプレミアムに加入することで、広告が表示されなくなったり、見逃した番組をいつでも見られるようになったり、新作映画のレンタルが割引になったりと多くの特典が得られます。
まずは無料で視聴者をあつめてファンを育て、利便性をさらに享受したいユーザーに課金を促しているのです。ABEMAプレミアムは初回限定で2週間の無料おためし期間を設けており、より課金へのハードルを下げているといえるでしょう。
フリーミアムを活用した戦略の立て方
最後に、自社でフリーミアムを取り入れた戦略を立てる際に注意すべき点について紹介します。
成功例をあげればきりがないフリーミアムですが、万能ではありません。入り口が無料であり、課金してもらうまで時間がかかるので、資金に余裕がないと運営が難しいという面があります。
特に試供品を作る必要があったり、人件費が多くかかったりする事業でフリーミアムを実現させるには、コストがかさむので黒字化するまで耐えるのが困難です。
また、無料ユーザーの中から有料ユーザーを獲得する都合上、無料ユーザー数に対して有料ユーザー数の割合が小さくても成り立つ事業でなければいけません。このようなバランスを達成するには、サービス展開後も多くの人やモノを動かす事業よりも、開発時にコストがかかってもその後提供コストはそれほどかからないデジタルの分野のほうが向いているといえます。
そして何よりも大事なのは、フリーミアムありきで事業に取り入れるのではなく自社事業とフリーミアムの親和性を検討することです。
フリーミアムはその仕組み上、初期投資ゼロで行える戦略ではありません。最初に投資を行いサービスや商品を作り、無料で試してもらうことで認知を得て、そこからようやく課金してもらえるフェーズに移行できます。
そのため事業の継続的な運営が大前提となるビジネスモデルです。長期的な視点を持って取り組みましょう。
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