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フルファネル

フルファネルマーケティングとは?カスタマージャーニーとの違いも解説

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現在のマーケティングにおいては、顧客の「属性」や「行動履歴」などのデータを活用することがスタンダードになっています。

企業はアクセス解析などを通じて多様な指標を得られる一方、「その数字が何を表しているのか」を見きわめにくい面もあるでしょう。マーケティング効率を高めるためには、それぞれの指標を「実際の消費行動」と結びつけながら理解することが必要です。

消費者の購買プロセスを包括的に把握し、マーケティングの全体像を見通すうえで、有効な手法の1つに「フルファネルマーケティング」があります。この記事では、フルファネルマーケティングの概要や、カスタマージャーニーとの違いをふまえ、実践時のポイントについて解説していきます。

フルファネルマーケティングとは

打ち合わせ

フルファネルマーケティングとは、認知から購買、さらにはリピートに至るまで、消費者の購買プロセスを包括的に捉えながら、ステージに応じて戦略を最適化する考え方です。

「ファネル(funnel)」とは日本語で「じょうご」を意味する言葉であり、マーケティングにおいては「マーケティングファネル」という逆三角形のモデルによって、購買プロセスを図式化する手法が頻用されています。つまり、大きなじょうごを「購買プロセスの全体」として捉え、それを各段階に区分していくのです。

ファネル

フルファネルマーケティングは、このじょうごの全体にわたってマーケティング戦略を最適化していくための観点です。「消費行動の全体像」に照らしながら現状の課題を浮き彫りにすることで、特定の段階における機会損失を防ぎ、見込み客の獲得からリピートまでシームレスな戦略を展開することを目的としています。

ファネルを構成する各フェーズ

フルファネルマーケティングにおいては、購買プロセスをいくつかの段階に区分していくことになりますが、「全体をどう区切るか」はビジネスモデルやマーケティングの目的によって異なります。

汎用性の高いファネルとしては、クラシックな消費者の購買モデルである「AIDA(アイダ)」をもとにした構図が挙げられるでしょう。AIDAは購買プロセスを「注意(Attention)」「興味(Interest)」「欲求(Desire)」「行動(Action)」の4つに区分する考え方であり、マーケティングファネルにおいてはしばしば「認知」「興味」「検討」「購入」というフェーズに置き換えられます。

以下では基本となるこの4つのフェーズについて、概要を解説します。

認知

顧客が自社の商品・サービスのことを知る段階です。かつてはテレビCMや新聞広告などのマスメディアや、駅のポスターなどが認知のきっかけとなるケースが多く、主流の広告媒体として活用されていました。

現在ではWeb上での検索行動や、SNS上の投稿、動画投稿サイトの閲覧などを通じて商品・サービスを知るケースも増えたことから、マーケティングにおけるWeb広告の比重が大きくなっています。

興味

商品を認知し、「これは自分に役立つかもしれない」と消費者が関心を抱く段階です。現在ではユーザーのWeb行動をめぐるビッグデータが広告施策に活用されるようになり、個々人の趣味や関心、生活上のニーズや悩みにあわせて的確にアプローチできる場面も増えています。

検討

興味を抱いた商品・サービスについて、より詳しく知り、競合サービスなどと比較しながら購入を検討する段階です。

検討にかける時間は消費者や商品特性によってさまざまであり、検討しはじめてから意思決定をするまでに一定の期間を要するケースもあるでしょう。とくにECサイトなどでは「気になった商品をとりあえずお気に入り登録し、そのまま忘れてしまう」という場面も多く、機会損失を防ぐうえでは再度興味を抱いてもらうための施策が求められます。

消費者の興味を再び喚起するうえで有効な手段としては、自社サイトを訪問したユーザーに対して関連した内容の広告を表示する「リターゲティング広告」が挙げられます。これについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご参照ください。

購入

消費者が商品・サービスについて知ったうえで、「これは自分にとって役に立つ」と納得し、購入に移る段階です。ただし購入を決めたとしても、ECサイトなどで「買い物カゴに入れたまま忘れてしまう」といったケースもあるため、在庫やセール期間のリマインドなど機会損失を防ぐ工夫が求められるでしょう。

なお、「買い物カゴに商品が入ったまま放置されている状況」に対するアプローチとして、「カゴ落ちメール」と呼ばれるメッセージを送る方法があります。その概要やテンプレートを以下の記事にて紹介していますので、こちらもあわせてご参照ください。

フルファネルマーケティングとカスタマージャーニーの違い

マーケティング

フルファネルマーケティングは、消費者の購買プロセスをフェーズごとに把握する考え方であり、この点で「カスタマージャーニー」と共通する部分があります。

カスタマージャーニーとは購買プロセスを「旅」として捉える方法論として普及しており、消費者の心理的・行動的な変化を分析することで、顧客体験を向上させることを目的としています。

両者の違いは厳密に定義されていませんが、区別のポイントとしては「分析の力点の違い」が挙げられるでしょう。

フルファネルマーケティングにおいては、基本的に購買プロセスを「マクロな視点」から捉えます。「どのような要素から全体が組み上がっているのか」を見据えながら、「それぞれの要素においてどのような施策が必要か」を見通す際に有効な観点です。

一方、カスタマージャーニーはミクロな「消費者目線」の体験に重きを置いています。「消費者がどのようなものを見て、どのように悩み、どうやって購入を決めるのか」という内的な変化を追うことが特徴です。

両者はいずれも「消費者の購買プロセス」を分解することで、アプローチ方法を最適化することを目的としていますが、その際の着眼点によって区別できるでしょう。

なお、カスタマージャーニーの詳しい内容や、マーケティングにおける具体的な活用方法については以下の記事で解説しております。あわせてご参照ください。

フルファネルマーケティングは古いのか

先述のように、マーケティングファネルはAIDAのモデルをベースに描かれるケースが多く見られます。ただしこのAIDAは、アメリカ合衆国で提唱されてから1世紀以上が経っており、インターネットはもちろんテレビも普及していない時代の方法論です。

こうした背景もあり、マーケティングファネルによる購買プロセスの描出を「古い」と考える向きもあるでしょう。実際に、AIDAのモデルはAIDMA(アイドマ)、AISAS(アイサス)というように、時代の変化にあわせてアップデートが加えられ、新たなモデルが続々と登場しています。

一方で、「消費者の購買プロセスを区分しつつ、全体像として捉える」というマーケティングファネルの考え方そのものは、現在でも十分に示唆を与えてくれるはずです。重要なのは、現在の広告をめぐる環境や消費モデルの変化をふまえ、マーケティングファネルの区切り方を工夫していくことだと考えられます。

たとえば購買プロセスを「注意(Attention)」「興味(Interest)」「検索(Search)」「行動(Action)」「共有(Share)」の5つに区分するAISASに従って、マーケティングファネルを「認知」「興味」「検索」「購買」「共有」などと区分することも可能です。こうした観点を導入することで、ユーザーの検索行動や、購買後におけるSNSへの投稿など、現在的な角度から分析できるようになるでしょう。

フルファネルマーケティングのポイント

MTG

フルファネルマーケティングは状況によって必要なフローや観点が大きく異なることから、固定的な枠組みに従って実践することが難しく、自社のビジネスモデルに応じて分析の切り口を変えていく必要があります。

マーケティングを実践する際には、以下のようなポイントに留意しながら、購買プロセスの「部分と全体」を適切に関連づけていくことが求められるでしょう。

ファネルを適切に区分する

先述のように、「ファネルをどのように区分するか」はマーケティングの方針や目的によって異なります。まずは「顧客との接点をどのように作り、どうやってそれを深めていくか」という基本方針に照らし、購買プロセスのモデルを構築することが大切です。

先の「認知」「興味」「検討」「購買」という基本的な区分のほか、AISASをベースにした「検索」「共有」の観点や、その他コアな顧客を獲得するためのロイヤルティ構築の観点など、自社の特性や目的にあわせてファネルを区分していきましょう。

とくにファッションや美容などのビジュアルが重要な商品や、飲食店などWeb上の口コミが消費者の意思決定に大きな影響を及ぼすサービスにおいては、「消費者自身による情報発信」の面にも注意を向けたいところです。

段階に応じたアプローチ方法を練る

区分したフェーズごとに、「消費者が次の段階に進むにはどうしたらよいか」を検討し、アプローチ方法を見定めていきましょう。

たとえば「まず認知を高めるためにSNS広告を展開しよう」という場合でも、商品・サービスの特性やターゲットによって選ぶべきプラットフォームは異なります。ターゲット層がどのように情報を収集しているのか、興味を惹かれるポイントは何なのかなど、購買プロセスを丁寧に分解しながら検証することが求められるでしょう。

段階ごとに課題を整理する

フルファネルマーケティングの利点は、段階ごとに状況を分析することで、「どこで何がうまくいっていないのか」を明確にできる点にあります。マーケティングの実践段階においては、さまざまな解析データを雑然と扱うのではなく、段階ごとに指標を整理することで問題点が見えやすくなるでしょう。

たとえばSNS上で出稿している広告の費用対効果が低い状況において、「インプレッション数は稼げているが、クリック率が低い」という場合には、認知から興味への移行段階で大きな機会損失が生じていると考えられます。ここから、「ターゲティングが適切か」「クリエイティブに問題はないか」など、細かな原因を探っていくことが求められるでしょう。

あるいは「ECサイトの商品ページまではたどり着いているが、コンバージョンにつながっていない」といった場合には、検討段階ないし購入段階に課題があると推察されます。「商品の訴求方法が適切か」「ストレスなく購入手続きを済ませられる環境になっているか」というように、アクセス解析などを通じて具体的なボトルネックを突き止めていきましょう。

各段階がKPIに与える影響を把握する

フルファネルマーケティングは、段階ごとの課題を抽出するだけではなく、購買プロセスを統合的に把握し、全体の状況を見通すことを目的としています。プロセスの全体像を捉えるには、「マーケティングにおける重要指標に対して、それぞれの段階がどのように影響しているのか」を把握することが重要です。

そのような統合的な視点を獲得するには、効果測定を繰り返しながら「それぞれの段階における指標の変化が、全体としてのKPIに対してどのような影響を与えるのか」を理解していくことが求められます。

たとえば「クリック率の変化によってどれだけ売上が変わるのか」など、部分と全体の関係を把握することで、マーケティング戦略において力点を置くべきポイントが見えてくるでしょう。

このように、フルファネルマーケティングは長期的な戦略と継続的なモニタリングによって大きな効果を発揮します。広告運用にあたってPDCAサイクルを回していくなかで、逐一「部分と全体」の関係を捉えなおすことで、大局的な視点から改善策を導き出していけると考えられます。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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