グループウェアとは?無料ツールも含めた5選・徹底比較!
リモートワークやフレックス勤務をはじめ、多様な働き方が社会的に推進されている現在、情報共有のシステムを整備することの重要性が高まっています。コロナウイルス感染拡大の影響もあり、「オフィスでの定時勤務」が当たり前のものではなくなりつつある状況において、情報伝達における「すれ違い」を予防することが企業にとって一つの課題となるでしょう。
そのような背景もあり、多くの企業から注目を集めているのが「グループウェア」というサービスです。さまざまな事業者から多種多様な形態の情報共有ツールがリリースされている昨今、「自社にとって適切なツールを選択できるかどうか」が組織のパフォーマンスを左右するといっても過言ではありません。
この記事では、社内における情報共有を円滑にし、業務効率を向上させうる「グループウェア」の概要について解説したうえで、実際に5つのサービスを比較し、メリットやデメリットについて解説していきます。無料で導入・運用が可能なツールも含め、それぞれのコストパフォーマンスや特性について深掘りしていきますので、「導入を考えているけど、コストが心配」という方も是非ご覧ください。
目次
グループウェアとは
グループウェアとは、ネットワーク技術によって組織内での情報共有を円滑にし、業務効率を高めるためのツールを指します。サービス事業者やプラン内容によって利用できる機能は異なりますが、ビジネス上の連絡・共有作業に関わる複数のアプリケーションがパッケージングされたサービスであることがほとんどです。
多くのグループウェアに共通する機能として、社内メールやチャット、掲示板といった連絡用アプリケーション、ファイルやスケジュールなどを共有するためのアプリケーション、プロジェクトやタスクの進行を管理するためのアプリケーションなどが挙げられます。
「チャット」「メール」「スケジュール」「ToDo」といったアプリケーションを別々に用意するのではなく、総合的な窓口に一元化することで、組織内における連絡や共有の方法を統一し、業務を効率化することを目的としています。
グループウェアの種類
導入の形態に応じて、グループウェアは大きく3つの種類に分けることができます。「ソフトウェアの開発やサーバーの維持にどれくらいコストやリソースを割けるか」によって、選択すべきタイプが異なります。
オンプレミス型
「オンプレミス」は自社内でサーバーやソフトウェアを構築・管理していく形態を表す言葉です。「オンプレミス型のグループウェア」には概ね2つのケースが考えられ、「自社サーバー上に事業者のグループウェアをインストールする」「自社サーバー上で自社開発のグループウェアを運用する」のどちらかを指します。
いずれの場合においても、後述するクラウド型に比べるとコストやリソースを必要とする傾向にあるため、主に「既存のサービスでは自社に適した環境を構築できない」というケースにおいて選択されることが多いでしょう。
クラウド型
サービス事業者のサーバー上に用意されたアプリケーションをそのまま利用する形態です。自社でサーバーを維持する必要がなく、またアプリケーションを開発する必要もないため、もっともメジャーな導入方法といえるでしょう。
Gmailなどのように、登録や契約に時間をかけずに利用できるのも特徴です。手軽に導入効果を得られるメリットがある一方で、既存のプラットフォームを利用することになるため、特殊な業務フローや共有システムが必要な組織には上手くマッチしない可能性も考えられます。
オープンソース型
一般的なアプリケーションはソースコードを非公開としており、書き替える権限を持つのは開発者のみですが、オープンソース型は公開されているため、誰でも自由に書き替えることができます。
要するに、グループウェアとしての基本的な機能を備えながら、必要に応じてコードを書き替え、カスタマイズすることができるものを指します。
自由度の高さが魅力ですが、カスタマイズの内容に応じた知識と技術が必要であるため、あらかじめ「どの程度の変更が必要か」を見定め、「自社のリソースで対応できるか」を検討しておくことが重要です。
グループウェア5種類の特徴、導入方法、メリット・デメリット等の比較
ここでは具体的に、5種類のグループウェアについて、その特徴やメリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。導入事例の多いもの、無料で運用できるもの、特定の機能に特化したものなど、それぞれの機能や特性をご確認ください。
Google Workspace(旧:G Suite)
Googleの提供するクラウド型グループウェア「G Suite(ジー・スイート)」は、2020年10月にサービス名称を「Google Workspace(グーグル・ワークスペース)」へと変更しました。基本的にはG Suiteの機能をそのまま引き継ぎながら、料金プランに小規模の変更をしたという形です。
利用できるのはGmailやGoogleカレンダー、Googleドライブをはじめとするクラウド型アプリケーションであり、これらを組織内で円滑に運用できるよう、管理者による権限設定ができるなどセキュリティ機能も充実しています。
主要機能
- メール、チャット
- ビデオ会議
- カレンダー
- ファイル共有
- 書類作成(ドキュメント、スプレッドシート、スライド)
- フォーム作成
- サイト作成
- メモ、ToDo
- Apps Script(ローコードプラットフォーム)
メリット
グループウェアとしてのGoogle Workspaceの導入メリットは、アプリケーションの汎用性の高さとインフラ面での安定性です。
GmailやGoogleドライブ、スプレッドシートといったアプリケーションは個人での利用率も高く、PC作業に慣れた従業員が多い職場であれば、導入の際に利用方法について大がかりな研修などを行わなくともスムーズに移行できると考えられます。
GoogleのITインフラを利用することは、多くの企業にとって自社でサーバーを運用するよりもセキュリティや信頼性といった面で安心できるものであり、「シェア率の高いアプリケーションを安定した地盤で利用できる」というのがGoogle Workspaceを選ぶ一つの要因となりうるでしょう。
デメリット
Google Workspaceのデメリットは、自社に最適化されたグループウェアとして運用するために一定の知識が要求される点です。Google Workspaceで提供されるアプリケーションは、ビジネスの場面以外も含めさまざまな形で活用されることを想定しているため、「企業向けグループウェア」として開発されたツールと比べると、「どの機能を何の業務に使えばいいのか」がわかりにくい傾向にあります。
豊富な機能を生かすためには知識と工夫が必要であり、ドライブやスプレッドシートなどGoogleアプリの運用に慣れていない従業員が多い職場では、コストに対して十分なリターンを得られないケースも考えられるでしょう。
導入方法
Google Workspaceのページからプランを選択のうえ登録
料金体系
- Business Starter…月額680円/1ユーザー、ストレージ容量30GB/1ユーザー
- Business Standard…月額1,360円/1ユーザー、ストレージ容量2TB/1ユーザー
- Business Plus…月額2,040円/1ユーザー、ストレージ容量5TB/1ユーザー
- Enterprise…要問い合わせ
利用例
Google Workspaceにおいて利用できるアプリケーションはそれぞれ拡張性が高く、使い方を工夫することで「ビジネス特化型」のグループウェア以上の機能を持たせることもできるでしょう。スプレッドシートでワークフローや顧客情報の管理をしたり、フォーム作成機能で出退勤管理をしたり、さらには期間ごとの売上データを自動的にグラフに落とし込んだりと、アイディア次第で自社に最適化されたグループウェアとして運用できる可能性があります。
また、ウェブ会議に対応しているグループウェアは多くないため、「会議は多いがリモートワークは推進したい」という企業にも適しています。
サイボウズ Office
中小企業をはじめ多くの導入実績を有する「サイボウズ Office」は、「誰でもかんたんに使える」ことをコンセプトに開発されたグループウェアです。2019年までの累計導入数は69,000社に上り、多様な業種における共有システムの構築に寄与しています。
クラウド型とオンプレミス型の二種類が用意されていますので、自社環境に合わせて選択が可能です。
主要機能
- メール、チャット、掲示板
- スケジュール
- ファイル共有
- ワークフロー
- 報告書
- プロジェクト管理
- ToDo
- 伝言メモ
- アドレス帳
- タイムカード
- カスタムアプリ(プレミアムコースのみ)
メリット
ビジネス向けのグループウェアとして、直感的に操作できるインターフェイスを備えているため、自然に使い方を理解することができます。スマートフォン用のアプリも提供しており、場所を問わずにワークフローをリアルタイムに共有できる点が強みです。
さらにサイボウズOfficeが際立っているのは、プレミアムコースにおける「カスタムアプリ」の機能でしょう。在庫管理や顧客管理、申請書や契約書の管理など、多様な目的に合わせたテンプレートが存在し、そこから項目をカスタマイズしていくことで自社業務に必要な書式を簡単に作成することができます。
デメリット
ビジネス用グループウェアとして充実したツールが提供されており、多様な業種に広く適用できるプラットフォームですが、カスタマイズ性の面ではオープンソース型に及ばないため、「特殊な共有システムが必要」かつ「自社で環境構築が可能」といった企業には適さない可能性があります。「開発の専門家が社内におらず、グループウェアの基本的な機能を手軽に導入したい」というケースに適したサービスだといえるでしょう。
導入方法
料金体系
- クラウド型「スタンダードコース」…月額500円/1ユーザー、ストレージ容量5GB/1ユーザー、「カスタムアプリ」は使用不可
- クラウド型「プレミアムコース」…月額800円/1ユーザー、ストレージ容量5GB/1ユーザー、「カスタムアプリ」対応
- パッケージ版「スタンダードコース」…1年間ライセンス63,800円~、「カスタムアプリ」は使用不可
- パッケージ版「スタンダードコース」……1年間ライセンス82,800円~、「カスタムアプリ」対応
利用例
申請書類に対して承認状況が逐一確認できる「ワークフロー」の機能を使えば、外出先やテレワークの状態においても決済などの手続きをスピーディに進めることができます。
従業員のスケジュールを俯瞰することも容易であり、離れた場所にいながら一つのプロジェクトをスムーズに進めるための機能が充実しています。
GroupSession
GroupSession(グループセッション)は、無料でも運用が可能な、オープンソース型のグループウェアです。一般企業のほか教育機関や医療施設における導入事例も豊富であり、さまざまな組織における情報共有システムの整備に貢献しています。
主要機能
- メール、チャット、掲示板
- スケジュール
- ファイル共有
- ワークフロー(稟議)
- 施設予約
- アンケート
- プロジェクト、ToDo
- アドレス帳
- タイムカード、在籍管理、安否確認
- 日報、回覧板
メリット
無料プランでありながらユーザー数は無制限であり、かつメールやチャット、ファイル共有やToDo・スケジュール・施設予約機能、勤怠管理などグループウェアとしての機能をしっかり押さえている点がGroupSessionの魅力です。
オープンソース型のなかではインターフェイスが使いやすく、ポータル画面から違和感なくそれぞれの機能を利用することができます。さらに名簿の表示順を細かく設定できるなど、日本企業の慣習に合わせた作りとなっているのも使いやすいポイントです。
デメリット
モバイルでの利用はオプションとなっており、外出先からリアルタイムに情報共有を行うには有料プランを選択する必要があります。
また、無料版においてはインストールや初期設定、その後のアップデートなどを自身で行うことになりますので、導入・運用においてある程度の知識が要求されるでしょう。データベースへの接続設定やバックアップの設定など、無料版のインストールガイドを確認し、これを参照しながら運用が可能かどうかを検討しておくことが望まれます。
導入方法
- 無料版…GroupSessionのホームページ上から、使用許諾書に同意のうえダウンロード、ライセンス登録
- クラウド版有料プラン…「クラウド型GroupSession byCloud」のページからプランを選択し申し込み
料金体系
- 無料版…オープンソース型のため利用制限なし(想定ユーザー数は10~300)
- クラウド型「スマートプラン」…月額300円/1ユーザー、ストレージ容量2GB/1ユーザー、一部機能利用不可
- クラウド型「プレミアムプラン」…月額600円/1ユーザー、ストレージ容量3GB/1ユーザー、全機能対応
- 専用サーバープラン…年額1,110,000円~、規模や内容に応じて変動
利用例
一般的な連絡・共有機能に加え、施設予約や在籍管理、回覧板といった機能により、オフィス内の状況を把握することに適したグループウェアとなっています。無料版にはモバイル機能がないため、離れた場所からリアルタイムにワークフローを進めていくよりも、ある程度固定的な業務において確認・共有を円滑化する目的に適しているといえるでしょう。
GRIDY
「GRIDY(グリッディ)」は、顧客管理システムなどのビジネスツールを手掛ける「ナレッジスイート株式会社」の提供するクラウド型グループウェアです。
無料での運用も可能であり、グループウェアとして十分な機能を備えながら、権限管理の設定も容易に行えることを特徴としています。
主要機能
- メール、チャット、掲示板
- スケジュール
- ファイル共有
- ワークフロー
- 議事録
- 施設予約
- 備品管理
- プロジェクト、ToDo
- アドレス帳
- 電話メモ、メモパッド
- タイムカード
- レポート(日報、報告書)
メリット
無料で運用する場合にも、コミュニケーションやファイル共有、スケジュールやタスク管理など必要十分な機能を利用することができますが、GRIDYをパッケージの一部とする「Knowledge Suite API(ナレッジスイートAPI)」という総合アプリケーションとの連携も魅力の一つです。
Knowledge Suite APIは、グループウェアのほかSFA(営業支援)やCRM(顧客関係管理)のツールを含むパッケージであり、営業報告の作成・共有や顧客情報の管理、受発注の管理などをGRIDYグループウェアと連携させることができます。
デメリット
無料版においてはデータ容量が全体で1GBまでなので、画像データなどを含むファイルを頻繁にやり取りすることは難しいと考えられます。また、スマートフォン用アプリケーションを利用できないため、場所を問わずにリアルタイムな情報共有を行うことにも向いていないと考えられるでしょう。
無料版は実質的に「試用版」と考え、総合パッケージであるKnowledge Suite APIへの移行を前提に検討しておくのがよいかもしれません。
導入方法
- 無料版…GRIDY無料版のホームページ上からユーザー登録
- Knowledge Suite…ホームページ上の「無料トライアル」または「資料請求」から申し込み
料金体系
- 無料版…ユーザー数無制限、ストレージ容量1GBまで(全体)、スマートフォン用アプリなし
- Knowledge Suite(グループウェアのみ)…月額6,000円(全体)、ユーザー数無制限、ストレージ容量3GBまで(全体)、スマートフォン用アプリ対応
- Knowledge Suite(SFAスタンダード)…月額50,000円(全体)、ユーザー数無制限、ストレージ容量5GBまで(全体)、スマートフォン用アプリ対応、SFA・CRM機能
- Knowledge Suite(SFAプロフェッショナル)…月額80,000円(全体)、ユーザー数無制限、ストレージ容量50GBまで(全体)、スマートフォン用アプリ対応、SFA・CRM機能
利用例
Knowledge Suite APIを導入することで、SFAの機能やスマートフォン用アプリが利用可能になるため、移動中に商談内容の確認や営業報告の作成などタイムラグなく行うことができます。リアルタイムな情報共有の重要性が高い流動的な業務において、とくに大きな効果が期待できるでしょう。
iQube
iQube(アイキューブ)は「社内ノウハウの蓄積」に焦点を当てて開発されたクラウド型グループウェアです。メンバー10名までは無料で利用することができ、「社内wiki(ブログ機能)」など一定量の情報を整理して蓄積することに長じています。
主要機能
- メール(社内チャットなどの機能はなし)
- ファイル共有
- スケジュール
- 社内wiki(ブログ機能)
- 掲示板
- ToDo
- ワークフロー
- アンケート
- タイムカード
- レポート
- 電話メモ
メリット
メッセージやスケジュール管理といった基本的機能を備えながら、「社内wiki」という独自機能も有しているのがiQubeの特徴です。ブログのフォーマットを用いて共有事項や社内ルール、マニュアルなどを記事化・蓄積することで、属人化されていた業務を標準化し、業務効率を底上げすることが期待できるでしょう。
シンプルなインターフェイスのため扱いやすく、またキーワード検索やタグ検索といった検索機能も充実していることから、情報の出し入れをスムーズに行うことができます。
グループごとの閲覧権限の設定も容易であり、必要な範囲での情報共有が可能です。
デメリット
無料プランはストレージ容量が全体で30MBまでと少なく、無料で継続的に利用することは難しいと考えられます。有料プランは「スタンダード」と「プレミアム」の二種類ですが、「スタンダード」の場合には無料プランで使えていた「ファイル共有」や「ワークフロー」などの機能が利用できなくなるため注意が必要です。
また無料・有料を問わず、スマートフォン用のアプリは提供されていないため、スマートフォンからアクセスする際にはブラウザ上から行う必要があります。
社内チャットなどリアルタイムなコミュニケーション機能は付与されておらず、導入の際には他社のチャットアプリなどとの併用も検討するとよいかもしれません。
導入方法
ホームページ上から利用プランを選択し申し込み
料金体系
- 無料プラン…ユーザー10名まで、ストレージ容量30MB(全体)
- スタンダードプラン…月額400円/1ユーザー、ストレージ容量1GB/1ユーザー、一部機能利用不可
- プレミアムプラン…月額700円/1ユーザー、ストレージ容量1GB/1ユーザー、全機能対応
利用例
ノウハウの蓄積に特化したツールですので、業務においてマニュアル化できる部分を積極的に社内wikiに記事として残し、カテゴリごとにタグ付けを行うようにしておくと、必要な情報にスムーズにアクセスできるようになるでしょう。
まとめ
現在ではさまざまなニーズに合わせ、多様な特性を持ったグループウェアが登場しています。「価格が高ければ品質がいい」というわけではなく、「備わる機能が自社に適しているか」「機能を適切に使いこなせるか」ということが何より重要です。豊富な機能が揃っていても、それを十分活用できなければ、導入・運用コストに見合うリターンを得ることはできません。
社内連絡やファイル共有、スケジュール管理など、「シンプルな情報共有システムがあればいい」というケースでは、無料のグループウェアで必要十分という場合も多いでしょう。また「ノウハウの蓄積」など目的が明確なケースであれば、機能を絞ることでコストを抑えることが可能です。
現状の課題を見据え、「どのような機能が必要か」「どのレベルまで自社でカスタマイズや管理ができるか」といった観点を軸としながら、状況に合わせてグループウェアを選択していきましょう。
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