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ホテルの開業に必要な手続きや許認可・資金を解説!安定経営に必要な準備もわかる!

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ホテル開業を考えているものの、どのような手続きや許認可が必要なのか、イマイチ分からないという人も多いでしょう。そのほかにも、資金はどれくらい必要なのか、具体的な金額が気になっている人も少なくないはずです。

そこで、今回はホテル開業に向けて必要な知識や許認可・システム・資金などをまとめて紹介します。開業までの詳しい流れや、安定した経営を行うために必要なことも紹介するので、ホテル開業を考えた際の参考にしてみてください。

ホテル業界の現状と市場動向

2024年に観光庁が発表した宿泊旅行統計調査によると、宿泊者数は前年比の37.1%増加、外国人宿泊者はなんと613.5%も増加しています。コロナ禍前の2019年と比べても、宿泊者数は延べ3.6%も増加しています。

各都道府県別に見ても、宿泊者数は2019年より増加しているところが多いです。そのため、ホテル業界は今後もますます活気にあふれていくことが予想できるでしょう。

その一方で、ホテルで働く従業員が足りないなど、人手不足の問題もあります。せっかく多くの宿泊者が足を運んでくれても、従業員の数が足りなければ満足いく接客を提供することが難しくなるかもしれません。

ホテル業界の市場動向を見れば右肩上がりの数値とはなっているものの、開業時から計画的な事業計画をたてて進めていくことが大切です。

ホテル開業に向けたビジネスモデル

宿泊者の増加により、ホテルの需要は年々高まり続けています。しかし適切なビジネスモデルを選ばなければ、収益はあまり見込めず、あっという間に廃業へと追い込まれてしまうかもしれません。

需要が高まっている分新規開業するホテルも多いので、ビジネスモデル選びに失敗してしまえば、すぐに他社に差を付けられてしまいます。そのため、経営方針に合うかどうか、どんなリスクがあるのかをじっくり検討したうえでビジネスモデルを選ぶことが大切です。

ここではホテル開業に向けて、どのようなビジネスモデルがあるのか、具体的に4つ紹介します。

所有直営方式

所有直営方式は、ホテルのオーナーが土地と建物を所有し、自らホテルを運営する方式です。次のようなメリットが存在します。

【所有直営方式のメリット】

  • 経営方針などの自由度が高く決定が早い
  • 収益を独占でき、高い収益性が期待できる
  • 顧客との関係を構築しやすい

所有直営方式では、オーナーや所有者が経営方針・サービス内容などに対し、すべての決定権を持っています。

ホテルのコンセプトまですべて独自に決められますし、意思決定までのスピードも早いなど、自由度の高い経営が可能で、日本で一番一般的なビジネスモデルです。

また、収益も全て独占できるというメリットも存在します。顧客の要望を直接聞き経営に反映させることもできるため、関係構築もしやすいでしょう。その一方で、次のようなデメリットも存在します。

【所有直営方式のデメリット】

  • 多額の初期投資が必要
  • 経営に専門知識やノウハウが求められる
  • 景気や市場に影響されやすく、リスクが高い

所有直営方式では、多額の初期投資が必要となります。自分で経営しなければいけないため、経営ノウハウや専門知識もなくてはなりません。また、景気や市場の影響を受けやすく、リスクが高い点も考慮が必要です。

国内だと帝国ホテルやプリンスホテルで採用されています。帝国ホテルはブランド力の高さで知られており、日本国内では初めてランドリーサービスやホテルウェディングを提供したホテルです。

自由度が高いからこそ、オーナーの判断で、さまざまな挑戦ができることがわかります。

管理運営受託方式

管理受託方式は、ホテルの土地と建物を所有するオーナーに、運営を委託されるビジネスモデルのことです。次のようなメリットが存在します。

【管理受託方式のメリット】

  • 事業拡大の機会が多くなる
  • 低コストで運営でき安定した収入も期待
  • 各々の専門知識や経験を活かしやすい

管理受託方式では、委託される側が次々にホテルを追加し、事業拡大を狙うことができます。また初期投資が少ないため低コストで運営が可能ですし、契約に基づいて安定した収入も得られるというメリットがあります。

そして所有者と運営者が分けられるので、それぞれの専門知識や経験を活かした業務ができるという特徴もあります。

その一方で、次のようなデメリットも存在しています。

【管理受託方式のデメリット】

  • ホテル運営の責任追及を受ける可能性がある
  • 運営に必要な一部のコスト負担は必要
  • 意思決定に時間がかかりやすい

管理受託方式の場合、ホテル運営の全責任は委託される側に発生します。万が一運営の中で業績悪化などが生じてしまえば、責任追及を受けることとなるでしょう。また低コストで始められるとはいえ、人件費や設備の管理費などは必要になります。

そして意思決定にはオーナーを通さなければいけないため、意思決定に時間がかかりやすく、自由な経営はしにくいというデメリットも挙げられます。円滑なコミュニケーションを進めることが重要です。

国内では星野リゾートや、オークラホテルズ&リゾーツが管理受託方式を採用しています。

中でも星野リゾートは「地域の風土や文化をお客さまに体験させる」というコンセプトはそのままに、所有と運営を分離させ効率的な経営を行うことで、大きな収益をあげています。

賃貸契約方式

賃貸契約方式は、施設や設備を所有者から借り受け、運営していくビジネスモデルです。

主に次のようなメリットがあります。

【賃貸契約方式のメリット】

  • 大きな利益を手に入れられる
  • 自由な経営ができる
  • 市場の変化に柔軟に対応しやすい

賃貸契約方式は、オーナーからホテルを一定期間借りている間、収益の全てを手に入れることができます。成功した場合の利益率が非常に高いのが特徴です。

また経営も賃貸契約内であれば自由に行えるので、意思決定に時間がかかりにくいですし、その結果市場の変化に柔軟に対応できるというメリットがあります。

その一方で、次のようなデメリットもあります。

【賃貸契約方式のデメリット】

  • 売上に関わらず賃貸料が発生する
  • 契約期間の制限がある
  • 設備の維持費などコストがかかる

賃貸契約方式では、たとえ売り上げが低迷したとしても、毎月一定の賃貸料をオーナーに払う必要があります。コロナ禍などでホテル・観光業界の需要が低迷した場合、大きな打撃を受けやすいのが特徴です。

さらに契約期間が決められているので、それまでは借り続けなければいけないと言うデメリットもあります。

国内では東横インやホテルルートインが賃貸契約方式を取り入れています。土地のオーナーが東横インの規格に合わせたホテルを建設し、東横イン側が30年間の一括借り上げ方式で借り上げを行っているのが特徴です。

そして初期費用を抑え、設計やデザインを規格化し、設備もすべて統一しているため、徹底したコストダウン・経費削減が可能になっています。その結果、リーズナブルな費用でホテルを提供することができています。

フランチャイズ方式

フランチャイズ方式とは、ホテルチェーン企業に加盟し、ホテルを開業・運営するビジネスモデルです。フランチャイズ方式には次のようなメリットがあります。

【フランチャイズ方式のメリット】

  • 経営知識がなくても運営しやすい
  • 集客が最初から安定しやすい

フランチャイズ方式は、もともとの企業の経営方針やシステムを使って運営を行うため、経営知識がなくても運営しやすいというメリットがあります。企業側がノウハウを教えてくれることもありますし、経営サポートも受けやすいです。

最初から企業のブランド力があるので、集客も安定しやすいでしょう。

その一方で次のようなデメリットもあります。

【フランチャイズ方式のデメリット】

  • 自分好みの経営はしづらい
  • 売上に関わらず加盟金などが発生する

フランチャイズ方式は最初から経営方針やシステムが決まっており、企業側の意向に沿った経営をしなければいけません。そのため自分好みの自由な経営はしづらいです。

そして売上が低かったとしても、企業側に加盟金などを払う必要があります。売り上げが低迷した場合の打撃は大きくなると覚えておきましょう。

国内では、アパホテルやスーパーホテルがフランチャイズ形式を採用しています。そのうちアパホテルは既存ホテルを積極的にリニューアルするなど、加盟しているホテルへの投資を積極的に行っているため、客足が長く続きやすいのが特徴です。

ホテルの種類と特徴

ホテルにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴も異なります。種類によって利用客のニーズも異なりますし、建設する場所の立地や、求められる要素も変わってくるのが特徴です。

どんなホテルを運営したいかを考えるのはもちろん、予算や収益のことも考え、ホテルの種類を選ぶことが大切です。

ホテルの種類は、大きく分けて次の4つがあります。

  • ビジネスホテル
  • シティホテル
  • リゾートホテル
  • カプセルホテル

ここでは、それぞれの種類と特徴について紹介します。

ビジネスホテル

ビジネスホテルは、ビジネスマン向けに出張時の滞在場所として使われることを前提に、作られているホテルです。駅前や繁華街など、ビジネスシーンで使いやすく、交通の便が良い場所に建設されています。

ビジネスホテルは宿泊機能のみに特化されており、それ以外のサービスやアメニティなどは必要最低限に抑えられているのが特徴です。その結果、宿泊費がリーズナブルに抑えやすくなっています。

たとえばドーミーインやアパホテル、東横インなどがビジネスホテルに分類されます。

シティホテル

シティホテルは、都会で快適に過ごせることを目的にしたホテルで、観光やレジャーなどさまざまな目的での利用が想定されています。ビジネスマンだけではなく友人同士、家族連れ、カップルなどの利用を想定しているので、客室の種類も豊富です。

そのためビジネスホテルとは異なり、レストランやバー、プール、ジム、エステなどさまざまなテナントが入っています。宴会場や結婚式場を兼ね備えているシティホテルもあります。

たとえば、ザ・プリンスパークタワー東京や、ザ・リッツ・カールトン大阪、ヒルトン東京お台場などはシティホテルです。

リゾートホテル

リゾートホテルは、休暇・レジャーでの滞在を目的にしている利用客をターゲットに作られたホテルです。観光地にあり、ホテル内にはレストランや結婚式場、プールなどの施設のほか、温泉やゴルフ場なども用意されています。

近隣の観光地を回りたいときの観光拠点というより、ホテルに宿泊すること自体が目的になることも多いです。

例を挙げると、星野リゾートやシェラトン・グランデ・オーシャンリゾート、ホテルモントレ沖縄スパ&リゾートなどがリゾートホテルとなっています。

カプセルホテル

カプセルホテルは、カプセル型になっている簡易ベッドを提供しているホテルのことで、リーズナブルな価格で宿泊できるのが特徴です。

宿泊フロア内に複数のカプセル型客室が設置されており、1つの客室を複数の人で使用する、簡易宿泊所営業という形態に当てはまります。

館内には共有のシャワールームや大浴場、食事スペースなどが用意されていますが、宿泊のみに特化しているケースがほとんどです。最近では女性専用のカプセルホテルなども増えてきました。

東京都内だと新宿区役所前カプセルホテル、カプセル&サウナ 池袋プラザ、ファーストキャビン(FIRST CABIN)秋葉原 昭和通りなどがカプセルホテルとしてあげられます。

ホテルの開業に必要な許可証と旅館業の種別

ホテルを開業する際は、必ず国からの許可を得る必要があります。必要な許可証の種類は、旅館業法において、営業施設の種類ごとに定められています。

許可を受けるためには、地方自治体に申し込み書類を提出しなければいけません。規定を見たいしていれば2週間ほどで許可がおりますが、自治体によって期間に差があるので、早めに許可を取っておくようにしましょう。

ここではホテルの開業に必要な許可証と、旅館業の種別を紹介します。

参照元:旅館業法

旅館・ホテル営業

施設を用意し、宿泊料を得て、人を宿泊させる営業を行う場合は「旅館・ホテル営業」の許可を得なければいけません。ただし簡易宿所営業、下宿営業以外の場合に限ります。

旅館・ホテル営業では、次のような規定が設けられています。

  • フロントが必要
  • 1室7㎡以上で寝台有の場合は9㎡以上
  • 住専地域での実施は原則として×

他にも細かな規定はありますが、主に上記の規定を満たさなければ、旅館・ホテル営業の許可はおりないので、覚えておきましょう。

簡易宿所営業

宿泊場所を複数の人で共有する構造・設備が主となっている施設で、宿泊料をもらい、人を泊める場合には、簡易宿所営業の許可が必要です。なお、下宿営業以外のものを指します。

カプセルホテルやゲストハウスは簡易宿所営業に当てはまります。

簡易宿所営業では、次のような規定が設けられています。

  • フロントは不要
  • 1室33㎡以上で10人未満の場合は3.3㎡×人数以上
  • 住専地域での実施は原則として不可

主に上記のような規定を満たす必要があります。

下宿営業

1カ月以上の期間を単位とした宿泊料をもらい、人を泊める営業方法は、下宿営業に該当します。同じ人を長くホテルに滞在させる場合に必要な許可です。

ただし、すでに旅館・ホテル営業や簡易宿所営業の許可を持っている場合は、下宿営業の許可を新たに取得する必要はありません。

下宿営業には次のような規定が定められています。

  • フロントは不要
  • 面積基準は無し
  • 住専地域での実施も可能

このように、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業に比べると規定が緩く、許可は取りやすいでしょう。

ホテルの設備により必要になる開業時の許可証

ホテルを開業するためには、営業施設ごとの許可証が必須です。それ以外にも、ホテルの設備によっては、開業時にほかの許可証も取得しなければいけません。

例えば次のような許可証が必要です。

  • 飲食店業許可
  • 酒類販売業許可
  • 公衆浴場営業許可

これらの許可を得なければ、ホテルを開業することはできません。もちろん該当する設備を作らない場合には、許可証の取得は不要です。

ここでは、どのような設備を作る際にこれらの許可証が必要になるのか、具体的に紹介します。

飲食店業許可

ホテルで朝食や夕食など、食事や飲み物を提供する場合には「飲食店業許可」が必須となります。飲食店業許可は、講習を受講し、「食品衛生責任者」の資格を1ホテル内で最低でも1人以上取得したうえで、保健所の検査を受けると取得できます。

ホテルを複数管理する場合は、そのホテルの数だけ食品衛生責任者が必要になります。なお調理師や栄養士の資格を持っている場合は、講習を受講しなくても、食品衛生責任者の取得が可能です。

食事を提供する場合には必ず必要になる許可証なので、忘れずに取得するようにしましょう。

酒類販売業許可

宿泊客以外も立ち入れるような土産屋などでお酒を販売する場合には、酒類販売業許可が必要となります。地元の銘酒等を販売しようと考えているなら、必ず取得しなければいけません。

ただしレストラン内などでお酒を提供するだけなら、酒類販売業許可は必要ありません。また、宿泊客しか立ち入ることのできないスペースに、お酒の自動販売機を設置するというケースでも、許可証は必要ありません。

販売場所によって、酒類販売業許可の必要有無が変わってきます。

公衆浴場営業許可

ホテルにおいて、日帰り入浴のサービスを行う場合など、宿泊客以外にも大浴場を提供する際は公衆浴場営業許可が必要となります。

宿泊客しか利用できないのなら、公衆浴場営業許可は必要ありません。しかし大浴場を作る際は、公衆浴場営業許可の基準に合わせて作る必要があります。

公衆浴場営業許可の取得には、都道府県ごとに定められた換気・採光・照明・衛生・風紀などの基準をすべて満たさなければいけません。各自治体によって細かな規定が変わってくるので、事前にしっかり調べるようにしましょう。

ホテルの開業に必要なシステム

ホテルを開業する際に、効率的でスムーズな運営を行いたいと考えているのなら、ITシステムの導入は必須と言っても過言ではありません。

システムを利用することで効率的な運営が可能になり、利益率のアップにつながるのはもちろん、得られたデータを経営戦略に利用し、サービス改善や売り上げの向上を目指すこともできます。

必要なシステムとしては、以下の3つが挙げられます。

  • OTA
  • サイトコントローラー
  • ホテルPMA

ここでは上記3つのシステムについて、具体的な特徴を紹介します。

OTA

オンライン上のみにある旅行代理店を、OTA(Online Travel Agent)といいます。たとえばじゃらん、楽天トラベル、Booking.com、Agodaなどがあります。JTBやHISは実店舗を持っているため、OTAには分類されません。

OTAはホテルごとの料金が比較しやすく、キャンペーンを使って安く泊まることもできるなど、ユーザー側のメリットが非常に大きいです。海外からの宿泊客は、多くがOTAを利用してホテルの予約を行っているので、集客にもかなり役立ちます。

またOTAごとに客層が異なるため、複数のOTAに登録すれば、その分客層を広げることもできるでしょう。新規オープンのホテルもOTA経由で知名度が高まりやすくなるため、登録しておいて損はありません。

サイトコントローラー

サイトコントローラーとは、複数の予約サイトの情報をまとめて管理できるシステムのことです。予約状況のリアルタイム確認や、キャンセル処理などを自動で行うだけではなく、予約が重なってしまった場合のオーバーブッキングを防ぐことができます。

たとえばじゃらんで1室予約された場合、楽天トラベルから、その1室を削除することができます。これにより、予約が重複するリスクが抑えられるのです。複数のOTAに登録するなら、必ず利用しておきたいシステムとなっています。

代表的なシステムとしては、客室や顧客の管理機能もついている「Check Inn」や、株式会社リクルートと株式会社JTBが出資して作った「TLリンカーン」などがあります。

それぞれ機能や画面デザインなどが異なるので、システムごとの特徴を比較しながら選んでみましょう。

ホテルPMS

ホテルPMS(Property Management System)は、予約や精算、客室の空き状況、顧客情報などホテルの宿泊に必要な業務を、まとめて管理できるシステムのことです。フロント業務が効率化できるというメリットがあります。

また、客室の稼働率などの分析がしやすく、経営戦略を立てる際などにも役立ちます。さらに、顧客情報を分かりやすく管理できるので、顧客満足度も高めやすいという特徴があります。

たとえば以前宿泊された際に、アレルギー情報を共有してもらっていれば、次の宿泊に活かすことができます。顧客はホテルが自分を覚えてくれていた、という体験ができるので、満足度が高くなるのです。

ホテルPMSにはさまざまな種類があり、ビジネスホテル向けなら「aipass」、部屋数が多く結婚式も行うのなら「ホテルマネージャーシリーズ」、コスパの良さにこだわりたいのなら「Staysee」などがあげられます。

ホテルの開業に必要な資金

ホテルを開業する際は、初期費用として、少なくとも3,000万円以上の資金が必要になります。建物を建築する場合は、数千万以上~数億円規模の資金が必要です。内訳としては、次のような資金が必要になります。

  • 土地代・工事費
  • 資格の取得費や消防設備費用
  • 家具家電など設備費や物品購入費
  • 広告宣伝費
  • 人材募集費と人件費
  • 長期間の経費

土地代と工事費は、ホテルを建設する立地や規模によって異なります。居抜き物件などを利用する場合は大幅に抑えられるでしょう。

それ以外の、主な項目の資金目安は次の通りです。

資格の取得費2~3万円
(外部委託する場合は数十万円に及ぶ)
消防設備費用
(消火器や火災報知器など)
数百~1,000万円
家具家電などの物品購入費200~600万円前後(1室あたり)
広告宣伝費数万~数十万円
人材募集費と人件費人件費×半年分
長期間の経費水道光熱費や運用費など×半年分

上記の表を見ると分かるように、場合によっては3,000万円以上の費用が必要になる可能性も大いにあります。内装やホテルのコンセプトなどによって大きく変わってくるので、資金は十分に用意しておくことが大切です。

活用できる補助金

ホテルを開業する際、次のような補助金が活用できます。

  • IT導入補助金
  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 宿泊施設バリアフリー化支援補助金(東京都)

それぞれの概要は次の通りです。

IT導入補助金

概要中小企業~小規模事業者がITツールを導入する際に、経費の一部が補助される制度
最大補助金額450万円
サイトhttps://it-shien.smrj.go.jp/

事業再構築補助金

概要新型コロナウイルスの影響を受け、事業転換や、新しい分野への事業展開などを行い事業の再構築をする中小企業のための補助金制度
最大補助金額最低賃金枠:1,500万円
物価高騰対策・回復再生応援枠:3,000万円
産業構造転換枠:7,000万円
成長枠:7,000万円
グリーン成長枠:エントリー/1億円・スタンダード/1.5億円
サプライチェーン強靭化枠:5億円
サイトhttps://jigyou-saikouchiku.go.jp/

小規模事業者持続化補助金

概要小規模事業者が販路の拡大に取り組む際に、費用の一部を負担する制度
最大補助金額200万円(東京都の場合)
サイトhttps://s23.jizokukahojokin.info/

宿泊施設バリアフリー化支援補助金(東京都)

概要あらゆる人が安全に過ごせるよう、バリアフリー化を目指すホテル・旅館・簡易宿泊営業施設に補助金を支給する制度
最大補助金額4,000万円(施設規模等によって異なる)
サイトhttps://www.tcvb.or.jp/jp/project/infra/yado-barrier-free/

上記の補助金制度をうまく活用することで、ホテル開業の費用負担を抑えやすくなります。

ホテルを開業するまでの流れ

ここからは、ホテルを開業するまでの流れについて紹介します。なお、地方自治体ごとによって細かな流れは異なるので、実際に開業する場合は自治体ごとに定められたルールをよく確認するようにしましょう。

一般的な開業の流れは、次の通りです。

  • 事業計画書を作成する
  • 自治体への事前相談
  • 申請書の提出
  • 保健所の調査・許可証の発行
  • システムの導入
  • 人材の確保
  • 集客の実施

さっそく、一つひとつの流れについてくわしく解説するので、参考にしてみてください。

事業計画書を作成する

まずは、開業するホテルの事業計画書を作成しましょう。ホテルの開業には念入りな計画・余裕のある資金・十分な期間が必要です。

またユーザーや立地に合わせ、ホテルのコンセプトや利用目的を定めなければいけません。客室の規模や室数、料金設定、長い帰還の収支計画なども立てる必要があります。

これらの計画をまとめた事業計画書は、金融機関から融資を受ける際に必須となります。実現性の高い計画になっているか、確実に返済できることがアピールできるかを念頭に、事業計画書を作成してください。

自治体への事前相談

事業計画書を作成したら、各地方自治体に事前相談に行きましょう。

ホテルの運営においては、法律や条例に基づいて、構造設備や衛生管理上の基準、さらに立地条件・人的基準などの規定を細かく満たす必要があるため、事前に相談し確認してもらうことが必須なのです。

自治体によってアドバイスの内容は異なりますが、施設の平面図や地図などを持参して、営業許可の申請前に足を運ぶようにしてください。相談前の電話予約を受け付けている自治体も多いので、まずは問い合わせることが大切です。

申請書の提出

事前相談を終えたら、営業許可の申請書を提出しましょう。営業許可の申請は保健所に提出します。この際、ホテルの平面図や施設概要、衛生管理計画等が必要なので忘れずに持参します。

申請書の提出から受理までには、2週間ほどの期間がかかります。自治体によっては必要な書類がさらに多かったり、より長い期間を必要としたりする場合があるので、余裕を持って申請するようにしてください。

飲食を提供する場合は、飲食店業許可などの許可証の取得も必要になります。

保健所の調査・許可証の発行

申請後は、保健所が規定を満たしているかどうか、調査に訪れます。保健所は衛星管理が適切か、計画通りの設備が建設されたかなどを確認します。ここで不足があった場合は指導が入るので、速やかに改善するようにしてください。

また防火設備や避難経路についても、消防署の調査が必要になります。保健所・消防署どちらの調査も必ず立ち合いが必要です。

上記の立会い調査をすべて終えると、営業許可証が発行されます。営業許可証が発行されてから、ホテル開業に向けてさらに準備を加速させていきましょう。

システムの導入

営業許可証が得られたら、業務を効率的に進めるためのシステムを導入していきます。なお、システムは人材の確保前に導入しておくことをおすすめします。

なぜなら、システムを導入し、機能に対する理解を深めなければマニュアルを作成することができず、従業員に正しい使い方を周知するのが難しくなるからです。

どのようなシステムがホテルの方針に合っているのか、予算を圧迫しないのかなどを考え、システムを導入していきましょう。

人材の確保

システムの導入も終えたら、いよいよ人材の確保を進めていきます。支配人・マネージャー・フロントスタッフ・清掃スタッフ・シェフなど、さまざまな人材が必要です。

十分な研修期間を用意しなければ、満足いくオペレーションを顧客に提供できなくなるので、開業日の半年前ほどから人材確保に向けて動くことをおすすめします。

また研修をスムーズに行うためにも、オペレーションマニュアルなどは事前にしっかり準備しておいてください。

集客の実施

人材の確保も終えたら、ホテルにお客さんを呼ぶため、集客の実施を行っていきます。OTAを利用したり、ホテルのHPを作成したりして、知名度を高めていきましょう。

SNSなどを利用して集客を行うのも1つの手です。写真や言葉でホテルの魅力を伝えれば、開業を楽しみに待ってくれるお客さんからの予約が増加するかもしれません。

集客を行う際は、ホテルのコンセプトを明確にし、顧客に「どんなホテルなのか」を具体的にアピールすることが大切です。ほかのホテルとの差別化を行うことが、集客の成功につながります。

ホテルの開業・経営の安定化に必要なこと

ホテル業界は、コロナ禍前と比べても需要が増しており、今後ますます多くのホテルが進出してくると予想されます。しかし、どのホテルも開業後、経営が安定するとは言い切れません。

安定させるために必要なポイントを押さえておかなければ、顧客のニーズを満たすことができず、経営難に陥ってしまうリスクもあります。

ここからは、ホテルの開業・経営の安定化のために必要なことを3つ紹介します。ホテルの開業を考える際の参考にしてみてください。

ビジネスモデル・収益構造を明確にする

ホテルのビジネスモデルを明確にすることは、経営を安定化させるうえで重要なポイントです。所有直営方式とフランチャイズ方式では経営の仕方も変わってきますし、問題が起きた場合の負担の大きさなども変化するからです。

そしてホテルの収益構造を明確にすることも大切な要素となってきます。

ホテルの収益構造は、主に宿泊・料飲・宴会やイベントの3つに分けられます。どの部門が収益構造の基盤になるのかをよく考えて、経営方針を練らなければいけません。

そのためには「誰にどんな価値を提供したいのか」「どのような価格で価値を提供したいのか」「どうして利益が生まれるのか」をはっきりさせておくと、ビジネスモデル・収益構造が明確化しやすくなります。

たとえば「ビジネスマンを顧客とし、安価で泊まれるものの、安心して滞在できるビジネスホテル」を作るとします。

この場合は初期費用のかからない管理運営受託方式やフランチャイズ方式が向いています。また収益構造は宿泊がメインとなるため、室内の寝具などにこだわると、ほかのホテルとの差別化ができるでしょう。

人件費削減のためのシステムを導入すればよりリーズナブルな価格で顧客にホテルを提供できるようになるため、ますます多くの利益が生まれることにつながります。

万が一ビジネスモデルや収益構造を明確にしないまま運営を始めてしまうと、必要な設備がそろわず、投資すべきところに投資できず、顧客に選ばれないホテルとなってしまう可能性があります。

ターゲット層の明確化と集客力の強化

ホテルを開業する際には、ターゲット層を明確に定めることが大切です。ターゲット層をはっきりさせ、そこに合う顧客の予約・宿泊が増えれば、その分ホテルに対する好意的な口コミも増え、ますます宿泊客が増えていきます。

たとえば女性向けのビジネスホテルを作りたいのなら、女性向けであることを前面に押し出し、アメニティや室内のインテリア、各種サービスを充実させましょう。

サービスに好意的な印象を持った女性客からの口コミが増えれば「女性におすすめのホテル」として評判が広がり、集客の増加につながっていきます。

ただし、集客力がなければ、そもそもターゲットをホテルに呼ぶことすらできません。

集客力の強化には、ただOTAを利用するだけではなく、MEO対策の実施やSNSの活用など、さまざまな方法が挙げられます。集客力を強化し、たくさんのターゲットを呼ぶことが、ホテルの経営安定のために必要な要素です。

詳しい集客力の強化方法については「ホテルの集客が向上するマーケティング戦略とは?参考にしたいアイデアと成功事例3選」の記事で解説しているので、参考にしてみてください。

コストの削減と定期的な見直し

ホテル経営を安定させるためには、コストの削減や定期的な見直しは必要不可欠です。

どれだけ顧客がたくさん足を運んでくれていても、コストが必要以上にかかっている状態では、利益は一向に増えていきません。利益を上げるためにはコストの削減が大切です。

システムの導入で人件費削減に取り組んだり、効率的なオペレーションを導入して無駄なコストを省いたりなど、コスト削減に取り組むようにしましょう。

また、経営についても定期的な見直しを行う必要があります。顧客からの不満が出ていないか、改善すべき点はあるか、時代のニーズに合っているのかなど定期的に見直し、日々アップデートを続けていきましょう。

改善されないままのホテルでは、いずれ客足が遠のいてしまうかもしれません。長期的に安定した経営を続けるためには、現状に満足せず、見直しを積極的に行うことが大切です。

まとめ

ホテル業界は多くの需要がある一方で、人手不足などが原因で、供給側が満足いくサービスを提供しづらくなっている現状でもあります。十分なサービスを提供できなければ、せっかくホテルを開業しても、集客は難しくなってしまいます。

ホテル開業を成功させるためには、自分や地域に合ったビジネスモデルやホテルの種類選びなどが必須です。また時間をかけて事業計画書を作成し、ターゲット層に合わせたホテルサービスを提供できるよう、念入りな準備を練らなければいけません。

多額の資金が必要になるホテル開業ですが、補助金制度も多く用意されています。自治体では事前相談なども受け付けているので、事業計画の段階で相談すれば、アドバイスをもらうことも可能です。

ぜひ今回の記事を参考に、ホテル開業を成功させてください。

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この記事を書いた人

ささき
2019年にサングローブに中途入社。入社前は音楽業界で営業、商品開発、SNS運用などに携わっていた。現在はSEO運用サポートを経て、メディア運営・執筆に取り組んでいる。

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