ポストTikTok?インスタグラムのReelsをマーケティング観点で解説!
Instagramが「Reels(リール)」を提供開始したというニュースは世界中で話題になりました。その理由はもちろん、人気のSNSが新しい機能を発表したというだけでなく、中国企業が運営するTikTokが近々禁止されるかもしれないという背景にあります。
目次
ショート動画作成・共有機能「Reels」とは
ReelsはInstagramのカメラ機能に組み込まれた機能で、最長15秒のショートムービーを作成したり、共有することができるもの。
15秒の動画といえば、もちろん競合はTikTok。Reelsは、カメラエフェクトも豊富でクリエイティビティーが刺激される編集ツールも充実しており、TikTokにおいて特に重要な意味を持つ音楽についても、ライセンス取得済みの楽曲やユーザーがオリジナルの音源を録音できるライブラリーが備えられるなど、「親」の持つ要素をすべて与えられて登場しました。
また、「発見」というタブにおいて公開されたReelsをフルスクリーンで閲覧できる専用スペースも追加されています。
2019年11月にブラジル、2020年5月にはフランス、ドイツ、インドでテスト運用が開始され、8月5日(現地時間)に日本、アメリカを含む50か国以上で本リリースされました。
それを受けて日本では、国内最大のフォロワー数を誇り、世界的にも注目されている渡辺直美さんが、やや早い7月の段階でReelsの投稿を行っています。
Reelsの作成方法
- ストーリーズ作成画面を開く
- 画面下部の「リール」タブを選択
- 左のツール(音声、速度、エフェクト、タイマー)を利用して撮影
Reelsはこのステップで作成可能です。なお、BGMを選べる「音声」からは前述のとおりライセンス取得された楽曲から選ぶか、もしくはオリジナル楽曲の選択も可能であり、「速度」で自由に動画のスピードを変更できたり、「エフェクト」でストーリーズ同様に好きなARエフェクトを追加したり、「タイマー」で動画の時間を決めることができます。
機能面でのTikTokとの違い
TikTokとの最も大きな違いは、フィードやストーリーズに投稿して公開するだけでなく、ダイレクトメッセージとしてだれかに共有することができるという点。また、公開の際にユーザーを絞って限定公開することもできます。
もちろんストーリーズに投稿した場合は、従来のストーリーズ動画と同様に、公開されてから24時間経過すると閲覧できなくなります。
TikTokは今後クローズする?
冒頭で少し触れましたが、現在TikTokの先行きは不透明です。アメリカのトランプ政権は中国企業が運営しているTikTokに不信感を抱いており、国家安全保障のために、2020年9月15日までに米Microsoft Corporationなど米国企業によるTikTokの買収が完了しなければ全面的に利用を禁止すると発表しています。
ただしその禁止方法や、法的にどう機能するのかといった部分は現状では明確にされていません。とはいえ、インドでは先んじて禁止されていることを考えると、今の運営体制によるTikTokの今後の展望に明るさを見出せないのも事実でしょう。
日本でも2020年7月時点で、自民党内に発足した「ルール形成戦略議員連盟」という会が、TikTokの使用制限を求める提言をまとめる方針でいることが発表されています。
TikTokの功績とInstagramの強み
Instagramを運営するFacebookがこのタイミングでReelsを提供開始したのには、TikTokの後継となる狙いが少なからず存在することは容易に想像できますが、ショートムービーを作成して発信するということ自体はTikTokが流行する前から存在していた表現方法であり、真新しさは感じられにくいです。
それにもかかわらず、世界中のSNS文化を牽引してきたFacebookが「InstagramへのTikTokの取り込み」に乗り出しているのは、つまりTikTokの近年の躍進がそれだけ目覚ましいものだということでしょう。
TikTokは2018年にリリースされ、App StoreとGoogle Playの累計DL数は20億回を突破(2020年4月時点)。日本でも950万人のMAUがいるといわれています(2019年2月時点)。
独自のアルゴリズムでユーザーの好みに合わせて動画を表示し、バイラルダンスをはじめとしたさまざまな流行を生み出してきました。
そのマーケットの大きさに、当然ながらあらゆる企業が進出し、広告を打ち出したり、自社でアカウントを開設して情報発信を行ったりしています。
なお、Facebookは以前にもTikTokのようなショートムービープラットフォームアプリ(「Lasso」)をリリースした経緯がありましたが、2020年7月に撤退させているので、今回は既存ユーザーの多いInstagram内に搭載したということに勝ち目が見えてくるかもしれません。
特に、2020年7月にInstagramのフィードにアップロードされた動画の約半数が15秒以下であり、中にはTikTokに公開された動画をInstagramに再掲載したものもあったというので、Instagramとショートムービーの相性がいいのは明白で、これから動画コンテンツをマーケティングに利用しようと考えている企業は注目しておいた方がいいでしょう。
ただ、比較すると、TikTokで人気の高いアカウントはTikTok上で有名になったユーザーやVineなどのほかの動画アプリ出身者が多いのに対し、Instagramで人気の高いアカウントはもともと著名だったアスリートや歌手、俳優が多いため、この新しい機能を導入したことによる化学反応がどう起こるかは、しっかりと今後の動向を見守って見極める必要がありそうです。
Reels機能におけるマネタイズ
ここで注目すべきはReelsに広告枠があるのか、またはそのほかのマネタイズ策があるのかどうかというところかと思いますが、現状ではInstagramはReelsの広告枠を販売する予定はないと発表しています。
とはいえ、現状Instagramで大きな宣伝効果を発揮しているのは、広告ではなくユーザーによる投稿です。もちろんそれはステルスマーケティングのような恣意的な投稿を指すのではなく、心地よいブランドイメージを存分に表現した投稿だったり、理想的なライフスタイルを想起させるインスタグラマーが自然な形で商品を使用している投稿だったり、そういったものから集客に成功しているということです。
また、Instagramも今後、収益化の機会を期待していると発表しているので、まずはいち早く自社アカウントでブランディング構築に有効なReelsの制作に臨んだり、あるいはそれが可能なクリエイターと接点を持って企画したり、基盤をしっかり作ってから、マネタイズが可能になったときに乗り出すのがよいでしょう。
クリエイティブはなくならない
今後もしTikTokが使用できなくなってしまった場合、Reelsが後継ツールとして確立されていれば、今まで多くの流行や優れた制作動画を公開してきたTikTokerたちの多くはReelsを活用し始めるでしょう。
そうなれば、消失するかもしれなかったクリエイティビティーやスキル、センスは後にも脈々と受け継がれていきます。新しい才能が生まれる機会も失われずにすむでしょう。
TikTokのCEOであるケビン・メイヤー氏は、競合となるReelsのリリースについて、「非難するのではなく、消費者のために公正で健全な競争を歓迎する」といった声明文を発表しており、TikTokが禁止されずに現行のまま残ったとしても、両社、あるいはさらに他社が加わり、よりよいショートムービープラットフォームアプリマーケットが築き上げられていくことが期待できます。
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