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KPT法とは?振り返りフレームワークの例や進め方

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日々繰り返す業務のなかで、生産性や業績を高めていくには、折に触れて「振り返り」の機会を持つことが重要です。

目の前の仕事をこなすだけではなく、現時点で「うまくいっているポイント」と「改善が必要なポイント」を整理していくことで、今後の方針や課題が明確になっていくでしょう。

このような「振り返り」のフレームワークとして、現在では「KPT法」と呼ばれる思考の整理法が多くの場面で取り入れられています。事前の準備も少なく導入でき、進行中のプロジェクトについてメンバー間でフィードバックを行ったり、個人が日々の業務を反省したりと、さまざまなシーンに応用できる点が特徴です。

この記事では、KPT法のフレームワークについて解説したうえで、実際の進め方とともに、導入に役立つツールも紹介していきます。

振り返りに役立つKPT法とは

KPTは、「Keep(継続)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦)」の頭文字を取った言葉です。何かについて反省したり、フィードバックを得ようとしたりする際、この3つの観点から思考を整理する方法を「KPT法」と呼びます。

この3つの観点は、それぞれ「うまくいっているので継続すべきこと(=Keep)」「改善すべき問題(=Problem)」「今後取り組むべきこと(Try)」を意味します。言い換えれば、現在進行中のプロジェクトや、日々の業務を振り返るなかで、「うまくいっているポイント」と「うまくいかないポイント」を整理したうえで、「求められる改善策」を導くというシンプルな思考法です。

KPT法はもともと、「アジャイル開発」の分野に早くから取り組んでいたプログラマーのAlistair Cockburn(アリスター・コーバーン)氏によって提唱されたフレームワークであり、ソフトウェアやシステム開発の場面で取り入れられてきました。現在ではその汎用性の高さから、ビジネスシーンはもちろん、プライベートの場面においても行動を改善するためのフレームワークとして有効に活用されています。

また、業務改善に役立つフレームワークには「ECRS(イクルス)の原則」もあります。ECRSの原則については以下の記事でくわしく解説しています。

KPT法を実践する際のフォーマットはさまざまですが、簡便かつスタンダードな方法として、「ホワイトボード」と「付箋」を用いた形式が普及しています。

ホワイトボード

上の図のように、ホワイトボードを左右に分け、左側の上半分を「Keep」、下半分を「Problem」とし、右側全体を「Try」の枠とする形が一般的です。シンプルかつ事前準備も少なく済むことから、テーマを問わず応用可能であり、ミーティングをはじめアイデア出しが必要な場面で頻繁に取り入れられています。

KPT法を取り入れるメリット

KPT法が多くのシーンに取り入れられている理由として、何より「シンプルな構造による汎用性の高さ」が挙げられます。

現状の「いい点」と「よくない点」を明確にし、問題への対処法を導くプロセスは、単純でありながら普遍的な問題解決の方法です。日頃の業務における漠然とした問題意識も、決まった枠組みのなかに落とし込むことで整理され、明確な課題が浮き彫りになることもあるでしょう。

さらに、KPT法の直感的に理解しやすいフレームワークは、とくにミーティングにおける「意見の出しやすさ」にもつながります。厳密な解決策を求めるのではなく、「大枠だけ定めたブレインストーミング 」のように、結論に縛られない自由な集団発想を促すことで、さまざまな角度からのアウトプットが期待できるのです。

このようにKPT法は、個人が思考を整理したり、チームのメンバーが現状認識をすり合わせたりといった場面で大いに役立ちます。振り返るテーマや、対象とする期間も自由に設定でき、たとえば「プロジェクトの進捗状況を定期的に振り返る場面」や、「年度末に個人が1年の業務を振り返る場面」など幅広く活用可能です。

実践にあたっても、コストやリソースを抑えられるため、「必要なときにすぐできる」点が大きな強みになるでしょう。振り返りの機会を定期的に設けることにより、KPT法のフレームワークが個々の従業員に浸透し、業務のなかで改善点を見出そうとする意識が根付いていくことも期待できます。

KPT法を用いる場面の例

上述のように、KPT法はさまざまな場面で有効に取り入れることができます。以下ではとくに、「ビジネスのどのような場面でKPT法を利用できるのか」を解説し、振り返りを行う際の記載例についても紹介していきます。

プロジェクトの進捗報告

プロジェクトや企画の進行中、メンバー間で現状認識をすり合わせる際にKPT法は多く取り入れられています。各々が抱えている漠然とした問題意識や、成果に対する手応えなどを可視化することで、これまで見えていなかった課題のほか、評価されていなかった美点などが浮き彫りになる可能性もあるでしょう。

KPT法を取り入れたマーケティング戦略の振り返り例

<Keep>
  • 商品Aの売上高が目標の120%を達成
  • ECサイト上で商品Bとのセット販売が好調
  • リスティング広告からのコンバージョン率が高い
<Problem>
  • ソーシャルメディアからの流入数が低い
  • 口コミサイト上の商品レビューが少ない
  • 商品Bとのセット販売が、実店舗では伸びていない
<Try>
  • SNS上で商品Aの使用法を紹介するコンテンツを発信
  • レビュー投稿による割引キャンペーンの実施
  • 店舗での動線をふまえた商品配置の工夫

研修やキャリアカウンセリング

研修やキャリアカウンセリングといった場面でも、従業員が自身の現状を整理するためのフレームワークとしてKPT法は活用可能です。

新入社員やキャリア移行期の従業員をはじめ、適応期間にある従業員が振り返りを行う際には、往々にして「反省」や「課題」の面が強調される傾向があります。もちろん課題の把握は重要ですが、自身の「至らなさ」にばかり焦点が当たってしまうと、ネガティブな自己評価が助長されてしまうケースもあるでしょう。

対して、KPT法においては「うまくいっていること」への視点も用意されているため、中立的に立ち位置を見通す際の補助となります。「やらなければ」という意識とともに、「自分はできる」という感覚を育てられる点が、KPT法を研修などに取り入れる際のメリットとなるでしょう。

KPT法を取り入れた研修時の振り返り例

<Keep>
  • 作業効率が向上し、一定時間内にこなせるタスク量が増えた
  • チームメンバーとのコミュニケーションが積極的に取れるようになった
  • 情報共有や引き継ぎがスムーズに行えるようになった
<Problem>
  • チーム全体の状況を鑑みながら、自分のやるべきことを見つける視点が弱い
<Try>
  • タスク管理用のスプレッドシートをチェックする頻度を増やす
  • チームの優先順位を考慮してから、自分の優先すべきタスクを見定める

日報や定期報告のテンプレートとして

個々の従業員が自身の業務を振り返る際にも、KPT法のフレームワークは役に立つでしょう。毎日提出する日報や、定期的に提出するレビューシートなどにKPT法の形式を取り入れることで、改善につながる「気づき」が得られる可能性があります。

KPT法を取り入れた日報の振り返り例

<Keep>
  • 複数のタスクを抱えていたが、個別に集中して取り組むことができた
<Problem>
  • チーム間での情報共有に不備があり、各所で不要な修正が発生してしまった
<Try>
  • 指示書のフォーマットへの記入方法をチーム間で再確認する

KPT法の進め方

KPT法を進める際には、「Keep」「Problem」「Try」の順番でアイデアを出していくことが基本となります。以下では具体的に、KPT法の進め方について解説します。

共有方法を決める

チーム間での意見交換にKPT法を取り入れる際には、テーマや目的、職場の環境に応じて実施方法を決めましょう。

可能であれば、「その場でのミーティング」がチームで行うKPT法には適しています。リアルタイムのテンポ感や、共同作業の意識により、意見を出す精神的なハードルが下がりやすくなるでしょう。

ミーティングにKPT法を導入する際は、ホワイトボードと付箋を用いるのがスタンダードです。この場合、参加人数はスムーズに付箋の貼り付けが行えるよう、6人~7人程度を上限とすることが望ましいと考えられます。

会議室の環境や従業員の勤務状況により、オンラインでミーティングを実施する場合もあるでしょう。その際は、ホワイトボードをスプレッドシートなどで代用することも可能ですが、後述するツールを導入するのも1つの方法です。

なお、リアルタイムで行うミーティング以外にも、期間を定めてアイデアをクラウドなどに蓄積していく方法も考えられます。

KeepおよびProblemを洗い出す

まずは「Keep」と「Problem」の枠にアイデアを出していきましょう。この段階ではアイデアをブラッシュアップする必要はなく、思いついたものを次々に提示していくことが大切です。

ブレインストーミングと同じように、「他者のアイデアを批判しない」という共通認識を持ち、意見を出しやすい雰囲気を作ることもポイントになります。

リアルタイムで実施する際には、あらかじめ時間を定めて行うとよいでしょう。扱う内容にもよりますが、KeepとProblemの2つで10分程度が間延びしないと考えられます。

KeepとProblemの内容を検討

KeepとProblemのアイデアが溜まったら、それぞれの意見を検討していきます。多くのアイデアが出た場合には、重複する要素などを整理しながら、問題に優先順位をつけていくとよいでしょう。

検討の際には、「原因の掘り下げ」を行うことも重要です。Keepで出たアイデアについては、「なぜこれがうまくいっているのか」という要因を探っていきましょう。Problemについては「何が問題か」「なぜそれが起きているのか」という原因を特定していくことが求められます。

このプロセスもあらかじめ時間を決め、20分~30分程度を目安としながら、重要性の高いポイントを優先して話し合っていきたいところです。

Tryを具体化する

これまでの成功の要因や、問題の原因を明確にしたうえで、「これから何に取り組むか」を明確にしていきます。その際、次回の検討に活かせるよう、Tryの内容はできる限り「具体的な行動」として設定するようにしましょう。

はっきりと「何をどうするか」を提示し、可能な限り数値上の目標なども設定しておくことが望まれます。

なお、ここで策定するTryの内容は、次回の振り返りを行う際、重要な検証ポイントとなります。そのため「どのような経緯でTryの内容が決まったか」といった点について、後々確認できるようにしておきましょう。

KPT導入に役立つツール

KPT法はホワイトボードに付箋を貼り付けていく方法がスタンダードですが、「Keep」「Problem」「Try」の枠組みさえ守れていれば、形式にこだわる必要はありません。

導入シーンや目的によって、KPT法の実践に適したフォーマットもさまざまであり、状況によっては各種ツールが役立つケースもあるでしょう。以下では具体的に、KPT法のスムーズな運用・管理を補助するツールを紹介していきます。

Trello

Trello(トレロ)」は掲示板形式のタスク管理ツールであり、ボードにタスクを「カード」として貼り付け、チーム内で共有することができます。シンプルなインターフェイスのため、はじめてでも利用しやすいのが特徴です。

KPT法を実施する際には、ボード上に「Keep」「Problem」「Try」の3つの枠を用意し、それぞれの枠にカードを追加していく方法が考えられます。ミーティングなどでリアルタイムに共有する使い方よりも、随時アイデアを蓄積していく使い方に適しているといえるでしょう。

タスクのステータスは「未着手」「着手中」などと変更でき、アクセス可能なメンバーも自由に設定可能です。活用の幅が広く、KPT法のほかチームや個人のタスク管理ツールとして全般的に運用することができます。

プランには無料のものと有料のものがありますが、無料プランでも10件のボードまでなら作成可能であり、「月に数度のミーティング」といった用途であれば対応可能でしょう。有料プランでは金額によって制限の範囲が異なるため、運用方法に応じて選択する必要があります。

デスクトップ版のほか、スマートフォンアプリにも対応しており、「思いついたアイデアをすぐ保存しやすい」点もメリットです。

ラジログ

ラジログ」は日々の振り返りを促す日報ツールであり、個々の従業員が毎日の振り返りにKPT法を取り入れる際に有効です。BacklogやSlackなど連携サービスのログを自動収集し、「その人がその日どのようなアクションをしたか」をタイムラインで確認することができます。

アクションログに加えて、従業員が入力するためのフォーマットを簡単に作成できる点も特徴です。テンプレートにはKPT法のフレームワークも用意されているため、KPT方式の日報をすぐさまチームに導入することができます。

料金は1ユーザーにつき月500円(税込)の設定です。連携サービスをすでに導入している場合はとくに、メリットの大きなツールといえるでしょう。

KPTon

KPTon」は、オンライン上でホワイトボードを共有できるツールです。名前のとおり、KPT法を実践するのに適したフォーマットが用意されています。

タスク管理を兼ねたツールとは異なり、ホワイトボードの共有という目的に特化したシンプルな構造が特徴です。

ホワイトボードは個人用と会議用があり、いずれも無料で使用できます。過去のホワイトボードも後から確認できるので、「前回のミーティングはどのような流れだったか」を簡単に把握できる点もメリットです。

場面にあわせてKPT法のフォーマットを手軽にビジュアル化できるKPTonは、オンラインミーティングから個人の振り返りまで幅広い場面で活用できるでしょう。

以上のように、KPT法を実践するうえで役立つツールはさまざまに用意されていますが、それぞれ特性は大きく異なっています。そのため、導入する際には利用シーンや目的に合ったものを選択することが大切です。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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