マンダラートとは?目標達成のための書き方や具体的な例を紹介
ビジネスを効率的に進めるうえで、欠かせないのが「アイデアの整理」です。現状の課題や問題点を洗い出し、具体的な行動へとつなげていくには、一定のフレームワークに沿って思考を展開することが有効でしょう。
近年では、ある目標や課題の全体像を整理する「マンダラート」という方法が多くの場面で取り入れられています。この記事では、マンダラートの概要や例をふまえ、実際のやり方や注意点について解説していきます。
目次
マンダラートとは
マンダラートとは、目標達成や課題解決、計画立案などに用いられる思考整理のフレームワークです。正方形のマスを9×9の形式で、合計81個配置し、中央のマスから外側に向けて思考を展開していきます。
基本的には3×3マスを1つのブロックとして、中央ブロックの真ん中のマスに「中心となる大テーマ」を書き込み、その周囲の8マスに関連する中テーマを記入していきます。
その後、それぞれの中テーマを外側の8ブロックの中央に配置し、各ブロック内で小テーマへと展開することで、テーマを段階的に分解していくのです。
なお、マンダラートという言葉は仏教由来の曼荼羅(マンダラ)と、アートをかけ合わせた造語で、別称としては「マンダラシート」「マンダラチャート」「目標達成シート」などがあり、ビジネスのほかにも個人のアイデア整理や人生計画など、幅広い場面で活用されています。
大谷選手によるマンダラートの例
マンダラートは分野を問わず用いられており、スポーツの世界では大谷翔平選手が高校1年生のときに作成したものが知られています。
大谷選手は「8球団からドラフト1位指名を受ける」という高校生活の最終的な目標に向けて、「その実現に何が必要か」をマンダラートによって可視化しました。
上図のように、大目標に対して必要な能力・スキルを中央ブロックの8マスに記入し、さらに周辺の8ブロックにはその能力・スキルを身につけるための方法や観点を書き込んでいることがわかります。
大谷選手が作成したマンダラートの特徴は、野球の能力に関する要素のほか、精神面や道徳面に関する要素も取り入れている点です。多角的に「最終的な目標に対して何が必要か」を考察しており、多方面に展開するマンダラートの形式をうまく活用しています。
マインドマップとの違い
マンダラートのほかにも、アイデアを整理・発展させていくための方法として「マインドマップ」が広く知られています。マインドマップは中央の大テーマから放射状にアイデアを展開していく方法であり、マンダラートと近い構造をもつことから、活用場面が近似するケースもあるでしょう。
大きな違いとしては、マンダラートが主に「9×9マス」という決まった形式をとるのに対し、マインドマップは自由に思考を分岐できる点が挙げられます。つまりマインドマップは、「思考をどのように分解していくか」「どこまで掘り下げていくか」を作図のなかで決めていけるのです。
このように、マインドマップは形式的な自由度の高さを特徴としていますが、そのぶん完成図が複雑になり、他者との共有が難しくなるケースも考えられます。その点で、決まった形式をとるマンダラートは視認性を高めやすく、共有や共同編集もしやすい傾向にあります。
マインドマップとマンダラートを使い分けるには、両者の特性を考慮し、場面や目的に適した者を選ぶことが大切です。あるいは状況によっては、「マインドマップで考えを出し尽くし、それをマンダラートに落とし込む」など、両者を組み合わせて使うことも有効だといえます。
ビジネスにおけるマンダラート作成のメリット
マンダラートは非常に汎用性の高いフレームワークであり、ビジネスからプライベートまでさまざまな場面での活用が可能です。個人・組織を問わず、作成の効果として以下のものが期待できるでしょう。
アイデア段階から着手できる
マンダラートの形式はいたってシンプルであり、シートの作成も難しくないことから、「新しいアイデアを思いついた段階ですぐに取りかかれる」というメリットがあります。
たとえばビジネスにおいて課題を感じる場面や、個人の目標を見直したいとき、また新しいプロジェクトのヒントが得られた瞬間など、「頭のなかにある着想をアウトプットしておきたい」というケースは少なくないでしょう。
そのようなとき、マンダラートの中央マスに「考えたい内容」を書き込めば、形式的にアイデアを発展させていくことができます。
問題の全体像を見通せる
マンダラートは複雑な問題の「全体像」を描出することに適しており、マスを埋めていくなかで「目標達成に向けた道のり」や「ある問題の構造」を総体的に見通しやすくなります。
マスの配置によって、書かれた要素の重要性や優先度が一目でわかる点もポイントです。目標や課題を階層的に捉えられるので、最終的なゴールを見失うことなく、「そのために何をしたらいいのか」を具体的に把握できるでしょう。
達成状況を可視化できる
マンダラートの効果は、作成後においても発揮されます。たとえば進捗確認として、クリアした課題のマスを色分けするなどの方法により、「何をどれだけ達成したか」を可視化できるでしょう。
このように、達成状況や進捗状況を全体の構図のなかで確認できるので、「何がどれだけできているか」「あとは何が足りないか」といった点が把握しやすくなります。
問題を多面的に考えられる
先の大谷選手の例に見られるように、マンダラートは物事をさまざまな角度から捉えながら、多方面に思考を展開させていく際にも役立ちます。
課題解決や目標達成には多様な観点が求められることも多く、一度に別々の角度から問題を捉えることに苦労したり、混乱したりする可能性もあるでしょう。その点で、問題を複数の視点から分解していけるマンダラートは有効に機能するはずです。
マンダラート作成に使えるツール
マンダラートを作る際は、まず9×9マスのシートを用意する必要があります。Microsoft Excelなどの表計算ソフトでも手軽に作成できますが、以下では共有の利便性などの観点から、使いやすいツールを紹介していきます。
Googleスプレッドシート
GoogleスプレッドシートはExcelと近い機能をもった表計算シートであり、クラウド上で他のGoogleアカウントとリアルタイムに共同編集ができることを特徴としています。
基本的にはセルの高さと幅を調整するだけでマスが用意できるため、簡易的なマンダラートであればすぐに作成に取りかかれるでしょう。
さらに、セル内にリンクを設置したり、コメントを挿入したりと、アレンジしやすい点も運用上のメリットです。機能性や拡張性の高さから、とくに「組織のニーズに合わせて形式をカスタマイズしたい」という場面に適しています。
Canva
Canvaはプレゼンテーションの資料作成などに役立つオンラインのグラフィックデザインツールです。豊富なテンプレートからさまざまな図表やスライドなどを作成でき、デザイン・レイアウトの自由度の高さを特徴としています。もちろん、他のユーザーとの共有や共同編集も可能です。
テンプレートのワード検索にも対応しており、マンダラートのフォーマットも公開されているので、自身でシートを用意する手間を省けるでしょう。
直感的な操作でレイアウトやデザインを変更できるため、マンダラートの見やすさやデザイン性を重視したい場合におすすめのツールだといえます。
MandalaChart Official App
MandalaChart Official Appは有限会社エム・ケー・インターナショナルがリリースするアプリであり、マンダラート専用のフォーマットをモバイル版アプリとWebブラウザ上で利用できます。
形式は非常にシンプルであり、専用アプリならではの使い勝手のよさを特徴としています。ただし、モバイル版は無料で使えるものの、ブラウザ版を利用するにはサブスクリプションへの加入が必要です。
料金は6ヶ月プランで1,800円、1年間プランで2,800円ですが、最初は30日間の無料トライアル期間が設けられているので、まずは使い心地を確かめてみるのもよいでしょう。
マンダラートの書き方
マンダラートのフォーマットを用意したら、実際に作成に取りかかってみましょう。「マスを埋める」という作業が基本になりますが、以下では具体的なやり方を例とともに解説していきます。
大テーマの決定
まずは中央のマスに書き込む大テーマを決めましょう。プロジェクトにおける最終的な目標や、現状の事業における課題など、記入する内容はさまざまに考えられます。
ここでは一例として、「自社サイトのコンバージョン改善」を大テーマとしたマンダラートを作成してみましょう。
最初は具体性のないアイデアや問題であっても、このあとシートを埋めていくなかで状況が見えやすくなっていきます。そのため中央のテーマについてはあまり頭を悩ませず、さしあたり「これについて考えたい」という内容を書き込んでみるとよいでしょう。
テーマの展開・分解
中央のマスから放射状に、周囲の8マスを埋めていきます。大テーマとして挙げた問題に対して原因を提示したり、あるいは目標達成に必要な要素を挙げたりといった方向性が考えられるでしょう。
大切なのは、「外側に展開するにつれて具体性を増す」という意識です。たとえば「コンバージョン改善」というテーマに対しては、「SEO」や「広告施策」など、それを解決するための観点や方法を記入していきます。
なお、8マスがすべて埋まらない場合にも作成は進められるので、空白部分は一旦そのままにし、次の段階に進んでしまうのもよいでしょう。時間を置くことで、まったく異なる角度からの切り口が見つかり、多面的に思考を展開できる可能性もあります。
各ブロックを埋める
中央ブロックのなかに記入した8つの中テーマを、外側の8ブロックの中央にそれぞれ配置します。そのうえで、各々の中テーマに関連する具体的なタスクや課題を周囲のマスに書き込んでいきましょう。
この段階で書き込む内容は、できるかぎり「具体的な行動」のレベルまで落とし込むことが大切です。たとえば「SEO」という中テーマに対して「キーワード選定」という具体的対処を挙げることで、「次に何をするか」が見通しやすくなります。
進捗確認
マンダラートは作成時の思考整理だけではなく、その後「どのくらい達成できているか」を確認する際にも有効です。タスクが完了したり、何らかの進展があったりした場合、該当のマスを塗り分けるなど、さまざまなチェック方法が考えられるでしょう。
プロジェクト管理などに用いる場合には、タスクの期限などをマス内に書き込んだり、関連情報へのリンクを設置したりなど、運用上の利便性を高める工夫も有効です。目的や状況に合わせて、使いやすいよう形式をカスタマイズしていくとよいでしょう。
マンダラートを作成する際の注意点
マンダラートはアイデアが未整理の状態でも手軽に実践できるフレームワークですが、効果的に進めていくうえで注意しておきたいポイントもあります。以下では具体的に、マンダラートを作るうえでの注意点を解説していきます。
異なる方向性へと展開する
マンダラートはアイデアを整理・発展させるためのフレームワークであり、「計画・戦略を突き詰めて考える」というよりは、「多面的に状況を見通す」ことを目的としています。
そのためマンダラートの中テーマを埋めていく際には、問題を「より多くの側面」から考察できるよう、さまざまな視点を取り入れていきたいところです。
考察の視野を広げるには、複数人でブレインストーミングを実施することも有効です。大テーマに関連する語句や問題を思いつくままに提示していくことで、新たな切り口が見つかる可能性もあるでしょう。
要素の重複を避ける
中央の大テーマから8つの中テーマへと展開する際には、中テーマの要素が重複しないよう注意しましょう。ここで重複があると、小テーマへと展開した際に似た内容のマスが多くなり、状況が見通しにくくなってしまいます。
たとえば「コンバージョン改善」という大テーマに対し、「導線の改善」と並べて「サイト構成の改善」という似た要素を挙げたとします。すると、どちらの要素でも「問い合わせフォームまでの流れ」など、同じような切り口から問題を考えることになるでしょう。
このように「ほとんど同じ問題を違う言葉で考える」という状況になってしまうと、テーマを分けて考える意味がなくなり、かえって構図を複雑にすることになります。アイデアの発展性を確保するうえでも、要素の重複はなるべく避けたいところです。
ただし扱う内容によっては、近似する事柄であっても別々に分析することで、状況がより正確に捉えられるケースも考えられます。マンダラートを用いる目的に応じて、各段階のスケール感を合わせていくとよいでしょう。
階層や包含関係に注意
マンダラートを通じて思考を展開していく際は、それぞれのテーマ間で階層を混同しないよう注意しましょう。
たとえば好ましくない例として、先の「コンバージョン改善」という大テーマに対し、「SEO」「広告施策」などの中テーマに並べて「マーケティング」という要素を挙げたとします。
ところが、一般にマーケティングは「コンバージョン改善」よりも大きなテーマですから、これでは包含関係が逆転してしまいます。これを中テーマとして挙げてしまうと、小テーマで再度「SEO」「広告施策」などの内容を記載することになり、問題の構造が整理しにくくなるでしょう。
全体の構造を明確に捉えるうえでは、包含関係や階層構造に注意し、適切な論理関係にのっとり思考を進めていくことが大切です。
記載内容はシンプルに
マンダラートの目的の1つは、「全体のテーマと個々の要素との関連性を一目でわかるようにする」ことにあります。
マス内に記入する情報量が多くなれば、それだけ全体的な視認性も低下してしまうので、記載内容はあくまで要点のみをピックアップし、見る人に最低限伝わる情報に絞ることが必要です。
レイアウトを工夫する
見やすさを向上させるうえでは、レイアウト面での工夫も重要です。たとえば大谷選手のマンダラートでは、右上方に能力・スキルに関する要素、左下方に精神面・習慣に関わる要素を配置するという傾向が見られます。
このように、ある程度カテゴリの意識をもって要素を配置していくと、近接するブロックの関連性も見通しやすくなり、情報を整理しながら読み込めるでしょう。
あるいは、特定のフローに沿って業務を進める場合など、マスの配置によって手順の流れを示すことも可能です。たとえば「左上のマスから時計回り」などの約束事に沿ってマスを配置することで、進行プロセスが把握しやすくなるはずです。
レイアウトの工夫によりマンダラートの活用方法もさまざまに広げられるので、その都度状況に合った形式にアレンジしていくとよいでしょう。
まとめ
マンダラートは非常に汎用性の高いフレームワークであり、目標達成や課題解決に向けて現状を整理しながら、アイデアを発展させていく際に役立ちます。未整理の思考であっても、マンダラート作成を通じてブラッシュアップしていくことで、進むべき方向性が見通しやすくなるでしょう。
作成にあたっては、問題の構造を全体として捉えられるよう、多角的な観点を取り入れていくことが大切です。すべてのマスを埋めることを目的とするのではなく、柔軟な発想で思考を展開させていきましょう。
作成したあとにも、マンダラートを通じて現状を確認できるよう、状況に合わせてフォーマットを工夫していくとよいでしょう。職場環境や業務形態などに応じて形式をカスタマイズしていくことで、進捗管理から手順の共有、目的意識のすり合わせまで、実にさまざまな方向に活用することができます。
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