メタバースとセカンドライフの違いは?二の舞を防いで失敗は避けられる?
近年、GAFAの一角であるFacebookがMetaに社名変更するなど、「メタバース(Metaverse)」がメディアを騒がせています。しかしコンピューターでつくった仮想空間のなかで、現実を模倣したさまざまなアクティビティを行おうとする試みは、新しいものではありません。
この記事ではかつて流行したセカンドライフとメタバースの違いや、セカンドライフが失敗したといわれる原因などについて紹介します。
目次
Second Life(セカンドライフ)とは
Second Life(セカンドライフ)とは2003年にLinden Lab社によってリリースされた3DCGによる仮想空間です。利用者はインターネットを介して3Dアバターを利用してアクセスし、もう一つの現実世界のように生活できます。
セカンドライフ内に家を建てたり、観光名所を巡ったり、チャットでコミュニケーションを取ったりと、自由に遊べます。サービス開始から20年が経過した2023年現在も継続しており、世界中に多くの利用者がいるのが特徴です。
高速インターネットとデジタル機器の進化により、今では仮想空間でアバターを操作するプラットフォームは珍しいものではなくなりました。しかしセカンドライフがリリースされた2003年ごろは「ガラケー」が主流で、インターネットの通信速度やデジタル機器の能力は今とは比べ物にならないほどチープでした。
初代iPhoneが登場したのが2007年ということを考えると、3DCGでデジタルの世界を作って現実世界のようにコミュニケーションを取れるようにしたセカンドライフの先進性は際立っていたといえるでしょう。当時、日本においては大手広告代理店の電通が積極的にセカンドライフの可能性を紹介しており、多くの日本企業が参入して仮想空間内にブースを作っていました。
仮想世界の中で生産と商取引ができる
セカンドライフが流行したのは技術的な先進性だけではありません。セカンドライフではリンデンドルという通貨が流通しており、仮想空間の土地や建物、家具や服などを売買できます。セカンドライフは一部オープンソース化されており、自分でアバターのスキンや服、家具や車などを作って売買することができるのです。
たくさんの商品が作られたことにより、現実世界のお金で仮想世界のリンデンドルを交換する需要が生まれ、やがて交換レートが設定されるようになりました。リンデンドルとリアルマネーに互換性が生まれたことで、仮想空間で収益化できるようになったのです。
メタバースとセカンドライフの違い
メタバースとセカンドライフは共にコンピューターによってつくられた仮想空間をプラットフォームにします。似ているようですが、本来は言葉が指し示す対象自体が異なります。
セカンドライフはLinden Lab社がリリースした仮想空間を使ったサービスの名称で、メタバースはデジタル技術によって作られた仮想空間それ自体を指します。Metaがリリースした新しいサービスの名称を「メタバース」と呼ぶわけではありません。
またセカンドライフとメタバースには、いくつかの重要な違いがあります。
ブロックチェーン技術と仮想通貨の取り扱い
リアルマネーと交換できるリンデンドルという通貨を用いるセカンドライフに対し、メタバースでは暗号資産の利用が想定されているケースがあります。暗号資産は取引履歴や資産そのものをインターネット上で安全に分散管理できるブロックチェーン技術を用いており、今後の普及が期待されています。
これに対してセカンドライフのリンデンドルにはブロックチェーン技術が使われておらず、仮想通貨での決済にも対応していません。
VR機器の利用
3DCGのアバターを用いる点は共通ですが、メタバースはVRヘッドセットやARデバイスなどの最新のテクノロジーを導入し、没入型の体験ができるケースがあります。2003年にリリースされたセカンドライフはPCやスマートフォンなどの一般的なデバイスでアクセスできますが、VRヘッドセットやARには対応していません。
同時接続可能人数
メタバースでは複数の人々が同時にアクセスし、仮想空間でコミュニケーションをとるなど活動を共有することができます。提供されている仮想空間のサービスによって異なるため一概にはいえませんが、ブロックチェーン技術により分散的に処理することで10万人以上と同時接続することも可能だといわれています。
一方、ブロックチェーン技術が使われていないセカンドライフには同時接続可能な人数に制限があります。
セカンドライフの流行が続かなかった(失敗に終わった)理由
2003年にリリースされ多くのユーザーを獲得したセカンドライフ。2007年には日本にも上陸し大流行しましたが、1年ほどで利用者数が急激に減少し定着しませんでした。その理由としては下記が挙げられます。
最新技術に対応できなかった
セカンドライフは2003年の時点で比較的低スペックのコンピューターでも動作するように設計されました。当時の最新のWindows OSのバージョンはXPです。IT技術が発達し、より高性能なコンピューターが一般的になると、先にリリースされたセカンドライフはグラフィック面などで見劣りしてしまいます。
現在のセカンドライフはバージョンアップされているものの、公式サイトで公開している推奨スペックは、常に最新技術でしのぎを削っているオンラインゲームと比べると低スペックに留まるといわざるをえません。
参考:System Requirements|Linden Lab
仮想空間を用いた競合サービスが増えた
登場したばかりの頃は目新しく、競合他社がほとんど存在しなかったセカンドライフですが、その後多くの会社が競合するプラットフォームをリリースしました。特にセカンドライフで可能なアクティビティ領域が重なるオンラインゲームが多数登場し、現在でも熾烈な競争をしています。
バーチャルなプロダクトを買うことへの忌避感
セカンドライフ内の通貨、リンデンドルはリアルマネーと互換性があります。そのため仮想空間での買い物はリアルマネーとほぼ変わりません。
セカンドライフ初期においては、セカンドライフ内での生活を充実させるためとはいえ、バーチャルな存在にリアルマネーを使う点に抵抗がある人が多くいました。またせっかくリンデンドルで購入した家具や家などのオブジェクトも簡単にコピーできるため、購入のモチベーションが高まらないという点もあったでしょう。
リアルマネーから換金せず、セカンドライフ内で仕事をすることでリンデンドルを稼ぐこともできますが、効率はよくありません。
メタバースはセカンドライフの二の舞になるか
セカンドライフが当時期待されたほど一般化せず、徐々に流行の舞台から退いていたことからメタバースもまた失敗するに違いない、という見方をする人もいるでしょう。
しかし必ずしもメタバースがセカンドライフの二の舞になるとは限りません。セカンドライフが続かなかった技術的な問題やバーチャル存在への課金といった文化的な問題はいずれも解決可能です。
例えばメタバース内でやり取りされるアートや家具などの知的生産物にブロックチェーン技術を用いたNFTを用いれば、代替不可能性を付与できるためコピーの問題をクリアできます。
NFTについては下記の記事をご覧ください。
またソーシャルゲームのガチャ(アイテム課金方式)やオンラインゲーム上の課金が一般的となった今、バーチャルな買い物への忌避間は薄れているといえるでしょう。メタバースでは仮想通貨の導入で利用者に経済的なインセンティブを付与することも可能です。
以上の点から、これから登場するメタバースのプラットフォームが、セカンドライフのように一般化することなく消え去るとは考えづらいです。また既に仮想空間にアバターをまとって参加するコミュニティは数多く存在しており、限定的ではありますが、メタバースのコンセプトが現代社会に根付きはじめているのは間違いないでしょう。
メタバースの課題
高速インターネットの一般化とデジタル技術の進歩により、これから仮想空間(メタバース)における活動は盛んになっていくと思われます。しかし同時に現実的な課題もあります。
没入感を高めるためのVRデバイスはまだ一般的に普及していませんし、メタバース内の違法コンテンツや暗号資産決済の取り扱い、ユーザーのプライバシー保護は不十分な点が多いといえます。
今後メタバースが発展するためには、技術の発展と合わせて、新たに発生した問題への法的枠組みの整備が急務でしょう。
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