ミッションドリブンとは?使い方や浸透のさせ方を導入事例とあわせて紹介
「◯◯ドリブン」という言葉は、「◯◯にもとづく」「◯◯主導での」といった意味のビジネス用語。つまり「ミッションドリブン」といえば、「意思決定がすべてミッションに基づいていること」というような意味です。
企業にとってのミッションとは企業活動の目的や、企業の存在意義そのものを指しています。そのようなミッションの実現に向けてすべての活動が行われている企業は、「ミッションドリブンな企業」と言えるでしょう。
組織にミッションドリブンが浸透していると、業務内容が異なるメンバーでも同じ目的の実現に向かって事業に取り組めるようになります。社員の目的意識にバラつきがあることで悩んでいる経営者は、ミッションドリブンを取り入れるとよいかもしれません。
目次
企業におけるミッションの役割
企業にとって「ミッション」とはそもそもどのような意味を持つものなのでしょうか。
ブランディングにおけるミッションは、企業がかかげるビジョン(経営理念)を実現するための手段を表明したものです。そのため「自社の事業を通じてどんな価値を世の中に提供したいか」「なんのために行う事業か」「自社は何をするために存在しているのか」といった理念を実現するために何をするのか(しないのか)を具体的に言語化したものがミッションとなります。
ミッションがあることで、社内外に「この企業は何をする会社か」を周知することが可能です。社外には企業イメージを構築するものとして、社内には事業の方向性を共有するものとして受け入れられるでしょう。
ミッションドリブンな組織づくりを行うためには、ミッションが明確に言語化されていることが前提となります。
ミッションドリブンが企業にもたらす影響
ミッションドリブンを取り入れることは企業の体制にさまざまな影響を与えます。その多くはポジティブなものですが、注意しておきたいポイントも一部あります。
メリット
ミッションドリブンを取り入れることのメリットは、以下のようなものがあります。
- メンバー個人レベルでのミッション意識が高まる
- 社員全体のミッション意識が高まることで、同一の目的に向かって事業が進められる
- 全社が一丸となってミッション実現に向けて行動するムードが生まれ、仕事への使命感や誇りを持つことにつながる
- 行動に迷ったときの判断基準を持てるため、判断速度が上がり事業のスピードアップができる
デメリット
ミッションドリブンに限ったことではなく、組織に新たな概念を取り入れようとする際の注意点として、「従来の文化とのギャップについていけない人が現れる」可能性があるということが挙げられます。
「今日からこのように変更します」と突然言われても、それまで慣れ親しんできた考え方や文化を捨てて100%新しいものを受け入れることは誰にとっても難しいことだと言えるでしょう。程度の差こそあれ、ほとんどのメンバーがギャップを感じているはずです。
これまでの習慣と新たに導入した概念とのギャップが埋めきれないと、業務上の混乱を生んだり、離職率が高まったりとさまざまな悪影響を及ぼします。
新たな概念を導入する際には既存メンバーへの説明と実践に向けてのフォローをしっかり行うことでミスマッチを減らすことが可能です。
ミッションドリブンな組織を実現する方法
ミッションドリブンな組織を実現させるには、まずはミッションを社内に浸透させることが必要です。
せっかく決めたミッションも、社員に受け入れられなければ意味がありません。しっかり社内に浸透させるためには、次のような方法が考えられます。
- ミッションを明文化する
- 社員目線でミッションを考える
- ミッションを更新する際は社員も意見を出す場を設ける
- ミッションへの理解を深めるための研修を行う
- Webサイトや社内報などを用いてミッションを周知する
ミッションを明文化する
社内にミッションを浸透させるには、まず「自社のミッションはこれ」と明文化する必要があります。
経営者や役員クラスの社員の間で感覚的に共有されているというだけでは、他の社員がその感覚を掴むことはほぼ不可能です。
ミッションを全社で共有する大前提として、まずは全員が同じ文言でミッションを把握できる状況を作ることが求められます。
社員目線でミッションを考える
ミッションは経営者ではなく社員の目線で考えましょう。
ミッションに向かって実務にあたるのは現場の社員ですから、普段の業務を行うことで達成できる内容でなければいけません。
業務との関連性が高い内容にすることで、社員一人ひとりのミッション遂行意識を高めることにもつながります。
ミッションを更新する際は社員が意見を出す場も設ける
既存のミッションの内容を更新する際は、社員の意見も取り入れる場を設けたほうがよいです。
社員がまったく関与しない場で決めてしまうと、社員は自分とは無関係のことと認識してしまう可能性があります。
また、ミッションの変更は会社にとって大きなイベントです。役員だけで決めた内容にただ従うだけとなったら、社員のモチベーションは下がってしまうでしょう。
ミッションドリブンな組織を実現したいのであれば、しっかり社員を巻き込んでミッションを更新しましょう。
ミッションへの理解を深めるための研修を行う
社員研修の一環として、自社のミッションについて説明を行う機会を設けるのも、社内に浸透させる一手段です。
たとえ明文化されていても、テキストを読むだけでははっきりと意図が理解できない方もいます。
すべての社員に同じレベル、同じ内容で理解してもらうには、自社のミッションについて解説する研修を整備するのがよいでしょう。
Webサイトや社内報などを用いてミッションを周知する
研修とまではいかずとも、自社Webサイトや社内報を活用してミッションを周知することも可能です。
メディアを通じて伝えることで、研修のように特別な時間を割かなくても、社員は都合のよいタイミングで情報を受け取ることができます。
もちろん、メディアに掲載しただけでは読まない社員もいるでしょう。確実にすべての社員にミッションを知ってもらうには、少々弱い手段だといえます。
企業が定めたミッションの実例
ミッションは単なるスローガンではなく、企業が行う活動すべてを方向づける重要な指標です。ここでは2社ほど有名企業の例をあげます。自社のミッションを定める際の参考にしてみてください。
ファーストリテイリング
安価で機能性の高いファッションアイテムを提供し続けるアパレルブランド「UNIQLO(ユニクロ)」を展開するファーストリテイリング。
ファーストリテイリングのミッションは、以下のとおりです。
ファーストリテイリンググループは─
本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します
(出典:ファーストリテイリング公式サイト)
さらにこの文に続けて、「本当に良い服」「今までにない新しい価値を持つ服」「世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供」「独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献」「社会との調和ある発展を目指す」という各要素について、意味・意義を細かく定義しています。
本文だけでは人によって解釈が分かれてしまいそうな表現に具体的な注釈を入れることで、意識の統一を図っているようです。
トヨタ
日本を代表する自動車メーカー・トヨタ。2021年には実験都市「ウーブン・シティ」の建設に着手し、日本のモビリティテクノロジーを牽引する企業としてますます存在感が高まっています。
トヨタは社員の行動規範として「トヨタウェイ」「トヨタ行動指針」という2種類のルールを設けています。
トヨタウェイの内容は以下のとおりです。
トヨタは、
「だれか」のために
誠実に行動する
好奇心で動く
ものをよく観る
技能を磨く
改善を続ける
余力を創り出す
競争を楽しむ
仲間を信じる
「ありがとう」を声に出す
(出典:トヨタ公式サイト)
また、トヨタ行動指針は冊子にまとめられています。
冊子内ではトヨタ行動指針を次のように定義しています。
「トヨタ行動指針」(1998年策定、2005年改訂)は、実際の会社生活(含.日常業務)・社会生活で、具体的に行動する上で、私たちひとり一人が規範・羅針盤とすべき基本的な指針および具体的な留意点をまとめたものです。
(出典:トヨタ行動指針)
よりくわしい内容を確認したい方は公式サイトを参照してください。
トヨタウェイ、トヨタ行動指針はどちらも単に業務上のルールであるだけではなく、仕事・プライベートの垣根なく社員の日常生活全般において「トヨタ社員としてどう行動するか」を示したものです。
理念や精神論といった曖昧なものではなく、「こう動く」と行動ベースで書かれているのが特徴です。
ミッションドリブン実現の鍵は「納得感」
ミッションは企業が実現に向けて行動するべき指針です。企業とは経営層・マネージャー層だけを指すのではなく、一般社員やアルバイトも含むすべての働く人々を指します。
会社の精神性・文化に関わる事柄はトップダウン型で導入が進められることがよくありますが、リーダー陣だけがミッションドリブンを掲げても全社に浸透することはないでしょう。
導入された概念を実践に移すのは多くが現場の従業員です。現場の目線に立ち、納得して受け入れられる仕組みを作ること、また実践できる環境を整えることが、ミッションドリブンな企業風土を根付かせる鍵だといえるでしょう。
RANKING ランキング
- WEEKLY
- MONTHLY
UPDATE 更新情報
- ALL
- ARTICLE
- MOVIE
- FEATURE
- DOCUMENT