OFUSE・Skeb・pixivFANBOX…クリエイター低賃金問題解消に一手
勤務形態を問わず、多くのクリエイターにとって「生活の地盤を固める」ことは目を背けることのできない課題です。
クリエイターの活動は、その成果物からは労働に要したリソースが見えにくいために、客観的な評価にもとづく報酬が得られにくい傾向にあります。仕事に対する「適正な相場」が形成されている業界はいまだ少なく、作業量に対してわずかな報酬しか得られないケースもしばしばです。
このような現状から、「成果とその報酬」というモデルだけでは、活動の継続が困難になることも考えられます。
現在では、クリエイターの低賃金問題が一定の認知を得るようになりました。問題解決に寄与しうるサービスも増えており、クリエイターがクライアント企業を介することなく、ファンやサポーターからの支援を受けられる窓口が多く用意されています。
「ファンからの支援」と聞くと、「一部の著名なクリエイターだけが恩恵に与れる」というイメージがあるかもしれません。しかし、サービスによって支援形態も多種多様であり、会員制ファンクラブのようなコミュニティ型や、簡易的なリクエストを受けて有償で作品を制作するコミッション型など、ファンの多寡や活動内容に応じてプラットフォームを選択することが可能です。
状況に合ったサービスを利用し、ファンと交流する場を設けることが、活動の地盤を固めることにもつながります。この記事では、ファンとつながる場を見つけたいクリエイターや、支援したいクリエイターがいるファンに向け、支援の窓口になりうるサービスを紹介していきます。
目次
OFUSE(オフセ)とは
株式会社Soziの運営する「OFUSE(オフセ)」は、ファンがクリエイターに対して有料のファンレターを送ることができるプラットフォームです。その名の通り、ファンからの「お布施」を主旨とするサービスであり、メッセージの代金がクリエイター側に還元されるシステムになっています。つまりファンにとっては、「投げ銭とともにファンレターを送れる場」となるでしょう。
メッセージ1文字あたりの単価は2円(絵文字は4円)であり、ファンは50円~10,000円(税抜き)の範囲で自由に額を設定可能です。メッセージ料金のうち、手数料を差し引いた「91%」相当がクリエイターの手元に渡るため、還元率の高い支援方法といえるでしょう。
クリエイターとしてアカウント登録し、「OFUSE箱」を開設すれば、すぐにメッセージを受け付けられるようになります。創作分野はさまざまであり、イラストや漫画、文章や音楽、映像のほか、「お笑い」や「ハンドメイド」など幅広いジャンルを対象としています。
OFUSEの特徴:「応援と支援」を同時に行えるプラットフォーム
「応援する気持ちを金銭的な支援で伝える」という意味では、OFUSEはクラウドファンディングと通ずる点があるかもしれません。明確な違いとしては、OFUSEでは「成果物への対価や完成への期待として支援がなされるのではない」という点が挙げられます。
OFUSEにおいて想定されている支援者は、「お気に入りのクリエイターを応援したいが、適切な方法がわからない」といったニーズを抱えているファン層です。「クリエイターとの接触と支援を同時に行える」ことにより、気兼ねなくメッセージを送ることができるため、相互にメリットのある場が形成されやすいと考えられます。
そのためOFUSEのプラットフォームは、創作物を公開する場というよりも、ファンとクリエイターとの交流の場として利用されているケースが多いです。OFUSEの公式ページでも、「制作物に対してではなく制作者個人に応援や感謝の気持ちを伝えるサービス」として位置づけられており、さまざまな媒体でファンを獲得したクリエイターがOFUSE上でメッセージを受け取る、という形がスタンダードといえるでしょう。
(引用:OFUSE(オフセ)「よくあるご質問」)
クリエイターの利用方法
クリエイター登録
メッセージを受け取るには、「OFUSE箱」の開設が必要です。会員登録を行ったうえで、クリエイターとしての登録を行いましょう。
会員登録は、専用ページから、Twitter、Google、Facebookのいずれかのアカウントに連携させる形で行います。その後、クリエイター登録へと進み「本人確認書類のアップロード」および「料金受け取り用の口座登録」を済ませれば、登録は完了です。
リンクのシェア
クリエイター登録の後、マイページ上に自身のOFUSE箱のリンクが生成されるので、創作活動を展開しているサイトやSNS上に設置しましょう。公式ページでは積極的なリンク設置が推奨されており、SNSに1つの作品を投稿するごとにリンクを併記したり、YouTubeの動画内にリンクを設置したりといった方法が提案されています。
さらに、OFUSE箱へのリンクはQRコードでも出力可能なため、実地でのイベントにおける掲示や、配布物などにも活用できるでしょう。
ファンとの交流
マイページから、受け取ったメッセージに200字以内で返信することも可能です。あらかじめテンプレートも設定できるため、個別対応が難しい場合には用意しておくのもよいでしょう。クリエイターとの交流を望んでいるファンも多いので、公式ページにおいても感謝のメッセージを返すことが推奨されています。
OFUSEのページ上に自身の創作物を投稿することも可能です。ただし、フォーマットは簡易的なブログ形式であり、多くの作品を展示するよりは、活動内容を報告しつつ関連リンクを設置する、といった使い方が想定されています。
支援者の利用方法
アカウント登録
OFUSEでメッセージを送るだけであれば、アカウント登録は必要ありません。ただし、クリエイターからの返信メッセージを受け取るにはログインが必要となります。ニックネームとメールアドレスのみで登録可能なので、差し支えのない限り済ませておくとよいでしょう。
クリエイターからメッセージが届いた際は、マイページから確認可能です。その他、好きなクリエイターをフォローしておくことで、OFUSE上に投稿があった場合に通知されるようになります。
支援方法
クリエイターのOFUSE箱にアクセスすると、まず支援金額を設定する画面が表示されます。ここで設定した金額内の文字数で、メッセージを送れるようになる仕組みです。1文字あたり2円(絵文字は4円)の設定なので、たとえば500円であれば250文字が上限ですが、必ずしも枠を使い切る必要はありません。
あるいは、500円以上の支払いでメッセージの代わりにスタンプを送ることも可能です。スタンプの種類は40ほどですが、文面を思いつかない場合などに検討してみるとよいでしょう。
メッセージの入力が完了すると、支払い画面に切り替わります。支払い方法は、クレジットカードまたはVプリカでの決済に対応しています。
Skeb(スケブ)とは
株式会社スケブの運営する「Skeb」は、ファンがクリエイターに有償で作品制作を依頼する「コミッション型」のプラットフォームです。クライアントから寄せられたリクエストのうち、クリエイターが対応したいものをピックアップし、その作品を納品することでやり取りが完結します。
ジャンルはイラストがメインですが、音声や動画、テキスト形式にも対応しています。その他、創作の初心者が自身の作品に対し、「クリエイターからのアドバイス」をもらえるサービスなど、ユニークな形態が用意されていることも特徴です。
「スケブ」とは「スケッチブック」の略であり、そこから転じて同人誌販売会などで「書き手がスケッチブックを持参したファンに、その場で希望のイラストを描く」という文化を指すようになりました。「Skeb」ではこうしたやり取りを有償サービスとして展開し、クリエイターが報酬を得られる場を提供しています。
もともと、個人などが「クリエイターに有償で作品の制作を依頼する」というコミッション形式は、海外では広く行われていましたが、日本国内では普及が進まない状況にありました。Skebをはじめとするコミッション型プラットフォームが登場することで、煩雑なやり取りが簡略化され、トラブルのリスクも低減されるなど、発注側・受注側がともに利用しやすい環境が整ってきたといえるでしょう。
クリエイターがコミッション型のサービスを利用するメリットの1つに、「国内外問わず、依頼を受注できる」点があります。とりわけ日本のイラスト文化などは海外での需要も大きく、受注の間口を広げる効果は大きいといえます。やり取りに不安がある場合にも、Skebでは100以上の言語に対応した「自動翻訳機能」が用意されており、依頼文を日本語にして受け取ることが可能です。
Skebの特徴:「クリエイターファースト」の受注プラットフォーム
Skebが通常の制作依頼と異なる点として、制作が「最初のリクエストのみ」に準拠して行われることが挙げられます。
Skebの利用規約では、クリエイターの負担を最小限に留めることが特に重視されています。受注の際の打ち合わせやリテイクは規約上禁じられ、「リクエスト」と「納品」だけでやり取りが完結する形です。そのため商業的な依頼というよりも、「ファンがクリエイターに好きな作品を作ってもらう」ことを主旨としたサービスだといえるでしょう。
固定的な料金プランを設定するのではなく、依頼金額と内容に応じてクリエイターが金額を設定できることも特徴です。
Skebを通じて制作・納品された作品の権利は、基本的に「クリエイター側」に帰属します。そのため、一度クライアントに納品した作品であっても、その他の媒体に自由に(クライアントの許可なく)再掲することが可能です。一方、クライアント側の権利は「個人利用」に制限されており、商業利用を希望する際には、依頼時にクリエイターから許諾を得る必要があります。
手数料は現在9.8%(※2021年8月時点のキャンペーン手数料)であり、クリエイターへの報酬から天引きされる形です。手数料の割引措置も用意されており、「クリエイターのTwitterプロフィールにSkebのURLが記載され、かつリクエスト金額が3,000円以上の場合」には「6.8%」に緩和されます。
クリエイターの利用方法
アカウント登録
Skebを利用するには、「Twitterアカウント」が必須です。Twitterの連携サービスとしてSkebを承認することで、アカウントが開設されます。クリエイターとしてリクエストを受け付けるには、これに加えてメールアドレスと銀行口座の登録が必要となります。
募集する依頼内容・形式の設定
アカウント設定のページで、受け付ける依頼の内容や納品形式を設定できます。受注の最低金額や納品期限、依頼から承認までの期限など、細かな設定が可能です。
センシティブな内容の依頼も受け付けるかどうか、細かな指示の依頼(通常140字までの依頼文が1,000字まで拡張)に対応するかどうかなども指定できるので、運用方針に合わせて設定しておきましょう。
金額については設定の自動化も可能であり、過去の統計情報から、リクエストの金額・件数が最大化するよう調整する機能も用意されています。はじめてで相場感が掴めない場合など、利用を検討するとよいでしょう。
依頼から納品
リクエストがあり次第、マイページの「リクエスト」欄および登録したメールアドレスに通知が届くので、設定した承認期限までに依頼を受けるかどうかを決定します。
受注する場合、納品期限の起算日は「リクエストを承認した日」ではなく「リクエストが送信された日」となるので注意しましょう。納品期限が過ぎた場合には、クライアントに報酬が全額返金されます。なお、期限が過ぎてキャンセルとなった場合など、クライアントに再度同様の依頼をしてもらうよう促す「再送要請」の機能も用意されています。
対応する納品形式は公式のクリエイター用ガイドラインに詳細が記載されていますので、詳しくはこちらをご参照ください。
支援者の利用方法
アカウント登録
クライアントとして依頼を行う際も、Skebのアカウントが必要です。公式ページのログイン画面から、Twitterの連携サービスとしてSkebを承認し、登録を行いましょう。
リクエストの送り方
依頼したいクリエイターのページから、「新規リクエスト」をクリックすると、金額と依頼内容を入力する画面が表示されます。
金額はクリエイター側の設定している「おまかせ金額」が初期値となっていますが、依頼内容により変更することも可能です。クリエイターページの説明文などを参照しながら、適正と思われる金額をオファーしましょう。
依頼の本文は基本的に140字以内で入力します(プロモードに対応しているクリエイターの場合は1,000字まで入力可)。反映してほしいポイントを端的にまとめ、クリエイターに任せたい部分は「おまかせ」の旨を明記するとよいでしょう。
その後、期限内に承認があれば、作品の完成を待つのみです。納品され次第、やり取りは完了となります。
支払いについて
支払いはクレジットカードのほか、Kyashやバンドルカードを用いたコンビニ決済も可能です。
なお、クリエイター側からのキャンセルがあった場合や、期限内に納品されなかった場合は、全額返金されるシステムとなっています。
pixivFANBOX(ピクシブ ファンボックス)とは
ピクシブ株式会社の運営する「pixivFANBOX(ピクシブ ファンボックス)」は、ファンがクリエイターを月ごとに支援し、その対価としてクリエイター側から限定コンテンツなどを受け取れるコミュニティ型サービスです。
限定コンテンツは、イラストや漫画、音声、動画、ブログなどさまざまな形式で投稿可能です。そのため、提供するプラン内容も柔軟に設定でき、作品以外にも「創作におけるお役立ち情報」や「近況報告」をブログや動画の形で発信しているクリエイターも見られます。
プラン料金もクリエイター側が任意に指定可能です。複数のプランを設定し、金額および作品の公開範囲を変えることもでき、ニーズを読んだプラン設定が重要になるでしょう。
手数料は10%であり、クリエイターへの支援総額から差し引かれます。
pixivFANBOXの特徴:クリエイター版オンラインサロン
「月ごとの支援」や、それに対する「限定コンテンツの投稿」という点を見ると、ファンボックスは「サブスクリプション」の形態に極めて近いといえます。実際のところ、ファンボックスを一種のサブスクとして運用しているクリエイターも多いです。
ただし、公式ページにおけるサービスの説明としては、「クリエイターの創作活動を応援するためのファンコミュニティ」と記載されています。重点は「ファンによる支援と、それへのお礼としてのコンテンツ投稿」に置かれており、サブスクのように「サービスとその対価」からなる関係が目指されているわけではありません。
以上をふまえると、ファンボックスは「クリエイター版のオンラインサロン」といったモデルとして考えるのが妥当かもしれません。クリエイター側の自由な活動に対し、ファンが任意に支援を行う形式であるために、商業的な「契約」とは性質が異なります。ファンの支援したい思いをベースに、それに応える形でコンテンツが提供されるようなコミュニケーションが想定されているのです。
クリエイターの利用方法
アカウント登録
クリエイターとして活動するには、「pixiv ID」が必要となります。pixiv公式ページから、メールアドレスやニックネーム、性別、生年月日を入力すればID登録は完了です。あるいは、Twitter、Apple ID、Google、Facebookを利用したログインにも対応しています。
登録後、マイページにログインし、メニューから「クリエイター登録」を行いましょう。メールアドレスの確認と、センシティブな投稿の有無を選択すれば、すぐにクリエイターとして活動ができるようになります。支援金を受け取るには、銀行口座もしくはPayPalアカウントの登録が必要です。
登録後はまずプロフィールの設定や、外部リンク設定を行うとよいでしょう。特にTwitter連携を行っておくと、Twitterのフォロワーがファンボックスを開いた際、クリエイター検索画面で「Twitterでフォロー中」という一覧に表示されるので、既存のファンから発見されやすくなります。
プラン設定・集客
メニューの「プラン管理」から、プラン名や料金(100円~10,000円)、説明文を設定できます。無料で閲覧可能なコンテンツのみを投稿することも可能ですが、基本的にファンボックスは有料プランの運営を想定されたプラットフォームです。
コンテンツの公開範囲は投稿ごとに設定でき、「今回の投稿内容は○円のプラン以上に登録のユーザーが閲覧可能」とその都度決められるようになっています。投稿後にも範囲を変更できるので、「一定期間は無料公開、その後バックナンバーとして有料プランに」といった運用も可能です。
新規ユーザー向けの全体投稿も利用しつつ、「有料の限定コンテンツ」と「集客のための無料コンテンツ」をうまく使い分けていくことが、多くのファンを獲得するうえでの鍵となるでしょう。
ただし、ファンボックスのクリエイター検索画面では、カテゴリ分けやランキングなどの機能が用意されておらず、新規ユーザーに見つけてもらうのが難しくなっています。そのため、自身のホームページやSNSなどを通じ、ファンボックスでの活動を周知していくことが望ましいでしょう。
ファンボックスの支援者は「支払い方法」に注意
ファンボックスで支援を行う際にも、「pixiv ID」が必要となります。
登録後はすぐにクリエイターへの支援が可能です。お気に入りのクリエイターのページからプランを選択し、支払い方法を選択しましょう。
支払い方法はクレジットカードのほか、現金でのコンビニ決済、PayPal、Kyash、Vプリカに対応しています。手数料がない点、自動更新が可能な点からいえば、クレジットカードまたはPayPalでの支払いが便利です。
コンビニ決済の場合、100円の手数料が発生するほか、自動更新ができないデメリットがあります。「まとめ払い」には対応しており、1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月のいずれかを選択可能です。
VプリカおよびKyashを利用する場合は、残高が不足しない限り自動更新されます。Kyashは手数料無料ですが、Vプリカはカードの購入時点で手数料が組み込まれているため、一定のロスが生じます。
まとめ
クリエイターの活動は、「自身の興味や趣味の延長」と見なされることもあり、「市場における価値」が正当に評価されにくい面があります。クリエイター自身も、「好きでやっているのだから」という思いから、低賃金を甘んじて受け入れるケースが少なくありません。
こうした風潮は、クリエイティブ業界に蔓延する労働の搾取を助長することにもなるでしょう。「利益を度外視した高いクオリティ」が「当たり前」と見なされてしまえば、制作のリソースが過小評価され、作り手を軽視した消費にもつながっていくと考えられます。
クリエイター側としても、生活の土台がなければ創作活動を継続することはできません。自身の作品に期待するファンの気持ちに応える意味でも、ファンから直接支援を受けられるプラットフォームは有効に活用すべきといえるでしょう。
そのクリエイターの作品を長く楽しみたいファンにとっても、上のような支援窓口が用意されていることはメリットになるはずです。メッセージで気持ちを伝えたり、好きな作品を制作してもらったりすることが、クリエイターを応援しつつ支援することにつながり、さらにはクリエイターの低賃金問題解消にも寄与することになるため、積極的に利用していきたいところです。
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