オンボーディングとは?SaaS・アプリのカスタマーサクセスに向けて
この記事ではSaaSやアプリケーションサービス領域での「オンボーディング」を紹介します。
近年、SaaSやアプリサービス領域ではパッケージの買い切りではなく、月額や年額課金制のサブスクリプションによるマネタイズが一般化しています。
そのため一人のユーザーにできる限り長く自社製品を使ってもらうこと(=顧客のLTVを最大化すること)が、経営上、非常に重要視されるようになりました。
オンボーディングとは、ユーザーが新たなサービスやアプリを使い始めた際、すぐに離脱して類似の別サービスに流出することを防ぐために必要な考え方です。この記事ではオンボーディングの基本的な意味や、SaaS・アプリ領域での用いられ方について解説します。
目次
SaaS・アプリ領域でのオンボーディング
「オンボーディング(on-boarding)」とは、原義的には「(乗り物などに)乗り込むこと」を表す英単語です。ビジネス用語としては、新入社員の早期退職を防ぐために行われる、社内研修などの人事的施策のことを指すのが一般的です。
この「社員を定着させる」という意味が転じて、SaaS・アプリサービス業界では「新規ユーザーを自社サービスに定着させるための施策」を表すようになりました。
早期解約を回避
オンボーディングを行うことで、新規ユーザーが即解約してしまうことを防止可能です。
新サービスを導入した直後のユーザーは、どのようにそのサービスを使えばよいのかあまりわかっていない状態です。使い方がわからない状態で放置していると、ユーザーに「使いにくいサービス」と評価され、類似の別サービスへ流出してしまう原因となります。
たとえば新規ユーザーに対するチュートリアルを手厚くしたり、「よくある質問」をまとめたりすることで、サービスを使い始めてすぐにユーザーに成功体験を与えることが可能です。一度成功体験を得たユーザーはサービスに価値を感じ、早期解約の回避につながります。
アップセル、クロスセルの可能性が高まる
オンボーディングによりサービスの機能を伝える中で、ユーザーが使用しているプランよりハイクラスなプランを紹介したり、自社の別製品を案内したりすることで、アップセル・クロスセルにつなげることができます。
使用中のサービスに価値を感じているユーザーは、より高機能なハイクラスプランや同社の他サービスへの興味を引き出しやすくなります。
オンボーディングを通じてアップセル・クロスセルの成功率を上げることで、顧客単価の向上にも貢献できるでしょう。
顧客のLTVを向上させ、長期的な売上増に寄与
新規ユーザーにオンボーディングを行うことで、サービスの使い方が理解され、「日常的に使うもの」として認知されます。一度サービスがユーザーの生活に組み込まれれば、別サービスへ流出せず長期間利用される可能性が高まります。
利用期間が長くなればなるほどユーザー1人あたりのLTV(生涯顧客価値、ライフタイムバリュー)も大きくなっていくため、長期的な売上増に貢献することが可能です。
顧客のライフサイクルとオンボーディングの関係性
新サービスを導入したユーザーのライフサイクルは、「導入」「活用」「定着」の3フェーズにわけて考えられます。
すべてのフェーズにおいて企業とユーザー間の接触は発生しますが、特に導入フェーズから活用フェーズに移行するまでのサポートを「オンボーディング」と呼ぶことが一般的です。
日々新たなソフトウェアやアプリケーションが生まれている現在、ユーザーが定着するかどうかは初期の不満を取り除けるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。
オンボーディングを通じて、サービスの使い方、業務・生活での活かし方、トラブルシューティングなどのノウハウを提供し、ユーザーの業務や日常生活のフローにサービスが組み込まれることを目指します。
カスタマーサクセスの観点からも、オンボーディングにコストをかけることでサービスを長く使うユーザーが増え、結果的に収益も上がります。オンボーディングが成功するか否かは、カスタマーサクセスの実現に大きな影響を与えるのです。
ユーザーの3つのライフサイクルと各フェーズにおけるオンボーディングの関係性について以下に紹介します。
導入フェーズ
「導入フェーズ」はサービスを使い始めた直後のタイミングで、ユーザーがサービスの使い方をほぼ知らない段階です。オンボーディングは主にこのフェーズで行います。
公式マニュアルやサービス内の練習コンテンツなど、何らかのチュートリアル的なサポートを経てサービスを使うことに慣れてもらう必要があります。
オンボーディングの成否が以降のフェーズにユーザーが進むかどうかを左右するため、戦略を練ってオンボーディングを進める事が必要です。
活用フェーズ
「活用フェーズ」はサービスにある程度慣れ、業務や生活の一部として浸透してくる段階です。ユーザーがサービスの機能と業務・生活上のシナジーを意識し始めるため、より応用的・実践的なノウハウが求められるようになります。
活用フェーズでは、サービスの利用を通じて、利用前に抱えていた課題が解決(サクセス)した状態に変化することが理想です。ここでも「ユーザーの利用環境に合ったサービスの活用法を案内する」「ユーザー同士が交流できる場を設ける」など、多少のオンボーディングが必要となります。
定着フェーズ
「定着フェーズ」はユーザーの業務・生活フローにサービス利用が欠かせないものとなった段階です。ユーザーが安定してサービスを利用できており、オンボーディングは完了していると考えられます。
ただしオンボーディングが完了したからといって一切ユーザーにタッチしなくてよいわけではなく、サービスに関する新着情報を定期的に提供するなど、サービスに対するユーザーのロイヤルティを高める施策は引き続き行う必要があります。
プロダクトには長期間利用しているユーザーだからこそ見えてくる課題が隠れている可能性などもあり、定着フェーズに入ったユーザーからは有益なフィードバックが得られるかもしれません。
オンボーディングはタッチポイントのレイヤー別に考える
オンボーディングを設計する際は、ユーザーと企業間のタッチポイントをレイヤー別に考えるとスムーズです。サービスとユーザーのタッチポイントは、大きく以下の3つに分けられます。
- ハイタッチ層:最も密にやり取りを行う少数の顧客
- ロータッチ層:ハイタッチとテックタッチの中間層
- テックタッチ層:システムを介してやり取りをする距離の遠い顧客
基本的にユーザーとの距離が近いほど見込みLTVが大きくなるため、よりオンボーディングにコストをかける価値が高まるといえるでしょう。
ハイタッチ層へのオンボーディング
ハイタッチ層はユーザーに対して企業側もスタッフを割き、対人でサポートを行うのが基本的な形態です。
ハイタッチ層へのオンボーディングは、「ユーザーごとに専任担当者がついてレクチャー」「個別のフォローアップセミナーを開催」「定期的な訪問・ミーティングを実施」など、互いに顔が見える対応が求められます。
ロータッチ層へのオンボーディング
ロータッチ層は、対人でのサポートとシステムによるサポートを併用する形が一般的です。
オンボーディングに際しては、「ユーザーの状況に応じてカスタムした資料を提供」「一般ウェビナーへの招待」「メールによるサポート」などが考えられます。
テックタッチ層へのオンボーディング
テックタッチ層は、あらかじめ用意した応対システムを利用してユーザーと接触するのが基本です。
テックタッチ層へのオンボーディングは「サービス公式のヘルプページを整備」「チャットボットなどでの自動応対」「ノウハウを共有するメルマガの配信」などが挙げられます。
適切なオンボーディングはサービス発展の要
SaaS・アプリサービスのユーザー定着にはそれなりのコストがかかるものです。数多くのサービスの中からせっかく自社プロダクトを選んでくれたわけですから、できる限り長期間利用し、仕事や生活に役立ててほしいと思うでしょう。
そのためにオンボーディングの考え方を取り入れることは、今や必須。「よいもの」を提供するだけでなく、「よいもの」をよいと理解してもらう取り組みをすることで、ようやくユーザーに価値が正しく伝わります。
オンボーディングは仕組みの構築から効果の実感まで時間がかかりがちな施策でもありますので、指標を定め、しっかりと計測しながらロングスパンで取り組むことも必要です。
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