最先端のWebマーケティングを発信するメディア

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Pinterest Japan SMB日本統括責任者 井上英樹さん

ピンタレスト・ジャパン広告事業開始から半年、強みと成功事例をSMB日本統括責任者に聞く!

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Pinterest Japan(ピンタレスト・ジャパン)が日本で広告・ショッピング機能を開始してから半年が経過。そこで今回は、SMB日本統括責任者である井上英樹さんに、中小企業にこそ活用してほしい強みと成功事例をお聞きしました!

ピンタレスト広告(Pinterest アド)とショッピング機能

Pinterestイメージ

Pinterest(ピンタレスト)といえば、画像や動画を投稿したり、ほかのユーザーが投稿した、あるいは外部サイト等に掲載されている画像にピンをつけて保存したりすることのできるビジュアル探索ツール。

MAUは4億人以上、日本だけに絞っても約870万人にのぼり(ニールセン調べ)、さまざまなアイデアを探索、シェアできるプラットフォームとして広まっています。

▶参照:Pinterest Business

2022年6月1日(水)には、満を持して広告サービスである「Pinterest アド」、そしてShopify(ショッピファイ)と連携させたショッピング機能を導入。これにより、オーガニック検索だけでなく、広告を通じてユーザーをECサイトに誘導し、商品を販売することが可能になり、企業活用の機運が高まっています。実際にビジネスアカウントを作成したり、広告を活用してみたりした企業の方も多いのではないでしょうか。

Pinterestをビジネス活用するうえで最大の特徴といえるのは、指名検索されにくいという点。たとえばブランド名や企業名よりも「赤 ケーブルニット」など、いま欲しいもの、知りたいことを探す目的で検索される傾向が強く、即時性が求められる広告との親和性はきわめて高いといえます。

この点をふまえて、広告展開、ショッピング機能搭載から半年たった今、改めてPinterestというプラットフォームをビジネス活用する際に強みになることや成功事例などを、Pinterest Japan SMB日本統括責任者の井上英樹さんに伺ったので、ぜひ参考にしてみてください。


井上英樹さんのプロフィール
Pinterest Japan SMB日本統括責任者。
米国デルの日本法人およびデル・アジアパシフィックにて広告宣伝本部長、ダイレクト営業本部長、リテール営業本部長などの要職を歴任したのち、2014年にFacebook(現Meta)に入社。
シンガポール本部を拠点に、執行役員として広告代理店パートナーおよび中小規模の企業に向けたInstagramやFacebookのビジネス活用・広告出稿を支援するチームを統括し、同社の成長に貢献。2022年3月、帰国とともにPinterest Japanに参画し、現職に就任。

ピンタレスト広告はポジティブに受け入れられる

Pinterest
(Pinterestアプリのホーム画面イメージ/Pinterest Japan提供)

―今年2022年6月より広告事業を展開されていますが、改めてその背景についてお伺いできますか?

Pinterest Japan SMB日本統括責任者 井上英樹さん(以下、井上さん):Pinterestというのは、レシピや服のコーディネートなどの具体的なアイデア、あるいはウェディングプランやいつか行きたい旅先、家を買うときのデザインなど人生において大きな瞬間のためのインスピレーションに出合い、保存して、整理していくというビジュアル探索ツールで、ソーシャルメディアではなく「パーソナルメディア」と呼んでいます。

ユーザー層は―ユーザーのことを「ピンする人」ということで「ピナー」さんと呼んでいるんですが―、日本においてもZ世代やミレニアル世代が多く、AI機能によってしっかりとレコメンデーションしていくことで、長らくご愛顧いただいています。

日本でもプラットフォームが成長し、コミュニティやコンテンツが整ってきたので、企業さんにとっても自社商品やサービスを提供したり、ユーザーにリーチしたりできる場になったのではないか、というところで、ついに広告事業を始めさせていただきました。

たとえばSNSだと友だちやフォローしている方の新規投稿を見たり、ニュースをチェックしたりすることを目的に開くことが多いと思うんですが、それだと広告が表示される適切なタイミングでないときもあるかもしれません。

でもPinterestの場合、ピナーさんは商品やサービスといったアイデアを求めてやってくることが多いので、ポジティブに受け入れてもらえるような広告を提供できると考えています。

ほかのweb広告と異なるピンタレスト広告の強み

―ほかのweb広告と比較したとき、ピンタレスト広告の強みとなる部分は、まさしくピナーさんに好意的に受け入れられやすいというところでしょうか?

井上さん:そうですね、主に3つのポイントがあると考えています。

1つめは、おっしゃるように、目的を持ったピナーさんが多いという点。
行ってみたいスポットを探す、欲しい商品を探す、といった「新しい出合いを発見したい」というモチベーションを持った方が非常に多いです。

実際に調査してみると、なにかを購入前にインスピレーションを得るためPinterestを利用したことがあるというユーザーは89%、つまり約9割の方がそういう意図で訪れているということがわかっています。

たとえば家の模様替えをしようと思ったときに、最初から「これを買う」と決めていて、それを検索するというより、どういう部屋にしたいかアイデアを見つけるほうが先なんじゃないかと思いますが、そういった、今後につながるポジティブな意識を持ったピナーさんが多いということがPinterestのユニークなポイントです。

2つめはテクノロジーの話になるんですけど、ピナーさんの行動を支援するために、いわゆるコンピュータビジョン(※)などAIの技術によって、適切なピン、もしくはコンテンツとして適切な広告を適切なタイミングでお届けすることができるというプラットフォームそのものも強みだと感じています。

※ コンピュータビジョン:画像や動画を検知して、その視覚データから意味のある情報を導きだし、新たな価値を提供するAIの分野のこと。画像検索したときに似た画像を提示する技術など。

3つめは、ポジティブであることですね。
我々の矜持だと考えているんですけど、ポジティブでひらめきがあふれるプラットフォームを目指しています。

ひらめきが沸いたり、情報をピンポイントに得られたりするというのは、すごくポジティブな体験だと思うんですよね。

日本のピナーさんにおいては、45%と約半数の方が広告をクリックするとおっしゃっていて、その数はほかの媒体と比べると1.4倍。
コンテンツとして受け入れられる広告というのは、アイデアの一部として捉えられているといえると思います。

あとPinterestは、コロナをはじめとするヘルスに関する誤った情報を拡散させないよう排除し、政治的に偏った投稿についても先進的に、厳しいポリシーに沿って対処させていただいているので、安全性が高いという点もポジティブに捉えていただける要素だと思っています。

―広告主目線だと、「拡張ターゲティング」という機能も魅力的だと思いました。
広告を打ち出す際、たとえば「ケーブルニット」を検索したユーザーに表示させよう、といったターゲティングを行うと思うんですけど、そのキーワードだけでなく近しいものを検索したユーザーにも表示させることができると、潜在層にもリーチできますよね。

井上さん:そこまで調べていただいているんですね、ありがとうございます。
それに関してもやはり「新しい出合いを発見したい」という目的を持ったピナーさんが多い場でオーディエンスを拡張することによって、大きな意味を持つことになるんじゃないかと考えています。

発見されるチャンスは平等

―広告事業開始から約半年経ちましたが(当インタビューは2022年11月22日(火)に行われました)、現在どういった業種の方が広告を利用されているのでしょうか?

井上さん:まだまだ伸ばしていっているところではありますが、予想以上に大きな反響をいただいていて、日々ユーザーさんも広告主ユーザーさんも増えている状況です。

大手のグローバル企業にも、SMBと呼ばれる中小企業にも活用いただいていて、業種でいうとファッション、フード、ホーム、ビューティーといった分野がPinterestにおけるトップカテゴリーなので、それに関連するお客さまはもちろん、それ以外の業種の企業さんからも、Pinterestをポジティブに利用しているピナーさんにリーチしたいということで、幅広くお使いいただいています。

―以前からアクティブに更新していたり、フォロワーを多く抱えていたりするアカウントが広告効果を得やすいのでしょうか?

井上さん:Pinterestの場合、指名検索ではなく一般的なワードで探索されるユーザーが97%と非常に多いという特徴があるんですね。
たとえばブランド名やホテル名よりも「冬 メンズコート」、「リラックスできるホテル」など。

なので、本当に企業やブランドの規模、フォロワー数を問わず、平等に発見されるチャンスがあります。

実際ピナーさんは、SNSと違ってフォロワーさんに向かって情報を発信しているのではなく、あくまでインスピレーションを探索するエンジンだという感覚で利用していただいているんじゃないかなと思うんですね。

そのコンテンツがほかのピナーさんにとって有益であれば、AIがレコメンドして表示されるというシステムなので、これまでアカウントをつくったことがない、あるいはつくったけれど投稿したことがないという方も全然ためらう必要はなくて、どういう商品・サービスを持っていて、それをどういったユーザーさんに届けたいか決めたら、まず始めていただいて、そこからPDCAを回して効果を感じていただきたいと思っています。

―SNSだとフォロワーが少ないと拡散されにくいという面が大きいと思うので、かなり大きな違いを感じますね。

井上さん:そうですね、一般のピナーさん、広告主のピナーさんをフラットに結びつけるプラットフォームだと考えています。

ピンタレスト広告を活用した成功事例

―実際にピンタレスト広告を利用して成功された事例をご紹介いただけますか?

井上さん:今まさに広告事業を始めて半年経ったので、そういった情報を整理しているところなんですけど、たとえばフードカテゴリーだと、江戸時代から受け継ぐ伝統を大切にしながら、お茶の新しい価値を発信している京都の伊藤久右衛門さまに、Pinterestにて新規ユーザーに向けたコンバージョンキャンペーンをご活用いただいた結果、新規ユーザーの獲得に成功され、売り上げをアップさせることができました。

広告を通じて、最大10倍という高い費用対効果とエンゲージメント率を獲得され、クリック率は最大4%を実現されました。

あとはハウジングだと、非常に高いデザイン性でもって広告を打ち出したところ、これまで利用されていた媒体と比較して特に高いインベストメント効果が得られたハウスビルダーさんもいらっしゃいます。

それから、ショップの店頭などに飾られる看板やサインボードなどを取り扱っているBtoBの企業さんも、ピンタレスト広告によって新たにお客さまを獲得されていますね。

―その企業さんたちは、もともとPinterestを利用されていたんでしょうか?
それとも広告を始めるにあたってアカウントを新規開設されたのでしょうか?

井上さん:今まで使っていなかった、アカウントもなかったお客さまも効果を出されて、そのまま継続して使っていただいています。

偶然の出合いを生むショッピング体験

ショッピング機能
(「アイデアアド」のイメージ/Pinterestニュースルームより)

―広告サービスと同時にショッピング機能もスタートさせましたが、ビジネス活用を強化したことでなにか大きな変化はありましたか?

井上さん:いわゆるBtoCのオンラインコマース事業を行っている方々にとっては、Pinterestからそのコマースサイトにシームレスに流入させることができるようになったのは大きいと思います。

あとコンテンツを制作されるクリエイターさんにとっても、そのスキルをかたちにして発信されることで、ニーズのある方とつながる場として活用いただけるプラットフォームになりました。

これまでもクリエイターさんに対しては、どのようにしてクリエイティブを上げていくかサポートさせていただいていたんですけど、ショッピング機能が導入されたことで、企業の方々がそのクリエイターさんを発見して、いわゆるインフルエンサーマーケティングのように、商品やサービスとタイアップするというチャンス(「アイデアアド」を生むことができたんです。

―アイデアを見つけて、ピンして保存するだけでなく、そのまま商品ページに遷移して購入するなど、目的に沿ったアクションの幅が延長されたというわけですね。

井上さん:ショッピングってやっぱり、偶然の出合いや見つける喜びがあるものだと思うんですよ。
ただ「モノを買う」という単なる購買行動とはちょっと違うんじゃないかな、と。

たまたま見つけたお店に入って、「これいいな」と見ていたら、隣の棚にも好みの服があって、出合いが連鎖していくことってよくありますよね。

オンラインだと「これを買おう」って検索して購入して終わり、ということもあるかもしれませんが、Pinterestはまさしく、その偶然の出合いやポジティブなインスピレーションを醸成させたショッピング体験ができる場だと思うので、それはこれからも強化していきたいです。

―個人的にネットショッピング派なんですが、まさしく先日久しぶりに店頭で服を買ったら、あれもこれもかわいい!と目移りしてしまって、それがすごく楽しくて、「買い物って本来こういうものだったな」と実感したばかりだったので、オンラインでもそれが体験できるのはとてもうれしいです。

井上さん:私自身もPinterestにインスピレーションをもらっているので、そういった体験をどんどん届けていきたいと思います。

日本ユーザーのピン数はデイリー330万!

Pinterestアプリを閲覧
(Pinterest Japan提供)

井上さん:いま日本で1日にどのくらいのアイデアがピンされていると思いますか?

―ええ……全然検討もつかないです。
日本のMAUが月間約870万人で、とはいえみんな一度に複数ピンすると思うので……、根拠はないですが、500万くらいでしょうか……?

井上さん:ありがとうございます。500万いったらいいなとおもいますけど、現在はデイリーで330万くらいですね。

これだけのアイデアが日々保存されているということは、それ以前に検索されている、閲覧されているコンテンツはもっと存在するということなので、やっぱり多岐にわたって利用されているんだなと感じます。

先ほどトップカテゴリーはファッション、フード、ホーム、ビューティーと申し上げましたけど、車の購入を検討中の方は車を、子育て世代のユーザーも多いので、そういった方は子育てに関するアイデアを、本当に思いつくさまざまなことが検索されています。

―たしかに私も以前、別のメディアを運営していたときに招待制のオフラインイベントを行ったことがあったのですが、どういった場所で、どういった統一感を出して、どういった演出をしようか、どうしたら来場者の方々に楽しんでいただけるか、Pinterestでたくさんアイデアを探して、ひたすらボードに保存して、それをメンバーと共有してプランを練る、ということをしていました。

Pinterestは非公開のシークレットボードをつくって、そこに招待したメンバー間だけでピンを共有できたり、ボードの中にサブボードをつくって整理できたりするので、本当に頭の中にある思考をまとめる際にも便利で、ユーザーの方々はそれぞれ自分に合った使い方でいろんなキーワードを検索されているんだろうなと思います。

井上さん:実際に利用されている方のお声を聞けてうれしいです。
年に1回「Pinterest Predicts」というコンテンツで、翌年のトレンド予測を公開しているんですが、それを見ていただくと、ますます非常にさまざまなテーマが検索されていることがおわかりいただけると思います。

圧倒的なアイデア数からトレンドを予測

(2022年12月8日(木)に発表されたばかりの「Pinterest Predicts 2023」を紹介する動画)

―Pinterest Predictsは毎年かなり参考にさせていただいています!
いま検索されているキーワードというのは、いま流行っているものなので、今後のトレンドを予測するには独自の分析方法があるのではないかと思いますが、お話しいただける範囲でお聞かせいただけますか?

井上さん:前年から当年にかけて検索のボリュームが著しく伸びたものを内部で分析しているんですけど、毎月グローバルで1億以上検索されたキーワードの動向を見ながらカテゴライズして、そこから傾向を分析して、公開しています。

例を挙げると、昨年発表した2022年のトレンドを予測したPinterest Predictsのなかに「ドーパミン・ドレッシング」というものがあるんですけど、この数年はコロナ禍により家で過ごすことが増え、リラクシーで色みも落ち着いたファッションアイテムを選ぶ方が増えていたと思うんですね。

でも2021年の時点でPinterestでは、鮮やかな色を使ったファッションの検索率が500倍伸びているというところに注目し、まずはカテゴライズして、関連した検索ワードの中でも特に増加しているもの―フューシャピンクのドレスの検索数が前年より4倍増えたなど―をまとめて、2022年は鮮やかな色のファッションが流行るだろう、という予測をしました。

―実際ドーパミン・ドレッシングは多くのファッション誌でも取り上げられ、一般的に広まりましたね。
消費者だけでなくマーケターの参考にもなるデータだと思います。

井上さん:まさしく、もともとは消費者向けに公開していたんです。
来年はこういったトレンドが来ます、といったポップカルチャーをおしらせするニュアンスで。

ですが、「マーケティング活動に役立つ」といったお声も多くいただいたことで、その情報をもとに、どのようにビジネス活用できるか、という提案もさせていただくようになりました。

実はビジネスコンテンツが75%

―Pinterestはピナーさんがピンした画像が並ぶので、UGC要素が強いプラットフォームじゃないかと思うんですが、Pinterest Predictsをはじめ、御社発信で情報を提示することも多いと思います。
それは意識的に、ビジネスユーザー向けに行っているのでしょうか?

井上さん:そうですね、Pinterestでは昨年から、ユーザーであればだれでもクリエイターとして投稿できるようになったんですが、実は全コンテンツのうちビジネスユーザーによるものが現在75%を占めています。

もとは企業、ブロガーといったコンテンツオーナーたちがPinterestに保存したものが、私たちの3,000億件というピンのコンテンツになっているんです。

―そうだったんですね。
そういった背景と関連しているかもしれないんですが、9年前に日本でPinterestがリリースされ、初期はデザイナーなどビジュアルに特化したお仕事をされている方など、いわゆる“玄人”受けの強いプラットフォームだったという印象があります。

現在はTVCMも放送され(※2)、一般的なユーザーに日常的に利用されていると思いますが、なにかそのイメージが変わるきっかけになったことはありますか?

※2 日本国内では2021年5月29日(土)より初となるブランド広告キャンペーンを展開し、その一環としてTVCMを放送開始。現在(2022年11月時点)までに、中条あやみさんや藤田ニコルさんなどが出演している。

▶参考:ピンタレスト・ジャパン合同会社プレスリリース(PR TIMES)

井上さん:いくつかきっかけはあると思うんですけど、特記するとしたら、ひとつはやはりコロナ禍による巣ごもりですかね。
グローバル規模で活用していただける方が増え、そのまま多くの方に継続していただいているので、大きな転機だったと思います。

それから、クリエイターさんやピナーさんにとって活用しやすくなるように、ツールを発展させたり、エデュケーションコンテンツを発信したり、力を入れているので、そういったところが功を奏したと考えています。

でも基本的には、当時からPinterestの使われ方というのは変わっていないんです。
日々の暮らしにおけるアイデア、あるいはこれからやってみたいことを探すために利用されていて、たとえば当時は「ootd」という言葉が流行っていて、「明日なにを着ていこう?」という目的で検索されていたり……。

コロナ禍もユーザーが増えるきっかけにはなりましたが、「家にある食材でなにを作ろう?」「STAY HOMEのあいだに庭でなにかをやろう」など、幅広くアイデアを見つけていただけるプラットフォームだからこそ、使われ方も広がっていったんじゃないかと考えています。

Pinterestは“未来を探す”ツール

ボディアクセプタンス
(Pinterestでは、ユーザーが「摂食障害」に関連するキーワードを検索した際、その検索結果をブロックする代わりに、国内の専門団体のコンテンツへ誘導し、正しくくわしい情報を探せるようにしています。/ピンタレスト・ジャパン合同会社プレスリリース(PR TIMES)より)

―一般ユーザーさん、クリエイターさん、企業さん、それぞれがポジティブに利用できる場ということですね。

井上さん:そうですね。一般のユーザーさんに関しては、バズるものやエンタメ性のあるものというよりも、ヘアアレンジのチュートリアルやレシピなど暮らしに取り入れられるアイデア、クリエイターさんや企業さんに関しては、フォロワー数や利用歴に関係なく平等にスキルやエキスパートな部分でアプローチできるという点がメリットになるんじゃないかと思います。

―たしかにPinterestには映えを狙ったものよりも、参考になるTipsのようなコンテンツが多いと思います。
それは御社がなにかはたらきかけたことによるのではなく、ユーザーが自発的に発信するようになったのでしょうか?

井上さん:もちろん自発的に行っていただいたものもありますが、Pinterestにはクリエイター育成プログラムがあるので、両方存在しています。

あと、Pinterestは未来に関するツールだと思っているんですよね。
「○○に行きました」といった、過去や現在を表現するプラットフォームが多いですが、Pinterestはもしかしたら唯一、未来の行動を探しているユーザーさんが集まる場だと捉えています。

なので、ポジティブな未来を発見できる場所として、やっぱり安心できる安全性と、かつ前向きなマインドを持ち合わせたプラットフォームであるべきだと考えています。

たとえば昨年、いわゆる「ダイエット広告」を禁止しました(※3)
ほかにも、議論を呼ぶような、人によってはネガティブに感じてしまうようなところを禁止したり、「おもいやり検索」といったソリューションやウェルビーイング製品を優先させるようなプロダクトを開発したり、そういった土台づくりを徹底させています。

※3 2021年7月1日(木)、Pinterestは体型に関係なく、だれもが自分の居場所だと思える環境をつくることを目的に、広告ポリシーを改定し、すべての広告において減量を謳う文言と画像の掲載を禁止。1年後の2022年7月12日(火)、「ダイエット」というキーワードをふくんだ検索が世界的に20%減少し、一方で「ボディポジティブ」の検索数は2倍、「自分の身体を受け入れる 名言」は3倍に上昇したと発表している。

▶参考:Pinterest ニュースルーム
Pinterestが定めたポリシー
(これまでにPinterestが定めたポリシーの振り返り/ピンタレスト・ジャパン合同会社プレスリリース(PR TIMES)より)

―安心して利用できる場だからこそ、ユーザーさん一人ひとりがほかの方の役に立つコンテンツを展開するのかもしれないですね。

井上さん:たぶん見つけた喜び、見つけてもらった喜びが好循環していくプラットフォームなんだと思います。

日本はビジュアルコミュニケーションが発展した市場

日本オリジナルステッカー
(昨年2021年にPinterest Japanが発表した日本オリジナルステッカーのイメージ/ピンタレスト・ジャパン合同会社プレスリリース(PR TIMES)より)

―最後に、日本市場における今後の展望についてお伺いできますか?

井上さん:個人的な見解かもしれませんが、日本というのは歴史的にビジュアルというものと親和性の高い国なのかなと思うんです。
世界的に大きな影響を与えた浮世絵を生んだ国ですし、絵文字も日本発だといわれていますよね。

現代のピクトグラムの発祥も東京1964オリンピックの施設シンボル(※4)ですし、ビジュアルコミュニケーションが非常に発達した国だと思っています。

※4 そもそものピクトグラムのはじまりは、1920年ごろにオーストリアの科学哲学者であり、社会学者、経済学者でもあるオットー・ノイラートが生み出したアイソタイプだという説が有力だが、現代広く知られているものに関しては、1964年に東京でオリンピックが開催された際に新進気鋭のグラフィックデザイナーらによって生み出された施設シンボルが発祥だといわれている。

なので、よりコミットしてビジネスユーザーにも一般ユーザーにも役立つプラットフォームにしていきたいと思います。

そういった面でも、やはり先ほど申し上げたように、ショッピング機能については、ただの購買行動ではなく、ポジティブな活動として発展させていきたいですね。
そのためには、自動で在庫があるものだけを表示させるようにするなど、テクノロジーの強化も必要だと思っています。

好きなものを集めると自分が見えてくる

(Pinterest Japan公式YouTubeチャンネルが、日本版プラットフォームリリースの翌年2014年に公開した、Pinterestを紹介する動画)

Pinterestとは、「ビジュアル探索ツール」のこと。これは先日、それをSNSに区分していた友人に伝えた言葉。「インスピレーションツール」といわれることもありますが、個人的には「ビジュアルを探索する」という表現がしっくりくるので、当記事でもそのように紹介しています。

筆者は日本語版がローンチされた初期のころから愛用しており(余談ですが、それゆえ今回のインタビューは熱烈なラブコールによって実現しました)、公開・非公開ふくめ多くの画像や動画を保存してきました。

それは、このたび何気なく自身の保存コンテンツを眺めていたら、なんとなくエモーショナルになってしまったほどの量。

インタビュー時にもお話しした、以前勤めていた会社で企画したイベントのアイデアピンや昔好きだったイラストレーターの作品とその類似・関連ピン、思いつきでデザインしたワンピースを自作してみようと奮闘したときに参考にした複数の動画、同じく急に繊細な装飾を施したアイシングクッキーを作ろうと思い立って参考にした動画……。

それらは当時を思い返すだけでなく、同時に今の自身そのものをつくりあげる要素でもあるような気がします。

情報が飽和した時代に生きる私たちは、SNSやサブスクリプションサービスなど、さまざまなプラットフォームから「これを見たあなたにはこちらもおすすめ」と推奨されるコンテンツを受け入れることに慣れてしまいがちですが、それでは本当に新しい出合いというのは得られないのではないでしょうか。

各プラットフォームのレコメンド機能はますます強化されて、閲覧しているコンテンツにきわめて近しいものを表示します。それはたしかに、「次もまたこういうものを見たい」という要望には沿っていますが、新しく興味の沸くものを生み出してはくれないと思うのです。

たとえば「歩きやすい靴」が欲しいとして、Pinterest上で検索します。すると当然ながらそのキーワードにヒットする商品画像が表示されます。その中から気になるものを選んでピンすると、またそこから連想される別の画像が表示されます。それを繰り返すことで、漠然としたウォンツはやがて高解像度のイメージに変わるでしょう。

Pinterestにはそういった、フラッシュアイデアを具体化したり、抽象的な悩みを解きほぐしたり、自身が求めているものに気づかせてくれる機能が備わっていると思うのです。

画面に並ぶ好きなものをどんどん保存して集めていくと、それはすなわち自分につながる、そんな気がしてならないのです。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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