ポジショニングとは?意味や具体的な事例などを解説!
マーケティング戦略を練るうえで、まず欠かせないのが「市場分析」です。消費者のニーズや他社の状況を把握することで、自社の方針も見通しやすくなり、戦略の地盤が整えられるでしょう。
市場分析における重要な観点の1つに、「ポジショニング」という考え方があります。この記事では、ポジショニングの意味や重要性、具体的な事例をふまえ、実践時のポイントを解説していきます。
目次
ポジショニングとは
ポジショニング(Positioning)とは、「位置を定めること」を意味する英語であり、あるフィールドのなかで「どこに何を配置するか」を決めることを表します。
ビジネスにおいては、とくに「市場における自社の位置づけ」を見定めることを指す言葉です。市場分析の過程で、競合他社のビジネスモデルやターゲット層などをふまえつつ、「自社のブランドや商品などをどのように差別化し、市場に打ち出していくか」を検討する作業を意味します。
STP分析の1要素としてのポジショニング
マーケティングにおいて、ポジショニングは市場分析のフレームワークである「STP分析」の一環として実施されるケースが多く見られます。
STP分析は、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」という3つの単語の頭文字を取った言葉であり、市場全体の状況を把握したうえで、「自社の占めるべき位置づけ」を明確化するために行われます。
■セグメンテーション
市場をいくつかのセグメント(区分)に細分化し、ニーズや行動パターンなどをもとに、消費者をそれぞれの該当する枠に振り分けて考えることを指します。
たとえば飲食店に対するニーズを「ターゲットのライフスタイル」という軸から捉え、「ゆっくり食事を楽しみたい高齢者層」「効率よく食事を済ませたいビジネスパーソン」など、市場を細分化していく方法が考えられるでしょう。
このセグメンテーションについては、以下の記事にて概要や進め方を解説しておりますので、こちらもあわせてご参照ください。
>>>セグメント(セグメンテーション)とは?マーケティングにおける活用方法を徹底解説
■ターゲティング
ターゲティングは、セグメンテーションにおいて区分した市場のうち、「どのセグメントを狙うべきか」を判断するプロセスにあたります。市場規模や今後の動向について考慮しながら、自社の商品特性やブランディングの方向性に合致する市場に照準を定めていく作業です。
なおターゲティングについても、以下の記事で基本的な考え方を解説しております。あわせてご参照ください。
>>>ターゲット設定とは?中小企業こそ取り組むべき理由と決め方を解説
■ポジショニング
ポジショニングは、ターゲットとなる市場において、「自社の商品などをどのように打ち出していくか」を見通すプロセスを指します。競合他社を入念に分析し、差別化のポイントを明確にすることで、「市場における自社の立ち位置」を見定めていくのです。
マーケティングにおけるポジショニングの重要性
マーケティングにおいては、「自社ブランドや商品のイメージ」を消費者に印象づけることが重要です。その際にはまず、「消費者にどのようなイメージを与えるべきか」を明確にすることが求められます。
この際、ポジショニングを通じて「市場における自社の位置づけ」を見通すことは、ポジションにマッチしたイメージを打ち出すうえで欠かせません。位置づけが不明瞭なままでは、たとえば「親近感がアピールポイントとなるはずの商品で高級感を演出してしまう」など、本来のニーズとブランディング方針がミスマッチを起こす可能性もあるでしょう。
つまりポジショニングを通じた「位置づけの明確化」は、マーケティングやブランディングの戦略を練るうえでの「足場固め」として不可欠なのです。
ポジショニングの成功事例
市場で成功を収めている企業や商品のなかには、的確なポジショニングによって独自の市場を切り拓いたり、ほかにはないイメージを定着させたりといった例が多く見られます。
以下では具体的に、国内企業によるポジショニングの成功事例を紹介していきます。
ユニクロ
衣料品の製造小売を手がける「ユニクロ」は、ファストファッション市場でのポジショニングにおいて、「普段着」という潜在的なビッグマーケットに着目し、世界的に成功を収めています。
ファストファッションの業界においては、さまざまなブランドがその時々のトレンドを追ったり、特定のテイストに特化したブランディングを展開したりと、総じて「人と同じ服を着たくない」といったニーズに訴求する傾向があったといえます。
これに対し、ユニクロは自社商品を「LifeWear(ライフウェア)」と位置づけ、安価で生活にマッチするベーシックアイテムを扱っています。消費者の暮らしに目線を合わせることで、「手頃な価格で安心できる服」というポジションを確立しているといえるでしょう。
セブンプレミアム
小売業の大手グループであるセブン&アイ・ホールディングスは、「セブンプレミアム」の的確なポジショニングにより、累計売上が10兆円を超える国内最大規模のプライベートブランドに成長しています。
従来のプライベートブランドは、生産・流通コストの削減といったメリットを活かし、低価格路線を打ち出す傾向にありました。一方でセブンプレミアムは「上質路線」を狙ったプライベートブランドという点で、競合との差別化が図られています。
とくに「ちょっと贅沢をしたい」というニーズに応える「セブンプレミアムゴールド」シリーズを筆頭に、手軽に品質のよいものを手に取りたい消費者へと訴求することで、安定した需要を確保しています。
参照:セブン‐イレブンの横顔 | セブン‐イレブンの「商品力」
レクサス
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」は、かつて北米マーケット専用のブランドとして展開していましたが、2005年から日本市場への導入を開始し、国産最高級ブランドとしての地位を築いています。
従来、国内の高級車市場において、国産車種は品質面で確固たる信頼を得ていたものの、高価格帯においてはステータス性や所有感などの面で、欧州系の高級車を選ぶ層が固定化している傾向が見られました。
そのような背景のなか、レクサスは「国産の信頼性」と「所有欲を満たすプレミアム性」を兼ね備えたポジションを狙ったブランドとして国内展開されました。内外装デザインや走行性能はもちろん、ディーラーにおける豪華な接客など多方面でのブランディングを通じ、従来の輸入車ファンを含め多くの顧客を取り込んでいます。
ポジショニングの進め方
ポジショニングは一般に、「ポジショニングマップ」と呼ばれる図の作成を通じて実践されます。以下では具体的に、ポジショニングを進めていく際の流れを解説していきます。
比較する観点をピックアップ
まずは商品やサービスの特性から、競合他社と比較する際の観点を抽出していきます。これは主に「消費者がその商品を選ぶ際の観点」であり、たとえば自動車であれば「価格」「燃費」「乗り心地」「利便性」「デザイン」など、1つの商品カテゴリでも数多くの比較ポイントが挙げられるでしょう。
ただし一度に多くの観点を持ち出すと、分析の焦点がブレやすくなり、自社の位置づけもあいまいになりかねません。まずは「購買を決定する要因」として重要度の高いものから考察の対象としていきましょう。
競合他社と比較
上で挙げた観点について、競合他社と比較していきます。後から比較結果を一目で確認できるよう、比較表に見やすくまとめておくとよいでしょう。
上の表のように、すでに自社の商品・サービスを展開している場合には、その競合となる商品・サービスをピックアップし、それぞれの観点について比較します。まだ自社商品などを展開していない市場を分析する場合には、競合となりうる商品・サービスを表にまとめていきましょう。
他社と比較する際には、できるかぎり客観的な材料をもとに進めていくことが大切です。各商品の売上や、購入者の属性分布といったデータのほか、アンケート調査などを実施することも有効でしょう。
マッピング
ポジショニングマップの形状はさまざまに考えられますが、多くのケースで取り入れられているのは、タテ軸とヨコ軸を用いて位置関係を整理する「象限図」の形式です。
この場合、先に比較を行った観点のうち2つをピックアップし、タテ軸とヨコ軸として設定することになります。たとえば先の例でいえば、「価格」と「デザイン」の2つの軸からマップを作成する方法が考えられるでしょう。
このように、マッピングに用いる軸を定めたら、比較した結果をもとに競合他社をマップに配置していきましょう。なお、上の図ではタテ軸とヨコ軸の要素に加え、円の大きさで販売台数を示すことで、市場におけるパワーバランスを可視化しています。
検証
ポジショニングマップの位置関係から、現状を分析していきます。たとえば上の例では、自社商品が競合Bと似たポジションに置かれており、シェアを奪われていることが窺えます。
ここで方針転換を図るには、まず「手薄な市場」を狙う手が考えられます。ただし、「その市場にニーズがない可能性」も考慮する必要があるでしょう。
たとえば先に作成したポジショニングマップでは「ポップなデザインの高額車」というポジションが空いていますが、そもそも「親近感のあるデザインに割高なお金を支払う消費者がどれだけいるか」という点を考えなくてはいけません。
また同様に競合がいない「低価格でプレミアム系のデザイン」というポジションについても、「高級感がある見た目の車に安く乗りたい」と考える消費者がどのくらい存在し、どのような消費傾向をもつのかを入念に検証することが求められます。
マップ上で目ぼしい市場が見当たらない場合には、再度別の観点からマッピングをしてみることも有効です。取り入れる観点によって、浮かび上がってくる現状も異なるため、さまざまな角度から競合との位置関係を見通しておくとよいでしょう。
ポジショニングを実施する際のポイント
上述のように、マッピングの過程で取り入れる観点や比較軸によって、見えてくる市場の状況は大きく異なります。以下では、ポジショニングを効果的に実施するためのポイントを解説していきます。
潜在マーケットの規模や将来性を検証する
ポジショニングの結果、競合が手をつけていない市場を見つけたとしても、それがいわゆる「ブルーオーシャン」であるとは限りません。競合相手が少ない市場でも、そもそものニーズが小さかったり、あるいは将来的に縮小が予想されていたりと、狙うことが難しい市場も多くあります。
実際に戦略策定の段階に移行する前に、そのポジションにどの程度のニーズがあるのか、これからの動向はどうなっていくのかについて、慎重に検討しておくことが求められるでしょう。
ポジションと自社の方針とのマッチングを考慮する
他社と差別化を図れるポジションがあったとしても、それが「自社の特性や方針」にそぐわないポジションである場合には注意が必要です。
たとえば低価格路線を売りにしていた企業が、高級路線の商品を発売した結果、それまでの「親しみやすさ」「手頃さ」といったイメージが損なわれる可能性もあるでしょう。
もちろん「これまでとは異なる方向性」に舵を切ることで、大きなチャンスが切り拓かれるケースもあります。その場合には、新たなブランドの立ち上げや、それにともなうイメージ戦略など、さまざまな面からの対策が求められるでしょう。
消費者の目線からニーズを考える
ポジショニングを通じて他社との差別化を図れても、それが消費者にとって魅力的に映らなければ成功にはつながりません。
位置づけを定めるにあたっては、商品の具体的な使用場面や、それがもたらす実際のベネフィットといった点を考慮しながら、「購入者にとって他の商品・サービスとどう違うのか」を明確にする必要があります。
ポジショニングマップを作成する目的の1つは、自社の商品・サービスについて「購入につながる訴求ポイント」を見つけ出すことにあります。マップを作成する際は、「消費者のニーズを比較軸に落とし込む」ことを意識し、市場の実情に即して分析を進めていくことが大切です。
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