最先端のWebマーケティングを発信するメディア

最先端のWebマーケティングを発信するメディア

購買行動とは?12のモデルとマーケティングに重要な理由、具体的な活用方法を紹介

投稿日:
SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

マーケティングの効果を高めるうえでは、消費者の心理や行動パターンについての理解が欠かせません。

「ターゲットがどのように情報を集め、購入を決めているか」を知る際、役に立つのが「購買行動」をモデル化したフレームワークです。商品・サービスを購入する際のプロセスを図式として捉えることで、段階に合わせたアプローチが可能になるでしょう。

とはいえ現在では、購買行動のモデルも多様化しており、「どれを使えばいいかわからない」という状況も考えられます。この記事では、購買行動を図式化した12個のフレームワークについて解説していきます。

購買行動とは

購買行動とは一般に、「消費者が商品・サービスの購入を決めるまでの一連のプロセス」を指す言葉です。具体的には、商品の「認知」や「比較検討」といった情報収集の段階や、「情報の共有」など購入後の行動を含むこともあります。

現在、購買行動はさまざまなモデルによって表されており、いずれも「消費者の行動パターンを段階ごとに区分した図式」として流通しています。多様な購買行動を特定のフレームワークから捉えることで、マーケティングを最適化している企業も少なくありません。

購買行動の例

購買行動は、消費者が日頃から行っている「意思決定のプロセス」をモデル化したものです。たとえばスマートフォンの購入ひとつでも、実際に購入を決めるまでにはさまざまな判断や検討が行われているものでしょう。

新型iPhone発表のニュースを見て「自分もそろそろ新しいスマホが欲しいな」と思ったり、SNSにアップされた写真を見て「この機種ならこんなにキレイに撮れるのか」と感動したりすることも、購買行動の一環です。さらに、メモリ容量やCPU性能を比較サイトで調べるなど、さまざまなプロセスが購買行動のうちに含まれます。

こうしたプロセスをパターン化したものが購買行動のモデルであり、上の例では新型のスマホに対する「ニーズの自覚」という段階、SNSを通じた「興味の深化」という段階、比較サイトでの「検討」という段階を経ていることがわかります。

このように、購買行動をいくつかの段階に区切ることで、各段階において「ターゲットに何をどうアピールすればよいか」がわかりやすくなるでしょう。

購買行動モデルが重要視される背景

先に述べたように、マーケティングにおいては「消費者の行動パターン」を理解することが重要になります。一方で、消費のスタイルが多様化する現在では、「それぞれのターゲットがどのように購入を決めているか」を個別に知ることは難しいでしょう。

購買行動のフレームワークを適用することにより、消費者の行動をいくつかの段階に分けて把握できるようになります。それぞれの段階における消費者の動きを見通すことで、「その段階では何をすればよいのか」も見えやすくなるでしょう。

後に紹介するように、購買行動のモデルは時代の変化とともに数多く展開されており、現在では10を超えるフレームワークが流通しています。自社の環境やターゲットに合わせて最適なフレームワークを選ぶことで、さらにマーケティングの精度を高めていけると考えられます。

購買行動と消費行動の違い

購買行動と消費行動、あるいは消費者行動という言葉は、ビジネス上の用法においては区別されずに使われていることも多く、同様の意味として流通している面があります。

ただし、購買行動が上述のように「消費者が商品・サービスを認知してから購入を決めるまでのプロセス」を主に指すのに対し、消費行動は「さらに広い範囲」を含むことがある言葉です。

たとえば「TikTokでインフルエンサーがある書籍を紹介した結果、話題を集めてその書籍ヒットする」という現象について考えてみましょう。ここで単に「ある個人がTikTok上の情報をもとに本を買う」という点に注目するのであれば、これは「個人レベルにおける購買行動」を描いていることになります。

一方でこの現象には、「消費者の行動を左右するインフルエンサーの登場」や「短尺動画で本を紹介するコンテンツの流行」という背景が存在します。このような社会的背景をふまえ、「実際に書籍を購入する人々の増加」という大局的な情勢を見る場合には、「社会レベルで見た消費行動の変化」を問題にしていることになるでしょう。

このように、消費行動はより「マクロな視点」からの分析を含むことがあり、社会的・文化的な背景も絡んだ言葉だといえます。

マスメディア時代の購買行動を示したフレームワーク

購買行動を図式化したモデルは、新聞やラジオが主な宣伝媒体であった時代から普及しはじめ、その後さまざまなかたちに派生しながら現在でも流通しています。

以下では購買行動モデルの基本となった「AIDA」をはじめ、マスメディア時代に登場したフレームワークを紹介していきます。

AIDA

AIDA(アイダ)は購買行動のフレームワークのなかでも歴史の古いモデルであり、1920年代のアメリカ合衆国から広まっていきました。新聞広告やラジオ広告といったマスメディアを通じ、消費者がどのように商品について知り、どう購入へと移っていくかを以下の4つの要素から図式化しています。

AIDAは古いモデルではあるものの、普遍的な購買行動のモデルとして長く用いられており、現在でも消費者のスタンダードな行動パターンを整理する際に有効といえるでしょう。

■Attention(注意)
消費者が商品・サービスについてはじめて認知する段階です。従来はマスメディア広告などを通じて認知拡大が図られてきましたが、近年ではWebメディアやSNSなど「消費者に自社商品を知ってもらう経路」が多様化しています。

■Interest(興味)
消費者が商品・サービスについて関心をもちはじめた段階です。まだ購入には至っていないものの、より多くの情報を知ろうとしている状態だといえます。この段階の消費者に対しては、「具体的な特徴やメリット」についての情報を提供し、興味を深めてもらうことが求められるでしょう。

■Desire(欲求)
消費者が実際に商品・サービスを「欲しい」と考える段階であり、購入を具体的に検討している状態です。商材の強みをさらに訴求しながら、価格面やその後の使用法など「購入をめぐる不安」を払拭していく必要があります。

■Action(購買行動)
消費者が商品・サービスを購入する手続きに入っていく段階です。購入に必要な手間を減らしたり、限定セールなどで購買意欲を高めたりなど、購入を後押しする工夫が大切です。

AIDMA

AIDMA(アイドマ)は上のAIDAから派生したモデルであり、AIDAの「Desire(欲求)」と「Action(購買行動)」との間に「Memory(記憶)」というプロセスが加えられています。

AIDAに対して、「興味をもってから購入に至るまで時間を要する商材」に適したフレームワークといえるでしょう。

■Attention(注意)
AIDAと同様、消費者が商品・サービスを認知する段階です。

■Interest(興味)
認知した商品について、消費者が「ちょっといいかも」と関心を示している段階です。

■Desire(欲求)
消費者が認知した商品を「欲しい」と思っている段階です。

■Memory(記憶)
消費者が一度商品・サービスに興味をもち、購買意欲を喚起させられたあと、実際に買うまでに時間が空くケースも考えられます。その際、一旦は意識の隅に追いやられていた商品・サービスに対する欲求を、再度呼び起こすのが「記憶」のプロセスです。

現在ではユーザーがWeb上で一度チェックした商品を再表示する「リターゲティング広告」など、購買意欲を再び喚起できる環境が充実しているといえます。

■Action(購買行動)
購買意欲を再び取り戻し、実際に商品を購入する段階です。

Web時代の購買行動を示したフレームワーク

インターネットの登場により、消費者の情報収集のあり方は劇的に変化し、またそれに合わせてマーケティングの方法論もアップデートされてきました。以下ではインターネットが普及してからの購買行動を示したフレームワークを紹介していきます。

AISAS

AISAS(アイサス)は、「インターネット上での情報収集」という消費者の行動に焦点を合わせたフレームワークです。AIDAをベースにしたモデルであり、以下のように「検索」と「共有」という要素が加えられています。

■Attention(注意)
AIDAと同様、消費者が商品・サービスを認知する段階です。近年ではWeb広告をはじめ、オンライン上での接点を重視する傾向が強まっています。

■Interest(興味)
商品・サービスについて関心を抱く段階です。オンライン上で購買行動を取る消費者が増えるとともに、注意から興味、次の検索までのプロセスをシームレスにつなぐことの重要性が高まっています。

■Search(検索)
興味をもった商品・サービスについて、消費者自身がWeb検索などにより情報を収集していく段階です。

マスメディア中心の時代においては、商品・サービスに関する情報は、企業側から一方向的に提供される傾向にありました。しかしWeb環境が普及するにつれ、「消費者が主体的に情報を探せる時代」が到来したといえます。

この変化にともない、SEO対策など「Web上で自社の情報にアクセスしてもらうための工夫」が求められるようになりました。

■Action(購買行動)
検索を通じて商品を比較検討したあと、実際に購入へと移っていく段階です。

■Share(共有)
商品を利用したあと、ECサイトのレビューや口コミサイト、SNSなどに使用感や満足度について消費者自身が発信していく段階です。

Web環境を通じて消費者側もコンテンツを発進できる現在では、消費者が作成したコンテンツが他の消費者の購買行動を左右するケースも少なくありません。

AISCEAS

AISCEAS(アイシーズ・アイセアス)は、上のAISASからさらに派生した購買行動モデルです。AISASの「Search(検索)」の次に「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」というプロセスが加えられています。

このAISCEASは、とりわけ「機能」や「効果」などが重視される商品・サービスにおいて有効なモデルです。家電やスマートフォン、自動車など、意思決定を段階的に行っていく製品カテゴリでとくに役立つでしょう。

■Attention(注意)
消費者が商品・サービスを認知する段階です。

■Interest(興味)
消費者が商品・サービスに対して関心を抱いている状態を指します。

■Search(検索)
気になる商品・サービスについて、Web上の検索により情報を集めている段階です。

■Comparison(比較)
気になる商品・サービスについて検索してから、競合製品の存在を知り、比較していく段階です。メーカーの製品情報ページはもちろん、製品比較サイトなど「第三者が複数の製品を並べて評価しているコンテンツ」が大きな情報源になるでしょう。

■Examination(検討)
複数の製品を比較したうえで、消費者が自身の選択基準に照らしながら、具体的に購入する製品を絞っていく段階です。消費者が「何を優先し、どの点を妥協するか」という取捨選択の軸を見極めることがポイントになるでしょう。

■Action(購買行動)
消費者が実際に商品を購入する段階です。

■Share(共有)
購入した商品を使用し、感想などを周囲の人たちやWeb上に共有する段階です。

ZMOT

ZMOT(ズィーモット)は「Zero Moment Of Truth」の略であり、「消費者は店舗を訪れる前の段階(Zero Moment:ゼロの瞬間)に購入する商品を決めている」という理論です。

Googleによって提唱され、Web時代のスタンダードな購買行動を示したモデルとして普及しています。

このZMOTのほかにも、「消費者が購入を決める瞬間」は「MOT(モット、Moment Of Truth)」という言葉で表現され、以下のように「意思決定における重要なポイント」を示したモデルが流通しています。

■FMOT
FMOT(エフモット)は「First Moment Of Truth」の略であり、日用品の大手P&G社が提唱したモデルです。とくに小売店などにおいて、消費者は「棚に陳列された商品を見た数秒後には購入するものを決めている」とする理論です。

このモデルにおいては、「パッと見た印象」によって購入対象が決まるため、店舗における陳列方法や、商品パッケージそのものの訴求力、ブランドの認知度などが重要なファクターになるでしょう。

■SMOT
SMOT(エスモット)は「Second Moment Of Truth」の略であり、これは消費者が商品を購入して使用したあと、「リピートを決める瞬間」を指しています。

商品そのものの質はもちろん、アフターサービスやクーポンなどで「その後の利用」を促すことにより、自社の固定ファンを増やしていくための観点です。

>>>ZMOT(ジーモット)とは?FMOT・SMOTとの違いも解説

SNS時代の購買行動を示したフレームワーク

SNSが普及するとともに、消費者の情報収集のあり方にも変化が見られるようになりました。Googleなどの検索プラットフォームを通じた情報収集だけでなく、SNS上で拡散されている情報を見て購入を決める、といったケースも一般的になっています。

VISAS

VISAS(ヴィサス)はSNSを通じて商品・サービスの口コミが波及し、多くの人の購買行動に影響を与えていく流れを示したモデルです。以下の5つのプロセスから成り立っています。

■Viral(口コミ)
消費者がSNSや口コミサイトなどを通じて、商品・サービスのことを知る段階です。近年では消費者が「これが気になる」と検索する以外にも、たまたまSNSで特定の商品が紹介されているのを見かけ、購買意欲をかき立てられるケースも少なくありません。

■Influence(影響)
SNSなどで情報を見かけた消費者が、実際にその商品に対して興味を抱く段階です。SNSにおいてはとくに、大量の情報が流れていくなかで「自分に関係のある内容」を瞬間的に見極め、興味の有無をすぐさま決定する傾向が見られます。

■Sympathy(共感)
SNS上での情報に対して共感し、購買意欲を高めていく段階です。それがどのような商品であるかはもちろん、「その情報を誰が発信しているか」も共感性を大きく左右するでしょう。

「この人がそう言うならそうなのだろう」と、信頼の置けるインフルエンサーなどによる評価が購入に直結するケースも見られます。

■Action(購買行動)
消費者が実際に商品を購入する段階です。インフルエンサーが自身のコンテンツ内に商品リンクを貼り付けている場合など、整った導線により購買行動が後押しされる例も少なくありません。

■Share(共有)
商品を購入した消費者自身がSNSなどで情報を共有する段階です。この情報がさらに新たな潜在顧客にリーチをかけ、購買意欲を伝播させていくケースも見られます。

SIPS

SIPS(シップス)も「SNSを通じた購買行動」を図式化したモデルであり、以下の4つのプロセスからなるフレームワークです。VISASに比べ、より「SNS上での行動」に焦点を当てています。

さらに特徴的なのは、SIPSにおけるゴールが必ずしも「購入」に限られていない点です。購買行動を含め、「SNS上のユーザーによるアクション」を広く図式化したモデルといえるでしょう。

■Sympathize(共感)
SNS上で見かけた情報に対し、興味を引かれる段階です。X(旧Twitter)のタイムラインやInstagramのストーリーをはじめ、「次々に流れていく情報」のなかで、とくに目を引くコンテンツや自分の関心に近いコンテンツを見かけた状態といえるでしょう。

■Identify(確認)
SNS上で見つけた情報について、さらに詳しい情報へとアクセスする段階です。企業のSNS投稿から製品情報ページにアクセスしたり、インフルエンサーの投稿した商品について別のレビューを参照したりと、異なる角度からの情報を求める傾向も見られます。

■Participate(参加)
SNS上で目にした情報に対して、何らかのアクションを取っていく段階です。紹介されている商品を購入することはもちろん、共感した投稿への「いいね」や「リポスト」などもこの「参加」に含まれます。

■Share & Spread(シェアと拡散)
先の「参加」の状態から、さらに進んで「自ら情報を発信し、世に広めようとする」段階にあたります。自身で購入した製品をレビューしたり、あるいは他ユーザーの投稿に対するリプライで製品をおすすめしたりと、消費者側が主体となって情報を広めていく状態を指しています。

ULSSAS

ULSSAS(ウルサス)は、SNS上で「ユーザーが発信するコンテンツ」から購買行動が促されていく流れを整理したモデルです。以下の6つのプロセスから成り立っています。

■UGC(ユーザー生成コンテンツ)
UGCは「User Generated Contents」の略であり、企業などの事業者ではなく一般のユーザーが作成し、SNSなどに投稿するコンテンツを指しています。商品・サービスを紹介するUGCが、SNS上のフォロー関係などを通じて徐々に広まっていきます。

■Like(いいね)
UGCに対して、他のユーザーが「いいね」やリポストなどのリアクションをする段階です。多くの反応を集めたUGCは、さらに多くのユーザーの目に触れるようになり、爆発的な波及効果を示すことがあります。

■Search1(SNS上での検索)
UGCを目にしたユーザーが、その商品について関心をもち、SNS上で口コミや使用感などに関する情報を収集する段階です。

■Search2(検索プラットフォーム上での検索)
Googleなどの検索プラットフォーム上で、より詳しい情報について検索する段階です。商品を購入できる店舗情報など、実際の購入を念頭に置いた検索行動が見られることもあるでしょう。

■Action(購買行動)
実際に商品を購入する段階です。ECサイトなどの場合、上のSNSや検索プラットフォーム上での検索から直接購入に至るケースも見られます。

■Spread(拡散)
購入した商品のレビューを投稿したり、写真をアップしたりと、ユーザーが新たなUGCを発信していく段階です。

コンテンツマーケティング時代の購買行動を示したフレームワーク

近年では、消費者に役立つ情報をオウンドメディアなどで発信していく「コンテンツマーケティング」も有益な手段とされています。以下ではコンテンツマーケティングを実践する際に役立つ購買行動モデルを紹介していきます。

DECAX

DECAX(デキャックス)は2015年に株式会社電通が示したモデルであり、コンテンツマーケティング時代の購買行動を5つのプロセスのうちに整理しています。

継続的に自社コンテンツを発信していくにあたっては、明確な軸を定め、消費者に寄り添った内容を伝えていくことが大切です。DECAXは、そのような戦略を見通すうえで役に立つフレームワークです。

■Discovery(発見)
消費者が商品・サービスについて認知する段階です。SNS上の投稿やWeb広告のほか、周囲からの口コミなど、オンライン・オフラインを問わず認知のきっかけは潜在しています。

■Engage(関係構築)
消費者が商品・サービスへの理解を深めていく段階です。口コミや製品情報ページなどでの情報収集はもちろんですが、ここでの力点は事業者と消費者の「関係」というポイントにあります。

ブランドへの共感やストーリーの共有により、消費者からの親近感や信頼感を醸成していくことが重要なファクターになるでしょう。

■Check(確認)
商品・サービスを客観的に評価し、競合との比較検討をふまえながら、購入を具体的に考えていく段階です。

■Action(購買行動)
実際に商品・サービスを購入する段階です。オンライン・オフラインを問わず、シームレスな購入導線を用意することが求められるでしょう。

■Experience(体験)
購入した商品などを実際に使い、その感想や評価などを口コミやSNS上に投稿していく段階です。消費者が購入前から抱いていた期待に応える商品であれば、それだけ評価も高まりやすく、リピートや拡散といった効果にもつながっていくでしょう。

AIDCAS

AIDCAS(アイドカス)は、AIDAをベースにしながらコンテンツマーケティングの時代に最適化されたフレームワークであり、以下の6つのプロセスから成り立っています。とくにLP(ランディングページ)制作など「Web上の導線設計」に役立つモデルといえるでしょう。

■Attention(注意)
消費者が商品・サービスを認知する段階です。AIDCASにおいては、とくに自社サイトなどへの流入経路を整備する際の観点として用いられます。Web広告においてはとりわけ、「即座に見た人の関心を引く工夫」が求められるでしょう。

■Interest(興味)
商品・サービスについての関心を深めていく段階です。LPなどでは「こんなお悩みはありませんか?」というように、自社の商品がターゲットのニーズに合致したものであることを示す必要があるでしょう。

■Desire(欲求)
商品・サービスを「欲しい」と思う段階です。商品がもたらす具体的なメリットや効果を訴求し、ターゲットに「その後の生活」に対するイメージを抱いてもらうことが重要です。

■Conviction(確信)
購入をめぐる不安が払拭され、「これなら大丈夫」と確信する段階です。「購入の流れ」や「よくある質問」といったコンテンツで疑問を解消し、アフターフォロー体制などについても明示することにより、不安のない購入を後押しすることが求められます。

■Action(購買行動)
消費者が商品・サービスを購入する段階です。

■Satisfaction(満足)
実際に商品を使用する段階であり、期待が十分に満たされることで、リピート購入やその後の拡散効果にもつながりやすくなると考えられます。

最新の購買行動を示したフレームワーク

購買行動のフレームワークは、基本的に「認知」から「購入」までを段階的に区切ったモデルです。一方で、現在ではSNSの普及といった背景から、「なんとなく触れている情報がいつの間にか購買行動を左右している」というケースも多く見られます。

以下に紹介する新しい購買行動モデルは、そのような「なんとなくの行動」に焦点を当てたフレームワークとして位置づけられます。

RsEsPs

RsEsPs(レップス)は2019年に「一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会」が発表した購買行動モデルです。

消費者の行動プロセスを「Recognition(認識)」「Experience(体験)」「購買(Purchase)」という3段階に分け、さらにそれぞれの段階で「Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)」という行動が生じるとしています。

SNSなどでの検索・共有・拡散は、現在消費者の多くがつねに行っていることであり、実生活の「どこか特定のフェーズ」においてのみ生じているわけではないと考えられます。

RsEsPsは、そのように「SNS上での行動がきわめて身近になった時代」の購買行動を示すモデルといえるでしょう。

■Recognition(認識)
商品・サービスを認知する段階です。SNS上で拡散されている情報を見つけたり、検索によって関心を深めたりといったプロセスを含んでいます。

■Experience(体験)
商品を比較検討し、「これにしよう」と納得するまでのプロセスを指します。Web上のレビューを参照したり、実店舗で使用感を確かめたりと、さまざまな範囲の行動を含んでいます。

■Purchase(購買)
実際に商品を購入する段階です。購入した商品をSNS上で報告したり、そのレビューを投稿したりといった行動も一般に見られるようになりました。

■Search・Spread・Share(検索・共有・拡散)
SNSやレビューサイト、メーカーのホームページなどさまざまな情報にアクセスし、また自身が発信者となって感想などを投稿する行動を指します。特定のフェーズで生じるのではなく、認識・体験・購買の各フェーズで不断に生じ、購買行動を後押ししています。

このように、RsEsPsは直線的なモデルではなく、検索・共有・拡散の行動とともに「らせん状」に購買意欲を高めていくモデルです。

SEAMS

SEAMS(シームズ)は、InstagramのストーリーやYouTubeのショート動画など、ユーザーの「情報回遊」に焦点を当てた購買行動モデルです。特定の目的に向かう「検索」ではなく、習慣的な「回遊」から購買行動が引き起こされる状況を図式化しています。

■Surf(回遊)
SNSなどをザッピング的に見て回っている状態であり、特定の目的があるわけではなく、「何か面白いものはないか」と習慣的にコンテンツを消費している状態です。この段階においては、とくに「何かを買おう」という欲求は意識されていないといえます。

■Encounter(遭遇)
ザッピング中に、気になる商品などの情報に出くわした状態です。近年のSNSプラットフォームにおいては、ユーザーの閲覧履歴などから好みにあったコンテンツをレコメンドする環境が整備されており、「好きなものに出会う確率」も高まっているといえるでしょう。

■Accept(受容)
見つけた情報に対して、親近感や共感などポジティブな感情を抱いている状態です。「もともと信頼しているインフルエンサー」など、その情報を「誰が発信しているか」によって、受容のされ方も左右される傾向にあります。

このSEAMSのモデルにおいては、「遭遇から受容まで」の移行がすぐさま行われ、そのまま衝動買いのようなかたちで購買行動へと移っていきます。

■Motivation(高揚感)
商品を購入したあと、実際にそれを手にしたときの感情の高ぶりを表しています。衝動的な購入により高まっていた期待に対し、十分に応えることができれば、商品やブランド、企業に対する好意もいっそう深まっていくでしょう。

■Share(共有)
商品についての感想や写真をSNSなどにアップする段階です。SEAMSのモデルにおいては、とくに消費者が情報を共有する際の背景として、「映え」に代表されるようなセルフブランディングの意識があるとされています。

購買行動のフレームワークの活用方法

上述のようなフレームワークをマーケティングに活かしていくには、事前に自社の状況を整理し、「どの購買行動モデルが自社に適しているか」を見定めておく必要があります。

以下では実際に、ターゲットの購買行動をフレームワークに当てはめていく際の流れを解説します。

ターゲットの選定

購買行動をモデル化していくうえで、まずは自社のターゲットを絞っていく必要があります。年齢層や性別などの属性から、具体的なニーズまで入念に検討していきましょう。

その際、「ターゲットがどのように情報収集をしているのか」について検証することも大切です。年齢層や性別、興味関心によって、「普段どのような情報媒体に触れているのか」も大きく変わってくるでしょう。

ターゲットの購買プロセスをフレームワークに当てはめる

先に明確化した属性やニーズをふまえ、ターゲットが「どのように商品を知り、どのような判断基準から商品を選ぶか」といった点を浮き彫りにしていきます。

そのうえで、購買行動モデルにターゲットの具体的な行動を当てはめ、それぞれの段階で「何を重視して購入するものを決めているか」を見定めていきましょう。

プロセスごとの課題を整理

ターゲットの購買行動モデルに則して、それぞれの段階で「どのようにアプローチをすればよいか」を明確にしていきます。

どのSNSプラットフォームが適切か、ECサイトへの流入経路をどう作るかなど、購買行動モデルに照らしながら検討していきましょう。

さらに、段階ごとに数値目標を設定し、「それを実現するためには何が必要か」を検証していくことも重要です。

効果測定とフィードバック

実際に施策を実行に移したあとも、継続的な効果測定とフィードバックが欠かせません。段階ごとの達成状況をチェックしながら、現状においてうまくいっているポイントと、成果が出ていないポイントを整理していきましょう。

成果が出ていないポイントについては原因を追及し、具体的な改善案へとつなげていくことが大切です。

まとめ

購買行動は「消費者が商品・サービスを購入する際の心理や行動のパターン」を意味する言葉です。マーケティングの効果を高めるうえで、購買行動の理解は欠かせないでしょう。

購買行動を図式として捉えられるよう、マーケティングにおいてはさまざまな購買行動のモデルが用いられています。時代とともに数多くのフレームワークが登場していますが、自社の状況やターゲット層の性質に合わせて、状況にマッチしたものを使っていきたいところです。

実際に購買行動モデルをマーケティングに活用するには、明確なターゲット設定が重要になります。ターゲットが「どのように情報を集め、どういった観点から商品を選んでいるか」を入念に検証することで、購買行動モデルの解像度も上がり、取りかかるべき課題もクリアになっていくでしょう。

SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

UPDATE 更新情報

  • ALL
  • ARTICLE
  • MOVIE
  • FEATURE
  • DOCUMENT