リフォーム会社向け売上アップ戦略~思考で築く得策~
リフォーム会社が売上を増やすために考えるべきは、どの業界でも共通していえますが、潜在的なニーズを探り当てることです。
そもそも住宅リフォームとは何かを端的に定義すると、住む環境やライフスタイルの変化に応じ、現状をより快適で価値あるものに作り替えるわけですから、その手段が望みを叶えるものでなければいけません。日本では住宅ストックが確保できているというメリットがある反面、質的な充足の実現が課題となっています。多くのリフォーム会社はその問題に気付きながらも解消できていないというジレンマを抱えています。売上アップを叶えるために立ちはだかる壁を果たしてどう崩していくか。
そこで本記事では、どのような考え方を基軸に置けばよいか、欠かせないポイントを紹介しながら解説していきます。
目次
売上ランキングの動向分析を利用する
目標としている売上を達成できないリフォーム会社と、毎年のように好成績を記録している会社との違いはどこにあるのでしょうか。それを理解するための一つの参考書な存在こそ、リフォーム産業新聞社が提供している「住宅リフォーム売上ランキング」です。同社がリリースしているデータブック内のコンテンツとして記載されており、高い売上を達成しているリフォーム会社が掲げてきた具体的な経営指標を学び取れます。そのほかにも様々な動向について、700以上の表やグラフを使って視覚的に示しているため、とても勉強になります。詳細な解説が付属しているのもわかりやすくてありがたいです。
もう少しかみ砕いて述べると、具体的には、日本各地の住宅ストックについて網羅した専門ページがあります。47都道府県のマーケット規模はもちろん住宅の総数に関してもデータ化しているのは圧巻といえるでしょう。また、建材や設備の主要メーカーがどのような取り組み方をしているのか、各社の業績と照らし合わせながら参照することも可能です。さらには、住宅市場動向調査からリフォームを求めている人のいわゆる消費行動が読み取れ、オフィスビルの築年数別ストックやリノベーション住宅推進協議会の適合リノベーション住宅の数、訪日外国人数等も掲載されているという充実ぶり。これでもかというヒントの連続で、今後のニーズが透けてみえてきます。
リリースされている書籍は1万円、データは10万円。確かに費用としてかかりますが、コストパフォーマンスはむしろ“出血大サービス”と形容しても差し支えないでしょう。何より、専門会社が提示している数値やデータ、表などを最大限に活用することによって、自社内にエキスパートを確保する手間が省けますし、人件費も抑えることができます。そのぶん、分析結果を経営目標の改善に繋げたり、フィードバックの参考にしたりすることが可能です。
学べるものは常に学ぶという積極的かつ柔軟な思考と態度が売上アップへの近道になります。
ちなみにキャンペーン価格であれば8割ほどで済むので、タイミングを狙って購入するのもいいかもしれません。
競合他社との差別化を図る
これも商売のうえで基本的なことです。
となると、リフォーム会社の場合はどういった手段が有効でしょう。
以下、いくつかご紹介します。
好感度アップ
まずは、好感度の印象付けです。言い換えるならば自社をブランド化するために行う様々な活動に該当します。商品なら類似品のなかで際立った存在にする、会社なら競合他社のなかで自ずと区別された存在にする、といったところでしょうか。それを踏まえリフォーム会社ならば、「このリフォームをオーダーするとしたらここの会社だな」と消費者が反射的に想起できるような状態にすることが理想です。そのために多用されるのがシンボルマークやネームの独自性であったり、斬新なデザインや法的な権利である登録商標であったりします。いずれもリフォーム市場に深く浸透させるためのやり方です。
加えて、押さえておきたいのが規模別のアプローチの仕方だと思います。
大別すると、個人向けと企業向けの2種類に分けられるのですが、例えば小規模のリフォーム会社であれば、経営者の個性をより生かしていくことが効果的です。経営者の人柄によって地場との繋がりが強固となり、親しみやすさが伴います。結果的に契約件数の増加に結び付くわけです。経営者のパーソナリティを前面に押し出すことがすなわちブランドに直結しやすいという特性に気づけば、これまで以上にメディアを使ったマーケティングが有効になるでしょう。露出を増やし、認知度を高めるということを戦略的に実行するのです。
「安価で高品質」といった宣伝文句も大切ですが、経営者のメッセージやモットーなどを織り込むことで、エンゲージメントがさらに高まる期待を持てます。リフォームメニューだけでなく、会社のトップの信頼度を付加価値として与えることが大事です。
中規模以上の会社であれば、企業スタイルで対応しましょう。
施策としては、消費者に対して、実績豊富であることや納期をしっかり守れる体制であることといった、小規模では不安な要素を前面に押し出してアピールすることをおすすめします。
つまり、武器は信頼性です。
上記のイメージ作戦でもって、ブランドの定着化を図り、安定した売上につなげていきます。良い口コミや評判の声が増えれば、どんどん成長していく可能性も高いです。そのためには消費欲求をくすぐるリフォームメニューの提示は大前提になります。そして常にそれは更新させなければいけません。時間の経過とともに価値が下がり、競合他社も類似したメニューを次々に打ち出し、後発の利を追求してくるからです。
根強いファンを増やし、市場を常にリードするという命題をクリアし続ければ、たとえ業界が飽和状態に陥っていても、勝ち残れると思います。
ポジショニングによるアピール
ポジショニングも意識しましょう。
マーケット内で競合他社と戦う際、ウリを明確化すれば、その分野でたちまち優位性を築けることになります。重要なのは、あれもこれも、といくつも柱を設けないことです。複数の柱を設けてしまうと自社の方針が分散され、曖昧な印象を与え、消費者を迷わせることになります。場合によっては、マーケットへの浸透が進まないというデメリットを引き起こす恐れもあります。
ゆえに、差別化する内容はワンポイントに絞りましょう。そうすることで、企業メッセージを強いものとして印象付けられます。
さて、ポジショニングを行うには、先ず自社の立ち位置を見定めてください。まずは己を理解する必要があります。そのエリアでトップに君臨する「リーダー」か、それに準じる「チャレンジャー」か、あるいはその下にいる「フォロワー」か、もしくは他社が入り込むことを避けている分野に資金などを投じている「ニッチャー」なのか。これらを知ったうえで、該当するポジションに最適なマーケティング戦略を練ることになります。
リーダーであれば、戦うべきマーケットを細分化せず、ひとつの総合的な存在として考えましょう。俗にいう無差別型戦略です。全消費者をターゲットとしてメニューを提示します。総花的なストラテジーを展開し、これまで以上に売上を伸ばすために活動するのです。対してチャレンジャーやフォロワーは差別型戦略が適しています。消費者の各ニーズを分析し、それに合わせてマーケットを細分化して資材や人材を投入する方法です。そして、ニッチャー。この層に最適なのは集中型と呼ばれる戦略で、マーケットを細分化した後に、その内の一つに絞って事業を展開します。
これらはリフォーム会社でも同様に流用できるものばかり。消費者がどんなメニューを要望しているのかを分析し、自社の規模やポジションに合致した戦略をセレクトすることが肝心です。まずは的確にターゲットを設定することに注力してください。
効果的にユーザーへ訴求する
ウリもあって、差別化も図れれば、それを最大限、うまく伝えることが大事です。例えば、媒体選び。その特性を把握せず漠然とアプローチしていませんか。
この章では、ユーザーインサイトを考えるなら知っておきたい注意事項やテクニックを紹介します。
インターネット集客の落とし穴に注意する
インターネットの台頭もあいまって、今や新聞の折り込みチラシやDM、ポスティングといった一方的なアピールの仕方では新規の顧客を獲得することは困難です。「すぐにリフォームしたい層」には、依然有効とはいえ、顧客全体で考えると、そこに割く時間は少々高コストな気がします。わずか1パーセントのシェアというデータを引き合いに出すまでもなく競合他社と奪い合うにはあまりに小さなパイなのです。
そうなってくると考え方をあらためなければいけません。
リフォーム会社でも発想を転換し、潜在的にリフォームを求める「見込み客」の獲得に軸足を移すことが柔軟な対応といえるでしょう。
見込み客はリフォームに興味はあるものの、まだどこに頼むか決意を固めていない層であり、購買行動プロセスの中では情報収集を続けている段階です。彼・彼女らに自社の存在を発見してもらうことが最初の関門となります。リフォームを依頼する業者の選定リストに加えてもらうことが必要なのです。
だからやっぱりネットということになるのですが、そこには注意すべき落とし穴があるのも事実として覚えておかなければいけません。
アクセス数を増やすための取り組みの一つとして近年はSNSが人気です。自分に必要な情報を自力で集めるのが当たり前の時代になってきました。だからこそ、ただ発信しただけでは効果は生まれません。むしろ力を入れているライバルに差をつけられてしまいます。しかもSNSはセンスが問われるので、愚直にやればいいというものでもないのが難しいところです。下手すると無駄に時間を削るだけになってしまいます。
Webを使うなら、HP、SEO、リスティング広告等色々あるのでしっかり吟味することが必要不可欠です。
そんな中あえて共通項を挙げるならば、コンテンツマーケティングの思考法はどの媒体でも持っておいてください。魅力的なコンテンツを潤沢に用意することで、数多ある会社の中から自社を見つけてもらいやすくなります。アクセス数の伸びも期待できます。しかし、最終的には仕事を依頼されなければ意味がありません。単に用意したコンテンツに訪問してもらえるだけではだめ。どうやって注文まで到達させるか、が大事になってきます。
ネット集客は現在、ほとんどの業界で主流です。リフォーム会社も然り。参入障壁は年々低くなり、似たような内容のメニューが肩を並べ、価格もサービスも大差のない状態が日常化しています。だからこそ、最終的には消費者の目線に立って考えることが重要なのです。
問い合わせから成約まで繋げる秘訣
見込み客と自社との接触は、先述したコンテンツマーケティングを通じて行われます。消費者にとって付加価値の高いコンテンツを発信することで出会いのきっかけを作り出すことができるからです。顕在化していない潜在的な顧客にアプローチを繰り返し、段階的に購買意欲を高め、ファンとして定着させる段階へと導いていきます。そしてこの手法は決してネット上の活動だけを指すものではありません。各種のイベントやセミナーといった実際の接触もマーケティングのひとつです。消費者との信頼関係は「接触頻度」と「接触の深さ」の積で算出されるため、各会場での顔合わせは重要なコンテンツに含まれているのです。
自社に興味を持ってもらえれば、独自の商品やメニューへの問い合わせが増えてきます。消費者からの期待のあらわれであり、信頼を得たという証左でもあります。それを裏切らないよう、ネットとリアルの場で接触できる窓口や機会を設けながら、マメな情報更新を欠かさないように心を砕く必要があります。そうすることで見込み客が顕在化され、ファンとして成長し、成約に漕ぎつけることができるのです。
ビジネスフレームワークを活用した無駄のない戦略
様々な戦略を立てる上で欠かせないのが非効率性を排除できるかどうかという点です。市場は流動的で、スピード感のある意思決定は不可欠です。しかし、浅薄な決定内容であれば自社を窮地に落としかねません。急速に動き続ける市場で戦わなければならないからこそ、徹底的に無駄を省いた経営戦略が求められます。ビジネスフレームワークは、情報を図や表で可視化したものであり、内容は業界で成功したケースをフォーマット化したものです。第三者が考察しやすいよう工夫されており、歴史から学んで未来に生かすという意味でも重要です。すでに動いている会社はもちろん、これから動こうとしている会社であれば「ロジックツリー」「AIDMA」「AISAS」「5W1H」「PDCA」といったベーシックなフレームワークを学んでおく必要があります。
ロジックツリーは状況分析に使います。ある問題や課題についてWHATツリー、WHYツリー、HOWツリーに分解し、それぞれを要素分解、原因究明、問題解決のために用いる方法です。AIDMAとAISASは、いずれも自社の広告に対して消費者が購買意欲を高めたかどうかを知るうえで重要になります。彼らの心理プロセスを分析するための指標で、注意、関心、欲求、記憶、行動などが解析の柱を成します。AISASはAIDMAをやや発展させた形式で、共有情報を検索する点が加えられています。5W1Hは、何を、いつ、誰が、どこで、なぜ、どうやって、を分析する方法であり、PDCAは、計画、実行、評価、改善といった事業サイクルの管理とフィードバックに用いられます。
これらはリフォーム会社の経営においても欠かせない要素であるばかりか、問題提起と解決に至るまでの分析方法として極めて有用です。売上をアップさせるためには、これまでの経営方針や経営目的に対して、まず疑問を持つ必要があります。モットーやポリシーといったお題目を錦の御旗として掲げ、現状を直視することを避けてきた可能性があるからです。ビジネスフレームワークに照らし合わせてみることで、時代に合わなくなっていた経営が浮き彫りになることもあるのです。
何年もの間、リフォーム業界で育ってきた会社であれば、新しい何かに手をつけることは困難を伴うかもしれません。しかし、時代の流れに敏感に反応しなければ、未来は築けません。指標や基準を積極的に取り入れるエネルギー、土壌はこの先もどんどん求められるでしょう。ただ何もせず有名企業の後塵を拝するのは勿体ないと思います。たとえライバルが大企業であっても、追い付き、追い越すべく、新しいシステムはできるだけ早く導入するべきです。
積極性と柔軟性が未来を創るカギとなる
これまでのリフォーム業界で当たり前だったことが、現代では通用しなくなっています。集客してきたのは、とてつもなく狭い層であり、こだわっても無意味だったからです。これからは、顕在化していない「見込み客」にどうアプローチしていくかを積極的に研究し、柔軟に実施する必要があります。売上アップに直結するのは、まだ自社を見つけ出していない層だということを意識することがカギです。
逆にいえば、そこに気付いて行動に移せたなら未来は明るいでしょう。それはきっと市場の活性化にもつながります。
いずれにせよ、拙稿にてお伝えしてきたことが少しでもお役に立てば幸いです。
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