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ROASとは?その意味と計算方法、ROIやCPAとの違いを解説

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Web広告の発展により、ターゲットへの効率的な訴求が可能となっている現在、広告施策の重要性は年々大きくなっています。

さまざまな媒体で数多くの広告が配信されるなか、成果を得るには「広告効果」を数値の面から把握することが重要になるでしょう。

広告施策のコストパフォーマンスを評価するうえで、重視されているのが「ROAS」という指標です。この記事では、ROASの意味や計算式を紹介したうえで、具体的な数値の目安や改善に向けたポイントについて解説していきます。

ROASとは

ROASとは、「Return on Advertising Spend」を略した言葉であり、読み方としては「ロアス」が一般的です。日本語では「広告の費用対効果」を意味し、「広告にかけた費用に対してどれだけリターンがあったか」を表します。

ROASは広告施策の検証において重要な指標の1つとされており、とくにWeb広告やSNS広告をはじめ、さまざまな媒体に広告を出稿している事業者が、それぞれの媒体のコストパフォーマンスを比較する際に用いられています。

ROASが広告戦略に欠かせない理由

上述のように、現在ではWeb上を中心に数多くの広告プラットフォームが存在しており、同時に複数の媒体で広告施策を展開している事業者が少なくありません。

そうしたなか、広告戦略を最適化するうえでは、「どの媒体により多く出稿すべきか」「効果が出ていない媒体はないか」といった点をその都度検証していく必要があるでしょう。

検証のしやすさという点で、ROASは「広告費」と「広告を通じた売上」から算出される指標であり、さまざまな指標のなかでも計算しやすい部類だといえます。継続的に数値を割り出し、変化を観察していく際のリソースも少ないため、媒体ごとの比較や期間ごとの比較にも使いやすい指標なのです。

ROASの計算式

一般に、ROASを求める計算式は以下のように表現されます。

ROAS(%)=広告からの売上額÷広告費×100

ここで注意すべきは、ROASを算出する際には「広告を通じた売上がどれだけあるか」を把握しなければならない点です。

Web広告が普及する以前は、テレビCMやポスターなどを見て商品を購入する消費者の行動を追うことが難しく、正確に「広告からの売上額」を割り出すことは困難だったといえます。

一方、現在普及しているWeb広告においては、「その広告をどれだけの人がクリックし、そのうちどれだけの人が商品購入に至ったか」といったデータを把握しやすく、広告を通じた売上額も算出しやすくなりました。

こうした背景から、ROASが広告施策の効果を測定する指標として広く活用されるようになったと考えられます。

ROASの算出例

たとえば広告プラットフォームごとの費用対効果を比較するケースとして、「媒体Aに500万円をかけ、600万円の売上をあげた場合」と「媒体Bに200万円をかけ、300万円の売上をあげた場合」を比較してみましょう。

媒体AのROAS=600÷500×100=120%

媒体BのROAS=300÷200×100=150%

このように、上のケースでは売上そのものは媒体Aの方が大きいものの、ROASで見ると媒体Bの方が費用対効果に優れていることがわかります。こうしたコストパフォーマンスの比較によって、「媒体Bにより多く出稿する」など広告施策の最適化につなげていける点がROASのメリットです。

ROASから見る「効果的な広告」の目安

ROASは広告からの売上を広告費で割った指標ですので、100%を超えていれば「売上が広告費を上回っている状態」ということになります。

ただし、ROASの計算式には「広告費以外のコスト」が含まれていません。そのためROASが100%を超えていても「実際の利益を見ると赤字」というケースが考えられます。

以下ではROASを通じて、利益面での成果をチェックするための目安について解説します。

ROASにおける損益分岐点の目安

ROASは売上をベースとする指標であるため、「実際に黒字が出ているか」を確かめるには「原価」の観点をふまえて損益分岐点を算出する必要があります。

ここで、ROASの損益分岐点は、「売上単価に対する利益率」と一致し、以下の式によって計算することが可能です。

ROASの損益分岐点(%)=顧客単価÷(顧客単価-原価)×100

たとえば仮に、「顧客単価が10,000円、原価が2,000円」という商品を扱っている場合、損益分岐点となるパーセンテージは次のとおりです。

10,000÷(10,000-2,000)×100=125%

ここで、先に挙げた例のように「媒体AのROASが120%」「媒体BのROASが150%」というケースを考えると、媒体Aは実際には「赤字」の状態であり、反対に媒体Bは「黒字」であることがわかります。

このように、ROASが100%を超えていても、施策の収益性を知るうえでは「実際の損益分岐点」を考慮して効果を測定する必要があるでしょう。

ROASと関連する指標との違い

ROASに似た指標として、「ROI」や「CPA」が挙げられます。いずれも施策の費用対効果に関する指標ですが、それぞれ評価できるポイントは異なりますので、場面に応じて適切に使い分けることが大切です。

ROASとROIの違い

ROIは「Return on Investment」の略語であり、「投資利益率」や「投資収益率」と訳されます。具体的には「事業や施策に投資した金額に対し、どれだけのリターンがあったか」を表し、以下の計算式によって算出されます。

ROI(%)=利益額÷投資額×100

ROIは「投じたコストに対するリターン」を評価する指標であり、この点ではROASと共通する面が大きいでしょう。一方で、ROASが「売上額」からリターンを見るのに対し、ROIは「利益」からリターンを見るという違いがあります。

いずれも「広告費をかけたことによる変化」をチェックするための指標ですが、ROASは売上面から「広告施策による消費行動の変化」を確認することに適しています。一方のROIは、「広告施策ごとの収益性の高さ」を比較検討することに適した指標です。

>>>ROIとは?その意味と算出方法、間違えやすいROASとの違いをわかりやすく解説

ROASとCPAの違い

CPAは「Cost per Acquisition」または「Cost Per Action」を略した言葉であり、日本語で「顧客獲得単価」と訳されます。具体的には、「1件の成果(=コンバージョン)を獲得するためにコストがいくらかかったか」を示す指標であり、計算方法は以下のとおりです。

CPA=広告費用÷コンバージョン件数

このCPAは「成果1件あたりの広告費」を表すため、低い数値であるほど低コストで成果を得られていることになります。

ROASが広告費の回収率を「売上額」から算出するのに対し、CPAはコンバージョンの「件数」から算出する指標です。「実際に成果につながった数」をもとにしていることから、CPAは「広告施策がどれだけ効率的にターゲットに届いているか」を評価するのに適しています。

ROASとあわせて押さえておきたい指標

広告の費用対効果を測定する際は、ROASの他にもROIやCPAなどを通じて検証することで、多角的な分析が可能になるでしょう。その他、場面に応じて以下のような指標を取り入れていくと、より幅広い視点が得られると考えられます。

■CVR
CVRは「Conversion Rate」の略であり、「コンバージョン率」を意味します。具体的には、「広告をクリックしたユーザーが、どれだけ目標となる成果に至ったか」を表す指標です。ROASを改善する際には、このCVRを高めることが重要な観点の1つになるでしょう。

なお、計算方法は以下の式によって表されます。

CVR(%)=コンバージョン数÷広告のクリック数

■CTR
CTRは「Click-Through Rate」を略した言葉であり、広告の「クリック率」を表します。「広告がどれほどターゲットの興味を引けているのか」を確かめるために用いられ、計算式は以下のとおりです。

CTR(%)=クリック数÷広告の表示回数

先のCVRと組み合わせることで、「広告を見たターゲットがどれだけ成果に到達しているか」を段階的に把握できます。CTRが低ければ、そもそも広告がユーザーの関心を引けておらず、またCVRが低ければ、ランディングページなどで購買意欲を高められていないといった状況が読み取れるのです。

つまり数値が低いポイントが「ユーザーが離脱している箇所」を示しており、この点の改善がROASを向上させるうえで重要な意味をもつでしょう。

■LTV
LTVは「Life Time Value」の略語で、「顧客生涯価値」と訳されます。「顧客1人が自社と取引した期間を通じてどれだけ利益をもたらしているか」を表す指標であり、計算式は以下のとおりです。

LTV=平均購入単価×粗利率×1年間の購入回数×継続年数

特定時点における広告効果を測定するROASに対し、LTVは継続的な視点から収益性を評価するために用いられ、長期的な戦略を練るうえで重要な意味をもちます。

>>>LTVとは?意味、計算方法、最大化する施策や事例など徹底解説

ROASを改善するためのポイント

ROASの数値を向上させるには、広告を通じた売上額を高めつつ、広告費を抑えていく必要があります。広告効果を最適化するうえでは、ターゲットに対して的確に訴求し、購買意欲を高めていく観点が重要です。

以下では具体的に、広告効果を高め、ROASを改善するためのポイントについて解説していきます。

ROASの目標値を明確にする

具体的な改善策を講じる前に、「ROASをどこまで上昇させればよいのか」という目標値を定めておきましょう。まずはROASの損益分岐点を算出したうえで、「利益が生じるのはどこからか」をしっかりと把握しておく必要があります。

現状のROASの数値と損益分岐点を見比べながら、「その広告媒体に出稿することで、どれだけ利益を生み出せているのか」「利益が出ていない場合には、どれだけROASを上昇させる必要があるか」を検証し、改善目標となる数値を設定するとよいでしょう。

効果の低いプラットフォームや施策の特定

出稿している広告プラットフォームごとに、あるいは広告施策ごとにROASを比較し、広告費に対して効果の出ていない媒体や施策を特定していく観点も重要です。

特定の媒体や施策が他に比べて著しく低い数値である場合には、CVRやCTRといった指標も確認しながら、「なぜ効果が出ていないのか」という原因を突き止めていくことが求められるでしょう。

反対に、ROASの数値が高い施策についても検証し、「何が効果につながっているのか」を分析する視点も欠かせません。さまざまな指標を活用しながら、短い間隔で改善策を講じ、再度施策の効果を検証・フィードバックするといったサイクルを回していくことが大切です。

ターゲティングの最適化

Web広告の費用対効果を改善するうえで、欠かせないのがターゲティングの観点です。

たとえば「大学生から新社会人」をメインターゲットとした商品でありながら、全年齢を対象に広告を出稿していては、「購入の見込みが低い層」に対して多くの広告費をかけることになるでしょう。

まずは商品やサービスの特性をしっかりと検討したうえで、ターゲット像を明確化し、その購買行動を予測することが重要です。そのうえで、年齢層やエリアを絞ったり、配信時間を限定したりと、「確度の高い相手」に広告を見てもらえる工夫をしていきましょう。

広告クリエイティブの改善

実際にどのような広告を出稿するかによっても、成果は大きく左右されます。CTRが低い場合にはとくに、「表示された広告が見た人の興味を引けていない」という状況が考えられるでしょう。

こうした状況を改善するには、アピールポイントを端的に示し、短い時間で関心を引き出せるようなクリエイティブを作成する観点が必要です。

ターゲットの悩みに訴求するキャッチコピーや、商品の性質に応じた印象的なイメージを用いながら、レイアウト面でも「商品情報」や「リンクへの導線」をわかりやすく構成していきましょう。

広告からの導線を整理

広告から遷移した先のページについても、ターゲットの関心に合わせて情報を提示できるよう整理しておく必要があります。

とりわけ「CTRには問題がないが、CVRが低い」という状況は、「広告のクリックが実際の成果につながっていない」ことを意味します。これを改善するには、遷移先のランディングページなどの導線を見直すことが求められるでしょう。

遷移先では「こんな方にオススメ」「選ばれる理由」など商品のアピールポイントを端的に提示しながら、「購入の流れ」や「FAQ」といったコンテンツにより、問い合わせや購入をめぐる疑問などを解消していくことが大切です。

その他、問い合わせに至るCTAボタンをわかりやすく配置したり、問い合わせフォームを入力しやすいよう整理したりといった工夫もCVRに影響すると考えられます。

予算配分の適正化

上述のような改善策を講じた結果、それでもROASが伸びない媒体や施策がある場合には、その分の予算を他に割くことも選択肢になります。費用対効果の高い媒体に投資を集中させることで、広告施策全体の収益性を改善できる可能性があるでしょう。

ただしROASの数値が低くても、長期的な認知度の向上など、「目には見えにくい効果」が生じているケースも考えられます。ROAS以外にも視野を広げつつ、「その媒体・施策を通じてどのような効果が生まれているか」を総合的に考慮することが大切です。

ROASを活用する際の注意点

広告効果に関するさまざまな指標のなかでも、ROASは計算が比較的容易であり、施策ごとの効果を逐一チェックすることに適した指標だといえます。一方で、ROASだけでは評価が難しいポイントもあるため、場面に応じて活用していくことが大切です。

以下では実際に、ROASを活用する際の注意点について解説していきます。

長期的な視点も考慮する

ROASは基本的に、「施策単位での広告効果」を測定することに適した指標です。その反面、広告出稿による認知度の変化や、商品イメージの変化といった点について評価することは難しいといえます。

そのため一般に、ROASを活用するのは「短い間隔で広告施策の効果を測定し、改善策を講じる」といった場面が主となるでしょう。一方、長期的な視点からの評価はLVTなどを通じて実施していくことが求められます。

その他、数字に表われにくい部分の変化をチェックしたい場合には、口コミサイトやSNS上でのリアクションの変化をチェックしたり、アンケート調査を実施したりと、実地的な観測と評価も重要になります。

複数の指標を活用する

ROASは施策や媒体ごとの費用対効果を比較する際に有効な指標ですが、実際に「その施策にどんな問題があるか」という課題を浮き彫りにすることは難しいといえます。

ROASを改善するうえでは、CVRやCTRといったその他の指標を取り入れ、施策のボトルネックを特定していく作業が求められます。

広告プラットフォームに備わる分析機能なども利用しながら、広告に対するユーザーのリアクションを追い、「どこで関心が失われているか」といったポイントを具体的に把握していきたいところです。

広告費を総合的に算出する

広告費というと「広告プラットフォームの事業者に支払う料金」がまず思い浮かぶかもしれません。しかし、広告を出稿するにあたっては「クリエイティブの制作費」などさまざまコストが生じているものです。

そのためROASを正確に割り出すには、広告費のうちに実際に生じているコストをカウントしていく必要があります。

さらに、ROASには含まれていない「利益」の視点も忘れずにおきたいところです。損益分岐点を明確にしつつ、広告費の他にかかる営業コストや生産コスト、流通コストといった面にも目を向けていくとよいでしょう。

まとめ

ROASは「広告の費用対効果」を意味し、広告施策による短期的な効果を把握することに役立つ指標です。複数の広告施策の効果を短いスパンで確認し、改善策につなげていけるメリットがあります。

一方で、ROASは売上をベースとする指標であることから、「広告を通じてどれだけ利益が出ているか」を確認することには適していません。ROASの損益分岐点を明確化したり、ROIによって実際の利益率を算出したりすることで、見えないポイントを補っていく必要があるでしょう。

ROASを改善するうえでは、CVRやCTRといった指標を用い、「広告施策のボトルネック」を突き止めていくことが大切です。ROASによる検証をベースとしながら、場面に応じて異なる指標を活用することで、効果的に改善策を導き出せると考えられます。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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