セグメントとは?マーケティングに活用する方法や成功事例
マーケティング戦略が上手くいかない、その原因は「セグメント」にあるかもしれません。
普段の生活ではあまり耳にすることのないセグメント。実は、あらゆるマーケティング活動を語る上で欠かせない、必ず知っておきたいビジネス用語なのです。
今回は、セグメントの意味と重要視すべき理由、ターゲットとの違いやマーケティングにおける効果的な活用方法、成功事例に至るまで徹底解説します。
「セグメントってたまに聞くけど、何だろう?」
「ターゲットとは違うの?」
「マーケティング活動が行きづまっている……」
目次
セグメントとは?基本を理解しよう
セグメントとは、ある市場のなかで、購買行動や年齢、所得水準など、類似した特性を持つ人々の集団のことを指します。
たとえば、ある商品に対して、商品の知識や価値の判断、使用方法などが似通った客層のまとまりを“セグメント化”すれば、各グループのニーズに合わせたキャンペーンを行うことができます。
マーケティング担当者は、セグメントの特性を理解することで、各セグメントに向けたメッセージや戦術をより効果的に展開可能になるのです。
セグメントとセグメンテーションの違い
セグメントと混同しがちなビジネス用語として、セグメンテーションがあります。セグメンテーションは、日本語で「区分」という意味です。
マーケティングにおいては、「市場に存在する不特定多数の顧客をさまざまな切り口で分類し、特定の属性ごとに細分化するプロセス」と定義されることが多いでしょう。
そして、そのプロセスによって細分化された集団こそがセグメントと呼ばれるのです。
セグメントとターゲットの違い
ターゲットが明確でないと、具体的なペルソナ設計もできないため、誰の課題を解決するための商品・サービスなのか、曖昧になってしまいます。しかし、忘れてはならないのがセグメント・セグメンテーションあってこそのターゲット・ターゲティングだということです。
ターゲティングとは、セグメンテーションによって細分化された市場(セグメント)のなかから、自社がターゲットに据える市場を選ぶプロセスを指します。
セグメントとターゲット市場の大きな違いは、セグメントはより大きな集団の一部であるということです。一方、ターゲット市場は、セグメントのなかで、ある共通の属性を持つ特定の集団を指します。
つまり、セグメントは母集団全体を包含する広い言葉であり、ターゲット市場は母集団のなかでさらに特定の特徴を共通に持つ部分集合といえるのです。
セグメントのメリット・デメリット
セグメントを切り分けるセグメンテーションのメリットは、マーケティング担当者が特定のグループに合わせたターゲットキャンペーンを行うことができる点です。それぞれのセグメントの特性を理解することで、各セグメントの欲求やニーズに訴求するキャンペーンを構築できます。
これは人々の価値観や取捨選択方法の多様化が進む現代において、非常に有効な手段といえるでしょう。さらに、セグメンテーションによって、コンバージョンにつながる可能性が最も高いセグメントにリソースを向けることができるため、キャンペーンの予算をより効果的に確保することが可能になるのです。
一方で、セグメンテーションは、思い込みによるリスクや潜在顧客を見逃す危険性もはらんでいます。共通の興味やニーズを持っているという仮説に基づいて実施するため、きちんと効果測定を行い、データに基づいて取り組む必要性があることを念頭に置いておきましょう。
セグメントが持つ様々な意味
セグメントは本来、英語で「分割すること」あるいは「部分」や「区分」「階層」などといった意味をもった言葉です。そのことから、マーケティング活動以外にも、広い意味での経営やデジタル放送、IT分野などで使われることがあります。
以下に、各分野における主なセグメントの意味をまとめましたので、気になる方はチェックしておきましょう。
マーケティング | 市場分析で顧客層を区分するための基準の一つ |
企業情報や会計情報を開示する場合 | 企業の業種や所属地域などの分類 |
地上デジタル放送 | 放送に割り当てられた電波の周波数帯域を分割した領域 |
コンピュータやIT分野 | ①データ量が多いプログラムやファイルを記憶装置に読み込むときのデータを分割するための単位②コンピュータや通信機器が大規模に接続されているLANネットワーク上で、複数の機器から構成された小さなネットワーク |
セグメントがマーケティングで重要な理由
新しい商品やサービスなどを展開していくにあたって、なぜセグメントが重要なのか。その理由を紐解いていきましょう。
消費者ニーズの多様化
市場を居住地や年齢、性別、価値観などの条件で細分化すれば、消費者の多様化したニーズ、価値観のなかから、自社がアプローチすべき部分を明確化することができます。これは、まさに飽和状態といえる現代の市場において非常に有効です。
モノや情報が大量に存在する現代。モバイル社会研究所が公表した『データで読み解くモバイル利用トレンド2022-2023 ―モバイル社会白書―』によると、人々のスマートフォン所持比率は年々増加し、2010年に 4.4%だったスマートフォン比率は、2022年には94.0%にまで増えました。60代で9割を超え、70代でも 7割。若い世代だけではなく、シニアにもスマートフォンが浸透したことが分かります。
スマートフォンが普及したことで、消費者は大量かつ魅力的な選択肢のなかから、より気軽に自分に合ったものを選び取れるようになったのです。消費者にとっては、非常に便利な環境になったといえますが、裏を返せば、“あらゆる商品が大ヒットしにくくなった”ともいえます。だからこそ、自社商品やサービスに関心の高い顧客をターゲットとして絞り込み、それぞれのニーズに合った最適なアプローチをすることの重要性が高まっているのです。
適切にセグメントを分け、集客や売上が期待される部分に注力して、マーケティングコストを抑えつつ売上を伸ばす。そうすることで、製品やサービスが容易には売れにくい時代であったとしても、利益を継続的に生み出していけるのです。
参照:『データで読み解くモバイル利用トレンド2022-2023 ―モバイル社会白書―』(株式会社NTTドコモ モバイル社会研究所)
マーケティングツールの進化
現在ではインターネットやスマートフォンに代表されるITが進化・普及したことで、消費者の行動を追跡しやすくなりました。インターネットの閲覧履歴や購買履歴などの情報を蓄積するCookieが代表的です。
ユーザー一人ひとりの行動履歴を追い、特定の行動が見られる人々を分類、グループ化する……これを人の手で行うとなると相当の労力を費やすことになるでしょう。そのようななか、GoogleアナリティクスやMA(マーケティングオートメーション)、CRM(顧客関係管理システム)といったマーケティングツールも進化を遂げ、セグメンテーションをスピーディーに行ったうえで、ターゲットとして定めた顧客層の行動特性や趣味嗜好などの情報を容易に入手・管理できるようになったのです。
企業がマーケティングツールを導入すれば、特定の顧客層を指定して有益なコンテンツを効率よく届けられます。マーケティング戦略を展開するうえで、セグメンテーションは必要不可欠な要素であるとともに、ユーザーにとっても不要な広告などに触れる機会が減るため、一石二鳥といえます。
※Cookieなどのユーザー行動データは、「ネット利用者が誰なのか」を記録しているわけではなく、同一のPCやスマホなどからアクセスしている利用者を識別しているだけです。そのサイトの運営企業は、Cookieのデータを使って利用者の名前や性別、年齢などの個人情報を取得できないので覚えておくと安心です。
セグメントの分類方法
セグメンテーション(セグメント分け)には、いくつかの分類方法があります。そのなかでも、ユーザー情報さえあれば、すぐに試せる代表的な4つの指標を紹介しましょう。
行動変数(ビヘイビアル) | 過去の購入履歴、購入頻度、オンライン行動などのパターン |
人口動態変数(デモグラフィック変数) | 性別、年齢、収入レベル、配偶者の有無、学歴などの特徴 |
地理的変数(ジオグラフィック変数) | 都市部、郊外、地方、地域といったロケーションベースの特徴 |
心理的変数(サイコグラフィック変数) | 購買者の性格特性、ライフスタイル、価値観など |
行動変数によるセグメント(ビヘイビアル)
ユーザーが実際に購入する要素で分類するのが行動変数(ビヘイビアル)です。行動変数によるセグメントには、主に以下のようなものがあります。
行動変数 | 詳細 | 例 |
---|---|---|
購買頻度 | 消費者がどのくらいの頻度で製品を購入するかに基づくセグメント | 日常的に購入する消費材(たとえば、牛乳やパン)と、年に一度しか購入しない耐久財(たとえば、家電製品) |
購買タイミング | 消費者がいつ製品を購入するかに基づくセグメント | 季節商品(クリスマスの飾り付け、バレンタインデーのチョコレート)や、特定のイベント時(誕生日プレゼント、記念日のギフト)に購買が集中する商品 |
利用状況 | 製品やサービスの利用頻度や使用パターンに基づくセグメント | 頻繁に利用する「ヘビーユーザー」、時々利用する「ミディアムユーザー」、ほとんど利用しない「ライトユーザー」 |
ブランドロイヤルティ | 特定のブランドに対する消費者の忠誠度に基づくセグメント | 「ブランドロイヤルティが高い顧客」(同じブランドの製品を繰り返し購入)と、「ブランドスイッチャー」(複数のブランドを試す消費者) |
購買動機 | 製品を購入する動機に基づくセグメント | 価格に敏感な「価格重視の消費者」、品質を重視する「品質志向の消費者」、環境に配慮する「エコロジカル消費者」 |
使用シーン | 製品やサービスが使用される特定の状況やシーンに基づくセグメント | 朝食用のシリアル、仕事中のスナック、リラックスしたいときの飲料など |
消費者ニーズの多様化に伴い、行動変数も一層注目されています。特に現代では、インターネットの普及、cookieの登場、マーケティングツールの進化などにより、人々のインターネット上の購買行動を起こすまでの動きを追跡しやすくなりました。
本屋やコンビニ・駅の売店など購入経路の分析にも活用できますが、ECサイトなどのインターネットベースでデジタルマーケティングを展開する際に、一層大事な指標となるでしょう。
人口動態変数によるセグメント(デモグラフィック)
人口動態変数(デモグラフィック変数)によるセグメントは、消費者の人口統計的な属性に基づいて市場を分類する方法です。以下にいくつかの具体例を挙げます。
人口動態変数 | 例 | 適用例 |
---|---|---|
年齢 | 子供(0-12歳)、ティーンエイジャー(13-19歳)、若年成人(20-35歳)、中年成人(36-55歳)、シニア(56歳以上) | 化粧品ブランドが、若年成人向けのトレンドコスメとシニア向けのアンチエイジング製品を提供することで、異なる年齢層のニーズに応える |
性別 | 男性、女性、その他の性別 | スポーツブランドが、男性向けの筋力トレーニング機器と女性向けのヨガ用品を提供することで、性別ごとの関心に対応する |
収入 | 低所得(年収300万円以下)、中所得(年収300万円-700万円)、高所得(年収700万円以上) | 高級時計メーカーが、高所得層をターゲットにし、一般的な家電メーカーは中所得層向けの製品を開発する |
学歴 | 高卒、大卒、大学院卒 | 教育サービス会社が、大学院卒を対象にした高度な専門コースと、高卒を対象にした基礎的な職業訓練プログラムを提供する |
職業 | 学生、専門職、管理職、サービス業、退職者 | キャリアサービス企業が、専門職向けの転職支援と学生向けのインターンシッププログラムを提供する |
家族構成 | 独身、既婚(子供なし)、既婚(子供あり)、シングルペアレント | 不動産会社が、ファミリー向けの広い住居と、独身向けのコンパクトなアパートメントを提供する |
居住地域 | 都市部、郊外、農村部 | 食品デリバリーサービスが、都市部に集中し、農村部では農業関連製品の販売に注力する |
人口動態変数によるセグメントは、テレビ番組や家具・家電製品といったユーザーの生活と密接に結び付くサービスや製品のマーケティングを考える際に有効な場合があります。
実際に、テレビの視聴率調査で用いられる「M1」「F1」などの性別や年代を分類する言葉は、人口動態変数に該当します。
地理的変数によるセグメント(ジオグラフィック)
地理的変数(ジオグラフィック変数)によるセグメントは、消費者の地理的な位置に基づいて市場を分類する方法です。地理的変数によるセグメントには、主に以下のようなものがあります。
地理的変数 | 例 | 適用例 |
---|---|---|
地域 | 北米、ヨーロッパ、アジア、アフリカ | グローバル企業が、地域ごとの文化や消費習慣に応じた製品を提供する・食品メーカーが各地域の好みに合わせた味付けを採用する |
国 | 日本、アメリカ、中国、インド | 企業が、国ごとの法規制や市場特性に合わせて製品をローカライズする・自動車メーカーが、各国の安全基準に適合したモデルを提供する |
都市と地方 | 都市部、郊外、農村部 | 配送サービスが、都市部で迅速なデリバリーを強化し、農村部ではアクセス可能なポイントを設置する |
気候 | 寒冷地、温暖地、熱帯地域 | 衣料品メーカーが、寒冷地向けに防寒具を、熱帯地域向けに通気性の良い衣服を提供する |
人口密度 | 高密度地域、中密度地域、低密度地域 | 高密度地域では、小売店の数を増やし、低密度地域ではオンライン販売を強化する |
地形 | 山岳地帯、沿岸部、平野部 | アウトドア用品メーカーが、山岳地帯向けに登山装備を、沿岸部向けに水上スポーツ用品を提供する |
地理的変数によるセグメントは、お酒や煙草といった地域によって、利用できる年齢に差がある商品、エアコンや暖房器具などの地域の気候に深く結び付いている製品のマーケティング活動においても、大事なセグメントになります。
心理的変数によるセグメント(サイコグラフィック)
心理的変数(サイコグラフィック変数)によるセグメントは、消費者の心理的な特性やライフスタイル、価値観、興味、態度に基づいて市場を分類する方法です。以下にいくつかの具体例を挙げます。
心理的変数 | 例 | 適用例 |
---|---|---|
ライフスタイル | アクティブなライフスタイル、家庭中心のライフスタイル、冒険好きなライフスタイル | スポーツブランドが、アクティブなライフスタイルを持つ消費者向けに、トレーニングウェアやフィットネスグッズを提供する |
パーソナリティ | 外向的、内向的、リスクを取る、リスクを避ける | 旅行会社が、冒険好きな外向的な顧客向けにエクストリームスポーツツアーを提供し、内向的な顧客にはリラックスできるリゾートパッケージを提供する |
価値観 | 環境意識が高い、健康志向、伝統重視、革新重視 | 環境意識が高い顧客向けに、エコフレンドリーな製品を強調したマーケティングキャンペーンを展開する |
興味・関心 | 音楽、スポーツ、読書、料理 | 音楽愛好者向けに、コンサートチケットや音楽グッズを販売するマーケティングを展開する |
態度・信念 | ブランドへの忠誠心、価格に敏感、品質を重視、社会貢献を重視 | ブランドロイヤルティが高い顧客には、ロイヤルティプログラムや特別オファーを提供する |
アパレル製品であれば「高級志向でブランド好き」「安価志向でファストファッション好き」「値段に関わらず流行ものが好き」といった“好みの違い”で分類することも可能です。
セグメントの条件「4Rの原則」とは
良いセグメント(企業にとって価値ある顧客グループ)とされるためには、4Rとも呼ばれる以下の4つの条件を満たす必要があります。
- Rank(優先順位)
- Realistic(有効規模)
- Reach(到達可能)
- Response(測定可能性)
それぞれの条件について見ていきましょう。
Rank(優先順位)を考える
優先順位を考えることは、セグメントを定める際の最初のステップです。すべてのセグメントが同じ価値を持つわけではなく、ビジネスにとって最も重要なセグメントを特定することが重要です。市場に優劣をつけられないセグメンテーションでは効果を期待できないと考えましょう。
たとえば、あるアパレルブランドが、20代から30代の女性をターゲットにしているとします。そして、このブランドは、まず都市部の若くて、ある程度財力のある層に注力することを決定します。なぜなら、この層はファッションに敏感で、購入力が高く、頻繁に新しい服を購入する傾向があるからです。
このように、特定のセグメントに優先順位をつけることで、マーケティングリソースを最も効果的に活用できます。
Realistic(有効規模)を見極める
有効規模を見極めることは、選定したセグメントが実際にビジネスにとって利益をもたらす規模であるかどうかを評価するプロセスです。何より小さすぎるセグメントはリソースの無駄になりかねませんし、大きすぎるセグメントは一貫したメッセージの伝達が難しくなります。
セグメントには、ターゲットとするのに十分な人数が含まれている必要があります。そのセグメントに十分な人数のユーザーが含まれ、一定の売上や利益を確保できるかをチェックしましょう。商品やサービスの単価にもよりますが、たった50人しかいないようなニーズでは、セグメント化したところでビジネスとして成り立たないかもしれません。
たとえば、健康食品を販売する企業が、健康志向の若年層をターゲットにしているとしましょう。しかし、このセグメントが特定の地域では小さすぎると判断した場合、ターゲット市場を拡大して中年層も含めることにしたほうが得策です。中年層も健康意識が高く、健康食品に対する需要が高いため、この調整によって有効規模が確保され、ビジネスの成功可能性が高まります。
Reach(到達可能性)を評価する
到達可能性は、選定したセグメントに対して効果的にメッセージを届けることができるかどうかを評価することです。セグメントが到達可能でなければ、マーケティング活動は無駄になります。
セグメントは、ダイレクトメールや電子メールなど、何かしらのコミュニケーションチャネルを通じて到達可能でなければなりません。セグメントのユーザーに対して効果的に到達できるか、セグメント化された市場のユーザーに商品やサービスを的確に届けられるかを明確にし、商品やサービスを届けるための難易度を考える必要があります。
たとえば、富裕層をターゲットにしている高級時計メーカーがあったとします。この「富裕層」というセグメントにリーチするためには、富裕層が多く集まる高級誌やプライベートイベントでの広告を展開するのが効果的です。また、パーソナライズされたダイレクトメールを実施し、ブランドの高級感を直接的に伝えることができるようにするのも良いでしょう。
このような取り組みにより、ターゲットセグメントに対して効果的にメッセージを到達させることができるのです。
Response(測定可能性)を測る
測定可能性は、セグメントに対するマーケティング活動の効果を測定し、改善することができるか否かを意味します。マーケティング活動がどの程度成功しているかを測定できることが重要なのです。
セグメントの規模(人数)や購買力、特性といった細かい部分まで、測定できるのかもチェックすべきポイントと言えます。その後の分析・評価・改善を綿密に行っていくうえで大事な指標となるでしょう。
たとえば、オンライン教育プラットフォームが、新しいコースをリリースする際に、ターゲットセグメントである若者に対して、リスティング広告などのWeb広告を展開するとします。このキャンペーンでは、クリック率やコンバージョン率などの指標を追跡し、どの広告やメッセージが最も効果的かを分析可能です。
こうした効果測定を意識した施策を展開することで、マーケティング戦略をリアルタイムで調整し、効果を最大化することができるのです。
セグメントをマーケティングに活用する方法
市場を動態変数や行動変数といった様々な指標に基づいて区切った集団であるセグメント。
マーケティング活動において欠かせない要素ですが、意外とその活かし方を理解しているマーケターは少ないように思えます。
そこで、実際にどのようなシーンや手順でセグメントをマーケティング活動に活かしていくべきなのかを解説します。
セグメントが活かされる場面
セグメントおよびセグメンテーションは、大企業のマーケティング活動のみならず、中小企業や店舗ビジネスにおいても十分に活用することが可能です。ここでは、セグメントが具体的にどのような場面で役立つかを紹介します。
広告・宣伝
広告や宣伝でセグメントを活用することで、狙いを定めて顧客へメッセージを届けることができます。
たとえば、カフェを経営している場合、若い女性をターゲットにしているなら、インスタグラムやTikTokでの宣伝や広告の出稿が効果的です。これにより、カフェの新メニューやイベント情報を見てもらう確率が高くなります。一方、高齢者向けの商品を売っているなら、地域のフリーペーパーやラジオ広告を活用するのが適切だと言えます。
セグメントを活用すれば、まるで矢を正確に的に当てるように、効果的な広告・宣伝を実現できるのが魅力です。
商品開発
商品開発にてセグメントを活用することで、顧客の好みを理解して、最適な商品を作ることが可能です。
たとえば、スポーツ用品店が若者向けに最新のトレーニングシューズを開発する一方、中高年向けにはウォーキングシューズを提供することができます。これにより、それぞれの年齢層のニーズに応じた商品展開が可能になります。
セグメントを活用すれば、料理人が客の好みに合わせた料理を作るように、顧客にぴったりの商品を開発することができるのです。
販売・集客戦略
販売・集客戦略でセグメントを活用することで、顧客に最も効果的に商品を売るための方法を見つけることができます。
たとえば、オンラインストアが過去の購入履歴に基づいて顧客をセグメント化し、特定の商品をお勧めするメールを送ります。スポーツ用品を購入した顧客には、新しいフィットネスギアの情報を送ることで、再購入を促します。また、実店舗では、地域のイベントに合わせて特別なプロモーションを実施することが効果的です。
このようにセグメントを活用することで、効率的なルートを計画し、最短で目的地に到達するように戦略を立てられるのです。
顧客ロイヤルティ向上とLTVの最大化
セグメントを活用することで、顧客ロイヤルティの向上やライフタイムバリュー(LTV)の最大化を目指すことができるのも魅力です。
たとえば、美容院が定期的に通ってくれるお客さんにポイントプログラムを提供し、割引や特典を用意します。また、購入頻度の少ないお客さんには、特別なキャンペーンや個別のフォローアップを行い、再来店を促します。こうした取り組みを通じて、顧客の満足度を高め、長期的な関係を築くことができます。
これは、植物に適切なケアをして健康に育てるようなものです。セグメントを活用することで、顧客との長期的な関係を築くことが可能となります。
セグメントとSTP分析
セグメントを活用したマーケティング戦略の一環として、STP分析があります。STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つのステップから成り立っています。
- セグメンテーション:市場を細分化し全体像を把握
- ターゲティング:セグメントのなかから狙うべき市場を選定
- ポジショニング:競合他社との位置関係を決定
ここでは、各ステップを具体例を交えながら解説します。
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セグメンテーション
セグメンテーションは、市場を異なる特徴を持つセグメントに分けるプロセスです。
これは、まるでパズルのピースを分類するような作業といえます。それぞれのピース(セグメント)を理解することで、全体像(市場)の中でどの部分を狙うべきかが明確になるのです。
ターゲティング
ターゲティングは、セグメンテーションで分けた市場から、自社の製品やサービスに最も適したセグメントを選ぶプロセスです。
ポイントは、セグメンテーションが「分ける」作業だったのに対し、ターゲティングは「絞り込む」作業であることです。これは、最も効果的にリーチできる標的を見定めることに似ています。
ターゲティングを効率よく行うには、「無差別型ターゲティング」「差別型マーケティング」「集中型マーケティング」といった手法を使うのがおすすめです。
ターゲティングの手法 | 特徴 |
---|---|
無差別型ターゲティング | セグメントされた市場間の違いを度外視、すべての市場に同じ商品やサービスを供給する。 食料品など、衣食住に関わるものやそれらを扱う大企業で多く採用されている手法。 |
差別型マーケティング | 複数のセグメント市場に対し、それぞれのニーズにあった商品・サービスを提供する。商品の機能を変更・追加して販売する、複数の料金設定を展開するなど、数多くの企業で採用されている手法。 |
集中型マーケティング | 1つ、またはごく限られた市場にのみ集中し、マーケティング活動を行う。単価の高い商材やニッチな商材を販売している企業、コアなファンを抱えている企業によくみられる手法。 |
ポジショニング
ポジショニングは、選定したターゲットセグメントの中で、自社の製品やサービスをどのように位置づけるかを決定するプロセスです。これは、製品やブランドの「立ち位置」を明確にする作業であり、顧客の心に強く印象付けるための戦略です。
ポジショニングでは「自社が進出する市場に競合が存在するのか」「存在する場合はどのような規模感で、どのようなノウハウをもち、どのような強みがあるのか」などを調査して、自社に勝ち目のある立ち位置を探す必要がありますです。
たとえニーズのある市場だとしても、大手企業がすでに進出している市場だとしたら、一般的に利益を出すことは難しいとされています。逆に、すでに大手が進出していたとしても、「大手にはない強み」で差別化が可能であれば、利益を生み出せる可能性が高まるでしょう。
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セグメントとコンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングでは、顧客ごとに異なるニーズや興味に合わせたメッセージを提供することが重要です。そこで活躍するのがセグメントという考え方やセグメント配信といった作業です。
読者や視聴者に合わせて内容をカスタマイズすることで、より高いエンゲージメントとコンバージョンを達成することが可能となります。
メールマーケティング(メルマガ)
メールマーケティングは、顧客に直接アプローチする強力な手段です。そこで活躍するのがセグメント配信というメールの配信方法です。
セグメント配信とは、メール配信リストを居住地や購入履歴などの条件で絞り込んでセグメント化し、対象となるユーザーに合わせた内容のメルマガや案内メールを送信するメールマーケティングの手法です。
セグメント配信を行うことで、まるで特定の相手に向けて書いた手紙を送るように、個別のニーズに応じたメッセージを届けられるため、リピーターの獲得や顧客の囲い込みに役立ちます。
たとえば、オンライン書店が顧客の購入履歴を分析し、それぞれの顧客にパーソナライズされた本のおすすめを含むメルマガを配信するとしましょう。ある顧客がミステリー小説を多く購入している場合、その顧客に最新のミステリー小説や関連商品を紹介することで、購入意欲を高めることができます。
このように同じ内容のメールを全員に送る一斉配信とは違い、グループ化したセグメントごとに異なる内容のコンテンツを配信するのがポイントです。ユーザーの購入意欲や興味、関心に応じた情報を発信することで、高い反応を期待できるユーザーへ効率よくリーチできます。
LINEを使ったセグメント配信
近年では、飲食店や美容サロンなどの店舗ビジネスにおいて、LINEを使ったセグメント配信も人気のマーケティング手法のひとつです。顧客が日常的に利用しているLINEを活用することで、まるで友人にメッセージを送るように、親しみやすい形で顧客に情報を提供することができます。
たとえば、飲食店がLINE公式アカウントを活用し、顧客の好みに応じたクーポンや新メニューの情報を配信するとしましょう。過去に和食を好んで注文した顧客には、新しい和食メニューの紹介や割引クーポンをLINEで送信することが可能です。これにより、顧客の関心を引き、再来店を促すことができるのです。
セグメントを活用したマーケティングの成功事例
セグメントを活かすことで、マーケティング戦略は格段に効果を発揮します。ここでは、具体的な企業の成功例を紹介します。
パナソニック
パナソニックは、「レッツノート」というビジネスモバイルPCで成功を収めました。
「法人かつ外回りの営業」という独自のセグメントに焦点を当て、まるでタフなアスリートのように頑丈で軽量な製品を開発。落下や水濡れにも耐えられるよう設計することで、大ヒットを記録しています。
セグメントを絞り込み、外回りの営業に求められる機能にとことんこだわった商品開発が成功した事例です。
銀のさら
宅配寿司「銀のさら」は、LINE公式アカウントのセグメント配信を使って効果的に売上を拡大しています。LINEは日常生活に密着しているため、メッセージを届けやすいのがポイントです。
銀のさらは、地域限定商品のプロモーションをその地域のユーザーにだけ配信しています。たとえば、夏休みなど親戚が集まる時期には、その地域限定の特別メニューを案内することで注文を増やしているのです。
これは、まるで地元のお祭りで特産品を売るように、地域ごとに特化したセグメント・セグメンテーションが成功を収めている事例です。
参照:実売重視の「銀のさら」がデジタル施策としてLINEを活用する理由
ワタベウェディング株式会社
ワタベウェディングは、結婚式のニーズに応じたWebサイト訪問者の行動をセグメント化し細かく分析しています。
ユーザーを「スマホかPCか」「平日か週末か」「朝・昼・夜のどの時間帯か」などのセグメントに分け、アクセス数など数値化できる点を念入りに分析。それぞれに最適なサイト導線やコンテンツを提供できるように取り組んでいます。
たとえば、平日の昼間にはランチタイムにぴったりな簡単な情報を、週末の夜には家族と一緒に見やすいブライダルフェアの動画を提供することで、顧客満足度やサイト滞在時間を伸ばすのが狙いでしょう。
これは、まるでお客様が最も快適に感じるタイミングで最高のおもてなしをするようなものです。セグメントを分析し、セグメントごとにカスタマイズされ最適なバナーやデザイン、ヴィジュアルを提供することで、成約率アップに繋げている成功事例と言えます。
参照:フォーム誘導220%、来店予約154%の改善を達成!〜ワタベウエディングのABテスト事例〜 – DLPO株式会社
セグメントを意識してマーケティングを成功させよう
さて、ここまで様々な角度からセグメントについて紹介してきましたが、最後に簡単に内容をまとめたいと思います。
セグメントを意識するってどういうこと?
簡単に言うと、顧客をグループ分けして、それぞれのグループに合ったメッセージを届けることです。
まるで、料理のレシピを考えるときに、子供向けには甘めの味付け、大人向けにはスパイシーな味付けをするように、顧客のニーズや好みに合わせたアプローチをするのです。
具体的にはどうやるの?
たとえば、あなたが小さなカフェを経営しているとします。
若い女性をターゲットにしたいなら、インスタグラムやTikTokで可愛い写真や動画を投稿するのが最適です。一方、家族連れをターゲットにするなら、ファミリー向けのセットメニューを考えて、その情報を地域のフリーペーパーやLINEで配信するのが効果的と言えます。
このように顧客をグループ分けして、それぞれのグループに合った媒体・ツールでメッセージを届けることが大切です。
成功のポイントは?
大きく分けるとすると以下の3つです。
- 顧客をよく知ること
- 適切なツールを使うこと
- メッセージをパーソナライズすること
まずは、どんな人が来てくれるのか、その人たちが何を求めているのかをしっかり調べましょう。既存顧客がいるのであれば、お客さんと話をして直接フィードバックをもらうのもいいかもしれません。
次に若い世代にはSNS、年配の方にはチラシやラジオといった様に、ターゲットに合ったツールを選びましょう。そして、一斉に同じメッセージを送るのではなく、それぞれのセグメントに合った内容を提供するのです。
まるで、一人一人に手紙を書くように丁寧にコンテンツを作成するのがポイントです。
まとめ
マーケティングは一種の芸術です。お客さんをよく知り、その人たちが本当に喜ぶものを提供する。これができれば、あなたのビジネスは間違いなく成功するでしょう。セグメントを意識することで、お客さんとの距離がグッと縮まり、リピーターも増やすことができます。
製品やサービス、価値ある情報を本当に求めているユーザーへ、ピンポイントで届けてあげる。シンプルですがこの難しい課題を解決するために、セグメントが有効だということを忘れないでください。上手く活用することで、あらゆるマーケティング戦略を成功に導けるはずです。
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