SNSでのトラブルの原因は?対策は?事例を交えた解決のヒント
昨今、ビジネスシーンでSNSを活用するケースは増えつつあります。上手に利用すれば、SNSで優良顧客を育成したり商品の宣伝を大々的に行ったりすることが可能です。一方で、不用意な投稿がトラブルを招くリスクもゼロではありません。
本記事では、SNSトラブルの事例をいくつか挙げたうえで原因と対策を考察していきます。
目次
SNSトラブル事例1:配慮を欠いた投稿
軽率な書き込み、投稿によって炎上を招くケースは実に多いです。以下の具体的な事例も、SNSならでは。自身のモラルや品性に対して無自覚かつ配慮に欠けてしまうと、誰もが陥ってしまうことと考えます。
「オバサンだけ」発言で物議
2020年7月、某Webメディアの編集長がTwitterへの投稿をきっかけに炎上事件を引き起こしてしまいました。投稿には「イケメン俳優に騒いでいるのはオバサンだけ」という旨が書かれており、女性たちから反感を買った形です。しかも、過去発言までネットユーザーに掘り起こされてしまい、次々と女性蔑視的な文章が多数発見されました。
当の編集長はすぐに謝罪と反省の文章をnoteに投稿。しかし、性別問わず多くの人たちからの批判が止むことはありませんでした。
結局、彼は役職を退任し、メディア上で処分が報告されることでようやく事態は沈静化。
当然の報いとはいえ、SNSでの無邪気で軽はずみな言動は断罪に値するということを、あらためて表面化した事件だったように思います。
企業の姿勢と矛盾
上記の問題については、「ネットユーザーが騒ぎすぎている」という意見もSNS上で散見されました。ただ、該当メディアでは常日頃から欧米的なポリティカル・コネクトレスを強く訴えており、編集長の投稿はこうした姿勢と矛盾していたといえます。それゆえ、メディアに賛同を示していた愛読者を失望させてしまったのです。
いずれにせよ、問題発言であることは確か。不肖ながら筆者の意見を述べさせてもらうと、もちろん、アウトです。
SNSトラブル事例2:従業員による顧客情報の流出
このパターンもまた、意識の低さが安易な行動を引き起こしてしまったものだと考えます。
当たり前ですが、個人の自覚だけでなく組織全体で注意喚起を徹底していかなければなりません。
SNSでプライバシーを侵害
2011年、スポーツ選手とタレントのカップルが、有名宿泊施設を利用しました。2人の宿泊はプライベートであり、当然ながらプライバシーは保護されるべきです。ところが、施設スタッフが個人のSNSによって2人の宿泊を暴露したことで、情報が拡散。私生活のデリケートな側面が意図せず公に晒されてしまったわけです。まさしくプライベートの侵害といえます。
スタッフのSNSには批判が殺到。加えて、教育が十分でなかったとして、施設側にも厳しい声が寄せられました。
現代まで続く問題
この件は、スマートフォンの普及により、SNSが一般的に広まっていった時期に起きました。特にこの頃はネットリテラシーの低いSNSユーザーも多かったため、プライバシーに関する問題が相次いでいた、と記憶します。また、企業側も従業員にSNSの使い方を教えるという発想が乏しかった時代です。その結果、インターネットの危険性に無頓着な従業員が、面白半分で顧客情報を流出し、さまざまなトラブルや問題に発展。
少なからず現在は改善されていると思います。が、嘆かわしいことに、こうした問題が無くなったとまではいえず、モヤモヤするのも正直なところです。
SNSトラブル事例3:ルッキズムの助長
決して、悪意や差別のつもりはなくとも、結果的に多くの人を不快にすることがあります。SNSでの不用意な発言はまさにそれ。状況を冷静に判断しなければ、送り手と受け手で大きな齟齬を生むことになります。
不適切な応募条件
2016年、ある協会が、IT業界で活躍する女性を応援したいというコンセプトのもと人気アイドルグループの名前をもじった公募企画を実施し、世間の関心を集めようとしました。
ところが、応募条件が若者層に限られていたうえ、審査用に全身写真の送付を義務付けるなど、選考基準の偏りから問題視する声が相次ぎます。にもかかわらず、状況を把握していなかったと思われる総務省は、この協会のプロジェクトに加担。いかにも無防備に肯定する投稿をSNS上で行ったのです。当然、炎上。世間のバッシングを受け、由々しき事態とようやく気付いた関係者各位。プロジェクトは内容の大きな変更を余儀なくされました。
発信側と受け手のずれ
協会の目的は、「若者層にもっとIT業界へと目を向けてもらいたい」というポジティブなものだったといえます。だからこそ、ターゲット層を踏まえて若者層に人気のあるアイドルグループを模倣し、話題性を集めようとしたはずです。しかし、「女性の社会進出」と「年齢や容姿による審査」の間に関連性があったとはいえません。そこに乗っかった総務省もあまりに浅はかだったと思います。
まさに、送り手と受け手の認識の差が露呈してしまったケースです。
SNSトラブルの原因
前章で挙げた例から分かるのは、思慮の欠如、無知であることの罪深さ。この要素はしっかりケアできるよう普段から意識が必要です。
いうなれば、SNSでの炎上、その二大要因といっても過言ではないでしょう。
何が問題だったのかを反省することはもちろん、引き金となる核の部分こそSNSトラブルの原因なのです。
配慮のない投稿は批判を呼ぶ
特定層への配慮を欠いた投稿。これはもう絶対厳禁です。たとえば、「男ならもちろん」「すべての女性に」といったフレーズ。確かに当然のように使われていた時代はありました。しかし、現代的なネットリテラシーでは、受け手の特性を決めつけるような文言は好ましくないものだと多くの人がわかっています。「敏感になっている」という言葉が状況をより言い表しているかもしれません。
あえて誇張表現を用いただけだったとしても、「すべての女性はイケメンが好き」といったフレーズは、やはり不適切で人を怒らせてしまうのです。
無知は炎上を招きやすい
事例を振り返ってもそうですが、SNS上で「無知」を晒すことによってビジネスが頓挫するケースは多々あります。個人のアカウントであれば、事実誤認があったとしてもあくまでひとつの意見として済まされることもあるでしょう。しかし、企業や大きなプロジェクトのアカウントでは、そうはいきません。組織の意見を発信、代弁している場所です。間違った情報を垂れ流してしまうと、それだけで反感を抱く人がたくさん出てきます。
そもそも、インターネット上にはさまざまな人種、ジェンダー、経歴の持ち主がいます。ある人にとっては常識的な意見でも、別の人には誤りに思えることも少なくありません。そして、企業が一部の人々にしか共感されない意見を一方的に教示していては、「思想が偏っている」と評されても不思議ではないのです。
ネットユーザーや価値観の多様性に気付かない限り、SNSトラブルのリスクは払拭できないでしょう。
SNSトラブルの対策
十分な知識があるにもかかわらず、不適切な投稿をしてしまうSNSアカウントは少なくありません。文章を考えている時点で、「これを読んだ人がどう思うか」という想像力が働いていないからです。組織においては、従業員が炎上を招くのを防ぐべく企業による教育やガイドラインの徹底が不可欠です。
コンプライアンス研修を設け、一人ひとりの意識改革を目指していくことが大事になります。以下、参考にしてみてはいかがでしょう。
一般常識からきちんと教える
SNSアカウントを持つ企業は、投稿者となる従業員のネットリテラシーを上書きしていかなくてはなりません。また、個人のSNSトラブルが企業全体への批判につながる可能性もあります。いまや、企業にとってインターネット関連のコンプライアンス研修は不可欠といえるでしょう。そのなかでもまずは、「一般常識」とされている内容が基本であり、重要です。
とりわけ、性や差別についての投稿は皆がおさえておかなければなりません。多くのネットユーザーに嫌悪感を与えやすいため、対策は必須です。
投稿者本人が無自覚なケースも少なくないため、研修では根本的に「何が性的で何が差別にあたるのか」から教えるようにしましょう。また、個人情報や企業イメージの大切さを伝えることもコンプライアンス研修の役目です。従業員が勢いで不適切な投稿をしそうになったとき、研修内容が頭をよぎればトラブルを回避できます。そのほか、セクハラやパワハラと捉えられる投稿も注意喚起が必要です。
企業理念を共有する
一般常識だけではまだ足りません。企業理念までしっかり共有できるようにしましょう。
そのなかで注意したいのは業界全体での立ち位置です。組織が進むべき道が、現実からかけ離れている投稿はトラブルの火種になります。ネットユーザーのみならず競合他社からの攻撃も想定して、確固たる誇りを持ったルールを設け、皆で守り抜ければ、多少の炎上なら、状況をひっくり返すことができるはずです。
対策強化!SNSトラブルを回避するためのチェック項目
どれほど入念にコンプライアンスを学んでも、1度のうっかりミスで企業の信用は失墜してしまいます。そうならないよう、チェック項目を設けてください。炎上の種となるテキストや画像が世に出回ることを未然に防ぐための安心体制。
以下、確認しておきたいポイントを記述します。
差別的な要素が含まれていないか
何を差別と捉えるかは、人それぞれです。だからこそ、人種や出身地、性別など、生まれたときから決まっている要素について言及する際は慎重になりましょう。少しでも差別の可能性があるなら、投稿を止めるのが賢明です。
必然性のない性的な表現になっていないか
特に必然性もなく性的な要素が含まれてしまうケースは問題です。「かわいい女性社員を宣伝に使おう」といった何気ない発想を不快に思うネットユーザーもいるので注意しましょう。下着の宣伝など、性的な要素に結びつきやすい商品やサービスでも過剰表現にならないよう配慮が必要です。
不謹慎ではないか
トレンドに絡めた投稿で起こりやすいトラブルです。芸能ネタや時事問題に言及すると、不謹慎な内容になることがあります。なかでも、人の死や犯罪事件を軽々しく扱うような投稿は厳禁です。
情報の漏洩にあたらないか
有名人の来店や、組織間での大きなプロジェクトの始動の際、つい「世間に広めたい」という気持ちが働くものです。誰かにいち早く伝えたいのは分かります。でも、冷静に!
個人のプライベート、ステークホルダー間で取り交わした秘密保持、大なり小なり漏洩はアウトです。
悪質な行動にあたらないか
いわゆる「バイトテロ」などにあてはまるものです。仕事中のおふざけ、いたずらはときに犯罪にまで発展します。SNSへの投稿も然り。無邪気だからこそ非常に悪質だと思います。
内輪ノリが過剰にならないよう、自制心を持つと同時に、チェックを徹底してください。
攻撃性はないか
ほんの少しの皮肉や風刺すら、受容されにくい世の中です。ユーモアのつもりであっても、批判が含まれた投稿はしないようにしましょう。もちろん、直接的で攻撃的な文言を投げつけることなど言語道断です。
類似した投稿はないか
いわゆる「パクリ」も大きな問題と化します。疑惑さえ残さないよう用心が必要です。無意識的にどこかで見た投稿をなぞってしまうこともありえます。心配な場合はキーワードをサーチし、避けるよう対策してください。
なお、著作権や肖像権に関する知識は、可能な限り身に付けておくことをおすすめします。
返信や引用は適切か
SNSでは他ユーザーとの交流も行えます。ただし、返信や引用の内容も衆目に晒されていることを忘れずに!
一つひとつの行動が皆に見られているという自覚を持つことが肝心です。
事実誤認はないか
古い法律、しきたりに基づく投稿は避けましょう。また、ネットのデマ、噂を鵜呑みにして不正確な情報を拡散させるのもブランドイメージを貶めてしまいます。
誤字脱字はないか
個人の投稿なら些細なミスで済まされるものの、企業アカウントで人や物の名前を間違えるのは大問題です。また、雑な文章も印象を悪くします。したがって投稿前の見直しは絶対に行うようにしましょう。
SNSトラブルは回避可能!研修とチェックを徹底しよう
不特定多数のネットユーザーが利用するSNS。だからこそ、些細な原因でトラブルになるリスクをはらんでいます。企業だとなおさらです。
とはいえ、投稿者の意識や自覚次第で、安全に活用することはもちろん可能です。
そのためには、コンプライアンス研修、投稿前のチェックは極力制度として設けるようにしてください。
原因究明も対策も、明文化できれば、リスクヘッジとなるだけでなく、有効なSNS運用にまでつながるでしょう。
RANKING ランキング
- WEEKLY
- MONTHLY
UPDATE 更新情報
- ALL
- ARTICLE
- MOVIE
- FEATURE
- DOCUMENT