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ソーシャルベンチャーとは?特徴と代表的な企業を紹介

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現在、SDGsが社会共通のテーマとなるなかで、一般企業においても環境や差別、格差といった社会問題へのコミットは不可欠になりつつあります。

ビジネスを通じて社会的な課題に取り組む企業のあり方として、近年では「ソーシャルベンチャー」と呼ばれるスタートアップが注目を集めるようになりました。今後の社会を担う新たな経営モデルとして、政府や投資家による期待も大きい事業モデルだといえます。

この記事では、ソーシャルベンチャーの概要や、重要視される背景をふまえ、具体的な企業の例を紹介していきます。

ソーシャルベンチャーとは

ソーシャルベンチャー(social venture)とは、社会問題の解消や、社会的価値の実現に向けて取り組む組織です。なかでも、野心的なビジネスモデルや革新的なアイデアなど、ベンチャー企業に見られる「進取の精神」によって導かれる組織のあり方を指しています。

アメリカ合衆国の出版社「IGI Global」による定義では、「社会的価値を持続可能な方法によって生み出すために、起業家的なアプローチを追究する組織の単位」とされています。

(参照:IGI Global “What is Social Venture” )

この定義にも見られるように、ソーシャルベンチャーのカギは「社会の持続可能性とビジネスの両立」にあるといえるでしょう。総じて、理念やミッションの面では社会問題の解消を目的としながら、ビジネス面では創意に満ちたモデルを設計することにより、社会貢献を持続可能な経営モデルのうちに落とし込む組織を「ソーシャルベンチャー」と呼ぶことができます。

ソーシャルベンチャーの設立主体はさまざまであり、個人や企業はもちろん、非営利団体などのケースも見られます。なお、ソーシャルベンチャーを立ち上げるなど、社会問題の解決に取り組む起業家を「ソーシャルアントレプレナー(social entrepreneur:社会起業家)」と呼び、こちらも新しい時代の起業スタイルを象徴する言葉です。

ソーシャルベンチャーが重要視される背景

SDGsの理念が世界的に共有されるなかで、ビジネスにおいても「利益のみを追求するモデルでは、長期的に事業を継続しえない」という認識が近年急速に浸透しつつあります。ビジネスモデルとしての持続可能性に加え、「共同体レベルでの持続可能性」への視点が必須となったといえるでしょう。

とりわけ、SNSを通じた問題意識の共有が可能になり、環境問題や人権問題などが広く認知されるようになった現在では、経営に求められる観点も変化しています。自社の事業が影響を及ぼしうるステークホルダーを広く捉えつつ、長期的に関係を継続していくための視点がことさら重要になっているのです。

加えて、日本国内においては、震災や洪水など災害対策・支援や、高齢化を背景とする地域の過疎化や福祉問題など、特有の課題への対処が社会的に急務とされています。総じて、現状の課題を社会の成員で共有し、社会全体でその解決に取り組んでいく機運が高まっていることが、ソーシャルベンチャー隆盛の背景にあるといえるでしょう。

ソーシャルベンチャーの特徴と強み

ソーシャルベンチャーは多くの場合、「利益の拡大」を最大の目的としているのではありません。社会問題の解消や、さらには社会レベルでの「理想の実現」がミッションとして掲げられ、この点では非営利の組織と共通しています。

しかし、利益追求を第一の目的とするのではなくとも、その理念の明確さゆえに、ソーシャルベンチャーはビジネスにおいて強みとなる性質をもっています。

共感や支援を得られやすい

活動の根本に「社会問題に関する理念やミッション」を置くソーシャルベンチャーは、問題意識を同じくする人々からの共感や支援を得られやすい傾向にあります。

たとえば公益財団法人日本財団による「スタートアップ支援プロジェクト」においては、「社会的課題の解決」を目指す組織が支援対象として指定されており、これまでに支援を受けた企業の事例にも、環境や福祉など公益性の強い事業に携わっているスタートアップが多く見られます。

あるいは、SDGsの考え方が広まるとともに、環境・社会・ガバナンスへの配慮という観点から投資先を選定する「ESG投資」も注目されるようになりました。

クラウドファンディングにおいても、社会問題に注力するプロジェクトは資金提供者の目を集めやすいと考えられます。たとえば国内最大手の「CAMPFIRE」では、「ソーシャルグッド」という専用のカテゴリが設けられ、多くのプロジェクトがサポートを受けています。

働く意義や目的が明確になりやすい

社会問題に関する理念やミッションは、働く側の意識にも影響を及ぼすと考えられます。

ソーシャルベンチャーが取り組む問題はさまざまであり、環境や福祉、人権など広い領域に及びます。特定の社会問題に焦点を当てながら、既存の社会構造に対してインパクトを与えていくソーシャルベンチャーの取り組みは、明確な存在意義を見出しやすく、労働者のモチベーションを高く維持しやすいといえるでしょう。

事業規模の拡大が社会へのインパクトにつながる

ソーシャルベンチャーの最大の特徴は、社会貢献を実践しながら収益モデルを構築する点にあります。仮に、収益についての見通しを立てずに社会貢献活動を展開する場合、活動の幅を広げる際に資金面の問題に悩まされるケースもあるでしょう。この点で、収益モデルを確立しながら公益性の高い事業を営むソーシャルベンチャーは、「活動の自由度」を担保しやすいと考えられます。

収益モデルを土台とした事業の拡大は、より広い分野において、より多くの人々にメリットを届けることにもつながるはずです。同時に、業界における存在感を増していくことにより、自社が取り組んでいる社会問題について、より広く世間に認知してもらうことにもつながるでしょう。

ソーシャルベンチャーの企業例

環境問題や人権問題など、ソーシャルベンチャーが取り組む問題は多岐にわたります。コミットする分野にかかわらず、成功を収めている事例に共通するポイントとして、「問題の構造を明確にしたうえで、そこへの適切なアプローチを導き出している」点が挙げられるでしょう。

以下では、独創的なビジネスモデルを通じ、社会問題の解決を図る企業の例を紹介していきます。

株式会社Helte

株式会社Helteは、「分断のない活力のある社会」をテーマに、日本国内の高齢者と、国内外の日本語学習者をつなぐプラットフォーム「Sail」を展開する企業です。グローバル化にともなう「多文化共生」というテーマに加え、国内における「高齢者の孤立」という問題にスポットを当てており、まさに「グローカル」な取り組みとして位置づけられるでしょう。

ビジネスモデルとしては、日本語学習者に対してサブスクリプションサービスを提供するほか、国内外の教育機関や企業に対しても日本語教育サービスを展開しています。

産学連携によるプラットフォーム開発に加え、日本語でのスピーチコンテストや交流会など、イベントも積極的に開催。高齢者向け住宅への導入や、海外から日本へと人材を送り出す企業への導入など、孤立感が問題となりうる環境へのサービス展開により交流の場を広げています。

株式会社クラダシ

株式会社クラダシは、フードロス削減を目的としたECサイト「KURADASHI」を運営する企業です。賞味期限が近づいていたり、パッケージが変化していたりと、通常の流通ルートでは処理されない商品を割引価格で販売しています。

一般顧客向けのサービスに加え、企業の福利厚生として導入できる「オフィスdeクラダシ」を展開するなど、組織レベルで利用できるサービスも提供し、フードロス削減効果を高めています。同社の発表によると、2022年3月末時点でのフードロス削減量は累計で9,889トンに及ぶとのことです。

その他、売上の一部を環境保護や災害支援に取り組む団体への寄付に充当しており、フードロス以外の問題に対しても間接的に取り組んでいます。

ユニファ株式会社

ユニファ株式会社は、「保育現場におけるDX化」を推進することで、社会インフラを整備し、家族の関係構築や女性の社会進出に寄与することをミッションに掲げています。

具体的な事業としては、保育施設向けのICTサービス「ルクミー」により、クラス情報や成長記録、健康チェックなど、保育業務を一元的に管理できる体制を構築。保護者の記入する連絡帳もアプリ上で管理でき、さまざまな情報共有を簡便化できる環境を提供しています。

同社のサービスは、保育現場における人的なリソースを削減しつつ、家庭との双方向的な情報共有を可能としています。これにより、「忙しさに由来するミス」や「共有不足による不和」といった問題の解消に貢献しているといえるでしょう。テクノロジーを「必要としている現場」に「適切な形」で導入することにより、「人々の関係構築」という目に見えない領域をサポートしている顕著な事例です。

ソーシャルベンチャーに求められるもの

社会貢献活動のさまざまな形態のなかで、ソーシャルベンチャーの武器はやはり「継続的な収益モデル」にあります。事業規模の拡大が、社会問題に対して与えるインパクトの大きさに直結することから、「ビジネスとしての成功」がミッションを達成するための前提になる面もあるでしょう。

社会問題への取り組みをビジネスへと落とし込むうえでは、現にある問題を構造的に分析する視点が重要です。業界の慣例やシステム、法制度など、幅広い観点から現状を捉え、問題がなぜ・どのように生じているのかを見通すことが求められます。

そのうえで、現状において「困っているのは誰か」を明確にしつつ、「その困難を根本的に取り除くにはどうするか」を具体的に検討していく必要があります。この際、ビジネスを成立させるための観点として、「問題解決のプロセスにおいて、どのような付加価値が生じるか」を見定めておくことも不可欠です。

総じて、現状のシステムのなかで不便な思いをしている人々や、大規模な資源のロスなど、「社会の構造的な歪み」や「ボトルネック」を特定し、収益構造のなかでそれを解消する手立てを設計していくことが求められるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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