国内最大情報サービス「ネイルブック」が11年も支持され続ける秘訣とは?
ネイル業界最大規模のサービス「ネイルブック」。運営する株式会社スピカは、多くのメディアが生まれては淘汰していく11年もの長い間、コンテンツを拡大し続けてきました。今回はその経営哲学を、代表である國府田勲さんにインタビュー!
目次
「ネイルブック」とは
ネイルブックとは、2011年に開設された、ネイルに関するあらゆる情報を発信しているアプリおよびwebメディアのこと。2022年6月時点でアプリダウンロード数は240万を超えており、この場でネイルデザインを検索したり、サロンの予約をしたり、あるいはネイリストの求人に応募したりすることもできます。
実際に施術する担当者の人柄やサロンが描きだす世界観などが伝わるようなサービス設計は、ただのネイルサロン予約サービスとは一線を画しており、現在では業界最大規模のサービスに発展しました。
ユーザーには評価の高いネイリストを優先的に表示させることで個々に合ったサロンをご紹介し、ネイリストには情報発信する方法を拡張し続けていくことで個々に合った運営方法を支援。
一人ひとりの個性や特性などを尊重したシステムづくりによって、大きな成功を収めているビジネス体制に惹かれ、このたび代表取締役である國府田 勲さんへインタビュー取材を申し込みました。
(撮影時のみマスクを外していただいて取材を実施しました)
ネイルブックを立ち上げたきっかけ
―ネイルブックを立ち上げることになったきっかけを教えていただけますか?
株式会社スピカ 代表取締役 國府田勲さん(以下、國府田さん):もともと母体として株式会社ゆめみという会社があるんです。
システム開発をする会社で、ずっと他社から要望を受けてサービスを作るということをやってきたんですね。
でも「せっかくだから自分たちのサービスも作ろう」ということになり、僕がその新規事業担当としてアサインされたんですが、1年間にわたっていくつかサービスを実際に立ち上げたうちのひとつがネイルブックだったんです。
―イチからサービスを立ち上げると決まったときに、どういったコンセプトで業種やその内容を絞りこんでいったのでしょうか?
國府田さん:まずスマホ向けであること、O2O(Online to Offline)、つまりネットから実店舗に誘導するものであることを条件に決めていきました。
11年前くらいのことなので、ちょうどスマホが普及しはじめたタイミングだったんですよ。
「これから世の中はどういうふうに変わっていくかな」と考え、まず一人ひとりの手元にデバイスがあって、それがインターネットにつながっていて、だから当時よりも個人が情報を発信しやすくなるんだろうな、と思いました。
あとガラケーがテキストベースだとして、これからはビジュアルベースのコミュニケーションに変わっていくんじゃないかと考えたときに、浮かんだイメージが「お店の店員さんが自分のスマホから情報を発信して、それを見た方がお店に来て、集客できたことで店員さんがしっかり評価され、収益も増えていく」というものでした。
それで「BtoEtoC」という、「BtoC」にEmployee(店員、従業員)を加えたビジネスモデルに着想を得て、そのコンセプトにマッチしそうな業界をリストアップして探していったんです。
たとえば美容室を選ぶにしてもヘアスタイリストにお客さまがつくことは多いと思いますし、美容業界は一番合いそうな業種だなと確信しました。
―美容業界のなかでもネイルを選ばれたのはなぜでしょうか?
國府田さん:その新規事業を担当していたのが僕と元営業職の女性の2人だけだったので、美容業界全体を土俵になにかをやるには大きすぎるよね、と……。
それでジャンルを縦に区切ったときに、当時ネイルが競争環境的には一番手薄だったんですよね(笑)。
それと、その女性がネイル好きというのも影響していました。
なので、イメージを崩しちゃうかもしれないんですけど、最初から「ネイルに関するサービスをやりたい!」と思っていたというよりは、コンセプトに合わせてスタイルを築いていったら、ネイルがはまったという感じなんです。
メディアを長く続ける秘訣
―その先見があって今なお、長らく人気を継続しているわけですね。
11年の間に多くのメディアが生まれては淘汰されてきたと思います。
情報が飽和する今の時代に、長く続けるために工夫されている点などはありますか?
國府田さん:工夫とは違うかもしれないんですけど、やはりずっと改善し続けてはいますね。
システムは内製化しているんですけど、一度作ったら終わりというわけではなく、常に新しいものを取り入れつづけるということを実践していて、だから陳腐化せずにやってこれているのかな、と思います。
―たしかに、私もおそらく初期のころにネイルブックをよく拝見していた時期があったんですが、そこから一度離れてしまって、最近久しぶりに見てみたらUIが大きく変わっていてびっくりしました。
デザインを見て、サロンを予約して……っていうユーザーが行う一連の流れもそうですが、ネイリストさん向けの求人なども充実していて、ネイルに関することがすべてここで完結できるというのは感動です。
國府田さん:ありがとうございます。
常に新規機能の追加実装などに取り組んできたという感じですね。
ユーザー層に近しい社内の構成
―ネイルブックのユーザーは現状、男女比はどのくらいなんでしょうか?
國府田さん:95%女性ですね。
メンズネイルも流行ってきてはいますが、男性だとアートまでする方は少ないんですよね。
―たしかに単色を塗る、ケアをするなどは聞きますが、今アートまでこだわっている人は少ないのかもしれませんね。
先日パーソナルスタイリングサービスを行っている会社の代表の方に取材させていただいたときにかわいい配色ネイルをされていて、個人的にはメンズネイルもいいなーと思いました。
國府田さん:ちょこちょこ増えてきていますよね。
―そうですね。
御社は2/3くらいが女性社員だとお聞きしましたが、ユーザー層とマッチしていることでコンテンツに関する意見が活性化されているということもあるのでしょうか?
國府田さん:そうですね、企画を考えているのは女性が多いので、自分事として「こういうふうになったらいいな」とイメージしてもらいながら進めてもらっていますね。
僕だとどうしても当事者になりきれないというか、想像はできるんですけど、当然ながら当人たちのほうが使い手目線で考えられると思うので、利用者に近い人に企画を考えてもらえているのはよかったなぁと思っています。
より意見を出しやすい「お茶会」制度
―なんとなく社内がフラットな雰囲気を感じるのですが、みんなが意見を出しやすくするために行っていることなどはありますか?
國府田さん:サービスの内容を考えるチームとか、それぞれ専門のチームを設けているんですけど、チーム関係なく、いろんな意見を取り入れられるように週に1回「お茶会」というものを開催しています。
会議室の扉を開け放してだれでも参加自由、出入りも自由にしていて、そこで意見や新しいアイデアを集めたり……。
―楽しそうですね!國府田さんも参加されるんですか?
國府田さん:最初は参加していたんですけど、いないほうが話しやすいかなと思って、最近は参加していません。
いつもだいたい1時間くらいで区切っているんですけど、こないだは3時間くらい話していましたよ。
―盛り上がったんですねー。
そのお茶会から生まれたアイデアを実際に取り入れることも多いのでしょうか?
國府田さん:ちょこちょこ反映していますね。
そこでアイデアをもらって企画化、というのは常にしている感じです。
従業員定着率を高く維持できる理由
―意見の通りやすい社風だと、仕事へのモチベーションも高まりそうです。
そういえば、御社は従業員の定着率も高いとお聞きしました。
國府田さん:去年は2人退職される方がいたんですけど、それまでは3年連続で定着率100%でしたね。
―3年連続100%ってすごいですよね。
組織づくりにおいて、従業員を定着させるために意識されている点などありますか?
國府田さん:僕自身、システム開発会社にしかいたことがなかったので、自分の働くペースがお客さまに依存してしまうというのを長く経験していたんですね。
でもその点、自社サービスであれば自分たちで労働時間をコントロールできるじゃないですか。
なので、短い時間に集中してアウトプットする、というのは会社全体で推奨しています。
いま日本の企業だと標準労働時間は8時間といわれていると思うんですけど、それを7時間勤務にしたり、残業や休日出勤もないようにしたり……。
人間って追いこまれると比較的ネガティブになりやすいと思うんです。
なので疲れを翌日まで持ちこさないようにして、体力面に余裕を作っておくといいのかなーと考えています。
―たしかに「健全な精神は健全な肉体に宿る」といいます。
ON/OFFのメリハリをしっかりつけているという感じですね。
ところで、やはりここで働いている方はネイルをしている方が多いのでしょうか?
國府田さん:女性はほとんど全員やっていますね。
福利厚生のひとつに「ネイルサロン補助」というものがあって、月に15,000円までであれば、従業員だれでも利用できるようにしているので、それを使っている人が多いです。
男性社員もたまにケアしに行っているみたいで、あと結婚している場合は、奥さんも利用できるようにしているので、結構使われていますね。
―福利厚生が手厚かったり、ワークライフバランスを取りやすかったり、先ほどおっしゃっていた「BtoEtoC」という理念の「E」を尊重する姿勢には御社のスタッフさんも当てはまりそうですね。
事業継続のターニングポイント
―これまで事業を継続されてきて、一番のターニングポイントはなんでしたか?
國府田さん:やはり前の会社から分社独立させてもらったときですかね。
それまでは本業があるうえでの新規事業という感じだったので、フォーカスしきれない部分もあったんですが、その事業が本業になったというのは大きかったです。
ここでコケたら終わっちゃう!という感じで、必死さが変わりますよね(笑)。
―実際にいま成功されていますが、独立の決断には勇気も必要だったと思います。
國府田さん:そうですね。
でも支援してくれる方もいたので、僕的には「とりあえずやってみたらなんとかなるんじゃない?」というスタンスでしたね(笑)。
―いまや業界最大規模にまで発展されているので「なんとかなる」どころではなかったですね。
國府田さん:いやでも全然、最初に考えていた成長速度には追いついていないんですよ。
もっとがんばらないとって思っています。
「推し活」を集客に結びつける
―スマホが一般化している時代なので、今後も一人ひとりの発信力は増してくるかと思いますが、そのなかで情報の拡散方法などについて、なにか新しく考えていることはありますか?
國府田さん:そうですね、いま以上にだれでも自由に発信できる世の中にはなっていくと思うんですけど、発信する人としない人で大きく分断されていくのかな、と思っています。
たとえばネイリストさんが情報発信するにしても、ファンがついたり、フォロワーがついたりするまで簡単ではないですよね。
発信の手軽さは高まっているけれど、する人・しない人は二分化していって、さらに発信する人のなかでも得意な人と不得意な人に分かれていくんじゃないかな、と……。
YouTubeとか、結構いろんなSNSが既にその状態になってきていると思っていて、ネイルブックもコンセプトとしては気軽に情報発信できるように考えていたんですけど、だんだん発信力が二極化してきたので、その対策が必要だとは考えています。
アピールするのが苦手というだけで、接客が丁寧だったり、デザインもお洒落だったりするネイリストさんが集客できなくなったらおかしいと思うので、そういう人もちゃんと注目を集められるようにしたいと思っているんですけど……。
―集客に結びつく発信方法についてセミナーを行うなどですか?
國府田さん:なんですかねー?
でも写真じゃなくてもいいのかな、とは思うんですよね。
たとえば写真を撮るのは苦手でも話すのが上手ければ、もしかしたらPodcastでトークしたほうがファンが集まるかもしれないし、その人の魅力を発揮できるような発信方法はいろいろあって、それぞれ適切なものを選べたらいいなーと思います。
―斬新ですね。
でもたしかに音声メディアそのものが注目されていますし、「ネイルデザインを見せなくてはいけない」という固定概念を取っぱらったら、可能性は大きく広がりますね。
國府田さん:たとえばネイリストさん自身は発信するのが苦手でも、ファンのお客さまに得意な方がいれば、そういう点で助けられるケースもあるかもしれない……。
―お客さま参加型!いいですね。
國府田さん:推し活に近いイメージですね。
贔屓にしているネイリストさんを布教していく、みたいな。
「あのネイリストさんにこんなかわいいネイルしてもらったんだー」と拡散されることで、ほかのお客さまがそれを見て来店することもあると思うんです。
むしろ初期はそういうことができたんですけど、当時はまだ早すぎて合わない部分もあり、本人発信型に変えたんですよね。
でも今ならそういうこともできなくないのかなって思います。
―そうですね、今はとても推し活の力を感じます。
最近、外を歩いていてアドトラックを見る機会が増えた気がして、注目してみると特にホストの方を宣伝するものが多く見られたんですね。
調べてみたら、近ごろはファン同士でお金を募ってアドトラックを走らせることも少なくないみたいで、もちろん私が見たすべてがそうだとは思いませんが、推し活はもはや個人だけで楽しむのではなく、宣伝活動という外に向けたものにまで発展しているんだなと、そのエネルギーを感じました。
國府田さん:推し活すごいですよね。
特に今はSNS人口が多いということもあって、情報拡散し慣れている方も増えたと思うので、個々の発信力も大きいと思っています。
Instagramフォロワー数は約32万人
―SNSといえば、ネイルブックのInstagramのフォロワー数は現在、約32万人(2022年6月時点)ですね。
フォロワーを増やすために投稿時に意識されていることはありますか?
國府田さん:先ほどお話しした「働く」という部分と同じで、「量より質」とは常に考えています。
Instagramのアルゴリズム自体がそういう傾向に変わってきたということもあって、伸びたのかなーという感じですね。
1年間でちょうど10万人くらい増えたんですよ。
國府田さん:いま結構Instagramってフォロワーを増やすの大変じゃないですか。
なので、担当者はひたすら投稿しつつ、日々分析して考えていて、それによって質が担保されてInstagram側が露出を増やしてくれたのかな、と思います。
担当者はもともとネイリストで、SNSの専門家ではないんですよ。
ネイル畑の人がノウハウを身につけて発信しているから、投稿の質が高いのかもしれないです。
―見せるポイントがわかっているってことですね。
実際に拝見していても、1枚1枚の魅力が伝わりやすく、デザインのバリエーションも豊富で飽きさせない感じがします。
事業を行ううえで大事にしていること
―もともとO2Oという概念を基盤にしているということもあって、DXの推進も積極的ですよね。
國府田さん:DXは正直、あとから言葉ができてきたので後づけではあるんですけど、基本的にネイル業界そのものに歴史があって、比較的アナログだったので、僕らみたいなデジタル界隈の人間が入っていったらディスラプト(※)できるんじゃないか、と思って始めた節もあるので、そういう気持ちで順次進めているという感じですね。
※ディスラプト:英語の「Disrupt」に由来。もとの意味は「破壊すること」「組織などを崩壊させること」を指すが、転じてビジネスの文脈では、その業界のルールや常識を覆し再定義することで、既存のものを破壊して変革を促すこと、といった意味で使われる。 |
―なるほど、企画されていたことを実装するときなどに大事にしていることはありますか?
國府田さん:いつも念頭に置いているのは「三方よし」という考え方ですね。
ユーザーにとっても、サロンにとっても、我々にとってもメリットがあるというのが一番いい施策だと思っています。
一応、ユーザー、サロン、我々という優先順位はあるんですけど、一石三鳥を狙っている感じです。
でもこの制約は結構厳しくて、なかなかクリアする企画ってないんですよね(笑)。
だからうちの企画立ち上げは難易度高いと思います。
―でもwebサービスだとスピードが求められる部分も多いと思います。
そういった制約があると苦労しませんか?
國府田さん:普段のオペレーションでは、「すべて分割して対応する」っていう考え方をしているんです。
アプリだったら週2回、webだったら毎日リリースする、みたいな感じで。
実施することの単位を小さくすることで、一つひとつ考える範囲が狭くなるじゃないですか。
普段はそういう考え方で、全体的な方向性は「三方よし」という感じですね。
今後はネイル以外の分野にも拡大予定
―蛇足なんですが、國府田さん自身はネイルはお好きですか?
國府田さん:事業を始める前は無関心だったんですけど、今はすごく気になってはいますね。
ネイルしている方と会うと、まず手元を見ちゃいます。
最初のほうはデザインの違いもあまりわからなかったんですけど、最近はわかってきて、鑑賞する能力は上がっているかな(笑)。
でも自身がやるかどうかとなると、やっぱり気恥ずかしさがあるのと、あまりもともと装飾するのが苦手というのもあって……。
―たしかに今もアクセサリーなど、なにもされていないですね。
先ほどコンセプトに合ったのがネイルだったとおっしゃっていましたが、とはいえ好きじゃないと長く続けられないんじゃないかなと思って聞いてみました。
國府田さん:そういう意味では、僕自身はネイルのサービスを作っているというよりも、その仕組みを作っているというイメージが強いんですよね。
ネイリストが成功する仕組みを作る、ユーザーが投稿したくなる仕組みを作る、そういったところにフォーカスしているので、捉え方を変えてあるという感じです。
―なるほど、ということはもしかして、今後ネイル以外の分野に拡大していく可能性もあるのでしょうか?
國府田さん:そうですね、実は美容業界のサービスを作ると決めたときに、最初はネイルから始めて、ゆくゆくはヘアなど、別のジャンルに展開させていきたいと思っていたんですよね。
ヘアはもうちょっと自分事に近くなるので、考え方も今と変わると思うんです。
本来は事業を立ち上げて5年くらいで、ネイルは決着すると思っていたんですよね。
ネイル最大手サービスになって業界の構造を変えたい
―國府田さんがイメージされている「決着」というのは、どういった地点なのでしょうか?
國府田さん:やっぱり美容でO2Oというとホットペッパービューティーさんなどが挙げられるんですけど、最初5年くらいで逆転できたらいいなーと思っていたのが、まだできていないので、そういう意味では計画どおりじゃないって感じですね。
―たしかにホットペッパービューティーさんは、知名度など大きい存在ですね。
國府田さん:そうですね。
ネイルだけに限れば、掲載店舗数は同じくらいまで近づいたんですけど、TVCMなどたくさん打っているのを見るので、集客パワーはもう少しですかね……。
うちの規模感だとネイルとヘア一気に推し進めるよりも、まずは集中してひとつずつ展開していったほうがいいと思うので、ネイル業界でトップになってから、と考えています。
ネイル業界に限らず美容業界全体の話なんですけど、どんどん独立してプライベートサロンを立ち上げる人が増えているなかで、集客にお金をかけないと立ち行かないという状況が続いているんですよね。
それは新規集客できても、そのお客さまがリピートしないからなんです。
でも利益に見合わないコストがかかってしまえば、当然従業員の待遇も上げられなくなってしまうし、そういうのはもう嫌なんです。
働いている人がもっと活躍して、報われて、幸せになってほしいと思って「BtoEtoC」というコンセプトを掲げたので、今の状況を変えたいと思っています。
実際ネイルブックでは、サロン、ネイリストの世界観に合ったお客さまをマッチングさせているので、その結果、リピーターが増え、経営が安定してくるような工夫をしています。
まさに今年2022年が変革のとき
―では今後は、まずネイルでNo.1のシェア率を獲得して、ヘアなどほかのジャンルに横展開しながら、業界の構造を変えていく、という展望を見据えていらっしゃるわけですね。
國府田さん:そうですね、あとはEC事業も始めようと思っています。
プライベートサロンなどは1人で運営されていることも多いんですが、そうなると仕入れが大変なんですよ。
なので、その部分がもう少し楽になるようなサービスを、サブスクなども検討しながら提供していきたいと思っています。
あと確定申告のときに便利になる機能も提供したいですね。
とにかくネイル業界で働く方にとっていい状況を作って、それから横展開していく、というのが展望ですかね。
―期限など具体的な進行プランは決まっているのでしょうか?
國府田さん:毎年「あと2年」みたいな言い方をしているので、嘘つきみたいになっちゃうんですけど……、でも本当にこの1,2年で決着つけたいと思っています。
―ここ数年はコロナ禍で読めない部分が多かったですもんね……。
國府田さん:そうですね、だいぶ計画が後ろ倒しになっちゃいました。
ちょうどコロナ直前に、大きく伸びそうな動きがあって、その矢先にコロナ禍に入ってしまったので、伸び率が大幅に狭まってしまったんですよね。
それをまた急成長のカーブにのせたいな、と思っているのが今年です。
そして、その勢いをもとに、1年で決着をつけたいと思っています。
―今年はそれまで制限されていた物事もいろいろ解禁されて、みなさんの気持ちもコロナ前に戻りつつあるんじゃないかと思うので、結構大きな動きがありそうですね。
根底にある「量より質」の考え方
「BtoEtoC」という理念のもと、お客さま、店舗スタッフ、自社が「三方よし」の状況を目指して、システムの改善をし続ける株式会社スピカ。
「E」は自社の従業員にも回帰していて、待遇や福利厚生を充実させることなどによって働くことのメリットを生み出すことで、個々を尊重しています。
その根底にあるのは「量より質」という考え方。たとえばメディア内での情報提供ひとつにおいても、時間をかければいいというわけではなく、やみくもに数を打てばいいというわけでもなく、明確に「だれ」が「だれ」に発信しているものなのかを可視化し、クオリティーを担保することを実現。
コンテンツ飽和時代といわれる今、「情報の非対称性」なんて言葉は過去に追いやられたように思います。
特に、ネイルブックのユーザーの多くは20代後半~30代に集中しているそうで、「ミレニアル世代」と呼ばれる彼、彼女たちが「消費の主役」として注目されるようになったばかりのころ、重要視されていたのは「パーソナライズドマーケティング」という言葉でした。
その購買動機はいま主役の座を引き継ごうとしているZ世代にも踏襲されているため、基盤となりつつある戦略ですが、万人向けではなく一人ひとりに焦点を当て、その属性や行動履歴などに応じて最適なモノやコトを提供するというマーケティング手法です。
売り手と買い手の間にはもはや保有する情報量の差異はそれほど存在せず、高機能商品やサービスも次々にコモディティ化する現代。企業に求められているのは、個人個人それぞれに合った付加価値を見極めることといえるかもしれません。
また現在、Web2.0からWeb3.0へシフトしはじめているといわれています。今まで中心に据えられていたプラットフォーマーから個人が解放されるようになれば、よりその活動力、発信力は広がっていくでしょう。
今まで「がんばれば報われる」といいながら、実際は還元されてこなかった経験を持つ人は多いのではないでしょうか。一人ひとりが自由に行動でき、適切に評価される時代、それはついに「遠くない未来」といえるようになったのかもしれません。
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