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スポーツビジネス

スポーツビジネスとは?課題や事例と合わせてイベントもご紹介

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「スポーツ」は人々を熱狂させ、結びつける力を持っています。競技者として練習や試合に没頭したり、サポーターとして特定のチームを応援したり、あるいは地域や企業のコミュニティで共通の運動を楽しんだりと、スポーツを通じて日々多くの感動や興奮がもたらされています。

とくに2021年は、東京オリンピック・パラリンピックを通じて、それまで知られていなかった競技や選手にも注目が集まるようになりました。競技の楽しみ方や、選手の魅力を新たに発見する機会を経たことで、人々のスポーツに対する関心や意欲も高まっていると考えられます。これを契機に、スポーツ人口の増加や、競技レベルの向上、さらにはスポーツ関連産業の発展といった効果が期待できる状況です。

さらに、IoTやAI、ARやVRといった先進技術の面から見ても、スポーツの可能性は大きく広がっていくでしょう。観戦やイベントの楽しみ方や、練習・トレーニングの効率化など、技術によって多角的な発展がもたらされると考えられます。

このような「新しい体験価値」の創出によって、スポーツビジネスはこれから大きな変革期を迎えることになるでしょう。この記事では、国内におけるスポーツビジネスの現状と課題について解説したうえで、イベントや取り組み事例を紹介していきます。

スポーツビジネスとは

「スポーツビジネス」とは、「スポーツに関連するあらゆる領域でのヒト・モノ・カネの動き」を指す言葉です。チームやスポンサー、メディアや用品メーカーなど、きわめて広い範囲に及ぶ言葉ですが、おおまかな区分として、スポーツを「する」「みる」「ささえる」という3つの観点から整理できます。

まず、スポーツを「する」という観点からは、たとえばフィットネスクラブの利用や、競技にともなう用品の購入などが挙げられるでしょう。次に、「みる」に該当するものとして、テレビやインターネットを通じた視聴のほか、実際にスタジアムに足を運んだり、ファン向けのイベントに参加したりといった活動が考えられます。最後の「ささえる」は、スポーツ教育をはじめ、スポーツの普及や人材育成への取り組みを含む観点です。

スポーツビジネスが発展する可能性は、「波及効果」のうちに秘められています。たとえば「ファンがスタジアムで観戦する」際には、「チケット代」だけではなく「グッズ」や「周辺施設の利用料」など、経済効果が多方面に波及することになります。ビジネスの主体となりうるのは「スポーツに直接関連する企業」だけではありません。ビジネスモデル次第であらゆる企業が参与しうるのです。

スポーツビジネスの市場規模

スポーツ庁が2020年に発表した資料によると、2017年の日本のスポーツGDPは「8.4兆円」であり、これはGDP全体の1.55%にあたります。

額としては小さくないものの、GDP比で見るとドイツ(3.9%)やイギリス(2.18%)といった欧州先進国に比べて低い位置にあり、まだ発展の余地を残している分野だといえるでしょう。

(参照:スポーツ庁「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~」

2015年に設置されたスポーツ庁は、2025年までにスポーツ産業の市場規模を「15兆円」まで拡大する目標を掲げています。これを実現するため、2022年までの方針を定めた「第2期スポーツ基本計画」においては、「スタジアムにおける新たな収益モデルの構築」や、「多様な産業との連携」、「スポーツ参画人口の増加」といった具体的目標を定め、これに向けた取り組み案がまとめられました。

(参照:スポーツ庁「日本スポーツの5か年計画がスタート(2017年4月~2022年3月)」

スポーツビジネスの発展に向けた課題

日本においてはこれまで、プロスポーツチームを経営する「コンテンツホルダー」を中心に、メディアやスポンサー企業などがスポーツビジネスを担う主体として考えられてきました。しかし現在では、IT技術の普及・向上といった背景から、多様なニーズに応える新たなビジネスモデルの展開が求められる状況となっています。

そこで、以下では「新しいビジネスモデルの開拓」にあたって、今後課題となりうるポイントをピックアップしていきます。

IT技術の活用

IoT機器やAIをめぐる技術は日進月歩で発展しており、スポーツの体験価値を向上させる可能性も広がっています。

たとえば、視聴者が映像の視点を切り替えられる「自由視点映像」や、AR技術を活かした情報表示などは、放送のエンターテイメント性を高めるうえで有効に活用しうる技術です。こうした方法を中継に応用しながら、「伝え方」「見せ方」に磨きをかけていくことが求められます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっては、従来型のスタジアム観戦やイベントによって収益を確保することが難しくなっています。今後は価値提供のモデルを変容させる必要が生じてくると考えられ、たとえば「VR技術を活かし、プロアスリートの動きを体験できるシステム」など、その場にいるかのように楽しめる方法を案出する必要があるでしょう。

また、技術発展の恩恵を受けられるのは「見る側」に限った話ではありません。プロアスリートや一般競技者が自身の技術向上を図ったり、チーム戦略を練ったりする際にも、モーションセンサーやデータ解析システムといった技術は大いに役立ちます。

総じて、新しい技術の導入は視聴者側にも競技者側にもそれまでにない価値を提供しうると考えられます。こうした価値を実現するにあたっては、スポーツ産業とIT産業との密な連携により、潜在的なニーズに応えていくことが必要になるでしょう。

アマチュアスポーツにおける収益モデルの構築

先述の「第2期スポーツ基本計画」においては、アマチュアスポーツへの「ビジネス手法の導入」が1つの課題として掲げられています。日本においても、甲子園や箱根駅伝をはじめ、人気の高いアマチュアスポーツは多いものの、「大会運営における収益」という面は重視されておらず、それを取り巻くビジネスモデルが確立されているとはいいがたい状況です。

アメリカ合衆国においては、全米大学体育協会(NCAA)がさまざまな大学スポーツの大会運営を主導し、放映権などの管理も行っています。放映権による収入は日本円で年間1,000億円に上り、その他イベントなどを通じて得た収益のうち、年間3,000億円以上を学生への奨学金に充てています。

つまり、NCAAにおいては、アマチュアスポーツならではの「地域密着性を活かした収益モデル」を構築したうえで、その収益を「スポーツ人材の育成・発掘」へと循環させる、という構造ができているのです。スポーツ庁においてもNCAAをモデルとした体制構築を目指しており、2019年には「日本版NCAA」とも呼ばれる大学スポーツの統括団体「UNIVAS」の設立を支援し、基盤づくりに取り組んでいます。

(参照:Olympics.com「年間収入は1000億円超え。大学スポーツのビジネス化に成功したアメリカのNCAAとは」

スポーツ経営人材の定着

2016年度の「スポーツ人材プラットフォーム協議会」においては、日本のスポーツ産業全般に通じる課題として「経営人材の不足」が指摘されました。とりわけ収益モデルの構築されていないマイナースポーツにおいては、マーケティングやガバナンス、興業など総合的な観点からチームを運営する人材が必須となります。

これまで、チームの上層部にはその競技において実績ある者が選任されるケースが多くありました。しかし、スポーツ庁の調査によれば、チームの経営トップ層に求められる素養は一般の経営者と変わるものではなく、「MBAなどの経営知識」の定着が必要だとされています。

現在では、その競技の外部からであっても柔軟に経営人材を呼び込めるよう、スポーツ庁委託事業として、スポーツ経営人材とチームとのマッチングプラットフォームを展開している状況です。

(参照:スポーツ庁「スポーツ経営人材の育成・活用」
ページ内資料「スポーツ経営人材要件に関する調査 報告書【全体版】」

スポーツビジネスの関連イベント

スポーツビジネスにおいては、チームと企業の「出会い」が1つの鍵になります。スポーツビジネスに活かせる技術があっても、それを求めるチームを見つけられなければ日の目を見ることはできません。

ここでは、技術を提供できる企業と、それを求めるチームの「出会いの場」となるイベントを紹介していきます。

企業とチームをつなげる「スポーツビジネス産業展」

「スポーツビジネス産業展」は、例年「東京ビッグサイト」で開催されるスポーツ専門展示会「Japan Sports Week」における中心的なイベントです。

企業が自社の製品・サービスをプロスポーツチームの担当者などに紹介し、実際に商談にもつなげられる場であり、「スポーツビジネスに応用できる技術の見本市」といった様相を呈しています。

出展内容はさまざまですが、「スポーツビジネス産業展」においてメインとなるのは「ファン獲得や収益向上」を目的としたデジタルマーケティング関連のサービスです。その他、Japan Sports Weekにおいては、トレーニングに活用できる先進技術を扱う展示会や、大会誘致を希望する自治体や旅行会社などによる展示会など、合計5つの催しが開かれており、多角的に企業とチームを結びつける試みとなっています。

(参照:RX Japan株式会社「Japan Sports Week」

スポーツの未来について啓蒙する「スポーツビジネスジャパン」

「スポーツビジネスジャパン」は、チームと企業のBtoB商談会の開催や、デジタルマーケティングなど今後のスポーツビジネスにおける課題に関するセミナー開催を通じて、スポーツビジネスの発展を目指す団体です。

商談会で扱われる消費やサービスは幅広く、スタジアムなどの建築・設計といったインフラ分野から、スポーツ施設の設備機器、データ解析や認証システムといったICT機器など、スポーツ産業に関するあらゆる分野が対象となっています。

(参照:スポーツビジネスジャパン「オンラインセミナー 2021」

スポーツビジネスの取り組み事例

スポーツビジネスは幅広い可能性を持っており、実際にさまざまな角度からの取り組みがなされています。ここではとくに、チームの認知向上やファン獲得といった領域での事例を取り上げていきます。

「スポーツ観戦アプリ」を軸にした事業開発

株式会社スポカレ」は、国内外のスポーツ観戦情報を提供するスマートフォン用アプリ「スポカレ」を配信しています。プロアマ問わず100競技以上の試合情報を1つにまとめた総合的なサービスとして、スポーツ観戦の愛好者などから好評を博しているアプリです。

チケット情報や放送予定のほか、パブリックビューイングの情報、さらには高校野球において「母校」を登録して情報をフォローできる機能など、スポーツファンに嬉しい機能を盛り込んでいます。

さらに、同社はこうした「スポーツ観戦ファン」という独自のユーザー属性を活かし、チームのマーケティングをサポートしたり、一般企業からの広告出稿を受け付けたりといったサービスも行っています。スポーツビジネスの裾野を広げるうえで、こうした「ユーザー属性を活かした広告サポート」の形態は主導的な役割を担うかもしれません。

学生の力を活かした「産学連携プロジェクト」

ラグビーの国内トップリーグに所属する「三菱重工相模原ダイナボアーズ」は、さまざまな分野の専門学校を運営する「学校法人岩崎学園」と共同し、チームの認知向上やファン獲得に取り組んでいます。

チーム側の「若い世代へのアプローチ」というニーズと、学園側の「実践的な学びの場」というニーズが合致し、「プロスポーツチームのマーケティングを学生が担当する」という珍しい試みとなりました。ポスターの制作やグッズ・イベントの企画、特設ホームページの運用など、マーケティングや広報に関する多くの業務が委任されているとのことです。

学生にとっては、身につけた専門知識を実践する絶好の場になるでしょう。また、この取り組みは岩崎学園だけではなく、今後の専門教育において1つのモデルケースとなりうると考えられます。

チームにとっては、「若者目線」からのマーケティング効果が期待できます。学生が媒介となることで、SNSなどのメディアの運用方法にも柔軟性が見込めるほか、地域との接点も持ちやすくなると考えられ、さまざまな方面に新しい波及効果が生まれると考えられるでしょう。

(参照:PR TIMES「三菱重工相模原ダイナボアーズと岩崎学園が産学連携プロジェクトをスタート」

アマチュアチーム支援のプラットフォーム構築

株式会社グリーンカード」は、ジュニアサッカーなどのアマチュアチーム発展を目的に、多岐にわたるメディアを運営する企業です。

ジュニアサッカーについて情報発信するニュースメディアのほか、中学・高校の部活や、地域のクラブチームの運営費用を支援できるクラウドファンディングサイトの運営、さらに地上波放送のない「強豪校の強化試合」などのライブ配信サービスなどを展開しています。

日本では以前から学生スポーツの人気は高く、とくに「地元のチームを支えたい」「縁ある学校をサポートしたい」といったニーズは小さくありません。そうした「支援の気持ち」をチーム側に届け、練習環境の整備などに貢献できるプラットフォームの意義は大きなものでしょう。

まとめ

これまでスポーツビジネスは「放映権」や「スタジアム収益」を中心に考えられてきましたが、技術の発展にともない、今後はさまざまな形での価値提供が可能となっていくと考えられます。

新たな価値を創出するにあたっては、まず「先進技術をどう活かすか」が課題となるでしょう。IoTやAR技術を活かした中継のあり方や、VR技術を活かした体験価値の向上、さらにはモーションセンサーを用いたトレーニングなど、実に多様な可能性が広がっています。

価値提供のモデルが変われば、経営やマーケティングに対する考え方も転換していくでしょう。その際には、広い視野にもとづき「スポーツチームの収益モデル」を構築していける人材が求められることになります。既存のビジネスモデルに囚われず、柔軟に新たなニーズを掘り起こす発想力が、ビジネスを飛躍させる鍵になっていくと考えられます。

スポーツに直接関係しない企業であっても、地域のクラブチームをサポートするほか、「スポカレ」のようなプラットフォームを通じ、広告施策の精度を高めていくことが可能です。今後も多様なサービスが展開されるにつれ、スポーツと企業の新しい関係性が見えてくると期待できるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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