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ステークホルダーの意味とは?具体例も交えつつ細かく解説します!

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昨今、SDGsが社会的な課題として認識されるなか、環境や人権、格差といった問題が世界的に取り上げられるようになりました。こうした動向にともない、利益の追求を本質とする企業も、社会問題に対する姿勢を示すべき場面が増えています。

このような社会の変化とともに、企業経営に求められる観点も変わってきています。とりわけ配慮を要するのは、自社の経済活動の影響下に置かれる「ステークホルダー」に対するアプローチです。

従来、「ステークホルダー」という言葉が指していたのは、主に「消費者」や「株主」など、利益や資金調達に直結する経済主体だったといえます。ところが近年では、「労働環境の是正」「地域環境の改善」といった側面から、あらためてステークホルダーとの関わり方を見直す機運が高まっているのです。

この記事では、ステークホルダーの現代的な意味を確認し、社会文脈をふまえた関係構築のポイントについて解説していきます。

ステークホルダーの意味

ステークホルダー(Stakeholder)とは、日本語で「利害関係者」と訳される言葉です。ステーク(Stake)は「利害」や「賞金」といった意味であり、それを保持する(Hold)者を指しています。

具体的には、株主や経営者、従業員のように「企業と利益を共にする者」が例として挙げられるでしょう。経営状況の変化にともなう影響を、直接的に被る組織や個人がステークホルダーの代表例です。

さらに、顧客や取引先など「利害の相関する者」や、地域住民など「経済活動の影響を間接的に被る可能性がある者」も、広義のステークホルダーに含まれます。総じて、ステークホルダーとは「その企業の経済活動によって何らかの影響を受ける主体」を広く包含する言葉だといえるでしょう。

ステークホルダーの含む範囲は広がりつつある

ステークホルダーという言葉が含む範囲は必ずしも一定ではなく、文脈によって異なる範囲を指し示すことがあります。株主などの出資者を念頭に置いて用いられる場面が代表的ですが、競合他社や地域社会、地方自治体など、直接的な契約・取引の関係にない主体を含むケースもあるのです。

従来の経営論においても、「ステークホルダーからの理解」という要素は重視されてきました。この場合、主に自社を支援する立場にある株主などに対し、経営状況を透明化し、明確な指針を示すことがポイントとして挙げられる傾向にあったといえます。

しかし後述のように、社会情勢の変化とともに範型となる経営モデルも変容し、現在では「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への移行が提唱されるようになりました。ここで重要なのは、ステークホルダーという言葉が「より社会的な視野から」捉えられるようになった点です。

言い換えれば、従来、ステークホルダーという言葉には「企業の経済活動によるプラスの影響を期待する主体」が強く含意されていました。ところが現在では、「好ましくない影響を及ぼす可能性のある主体」に対する配慮が必須になっているのだと考えられます。

ステークホルダーとストックホルダー・シェアホルダーの違い

ステークホルダーのなかでも、とくに「株主」を表す言葉として「ストックホルダー」と「シェアホルダー」があります。

ストックホルダーとシェアホルダーはほぼ同義の言葉ですが、株式の保有割合や、議決権の有無によって区別するケースも見られます。その場合、より大きな権限・割合を有する方をシェアホルダーとするのが一般的です。

両者に明確な線引きはありませんが、自社の経営判断に対する影響力の大きさを強調する際に「シェアホルダー」を用い、フラットに「株主」を指す場合には「ストックホルダー」を用いるのが通例だといえます。

新たな経営モデル「ステークホルダー資本主義」とは

これまで主流とされてきた株主重視型の経営モデルは、「株主資本主義」と呼ばれます。このモデルは、企業に直接出資する株主に利益を還元し、また投資行動を喚起するような魅力を訴求することで、経営地盤を拡大することを目的としています。

対して、SDGsを主な背景として、現在では「ステークホルダー資本主義」の重要性が世界的に強調されるようになりました。株主だけではなく、顧客の長期的な満足や、従業員の労働環境、地方自治体との連携を通じた地域社会への貢献など、多方面にわたって「良好かつ持続可能な関係性」を取り結んでいくことを目指す考え方です。

ステークホルダー資本主義が求められる背景

ステークホルダー資本主義の考え方は、2020年1月の「世界経済フォーラム」においてテーマとなり、それ以降世界各地に広がりを見せています。

ステークホルダー資本主義は、株主資本主義に対する反省から生まれた考え方です。短期的な利益追求による環境破壊、投資家への還元を重視することによる格差拡大など、企業活動はときに「社会の持続可能性」と相反する場面があります。

ここから、長期的かつ広い視野からの経営のあり方として、ステークホルダー資本主義の必要性が提起されているのです。先の世界経済フォーラムにおいては、「エコロジー」「経済」「テクノロジー」「社会」「地政学」「産業」と、実に幅広い観点が議題に挙げられました。

グローバル化が進むなか、ステークホルダーの含む範囲は急速に拡大しています。たとえば企業が材料費・人件費の安い地域での原材料や労働力を確保する場合には、現地の統治制度と無関係ではいられません。たとえば仮に、「法整備の進んでいない地域で、過酷な労働条件によって生産された商品を扱う」といった状況が生じていれば、企業が道義的責任を問われるケースも考えられます。

これはあくまで一例に過ぎず、企業の経済活動は実に多くの経済主体を巻き込み、大小さまざまな影響を与えます。ステークホルダー資本主義の根本的な考え方は、このように複雑に交錯しながら拡大していく影響関係のなかで、「非対称な関係性を是正する」ことを1つの眼目としているといえるでしょう。

(参照:世界経済フォーラム「ダボスで開催される世界経済フォーラム第50回年次総会:ステークホルダー資本主義を定義する」)

ステークホルダーエンゲージメントの重要性

ステークホルダー資本主義の考え方に見られるように、今後はより広い視野からステークホルダーとの関係性を捉え、持続可能な関係を築いていくことが求められます。

関係構築のカギを握るのが、「ステークホルダーエンゲージメント」という観点です。エンゲージメントは日本語で「従事」「取り組み」「約束」などと訳され、「深く関わりあうこと」に焦点を当てた言葉です。

具体的には、ステークホルダーのニーズや関心を捉えながら、それに応えていくような取り組みが「ステークホルダーエンゲージメント」と呼ばれます。幅広い取り組み内容を含む言葉ですが、とりわけ「ステークホルダーの意見に耳を傾ける」という側面に力点が置かれる傾向にあります。

たとえば顧客のニーズを知るための市場調査や、株主の期待を把握するための株主総会などが、ステークホルダーエンゲージメントの代表例です。一方で、ステークホルダー資本主義が重視される昨今、「従業員とのキャリアカウンセリング」「地域との交流会」など、多方面にわたるエンゲージメントを通じ、相互理解を深めることが求められています。

ステークホルダーエンゲージメントの具体例

顧客や取引先など、ステークホルダーとの関係性によって、求められるエンゲージメントのあり方も変わります。以下では大まかな区分ごとに、エンゲージメントの具体例を提示していきます。

顧客に対するエンゲージメント

顧客へのエンゲージメントとしては、アフターサポートの窓口や、サービス・商品に関する相談窓口の設置が代表例として挙げられます。異なる角度からの意見に目を向けるうえでは、口コミサイトやSNSなどでの情報収集も有効でしょう。

その他、実店舗での顧客案内や、オンライン上での情報発信など、顧客とのコミュニケーションを充実させ、ニーズを理解する取り組み全般がエンゲージメントとなりうると考えられます。

取引先に対するエンゲージメント

取引先へのエンゲージメントも、顧客と同様、サポート窓口の設置やアンケート調査を通じて意見や要望を集める方法が考えられます。

さらに、説明会やセミナー、展示会といった場で、自社の商品・サービスについて紹介し、リアクションペーパーなどで反応を集約するといった施策も、多くの企業によって取り入れられている方法です。

株主に対するエンゲージメント

株主に対しては、株主総会や説明会の場で、決算状況や経営方針に関して透明な情報提供を行うことがエンゲージメントの基本となるでしょう。

もちろん、Web上で報告書やIR方針などを適宜公開しつつ、株主アンケートなどを通じて意見や要望を収集することも重要です。

従業員に対するエンゲージメント

従業員に対しては、職場環境についてのアンケートや、キャリア形成に関するカウンセリングなどを実施する方法が考えられます。

定期的なコミュニケーションを通じて、「従業員が自社で働くことをどのように考えているか」「どのような希望をもっているか」を把握する機会を設けることが基本の考え方になるでしょう。

地域社会に対するエンゲージメント

地域住民の理解を得ることも、事業を継続するうえでは重要です。自社の扱う事業に関するセミナーやワークショップを開催したり、事業所を一般に公開したりと、自社の活動に対する理解を深めてもらう機会を作る方法が考えられます。

その他、地方自治体との意見交換など、地域社会からのニーズを知る場を設けることも重要なエンゲージメントです。

関係性を整理する「ステークホルダーマップ」

ステークホルダーエンゲージメントにおいては、複雑に絡み合う利害関係や影響度について、広い視野で捉えることが求められます。複数の関係性を整理する際に有効なのが、ヒト・モノ・カネ・情報の流れを相関図として見える化した「ステークホルダーマップ」です。

それぞれの相関関係を図式化し、組織内で共有することにより、「自社の動きが誰にどのような影響を与えるのか」を見通せるようになるでしょう。さらに、プロジェクト進行において「どこに協力を求めればいいか」「どのようなリスクに備えればいいか」といったポイントも把握しやすくなると考えられます。

ステークホルダーマップの例

ステークホルダーマップには決まった形式はなく、整理したいポイントに適した構図を採用する必要があります。たとえば以下のような形が代表的です。

相関図

相関図

相関図は、ステークホルダーマップとして汎用性の高い図式であり、ヒト・モノ・カネの動きを総覧する際に有効です。事業の構造を整理したい場合などに活用できるでしょう。

象限図

象限図

象限図は、ステークホルダーを分類する際に有効な図式です。ステークホルダーの位置づけや、どのようなアプローチが必要かを概観する際に活用するとよいでしょう。

サークルマップ

サークルマップ

サークルマップは、自社を中心とする同心円状に、ステークホルダーをマッピングしていく方法です。関係性の近さをビジュアル化したいときに有効だと考えられます。

ステークホルダーマップを作る際のポイント

どのようなマップを作成するかは目的によって異なるため、実際に作成する際には、場面ごとに形式の違うマップを複数作るのもよいでしょう。サプライチェーンの構造を把握したい場合には相関図、ステークホルダーに対するエンゲージメントの戦略を練る際には象限図やサークルマップといった形で、整理したい情報にあわせて形状を工夫しましょう。

どのようなマップを作る場合にも、自社のビジネス戦略がどのような範囲・対象に影響を及ぼすのかを総合的に視野に入れることが大切です。そのうえで、ステークホルダーとの関係性の深さ、相互の影響度の大きさについて整理していくことが求められます。

さらに、目的に合ったマップを作成するためには、「ステークホルダーとどのような関係性を築いていくべきか」「その関係性を通じて何を成し遂げたいのか」を見定めることがポイントになるでしょう。

同時に、自社の経済活動が「他の主体に好ましくない影響を与えるリスク」についても見通しておきたいところです。客観的な視点からリスクを評価し、「リスクを低減できないか」「フォローや備えは可能か」「どうすれば理解を得られるか」といったポイントを検討していくことが望ましいでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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