ストーリーテリングとは?意味、やり方、事例紹介など交えて解説
会議やプレゼン、広告宣伝、SNS発信などビジネスは“伝える”行為の連続です。
受け手に対して的確に情報を届けるにはどうすればいいのでしょうか。
本記事で推奨するのは、ずばり「ストーリーテリング」です。意味や方法、事例紹介など交えて解説します。
業界や職種にかかわらず役立てられる手法です。同僚、顧客、不特定多数のユーザー……相手は問いません。誰かに何かを伝える際に、ぜひ有効活用してください。
目次
ストーリーテリングとは?言葉の意味を知る
ストーリーテリングとはStory Tellingの訳のとおり、物語を話す行為です。
本来は、親や図書館の職員、教師などによる子どもたちへの読み聞かせを指していました。そして今では、活用の機会がビジネスシーンにも拡大。理解を促すメッセージの伝達や商品のイメージ強化などさまざまな用途があります。
ストーリーテリングがもたらす効果
ストーリーテリングを適切に実行した際の、ブランディングやマーケティングに使える効果をいくつか紹介します。
これらを知れば、ストーリーテリングが人気の手法であることも頷けるでしょう。
共感の獲得と拡大
物語性を帯びるものに対して人は強い共感を覚える傾向にあります。漫画やドラマ、映画、小説などを楽しむときの疑似感情がストーリーテリングによって喚起できれば、対象の商品やサービスに対する興味・関心もぐっと引き寄せられるでしょう。
とりわけ感情移入しやすいキャラクターを登場させることは有効です。共感の獲得から周囲への拡散・拡大にまでつながる期待が持てます。
イメージの伝達
企業や商品のイメージを的確に伝えるために行う具体的な説明をさらに解像度高めたい場合、ストーリーテリングは実に効果的に作用します。なぜなら、それは対象商品・サービスを思い描いてもらう作業だからです。そこに当事者性が加われば尚良し。実際に扱う姿まですんなりと目に浮かぶことでしょう。
記憶の定着
ストーリーテリングは記憶の定着を促します。実際、商品や企業情報を巡る物語が一度脳内に根付けば、人はそれらを思い出す際も映像変換とセットで再生する(傾向にある)ため、そう簡単には忘れ去られないはずです。たとえば、昔見たCMや広告をいまだに思い出せるのは、それらに内包される少なからず起承転結が組み込まれているからでしょう。
ユーザーアクションの促進
指定のトピックやキーワードに対して自社商品が第一想起される背景に、ストーリーテリングが存在していることは少なくありません。サービス利用や購入といった具体的な行動のトリガーとなる可能性も高く、まさにブランディングそしてマーケティングにつながる効果が期待できます。
ストーリーテリングの活用シーンとやり方
ストーリーテリングは、状況や目的に応じて柔軟に取り入れることが大切です。以下、活用方法をシーン別に紹介します。
帰属意識や企業イメージのアップ
社内外問わず企業に対するエンゲージメントの向上にストーリーテリングが活用されることはよくあります。たとえば、会社の沿革がストーリー仕立てで語られることによって従業員の帰属意識が高まるケースです。これは、会社の成長に少なからず自身が関わっていることを(従業員が)実感しやすいといいます。
また、商品の製造工程を対外的にシリーズ化して発信することも有効です。物語がそのまま説得力を帯びたロジックへと変わり、そこに情緒が見え隠れすればたちまちファンになる顧客も多いのだとか。たとえ購入検討とまではいかなくとも、企業のイメージアップにはつながりやすい方法だといえます。
コンセプトの認知・浸透
ストーリーテリングは、コンセプトを認知あるいは浸透させる際にも使えます。たとえばよくある「健康志向」「技術革新」「環境配慮」といった企業(商品)理念や訴求ポイント、加えてそのほかのキャッチコピー等々も含めてこれらが引き立つよう物語のキーワードとして配置すれば、強い言葉として印象に残りやすくなります。それをそのままコンセプトとして伝えるのはもちろん、総括的に届けたいメッセージがあればそこにフォーカスしてもいいでしょう。
複雑な仕様をわかりやすく伝えたい場合
製品の技術や細かい特性などはしばしば複雑になりがちです。補足無しでは理解が難しいケースも少なくないでしょう。このとき無理に機能説明に終始するのではなく、ストーリーテリングを上手に活用することをおすすめします。具体的には顧客を主人公に悩み一つひとつを解決していくイメージです。起承転結の整然とした物語構成が、入り組んだ仕様を紐解きながらおさえておくべきポイントを端的に伝えてくれるでしょう。
ストーリーテリングのコツ
活用方法に続いては、知っておくとより役立つストーリーテリングのコツを紹介します。
具体的な表現で訴求する
ストーリーテリングは、具体的であるほどイメージや共感を喚起しやすくなります。したがって、場所や状況、天気や日時、人物の身なりなど、さながら小説のように詳細かつ丁寧に表現するといいでしょう。
具体的な描写はときに聞き手の当事者性に訴求します。決して疎かにせず、物語の輪郭をクリアにしていけるよう心がけてください。
失敗談を盛り込む
失敗談もまた共感性の高い要素です。誰しも挫折や恥ずかしいことを経験しているからこそ、聞き手は当事者の気分で自然と耳を傾けるようになります。最終的に成功エピソードとして語る際にも有効です。カタルシスを生むためにも、適度に盛り込むことをおすすめします。
ターゲットや媒体の特性に合わせる
子ども、主婦(主夫)、ビジネスマン、経営者……等々あらゆる聞き手の属性によって効果的な伝え方は異なります。加えて、広告媒体も同様です。テレビ、SNS、講演、チラシなど多数存在します。
実際に人気を博している事例を目の当たりにしたなら、それらがどのフィールドで誰に向けて語りかけているかを確認し、傾向を探ってみてください。
たとえ趣旨は同じでも、全然違う物語になることも珍しくありません。つまるところ、企業や商品、サービスへの理解を深めてもらうためには、一筋縄ではいかない工夫が必要なのです。
ストーリーテリングでよくある誤解
ストーリーテリングは、ただ経験談を時系列に並べるものではありません。ビジョンや明確な変化、感情の起伏などを物語の中に落とし込む必要があります。先述のとおり自分の恥ずかしい経験を晒すといったテクニックも織り交ぜることも大事です。
また、劇的であればあるほどいいわけではありません。受け手の反応をみず独り善がりに進めてしまっては、結果は明白です。同様に話の筋が綺麗すぎる物語も敬遠される傾向にあります。
ドラスティックやスタイリッシュ、そのほか完璧さを求めすぎるのは注意しましょう。そうはいってもやはり、うまくいくことも当然期待できます。大切なのは相手の心情です。壮大なストーリーが好きな人もいれば、身近なものや現実的なものに対して人間味やシンパシーを抱く方もいらっしゃいます。
セオリーやマナーをおさえつつもそれらが固定観念にならないよう柔軟にストーリーは紡ぎましょう。
ストーリーテリングの主な種類
ストーリーテリングにはコツもあればいわゆる型も存在します。以下、まさに典型的な7種類をご紹介。話の土台づくりや軸に据える部分として、きっと参考になるはずです。
モンスターに打ち勝つ
環境破壊につながるものや、良くない慣習、制度、あるいは人々の内側にある卑しい心などをモンスターと捉え、それらに打ち勝つ物語をストーリーテリングとして活用することがあります。たとえばアメリカでは、特定の企業や個人を連想させるモンスター像を登場させ、ストーリーテリングを構築。そう、俗にいう勧善懲悪のストーリーです。多くの人の共感を得やすいのも容易にうなずけます。
初代MacのCMにAppleが行ったストーリーテリング
具体例として、1984年に放映されたAppleのCMを紹介します。
走り出した一人の女性アスリートが、独裁者が映った画面に向かってハンマーを投げつける内容です。これは、当時コンピューターのマーケットで圧倒的なシェアを持っていたIBM社をこの独裁者に見立て作ったものだといいます。Appleの市場参入を高らかに宣言した格好です。
再生・復活
かつての威厳や栄光が失われたのち、紆余曲折を経て再生・復活するストーリーも一つの型として数えられます。実際、非常にわかりやすいテーマのため、製品紹介などで使われることが多い印象です。
冒険・探求
冒険や探求系はファンタジー要素も相まって物語らしさが色濃く出る傾向にあります。「何を手に入れるべきか」「どのように目的を達成していくのか」
そうした過程を明確に映し出すことで、受け手が何かしらインスパイアされるケースも少なくありません。そのため、行動喚起につながりやすいストーリーテリングのタイプだといえます。
出発と帰路
「冒険・探求」パターンと比べると、より現実的で日常生活に根付いた内容にしやすいのが「出発と帰路」のタイプです。これは、朝、家から学校へ行き、夕方帰宅するといった何の変哲もない些細な出来事のなかにもさまざまな学びがあることを教えてくれます。
洗剤の売上アップにもつながったP&Gのストーリーテリング
具体例として、2017年のトップシェアの一つとなったP&Gのプロモーション動画を紹介します。
舞台はインド。娘夫婦の家庭で家事の負担が娘に集中している様子をみた父親が、自宅に帰り、これまで妻に任せていた洗濯を率先して自分からやるようになるという内容です。
男性目線からの問題提起は、女性たちから大きな共感を得たといい、洗剤商品の『Ariel』(アリエール)は飛躍的に売り上げを伸ばすことになります。
冴えない過去からあか抜けた未来へ
いわゆるシンデレラストーリーやアメリカンドリームと呼ばれるものです。不幸な境遇から希望や生きる価値といったポジティブな要素へと昇華する構成にのめり込む方は多く、共感以上にスカッとさせる効果があります。
似たようなケースでは、対象の美容商品を使った主人公が急に異性からモテモテになった話なども、わかりやすいよくある例でしょう。
このタイプのストーリーテリングは支持されることが多いため、初心者には特におすすめです。
悲劇
悲劇は強烈なインパクトを与え、余韻として人々の記憶に長く残りやすい効果があります。特にコアなファンや顧客を獲得する場合に有効な手法です。他方、救いのない物語に対して一定数、拒否反応を起こす方もいます。その点、注意しなければなりません。意図も伝わりにくいため、内容によっては補足説明が必要でしょう。
喜劇
喜劇もまた多くの人への訴求に有効です。が、難易度は意外と高く、理知的な戦略やセンスが必要になります。
そうはいってもやはり、ポジティブな要素いっぱいの物語がハマったときの爆発力はすさまじく、到底無視できません。目に見えて大きな反響を生み出してくれます。特に商品や企業のイメージアップにはもってこいの手法です。
ストーリーテリングの成功事例
具体例は前項でもいくつか触れましたが、ここではストーリーテリングの特に顕著な成功事例を紹介します。すでに、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
AmazonプライムのCM
バイクで向かい着いた祖母の家で見た一枚の古い写真。そこに写るのは、バイクを傍らにして並ぶ当時の祖母そして祖父の姿です。孫は写真と同じヘルメットを、その場でスマホを使いAmazonで購入します。商品は翌日早速届き、そのヘルメットをかぶる祖母をバイクの後ろに乗せて走るシーンが流れCMは終了。
これといって商品の説明はありません。あくまでも人間ドラマを見せるだけのCMです。が、これぞまさにストーリーテリングだといえます。
もちろん、視聴者はただほっこりするだけで終わることはないでしょう。このCMを見た人は、おそらく身近な人を喜ばせたいと思い、何かしらAmazon商品を購入するかもしれません。共感そして親近感。心を揺さぶる、実によくできたストーリーテリングです。
Appleの創業者、スティーブ・ジョブズのスピーチ
もはや伝説ともいわれているスティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業式でのスピーチ。ここでジョブズ氏は、自身の失敗を子どもの頃にまで遡り、学生に伝えています。創業者でありながら一度はAppleから追い出されたこともあるジョブズ氏ですが、失敗を一つひとつ語りながら、学生たちに対して未来への希望と挑戦の意義を説いているのです。
有名な成功者であっても多くの失敗を重ねてきたことはある意味、聴衆一人ひとりに自信を植え付けるものだといえます。実際、このスピーチをきっかけに行動した方々は少なくないはずです。その先にはさまざまな成功物語があったことでしょう。周囲に大きな影響を及ぼした見事なストーリーテリングだと考えます。
ストーリーテリングを磨いてビジネスに役立てよう!
ビジネスシーン、とりわけマーケティングやブランディングを行う際、ストーリーテリングは、駆使する価値が十二分にあります。そのため、これまで馴染みのなかった方でも、ストーリーの構築スキルとそれを伝えるテクニックは普段から意識して磨いておくことをおすすめします。どこかで役に立つ場面はきっとあるはずです。
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