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ターゲティングとは?設定する方法やセグメンテーションとの違い、その重要性を徹底解説

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マーケティングの効果を高めるうえで、「どの市場を狙うべきか」という戦略立案は欠かせません。自社の特性にあわせて特定のターゲットに狙いを定めることにより、その後の訴求方法についても見通しが立てやすくなるでしょう。

ここで、狙うべき市場を選ぶ際に重要なのが、「ターゲティング」の考え方です。この記事では、ターゲティングの意味やセグメンテーションとの違いをふまえ、実施する際のポイントをわかりやすく解説していきます。

ターゲティングとは

ターゲティング(Targeting)とは、「狙いを定めること」を意味する言葉であり、マーケティング用語としては「細かく区分した市場のなかから狙うべき層を選ぶこと」を指します。

ライフスタイルが多様化する現在、消費者のニーズはさまざまであり、同じジャンルの商品でも「何を基準に購入を決めるか」はそれぞれ異なっています。そうしたニーズの違いを区分したうえで、「どんなニーズをもつ層を狙うべきか」を見定めるのがターゲティングの作業なのです。

たとえばバッグの市場であれば、消費者が重視しうるポイントとして「価格」「デザイン性」「機能性」「ステータス性」などが考えられるでしょう。ターゲティングはこれらの区分のなかから、「機能性を求める消費者に訴求しよう」などと狙いを定める作業を指しています。

ターゲティングの重要性

上述のように、市場には多種多様なニーズが存在し、またそれに応えようとする商品・サービスが数多く展開されています。絶対的な需要数が限られているなかで、シェアを確保するには「自社の商品・サービスを選んでくれる層」を見抜くことが求められるでしょう。

この点で、現在はWeb上のユーザー行動から「どのような消費者が何に対して関心を抱いているか」が分析しやすい環境にあるといえます。この環境を活かすことで、「どのような商品・サービスであれば関心を引けるか」についても検証が進めやすいと考えられるでしょう。

このような検証を通じてターゲット層を明確にできれば、Web広告などマーケティングのプロセスも効率化が可能です。ユーザーの属性や関心などに応じて、あらかじめ広告を表示する相手を限定することにより、広告費用を抑えつつ確度の高い消費者層にアプローチしていけると考えられます。

ターゲティングとペルソナの違い

ターゲティングと混同されやすい言葉として、「ペルソナ」があります。マーケティング用語としてはいずれも「商品・サービスの受け手を限定する作業」に関連する言葉です。

両者の違いとしては、ターゲティングが「狙うべき顧客層に狙いを定める作業」であるのに対し、ペルソナは「商品・サービスの典型的な受け手となる人物像」を描く点が挙げられます。

つまりターゲティングの対象となるのは「ある程度まとまりのある層」である一方、ペルソナとして描かれるのは「具体的な人物像」だといえるでしょう。

たとえばターゲティングにおいては「都内在住の30代独身男性」などと層を限定するのに対し、ペルソナ設定においては「中野区在住、34歳男性、独身、単身者向け賃貸マンションに居住、大学では登山部に所属、ワインが趣味」など、細かな人物描写を加えていきます。

両者は完全に区別できない場合もあり、とりわけターゲティングの過程で「商品・サービスの受け手」を具体的にイメージしたい場面では、解像度を高めるための手段としてペルソナを設定するケースも多く見られます。

マーケティングフレームワークにおけるターゲティングの位置づけ

多くの場合、ターゲティングはマーケティングのフレームワークである「STP分析」の一環として実施されます。

STP分析は「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の頭文字をとった言葉であり、「市場のなかで自社をどのように位置づけるか」を決めていくためのフレームワークです。

以下ではそれぞれの要素の違いについて解説していきます。

>>>STP分析とは?その意味とやり方をマーケティング初心者向けに解説

セグメンテーションとターゲティングの違い

セグメンテーションは「区分け」や「分割」を意味する言葉であり、マーケティング用語としては「市場を細分化するプロセス」を指しています。市場シェアなどの背景をふまえ、消費者をニーズや属性といった観点からグループ分けしていく作業です。

STP分析のフレームワークにおいて、セグメンテーションは最初に実施されるプロセスであり、その後に続くターゲティングの下準備として位置づけられます。このセグメンテーションによってグループ分けされた層(=セグメント)のなかから、「自社が狙うべき層」をピックアップするのがターゲティングのプロセスです。

たとえば先のバッグの例でいえば、顧客のニーズを「価格」「デザイン性」「機能性」「ステータス性」に分けるプロセスがセグメンテーションにあたります。そこから自社の狙う層として、「機能性」をピックアップするプロセスがターゲティングに該当するでしょう。

>>>セグメントとは?マーケティングに活用する方法や成功事例

ターゲティングとポジショニングの違い

ポジショニングはSTP分析における最後のプロセスであり、ターゲティングを通じて「狙うべき市場」を見定めたあと、「競合に対して自社をどう差別化していくか」を見通す作業にあたります。市場内における競合他社の状況を整理し、自社との違いを浮き彫りにしていくプロセスです。

先の例と同様、バッグの市場について考えてみましょう。先のターゲティングにおいて選定した「機能性」という方向性についても、同様の層を狙う競合他社が存在すると考えられます。

そのなかでも、「A社は通勤・通学に適した性能」「B社はアウトドアにも活用できる性能」など、それぞれ異なる強みをもっているはずです。そうしたなかで、「週末の家族のお出かけに役立つバッグ」など自社の位置づけを見定めていくのがポジショニングの作業なのです。

>>>ポジショニングとは?意味や具体的な事例などを解説!

ターゲティングを設定する際のフレームワーク「6R」

ターゲティングを実施する際に有効なフレームワークとして、「6R」が挙げられます。6Rは6つの要素の頭文字をとった言葉であり、以下のポイントに留意することで、ターゲティングを適切に進めていけるでしょう。

有効な市場規模(Realistic Scale)

ターゲティングにおいては、まず「ターゲットとなる市場に自社の入り込む余地があるか」を確認しておく必要があります。セグメンテーションによって区分けした市場のそれぞれについて、売上高などを確認し、現段階の規模感を把握しておくことが重要です。

もちろん、市場規模が大きいほど参入のチャンスも高まる傾向にあるでしょう。一方で、競合が増えることで状況が見通しにくくなり、「想定よりもシェアを確保できない」といったケースに陥ることも考えられます。

自社の特性によっては、小規模の市場をピンポイントで狙っていく戦略も有効です。あまり開拓されていない市場を占めることができれば、その後の新規参入に対して抑止力が働き、安定してシェアを確保できる可能性もあるでしょう。

到達可能性(Reach)

「到達可能性」は、ターゲットとなる市場において「顧客へと的確にアプローチできる手段があるか」をチェックするための観点です。

たとえば「新鮮な魚」を求める消費者がおり、自社がそれを扱っていたとしても、魚を新鮮なまま届ける手段がなければ実際にアプローチすることは難しいといえます。

この到達可能性の観点は、上のような販売・流通チャネルの面だけではなく、情報提供の面でも重要です。仮に「衣類の配達サービスを求める高齢者層」がおり、自社が衣類のサブスクサービスを提供していたとしても、オンラインからの集客ばかりに注力していれば、「リーチできない潜在顧客」が多く発生してしまうかもしれません。

このように、「顧客のニーズ」と「自社の商品・サービスの特性」がマッチしている場合にも、販売チャネルや広告媒体などの面で「実際に自社の情報を届け、利用してもらえる環境があるか」をチェックしておく必要があるのです。

優先順位(Rank)

「優先順位」は、「ターゲットが自社にもたらす恩恵や収益」といった観点から、それぞれのターゲット層の重要性を判断していくための考え方です。

収益の継続性や、顧客単価、情報の波及度合いなど、さまざまな観点からターゲットとなる市場に優先順位をつけていくことが求められます。

たとえば「トレンドにあわせた10代向けのバッグ」と「高級感を重視した40代向けのビジネスバッグ」という市場を比べた場合、単価としては後者のビジネスバッグが高くなりやすいといえます。一方で、前者の10代向けバッグはトレンドの変化とともに買い替え需要が生じ、リピート購入を期待しやすいといったメリットもありうるでしょう。

あるいは、「10代向けのバッグであればSNS上で情報が波及しやすい」「インフルエンサーの存在が売上に直結しやすい」など、波及効果の面からターゲット層に優先順位をつける観点も考えられます。

このようにさまざまな要因を考慮に入れながら、自社の特性やニーズの分布をふまえ、「それぞれの市場で顧客がどういう消費行動をとるか」を多角的に検証することが大切です。

競合状況(Rival)

「競合状況」は、ビジネスを展開するうえで欠かせない「競争の度合い」を確かめる観点です。ターゲットとなる市場内に競合他社がどれだけ存在し、それぞれがどの程度シェアを占めているかなど、ターゲティングはもちろんポジショニングにおいても必要不可欠なポイントになるでしょう。

競合の数やシェア率以外にも、マーケティング戦略や経営方針など、他社の特性や強み・弱みを総合的に把握していくことが大切です。「今後の自社のビジネスにとってどの程度脅威になりうるか」という観点からも検証を進めていきましょう。

反応の測定可能性(Response)

「反応の測定可能性」は、狙う市場におけるニーズやトレンドの変化などを「データで計測できるか」という観点です。その市場において「消費者の反応などに関するデータが得られるか」「その後の改善に向けたヒントが得られるか」といったポイントを検証します。

たとえば一時の流行で急速に拡大している市場に参入したとしても、消費者の動向やトレンドの変化を数値で確認できなければ、「その後も継続してシェアを伸ばせるか」を予測することが困難になってしまうでしょう。

これに対し、Web広告やSNS上の施策をはじめ「数値の変化を確認しやすく、すぐにフィードバックにつなげていける環境」であれば、継続的な収益に向けたヒントが得やすいと考えられます。

ターゲティングの成功事例

事業を成功に導いている企業の多くは、的確なターゲティングにより市場において確かなシェアを確保しています。以下では実際に、ターゲティングを通じて効果的に戦略を展開している企業の事例を紹介していきます。

山田うどん

埼玉県を中心にロードサイト型の店舗「山田うどん」を展開する山田食品産業株式会社は、1935年の創業から安価に麺類を提供する店舗として親しまれています。

ターゲティングの特徴は、まず立地面で幹線道路沿いなどに大型の駐車場を備えた店舗を多く配置していることです。これにより、トラックドライバーやタクシー運転手などの運送業や、外回りの営業などが気軽に立ち寄れる環境を用意しています。

メニューの面では昨今のヘルシー志向に反し、「カロリーのK点超え」を掲げ、麺類と丼物のセットメニューを安価に提供するなど、炭水化物を中心に空腹を満たせるコンセプトを徹底しています。

このような性質から、とくに「満腹感を得たい働く男性」が主なターゲットとなり、実際に多くの固定ファンを獲得していきました。

さらに2018年からは順次店舗の改装を進めており、屋号を「山田うどん」から「ファミリー食堂 山田うどん食堂」と改め、家族向けのメニューなどラインナップを充実させることで「休日のファミリー層」にもターゲットを拡大しています。

(参照:山田うどんWeb|会社案内

マツダ株式会社

自動車メーカーのマツダは、以前から独自のロータリーエンジンをはじめ自動車業界において「替えの利かない存在」としての地位を得ていました。

一方で、一般的な車種においては低価格路線を続けていましたが、リーマンショックの影響などから一時期は4期連続の赤字を記録するなど経営不振に陥ります。

そこでマツダは、2011年から発売された新世代商品群において方向性を大きく転換します。低価格路線を見直し、「魂動(こどう)」というデザインコンセプトのもと、質感の高い内外装を追求していきました。

ターゲティング面での特徴としては、国内市場で確固たるシェアを誇ってきた「ミニバン」をあえてラインナップから外した点が挙げられるでしょう。ファミリー層に訴求するのではなく、生活感を排した上質なデザインや、運転の楽しさに焦点を当てることにより、コアな車好きをファンとして獲得する方針を強化したのです。

こうした路線変更が功を奏し、2012年度に黒字に回復したあとも売上を伸ばし、2023年度の決算では過去最高益を達成しています。

(参照:asahi.com(朝日新聞社)|マツダ、4年連続赤字に 円高で下方修正および:MAZDA|直近の業績ハイライト

アキレス株式会社

ゴムやプラスチック素材の開発・製造を手がけるアキレス株式会社は、そのシューズ部門において、従来から児童・生徒用の上履きや通学靴の部門で高いシェアを誇ってきました。

しかし、大手メーカーの市場参入などによりシェア率が低下するなか、ターゲットを再定義し、2003年に「運動会で速く走るための靴」として「瞬足」シリーズを発売します。

同シリーズは軽量であることはもちろん、コーナーで重心を保てるよう靴底に傾斜をつけた構造になっているなど、運動会の環境に最適化されていることをアピールポイントとし、差別化に成功しました。

近年では瞬足シリーズのラインナップを拡大し、順天堂大学スポーツ健康科学部との共同開発のもと、正しい歩行のしかたを身につけるための「足育」シリーズなど幼児向けの商品も展開しています。

ジュニア用シューズの市場のなかで、「靴の機能」という自社の強みを活かし、子どもの自尊心や健やかな成長を願う親心に対して的確に訴求しているケースといえるでしょう。

(参照:アキレスシューズ公式サイト|瞬足について

まとめ

ターゲティングとは「特定の市場に狙いを定めること」を意味し、マーケティングのフレームワークである「STP分析」の一環として位置づけられます。

市場を消費者ニーズなどからグループ分けする「セグメンテーション」のプロセスをふまえ、区分された市場のなかから「狙うべき市場」を選ぶ作業がターゲティングにあたります。さらに、その市場のなかで「どのように他社と差別化を図るのか」という立ち位置を決めるのがポジショニングです。

ターゲティングを実施する際には、「6R」のフレームワークが役に立つでしょう。市場規模や成長の見込み、競合の状況などさまざまな観点から「その市場には本当にチャンスがあるのか」「どんなリスクが潜んでいるか」を見通していくことが大切です。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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