観光客を増やす取り組み、観光マーケティングによる集客方法
観光客の数を増やすには、いわずもがな優れたマーケティング戦略が必要です。ただ何とはなしに観光資源を打ち出してしまっては、なかなか成果はみられないでしょう。
他方、観光マーケティングの基盤がしっかりしている場所ほど集客がうまくいく傾向にあります。しかしながら、世相による影響は無視できません。そうしたなかで、いかなる取り組み、方法が有効なのでしょうか。
目次
インバウンドの状況
まずはインバウンド(訪日旅行)に目を向けてみましょう。
トピックの一つとして挙げられる中国の経済発展を背景に2013年頃よりアジア圏内からの観光客が顕著に伸びるようになりました(※訪日観光客の数は2013年が10,363,904人であったのに対して2019年には31,882,049人まで伸びています)。
※出典:JNTO(日本政府観光局)「訪日外客統計」、観光庁「宿泊旅行統計調査」「訪日外国人消費動向調査」
しかし2020年、感染症パンデミックの影響で当然ながらその数は減少。国内、国外問わず人を呼び込むことに対して消極的にならざるを得ない事態と化しました。
とりわけ、団体客のパッケージツアーの数は低調です。以前よりその傾向はありましたが、今や旅行といえば個人や少数ペアでの帯同が主流となっています。
いつしか大人数での観光ツアーが当たり前のように、そしてさながらブームとして再燃することも視野には入れつつ(望みとして持っておきつつ)、今後もおそらくインバウンドの数は低空飛行で推移していくのが現実的でしょう。
とりあえず現時点で頼みの綱はワクチン接種です。強力な感染症対策として有効性がわかれば、インバウンド需要を再び活性化させる動きも出てくるかもしれません。心許ない現況ですが、自国だけでなく世界の動向に対する目配りとともに、悪夢の収束に備え、施策の土台づくりや見直しだけは行っていきたいところです。
起点となるのはターゲット分析
日本へ訪れる観光客で多いのは中国人といわれています。爆買いのイメージがいまだに根付いているからでしょうか。しかし、そうしたブームはとっくに去り、どちらかといえば今は買い求める行為よりも体験が重視される傾向にあります。そもそも観光客の購買欲求自体、以前より明らかに低くなっています。なぜなら、どんどん便利になる通販が一般的に浸透してきたからです。日本とて例外ではありません。販売される商品の多くがインターネットの通販で簡単に入手できます。したがって、越境ECで事足りる現代において鍵を握るのは、“モノ”ではなく“コト”だという認識をしっかり持っておく必要があるでしょう。
加えて、上記より浮かび上がってくるのがターゲット層の心理や行動把握の重要性です。すなわち、各セグメントに沿ったマーケティング戦略が求められます。それもより細かく絞った方がいいでしょう。打ち手を講ずるのに、たとえばアジア人、欧米人などと大きな括りに当てはめるやり方はもはや時代錯誤かもしれません。
先述した通り、団体から個人の旅行にシフトする現代においては、サービスの形や価値の伝え方をよりパーソナルな属性(あるいは特性)に向けて工夫する必要があります。
一人ひとりの多様性を尊重する昨今。地方の少子高齢化、ワーケーションの台頭も考慮すべき近年のトピックです。加えて、衣食住のスタイル、宗教、文化、日本や都道府県、市町村それぞれに抱くイメージや期待もさまざまであるということを踏まえて、そこからやっと抽出される共通項や属性、潜在意識にアプローチするぐらいに徹底しなければ本質的な訴求にはつながらないでしょう。
そうやって決まったターゲットにアピールすべき筆頭格にはどうしたって食文化が挙げられるでしょう。つまり勝負所はグルメの分野です。(ターゲットの方々の)嗜好、思考、志向に狙いを定めて、ニーズに応えると同時に希少性や独自性を掲げたPRを行いましょう。飲食店単体ではなくエリア(町)全体で活況を呈する様子を伝えられれば尚良いかと考えます。加えてタイムリーなところでは、感染症対策などもはっきりと打ち出すべきです。
期待感と安心感をしっかり植え付けられれば勝機ありです。
手段としては、口コミサイトへの掲載やSNSの運用、ホームページの運営などが挙げられます。もちろん、ターゲットによってメディアの選択は変わってきます。複合的に活用するケースも出てくるでしょう。そう易々とベストプラクティスにはたどり着かないにせよ、基本軸として届けるターゲットとサービスに視線を注ぐことが大切だと考えます。ここがブレなければ、(試行錯誤は必要でしょうが)最適なプラットフォームビジネスの形をみつけられるはずです。
観光客の潜在層と相性の良いコンテンツマーケティング
観光地はじめ観光資源の魅力をよりダイレクトにかつ矢継ぎ早に伝える方法として、表現の自由度が高いコンテンツマーケティングに取り組むことも、長期的には功を奏す期待が持てます。
風景や、季節ごとの特徴、伝統文化財など、その土地のことをとにかくブログやnote、動画を使ってコンテンツとして発信する。すぐには効果が出ないかもしれませんが、いずれ花咲く集客の種になり得ます。地元の人にとっては目新しさに欠けるものでも、他所からの印象は全く別です。何か一つでもヒットしたら万々歳だと思ってください。認知度向上のきっかけが生まれるだけでも価値があります。
ターゲット選定もプロダクトやサービスを売り込むものとは違って、コンテンツマーケティングを介した一種のオウンドメディアのグロースが目的であれば、幅広く設けることが可能です。
観光客を増やすための具体的な施策
ここまでの前置きを踏まえて、以下、具体的にどのような施策が有効か挙げてみます。
たとえば、国内外から人気を得ている和製アニメーション作品の舞台が地方にある小さな町、あるいはあまり知られていない神社やお寺、施設だとしましょう。
作品に登場する風景を拝みにその場所を訪れたいと考える方は一定数いるはずです。しからば、いわゆる聖地巡礼コースをこちら側が案内してあげてはいかがでしょうか。ターゲットは該当するアニメ作品に関心を持つ方々です。うまくシーンと重ね合わせながら紹介することで、その地域に対するエンゲージメントの向上が期待できます。
そのほか、参加型の催しをフックにうまく誘導する方法や、大胆なイメージチェンジで話題性へとつなげていくアクションなどそれぞれ一つの手としておすすめです。
前者の場合、島暮らしをホームステイで体験してもらうため民泊事業を行ったケースが成功例として挙げられます。一方で後者は、歴史ある古民家や廃校をリノベーションして立派なホテルを建設した話が有名です(鳥取県のとある村でのお話といえばご存知の方もいらっしゃるでしょう)。
つまるところ企画系はハマればリターンが大きいわけですが、ポイントはユニーク性またはオリジナリティだといえます。さらには、それらを湛えているとしてきちんとターゲット目線にふさわしい伝え方、発信ができるか否かが問われるところでしょう。
観光を考える方々がどのような心理のもと、どういった行動を起こすか。そこの意識や理解が足りなければ、おそらく潜在顧客止まりです。そうならないためには、宣伝に使う媒体の特色(との親和性)を知り、うまく生かす必要があります。
SNSならトレンド分析、ホームページやオウンドメディアであれば、SEOも考慮しておくべきでしょう。そのうえでコンテンツマーケティングにおいてはキーワード選定なども重要です。顧客にとって欲しい情報を適切に伝えるべく、各種媒体に対するユーザーとの接点構築もしっかり視野に入れましょう。
徹底した顧客訴求と町を結ぶ協調が観光客の増加につながる!
時流も大きく影響する観光業界では、なかなか思うように集客することは難しいかもしれません。(度重なる緊急事態宣言、自粛要請など)ときに向かい風の状況下では、どうしても悲観的になる向きは出てくるでしょう。とはいえ、手を打たなければ状況を打開することはますます困難を極めるはずです。
悪循環を生まないもしくは断ち切るためにも、拙稿にてお伝えしてきた通り適切にターゲットを設定するところからはじめましょう。その際、世の中で巻き起こっているアレコレを踏まえたうえで、それぞれの属性における(潜在顧客の)深層心理を先入観なしに捉えることが求められます。
“観光”したいと思わせるフックを生むべく、彼・彼女らは何を魅力に感じ、どのような条件が揃ったときにアクションを起こすか、徹底的にリサーチすることが肝要です。
加えて、町同士の結託や協調も大事でしょう。群雄割拠、激戦市場といったイメージを先行させるのではなく、一つの大きなコミュニティ(チーム)をどう成長・飛躍させていけるかの視座が、今後、より問われるものと考えます。
つまり大切なのは、生き馬の目を抜くことに躍起となる姿勢ではなく、観光事業に関わる方全員が相互に肩を組み(観光)シーンを盛り上げていく心意気(粋)です。結果的に各所恩恵を得る近道になるのではないかと筆者は踏んでいます。
情勢がどう転ぶか分からない部分も多々ある現代において、戦略・施策立案を実行する判断に勇気のいる局面は幾度となく訪れることでしょう。そうはいってもやはり、思考法や集客セオリーを把握しておくに越したことはありません。それゆえ、ここまで述べてきたことが参考あるいは行動の後押しになれば幸いです。ぜひ、活用してみてください。
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