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商圏分析とは?言葉の意味から基本的なやり方まで詳しく解説

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実店舗を経営するうえで欠かすことのできない「商圏」。収益を安定させるためには、店舗ごとの商圏を的確に把握し、そのエリアの特性に応じた施策を考案する必要があります。

ただ、一口に「商圏」といっても、その範囲は店舗によってさまざまです。業態や地域特性、競合状況などによって変動するため、どのエリアをアプローチ対象とすべきか特定しきれていない企業もあるのではないでしょうか。

本記事では、そんな「商圏」の把握に欠かせない「商圏分析」のやり方について解説していきます。用語の意味や活用例、無料で使える分析ツールなど、押さえておきたい基礎知識をまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

商圏とは?

商圏とは、自らが経営する店舗・施設などへの来店を見込める消費者が居住している地理的な範囲、簡潔にいうと、集客できる範囲を指します。

その範囲の表し方は多数存在しますが、一般的に対象店舗を中心とした半径の距離(距離商圏)で表現されるケースが多く、近い方から順に「足元商圏」「一次商圏(最寄品商圏)」「二次商圏(中間品商圏)」「三次商圏(専門店商圏)」という4つに分類することができます。

それぞれどのような特徴があるのか、簡単に確認しておきましょう。

商圏の種類 来店頻度の目安 概要
足元商圏 ほぼ毎日 足元商圏は、店舗・施設のある場所から5分程度で移動できる範囲を指します。物理的な距離が短いことから季節や天候などによる影響を受けづらく、さらに商圏内の競合も少ないため、一次商圏~三次商圏の顧客に比べて来店比率が高い傾向にあります。
一次商圏
(最寄品商圏)
ほぼ毎日 一次商圏の範囲は、徒歩10~15分程度です。移動がそこまで苦にならない距離であり、利用客がほぼ毎日来店する可能性があるため、食料品や日用品など購入頻度の高い商品を扱うコンビニやスーパーなどで特に重視されています。なお、業種や業態によっては、足元商圏と一次商圏を同一視する場合もあります。
二次商圏
(中間品商圏)
週2~3回 二次商圏は、自転車(または車)で10~15分程度、距離に換算すると店舗・施設から半径3~10km程の範囲を指します。週2~3回の来店頻度を目安としており、ドラッグストアなど週単位で来店するような店舗・施設で設定されているケースが多いです。
三次商圏
(専門店商圏)
1~3カ月に
1回程度
三次商圏は、車や公共交通機関(電車やバスなど)を使って30~40分程度でアクセスできる範囲であり、月単位での来店(1~3カ月に1回程度)を目安としています。そのため、家電量販店やホームセンターなど、高額な商材を扱っている店舗・施設の商圏として設定されることが多いです。

上表からもわかるように、一般的に低価格帯で購入頻度の高い商材を扱っている店舗は商圏が狭く、高価格帯で購入頻度の低い商材を扱っている店舗は商圏が広いとされています。しかし、その範囲は店舗・施設によってまちまちです。出店エリアの地域特性や地理的条件などによって変動するため、自社の商圏を適切に把握するためには、特定の範囲を定めてその地域の特性や人口動態などを調べる、いわゆる「商圏分析」を行う必要があります。

商圏分析の主な活用例

では、商圏分析は実際にどのようなシーンで活用されているのでしょうか。

ここで、代表的な活用例を3つ紹介します。

・店舗開発
・販売促進
・現状把握

1つずつ見ていきましょう。

店舗開発

商圏分析の用途として、まず挙げられるのが店舗開発における立地調査です。国勢調査をはじめとした各種統計データを用いることにより、候補地周辺の人口や世帯数の分布などを把握できるため、自社のターゲットとなる客層が存在する商圏へ狙って出店することができます。

国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の将来推計人口」や候補地周辺の建設計画などのデータをもとに将来の人口変動を踏まえた売上予測を立てることもできるので、長期的な視点で出店計画を練ることができるでしょう。

販売促進

商圏分析は、販促企画を立案する際にも役立てられます。例えば、折り込みチラシやポスティング、DM(ダイレクトメール)などを配布する際、商圏分析を行うことにより、ターゲット層の多い地域が明確になります。注力すべきエリアを把握できれば、広告の無駄打ちも避けられるため、不要なコストを抑えつつ、効率的に成果を出すことができるでしょう。

現状把握

顧客データを活用することにより、自社の現状を把握できるのも商圏分析を行うメリットの1つです。会員データやPOSデータなど自社の保有する顧客情報を地図に落とし込み、顧客分布を可視化することにより、自社の強いエリアと弱いエリアが明らかになるため、現状の課題を客観的に捉えることができます。分析結果をもとに弱点を補強できるような施策を講じられれば、集客力の向上、ひいては売上の拡大につなげられるでしょう。

商圏分析の基本的なやり方

ここからは、商圏分析の具体的な方法・手順を紹介していきます。

Step1.自社データを地図に落とし込み、商圏を把握する
Step2.商圏内の統計情報を統合し、分析する
Step3.分析結果をレポート化する

上から順に詳しく解説していきます。

Step1.自社データを地図に落とし込み、商圏を把握する

まずは、自社で保有している顧客データを地図へマッピングし、実勢商圏を作成していきましょう。

ちなみに「実勢商圏」とは、実際に顧客がいる地域のことです。一般的に顧客全体の70~90%を含む範囲を実勢商圏と呼んでおり、これを商圏として設定するケースが多いです

この実勢商圏は、基本的に店舗を中心に丸い円を描きます。しかし、河川・山・坂道・線路・大型施設・中央分離帯のある道路など、物理的もしくは心理的に来店を妨げる要素(商圏バリア)により、円(商圏)が歪むことも珍しくありません。こうした障壁は地図上で確認できないことも多いため、いびつな形を描いた場合は現地まで足を運び、バリアとなり得る要素を洗い出しておいたほうがよいでしょう。

なお、まだ実店舗が存在せず顧客データを保有していない場合は、仮想の商圏を設定する必要があります。この場合は、店舗を中心に「半径〇km圏内」もしくは「徒歩(車または自転車でも可)で〇分圏内」と仮定して、地図上に円を描いておきましょう。

Step2.商圏内の統計情報を統合し、分析する

商圏を設定できたら、その範囲の特性を把握するために統計情報を調査していきます。コストを抑えたい場合は、後ほど紹介する「RESAS」や「jSTAT MAP」などの無料サービスで商圏内の人口動態や産業構造などを確認できるので、ぜひ活用してみてください。

なお、商圏分析では、「ハフモデル分析」や「重回帰分析」などの分析手法を取り入れることで、集客率や売上の予測といった、より高度な分析を行うことができます。

ハフモデル分析とは

1960年代にアメリカの経済学者であるDavid Huff(デービット・ハフ)博士が考案した小売吸引のモデル理論で、消費者が特定の店舗へ出かける確率を、売場面積や顧客の居住地との距離などから割り出すものです。「消費者は規模が大きく距離の近い店舗へ行く」という一般的な傾向を前提としており、売場面積が大きければ大きいほど来店率が高まり、距離が遠ければ遠いほど来店率が低下するという仮定のもとに分析を行うため、周囲の競合情報を加味しながら店舗の需要予測を行うことができます。

なお、現在は購買行動の多様化が進み、売場面積だけでその店舗の魅力を判断することが難しくなってきているため、従来の売場面積と距離だけでなく、複数の要素(駐車場の収容台数や営業時間、商品の価格、品揃えなど)を加味したモデル「修正ハフモデル※」が主流になっています。

※1980年代に日本の通商産業省(現 経済産業省)が採用

重回帰分析とは

複数の要因があるとき、それぞれの要因(説明変数)と結果(目的変数)の相関関係を明らかにし、それをもとにして予測を行う統計手法です。

例えば、店舗の売上を予測したい場合、「売上高」を「目的変数」、「売上高に関連しそうな要因(商圏人口、競合店舗数、売場面積、従業員数、メニュー数、客単価、駐車場の有無、駅からの距離など)」を「説明変数」と設定したうえで重回帰分析を行い、各要因が売上高に与える影響を明らかにし、そのモデルをもとに売上を予測することで高精度な数値を導き出すことができます。

Step3.分析結果をレポート化する

調査・分析が終わったら、その結果をレポート化していきましょう。

必ずしもレポートを作成する必要はありませんが、集計・分析したデータをそのまま置いておくだけでは、いざというときに活用しきれない可能性があります。必要なデータを探すのに余計な時間と手間もかかってしまうため、「売上・需要予測」「地域特性」「競合分析」など、目的に応じてデータを分類しておき、必要な情報をすぐに参照できるよう準備しておきましょう。

無料で使える!商圏分析ツール2選

最後に、無料で使える商圏分析ツールを2つ紹介します。

・RESAS
・jSTAT MAP

それぞれの特徴を簡単に見ていきましょう。

RESAS

「RESAS」は、経済産業省と内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が、地方創世の取り組みを支援するために無料で提供している地域経済分析システムです。

「人口マップ」「地域経済循環マップ」「産業構造マップ」「企業活動マップ」「消費マップ」「観光マップ」「まちづくりマップ」「医療・福祉マップ」「地方財政マップ」という計9種類(2022年7月時点)のマップで構成されており、各種統計データを地図やグラフ、リストなどで視覚的に確認することができます。

マップごとに操作マニュアルも用意されているため、初めての利用でも大きな戸惑いなく使いこなせるでしょう。

公式サイト:RESAS 地域経済分析システム

jSTAT MAP

「jSTAT MAP」は、総務省統計局が運営する地理情報システムです。政府統計の総合窓口「e-Stat」で公開されており、誰でも無料で利用できます。

国勢調査や事業所・企業統計調査、経済センサスなど、さまざまな統計調査のデータが収録されており、対象エリアの統計データを視覚的に把握することが可能です。プロット作成機能やエリア作成機能を活用して自社の商圏を地図に落とし込めるようになっており、さらに作成したデータをExcel形式の資料として出力できるため、データ収集からレポート作成まで、商圏分析の大部分をこれ1つで対応できます。

すべての機能を使うためにはログインする必要がありますが、面倒な手続きは必要なく簡単なユーザー登録だけですぐに始められるので、利用を検討している場合はアカウントを作成しておいて損はないでしょう。

公式サイト:地図で見る統計(jSTAT MAP)

商圏分析は定期的・継続的に実施することが大切!

安定した店舗経営を実現するためには、商圏の把握および定期的な商圏分析が欠かせません。

消費者のニーズは常に流動的であり、商圏内の競合店舗に勝るためには、そのニーズをいち早く察知し対応していく必要があるため、1度きりの分析で満足せず、短いスパンで商圏分析を実施して施策をブラッシュアップしていきましょう。

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この記事を書いた人

ながた
編集プロダクションで旅行ガイドブックの取材・制作に携わった後、Webライターの道へ。お酒と激辛料理をこよなく愛するインドア派。シーズン中はもっぱら野球観戦。

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