ユニバーサルデザインとは?身の回りにある事例や7原則を解説!
年齢、性別、国籍、体格はもちろん、車いすを利用されている方、目や耳が不自由な方、妊産婦など、様々な人が生活しています。みんなが平等に暮らしやすくするためには「ユニバーサルデザイン」を意識することが重要です。
実際、私たちの生活の中にすでにユニバーサルデザインは溶け込んでいます。今使っているもの、場所、自宅などどこにでも存在しているのです。
そんなユニバーサルデザインとはどういったものなのかを、本記事では紹介していきます。バリアフリーとの違いや、重視される7原則、身の回りにあるユニバーサルデザイン例を公開しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ユニバーサルデザインとは
ユニバーサルデザインとは、直卓すると「普遍的なデザイン」という意味で、性別・年齢・身体能力・国籍などに関わらず全ての人々が利用しやすいように作られたデザインのことを指します。Universal Designを略して「UD」と記載することもあります。
ユニバーサルデザインが生まれた背景
ユニバーサルデザインは、1980年代にアメリカ人のロナルド・メイス(Ronald Mace)によって提唱された考え方です。その発端は、1950年代にニルス・エリク・バンク–ミケルセン(Niels Erik Bank-Mikkelsen)が唱えた「ノーマライゼーション(normalization)」。
これは、障がい者であっても一般の市民と同等の生活や権利が保障されるべきだという考え方です。当時は障がい者差別が酷いデザインで根付きませんでしたが、1960年代に「バリアフリー」が浸透し始めて、やっと考え方を改めるようになりました。
そうした中、建築家であるロナルド・メイスが、障がい者高齢者が優先されるバリアフリーに疑問を抱いたがきっかけです。彼自身、幼いころに電動車いす生活をしていましたが、はじめから万人が使いやすいデザインにしたほうが良いと考え、ユニバーサルデザインという考え方が生まれました。
ユニバーサルデザインとSDGsの関係性
近年良く目にする「SDGs」という言葉も、実はユニバーサルデザインと共通点が多いんです。SDGsは直訳すると「持続可能な開発目標」。これは、私たち人類が地球で暮らし続けるため、不平等をなくし、質の高い教育を誰でも受けられ、長期間住み続けられる街づくりを行うことを目標としています。
つまり、地球に住むすべての人を対象としており、ユニバーサルデザインと切っては着て離せないものとなっています。
バリアフリーとの違いは「ターゲット」
ちなみに、ユニバーサルデザインと混同されやすい「バリアフリー」は、環境を提供するターゲットが違うので別物です。ユニバーサルデザインは「すべての人」に対し、バリアフリーは「障がい者・高齢者」をターゲットにしたものです。
ユニバーサルデザインで重視される7原則
ユニバーサルデザインに100%の正解はありませんが、7原則が存在します。
- 原則1:公平な利用
- 原則2:利用における柔軟性・自由度
- 原則3:単純で直感的な利用
- 原則4:認知できる情報
- 原則5:失敗に対する寛大さ
- 原則6:少ない身体的な努力
- 原則7:接近や利用のためのサイズと空間
参照:UD資料館
この7原則に当てはまるものが、ユニバーサルデザインに該当します。どういう内容なのか、簡単に解説していきます。
原則1:公平な利用
1つ目は公平性です。身体的、心理的に利用者を選ぶことなく、誰でも公平に操作できることを指します。
例えばお店の自動ドア。誰であっても、自動ドア(センサー)の下に行けばドアが開くとわかりますよね。これが公平性にあたります。
原則2:利用における柔軟性・自由度
2つ目は自由度です。利用者の能力や好み、状況に応じて、柔軟に使えることを指します。
駅や商業施設にある、階段・エスカレーター・エレベーターなど、複数の手段を用意しておいて利用者が自分に合ったものを選ぶ。これが柔軟性です。
原則3:単純で直感的な利用
3つ目は単純性です。利用者の経験や知見問わず、直観的に使えることを指します。
スイッチやトイレなど、誰が見ても使い方がわかるものは、単純で直感的な利用が可能です。
原則4:認知できる情報
4つ目は明確さです。利用者にとって必要な情報が簡単に伝わることを指します。
トイレや非常口のマークのように言葉で伝えづらい情報をイラスト化している「インフォグラフィック」や、観光案内のように「多言語表記」しているようなものもユニバーサルデザインに含まれます。
原則5:失敗に対する寛大さ
5つ目は安全性です。利用にあたって、失敗・事故の心配がなく、安全に利用できることを指します。
Excelや編集ソフトで見かける「元に戻す」や「自動保存」など、失敗したとしても元の状態に戻せるようなリスクヘッジ機能です。
原則6:少ない身体的な努力
6つ目は負担軽減(省体力)です。無理な姿勢を取ることなく、かつ少ない力で楽に使えることを指します。
電車やバスのICカード、センサー付きの蛇口やトイレの洗浄などです。余計な動作をしなくても、楽に利用できるものが当てはまります。
原則7:接近や利用のためのサイズと空間
7つ目は空間性です。利用にあたって、十分な大きさや広さが確保されていることを指します。
多機能トイレや、電車・バスなどにある車いす(ベビーカ)スペースなど、十分な広さがあり誰でも障害なく利用できるもの、バリアフリーの上をいくものがユニバーサルデザインです。
身の回りにあるユニバーサルデザイン例
先に紹介した7原則は、実は私たちの生活の中にあふれています。身の回りにあるユニバーサルデザイン例を写真とともに紹介していきます。
街中にあるユニバーサルデザイン
街中や駅などで日常に溶け込んでいるユニバーサルデザインを集めてみました。何となく使っている・見かけているものばかりかと思われます。
自動ドア
商業施設やオフィスビル、マンションなど街の至る所で見かける自動ドア・ユニバーサルデザインの代表的なものであり、7原則すべてが組み込まれています。老若男女、ベビーカーや車いすなど全ての人が意識することなく安全に利用できる設計です。
多機能トイレ
車いす利用者、ストーマのある内部障害の方、高齢者・子ども連れなど多くの人たちに使われている多機能トイレ。その利便性は近年、ますます進化しています。出入りしやすい引き戸、ゆとりのあるスペース、手すりの位置や高さ、洗浄器具の設置、乳幼児用のベッド、洗浄ボタンや緊急時の通報装置など、機能面が充実しているユニバーサルデザインです。
駅の改札口
何となく日常に溶け込んでいる駅の改札口。実は、高齢者・ベビーカー・車いす・大荷物を持った人など、あらゆる人に考慮されたデザインになっています。駅員がいる窓口前の改札機が広めに作られているのも、気づきにくいですがユニバーサルデザインが組み込まれているのです。
優先席スペース
電車の車両の端にある、座席を設けず車いすやベビーカー利用者のための優先スペースを見かけたことはないでしょうか。これもユニバーサルデザインに当てはまります。優先席だけではまだまだ課題が残っていたなかで、よりわかりやすく改善を図った例だと言えます。
ノンステップバス
床を低くし出入口の段差を極力無くしたノンステップバスの設計もユニバーサルデザインです。車いすの方や高齢者、児童の乗り降りを容易にしてくれます。もちろん、普通の人も段差につまずく心配がなくなります。
音響装置付き信号機
音響装置付き信号機は、色の変化を音声で知らせてくれます。視覚障害のある人やお年寄りの方にとって安心の機能です。なかには、押しボタンからアナウンスが聞こえる設計仕様も存在します。誰もが安全に横断歩道を渡るためには、必須のユニバーサルデザインです。
自動販売機
ユニバーサルデザインの考えを取り入れた自動販売機も少なくありません。
たとえば、硬貨の投入口を広めにとっているもの、あるいはお椀型になっていてコインを滑らせる投入口の自販機もあります。商品を選択するボタンが高低二つの位置に設置されているもの、取り出し口の高さも考慮されているものなど、様々な仕様があります。まさに不特定多数のユーザーのための設計です。
家の中にあるユニバーサルデザイン
家の中の至る所にも、実はユニバーサルデザインが潜んでいます。自宅で使っている家電なども、ユニバーサルデザイン設計になっているかもしれません。
近年の住宅全般
近年の住宅は「ユニバーサル住宅」と言われているほど、誰もが使いやすい設計になっています。アイランドキッチンは導線を考慮した仕様、段差がなく幅が広い扉は子どもから高齢者はもちろん荷物が多くても利用しやすいです。引き戸で閉じる時に自動でゆっくり閉まるようになっているものも、安全設計を考慮したユニバーサルデザインです。
トイレ
住宅のトイレも今ではバリアフリーではなくユニバーサルデザイン設計です。ウォッシュレットは高齢者だけでなく、小さな子どもから大人まで様々な人が利用します。手すりがあれば動作を楽にできるのも嬉しいところです。また、トイレの位置(間取り)がリビングや寝室などに近いと導線が短くなります。まさにユーザーのための設計です。
ドラム式洗濯機
ドラム式洗濯機も実はユニバーサルデザイン。従来の縦型洗濯機では洗濯物を取り出す際の動作が腰の負担に繋がることもあります。ですが、ドラム式洗濯機なら取り出し口が正面にあるので負担が軽減できます。安全性・負担軽減が考慮されているデザインです。
照明のスイッチ
近年の照明のスイッチは「サイズが大きい」「軽く押すだけで済む」「センサー式で自動」など、ユニバーサルデザイン仕様のものが多いです。小さい子どもから高齢者まで、誰でも使いやすくなっています。
商品に関するユニバーサルデザイン
薬局やスーパー、100円均一などのお店で販売している商品でも、ユニバーサルデザイン仕様のものがたくさんあります。いまでは、多くのユーザーが使う商品にユニバーサルデザインを導入しているのが当たり前なほどです。
スマートフォン
言うまでもなくスマートフォンは、ユニバーサルデザインが求められる代表的な情報機器です。インターネットをはじめコンピューターシステムの分野では、特に操作面でアクセシビリティが重要視されています。メーカーに依存しない操作性の統一、老若男女誰でも使える仕様、障がい者でもストレスなく使える機能の付与などが盛り込まれています。
シャンプー・リンス
シャンプー・リンスのボトルに、なにか模様のような突起があるのは知っていたでしょうか?これは、視力が低い人・頭を洗っている最中で目をつむっている人が、ボトルを見分けるためのユニバーサルデザインです。ちなみに、突起があるほうがシャンプーで、何もないつるっとしたボトルがリンスです。
文房具
はさみ・カッター・ホッチキス・シャープペン(グリップ)・消しゴム。あらゆる文房具でもユニバーサルデザインが採用されています。右利き左利き関係なく使えるものや、小さな子どもやお年寄りでも力を入れずに利用できるもの。指の負担を軽減するグリップなど、ありとあらゆる文房具にユニバーサルデザインが導入されています。
ペットボトル
昔のペットボトルは、容器がストレートでふたを開けるのに結構な力が必要でした。近年では、手にフィットする形、力が入れやすく開けやすい、容器が柔らかく潰しやすいなど、ユニバーサルデザインの考えを取り入れています。落ちないキャップや、開栓時のプシュッという音も実はそうなんです。
点字アルコール飲料缶
アルコール飲料缶に点字の突起が付いているのをご存知でしょうか。これによって、目の見えない方やジュースやお茶と間違える恐れのある子どもたちでも判別が可能です。点字の判読以外でも、文字ではっきり「お酒です」「ビールです」と表示されるなど誤飲防止が図られています。
ユニバーサルデザインフード
日常の食事から介護食まで幅広く活用できる食べやすさに配慮した食品が、ユニバーサルデザインフードです。日本介護食品協議会が行っている取り組みから生まれたものなので、意外と知られていないかもしれません。
誤嚥(ごえん)・誤飲を防ぐ目的があります。また、噛みやすさだけでも4段階評価「容易に噛める」「歯茎でつぶせる」「舌でつぶせる」「噛まなくてよい」が与えられるなど徹底されています。まさにユニバーサルデザインの意義が反映された“すべての人のための食品”です。
ユニバーサルデザインはWebマーケティングでも重要
身の回りの至る所にあるユニバーサルデザインは、Webマーケティングにおいても重要な考え方です。たとえばWebサイト。文字サイズを大きくすれば目の悪い人でも情報確認しやすいですし、色弱の人に備えて色を工夫すれば問題なく利用できます。
もちろん広告や商品についても同じです。マーケティングではユーザターゲットを定めますが、万人受けするように対策するならユニバーサルデザインは必須といっても過言ではありません。ぜひ7原則を意識してビジネスに活かせてください。
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