ユーザビリティテストとは?やり方や評価項目をくわしく解説します!
Webサイトやアプリが無数に存在するなかで、自社の制作物を多くのユーザーに使ってもらうには「見やすく、わかりやすい設計」が欠かせません。しかし、作り手が創意工夫を凝らしても、「実際の使用感」については見通しにくい面もあるでしょう。
ユーザー目線から、サイトやアプリの使い心地を確かめてもらう手法として、現在多くの企業が「ユーザビリティテスト」を実施しています。この記事では、ユーザビリティテストの概要や事例をふまえ、実施方法や評価項目についても解説していきます。
目次
ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテストとは、Webサイトやアプリの使い勝手を改善するにあたり、実際にユーザーに使ってもらうことで現状の課題を浮き彫りにする手法を指します。
制作物の開発や改修に際して、「作る側からは見えにくいポイント」をユーザー目線から照らし出すことで、十分なクオリティを担保することがテストの目的です。
一般的な流れとしては、参加者を募ったうえで、実際に「ECサイト上での商品購入」など設定したタスクに取りかかってもらいます。その後、レビューシートへの記入やヒアリングを通じ、制作物に対する「生の声」を集めていきます。
こうした評価を通じて、どれだけ現状の問題点を明確化できるかがテストのポイントです。そのためテストを実施するうえでは、単に「使った感想を教えてもらう」のではなく、あらかじめチェックしたい項目を明確にしたうえで、それに即したタスクや質問内容を用意することが重要になるでしょう。
ユーザビリティテストの重要性
Web上のユーザー行動に対して、サイトやアプリの「使いやすさ」が与える影響はきわめて大きなものです。いくら有益な情報を掲載していても、その情報にたどり着くまでに手間がかかってしまえば、ユーザーが途中で離脱してしまうことも考えられます。
ユーザーが求めているものを用意しているのに、サイト設計などの問題により本来の目的が叶えられなければ、双方にとって大きな機会損失になります。「直感的に欲しい情報にアクセスできる」というポイントは、ターゲットに的確に訴求するうえで欠かせないのです。
しかし、制作側の視点のみでは、問題が隠れたままになる可能性も大いに考えられます。ユーザーの具体的な関心やニーズ、疑問点を適切に捉えられているかを確認する意味でも、「制作の外部からの意見」に耳を傾ける必要性は無視できません。
なお、「ユーザビリティ」の意義や重要性については、こちらの記事で詳しく解説しております。あわせてご参照ください。
ユーザビリティテストの事例
ユーザビリティテストは、内容や形式によってさまざまな面の改善を導きます。世界的にも業種や事業規模を問わず実施されており、Webサイトやアプリの開発・改修において広く取り入れられています。
たとえば英国マクドナルドは、2015年にスマートフォンアプリをリリースするにあたり、大規模なユーザビリティテストを実施。ユーザー体験を全般的に網羅する20のタスクを通じ、店舗とアプリ間の通信上の問題や、注文におけるカスタマイズ性の低さ、CTA(コール・トゥ・アクション)ボタンの視認性といった問題を浮かび上がらせました。
(参照:SimpleUsability Behavioural Research Consultancy “Case Study – McDonald’s”)
日本国内でも、ユーザビリティテストはUI・UX改善の常道として用いられています。たとえばアパレルのサブスクリプションサービスを展開する株式会社エアークローゼットは、無料会員から有料会員への転換率に課題を抱えていました。そこで、有料会員登録画面のUI・UXを適性化すべく、分析ツールによる離脱ポイントの特定に加え、ユーザビリティテストを通じてフォーム上のわかりにくい点をヒアリング。その後もABテストなどを繰り返し、転換率を20%近く向上させています。
(参照:ニジボックス「airCloset|実績」)
このように、Webサイト全体の問題を浮き彫りにしたり、特定の課題解決に向けたヒントを得たりと、自社の目的に合わせて内容や形式を設計しうることがユーザビリティテストの特徴です。
ユーザビリティテストにおける評価項目の例
ユーザビリティテストを行う際には、あらかじめ「テストを通じてチェックしたいポイント」を明確にしておくことが重要です。以下では、Webサイトやアプリのユーザビリティをチェックする際の一般的な観点を提示していきます。
デザインの見やすさ
Webサイトやアプリのデザインは、使い勝手やターゲットに与える印象に大きく関わるため、ぜひとも確認しておきたいポイントです。配色や配置、画像やアイコンなどがわかりやすく整理されているか、テストを通じて評価してもらいましょう。
その際、PC・スマートフォンなど複数のデバイス上でテストすることも大切です。デザイン面でユーザーが何らかのストレスを感じる場合には、「具体的にどこが見にくいか、わかりにくいか」を明確にする必要があります。
また、テストの目的によっては「訴求したいイメージがユーザーに伝わっているか」という点をチェックすることも考えられます。Webサイトからどのような印象を受けたのかなど、ターゲット層に対して想定するイメージを伝えられているかを確認しておきましょう。
情報へのアクセスしやすさ
Webサイトやアプリの使い勝手は、「ユーザーが自身の目的をスムーズに達成できるか」に大きく左右されます。そのためテストにおいては、「ユーザーが知りたい情報に対して、ストレスなくアクセスできるか」をチェックする観点が必要です。
メニューの配置が適切か、商品情報は整理されているかなど、ユーザー目線から使い勝手を評価してもらいましょう。ここでの評価が芳しくない場合には、サイトの構造や導線を今一度見直さなくてはいけません。
ここで重要なのが、「ターゲットがどのような思考ステップを経てサイトを巡回するか」をしっかりと把握しておくことです。ユーザーがタスクに取りかかるうえで、どんなことを感じ、また考えているかを観察しながら、認知上の負荷が生じているポイントを明らかにしていきましょう。
操作性
Webサイトやアプリの操作性も、使い心地に直結するポイントです。ユーザーが直感的に行う操作に対し、意図と異なる動きが生じていないかを確認しておきましょう。
クリック・タップのしやすさや、ページ送りの速度、ページの表示速度など、ユーザーは「ほとんど無意識に操作できる環境」を求めます。改善に向け、「誤操作がどの程度あったか」「それがどこで生じていたか」といったポイントを洗い出しておきたいところです。
コンテンツの品質
テストの目的によっては、Webサイトなどに掲載されるコンテンツの「内容面」についても意見を募る必要があるでしょう。記載されている情報はわかりやすいか、ターゲットのニーズと合致しているかなど、チェックするポイントを明確にしたうえで評価してもらいましょう。
たとえばテキストで構成されるコンテンツであれば、「求める情報がわかりやすく書かれているか」「十分に信頼できる情報が掲載されているか」といった観点が考えられます。
テスト後の評価においては、テキストでわかりにくかった箇所や、説明が足りない箇所などを具体的に指摘してもらうとよいでしょう。
ユーザビリティテストのやり方
ユーザビリティテストを実施するうえでは、「テストの目的」をしっかりと定めておくことが大切です。チェックしたいポイントによって、テストの内容や形式も大きく異なります。
総合的な使い勝手を確認したいのか、特定のポイントについて評価してもらいたいのかなど、なるべく事前に見定めておき、それに応じてテストを設計していきましょう。
以下では、ユーザビリティテストを進める際の流れや注意点について解説していきます。
目的に応じて評価項目を決める
ユーザビリティテストを行う目的に照らし、「テストを通じてチェックしたいポイント(=評価項目)」を明確にしておきましょう。
操作性やレイアウトなど、サイトやアプリの「使い心地」に関わる部分のほか、テキストのわかりやすさや情報の信頼性といった「コンテンツの内容」に関わる部分と、複数の評価項目を設定するのもよいでしょう。
ただし、あまりに多くの評価項目を設けてしまうと、テスト内容が複雑化し、それぞれの項目に対する評価の精度に影響する可能性があります。そのため複数の評価項目を設ける際には、「とくにどのポイントを重視するか」をあらかじめ見定めておきましょう。
タスクの設定
テストの目的や評価項目に応じて、ユーザーが行うタスク(=テスト内容)を設定します。たとえばECサイトの「購入に至るまでの導線」についてテストしたい場合であれば、「サイト上で商品を見つけ、購入手続きを済ませる」といったタスクを課すことが考えられます。
目的によっては、タスクの内容を細かく設定することも重要になるでしょう。たとえば、具体的な商品の嗜好を確かめたい場合には、「20代女性が、年に数度会う友人への誕生日プレゼントを自社のECサイトから選ぶ場面」など、シナリオとして利用シーンを設定しておくことも有効です。
具体的な質問項目を決める
評価項目とタスクの内容に照らしながら、ユーザーに対して行う質問を用意します。1つの評価項目ごとに、いくつかの質問を設定したレビューシートなどを作成すると効率的です。
たとえば「操作性」についての質問であれば、「ページの表示速度は十分でしたか?」「ミスなく操作できましたか?」といった項目を設け、それに対して3~5段階で回答する形が考えられるでしょう。
さらに、重要な評価項目については、選択式の質問のほか「ストレスを感じた理由やポイント」などをユーザー自身の言葉で記述してもらうことが望ましいと考えられます。
テストユーザーの選定
テストユーザーを選ぶ際には、想定するターゲットと重なる層を中心に集めつつ、さまざまな角度からの意見を募るため、ある程度の幅をもたせておくことも重要です。
なお、調査会社ニールセンの研究では、ユーザビリティテストにおける費用対効果の高い参加人数は「5人」だとされています。同研究では、問題を漏れなく見つけ出すには「15人」のユーザーが必要ではあるものの、5人の場合でも問題の85%が発見されるという結果が示されました。ここから、コストや効率性を鑑み、「5人のユーザーで3回テストを行う」のが最適な方法として推奨されています。
(参照:Nielsen Norman Group “Why You Only Need to Test with 5 Users” )
テストユーザーの集め方は、予算やスケジュールに合わせて自社に合ったものを選択しましょう。クラウドソーシングであれば条件を指定しやすい一方、謝礼や交通費などのコスト面や情報漏洩リスクについても考慮する必要があるでしょう。
コストを抑えるうえでは、社内の別部署にいる社員やアルバイトなどに協力を仰ぐ方法も考えられます。制作に関わりの薄い部署であれば、ユーザーに近い評価が得られやすいでしょう。一方で、関係性によっては自社の制作物に対する忖度などが生じ、客観的な評価が得られないケースもありうるので注意が必要です。
コストをある程度割ける場合には、ユーザビリティテストを専門に扱う調査会社に委託することも選択肢になります。調査会社によっては、アイトラッキング(視線の追跡)など高度な分析を導入しているところもあり、客観的なデータにもとづく改善案が得られると考えられます。
テスト実施中の行動観察
ユーザビリティテストを実施する際は、ユーザーによる事後的な評価のほか、テスト中の観察も重要な意味をもちます。
この際、参加者にはなるべく「思ったことを口に出す」ことを意識してもらうと、実際の思考プロセスなどが把握しやすくなります。「ここにボタンがあるのか」「この入力フォームは少しややこしいな」など、率直な「気づき」をその都度声に出してもらうよう呼びかけましょう。
そのうえで、「スムーズにページを移行しているか」「操作の手が止まるポイントはどこか」といった観点から、タスクに取りかかるユーザーの行動を観察しておくと、より現実に即したフィードバックが得られるでしょう。
その他、「タスク終了まで何分かかったか」など客観的な数値を残しておくことで、振り返りの際に参照できる要素が増えると考えられます。
実施後のフィードバック
同じサイト上で同じタスクを行っても、個々のユーザーによって評価にはブレが生じます。まずは「多数のユーザーから悪い評価を与えられた項目」について、その原因を明確にし、改善策を講じていく必要があるでしょう。
さらに、「ユーザーごとに評価が大きく異なる項目」についても、なぜそのようなブレが生じているのかを把握しておきたいところです。テスト参加者の属性などを考慮しながら、「どんな人にどのような問題が生じているか」を検討していきましょう。
また、ユーザビリティテストの効果を十分に引き出すうえでは、必要に応じてその他の分析やテストと組み合わせていくことも有効です。Google Analyticsなどを通じた定量的な分析とも照合しつつ、データと「生の声」を総合的に捉えることが、改善への近道になるでしょう。
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