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XRとは?VR・AR・MR・SRの違いと事例から見える仮想現実の行く末

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2021年以降、MicrosoftやMeta(旧Facebook)といった巨大企業がメタバース市場に相次いで参入していることにより、「仮想現実」への期待が過熱しています。新たな時代動向として、「バーチャル空間でのコンテンツ消費やコミュニケーション」の可能性が、これからますます広がっていくと考えられるでしょう。

バーチャル空間の構築において大きな役割を担うのが、現実と仮想の世界をさまざまな形で融合する「XR」の技術です。リアリティのある知覚情報を提供する技術により、「今ここにある現実」を改変したり、「現実にはない世界」を体験したりできるようになります。

これからメタバース市場が拡大していくにつれ、XR関連の技術も大きく発展していくことが予想されます。XRを通じて、これまでの「体験の枠組み」は一変し、世界にはさまざまな「新しい価値」が提案されていくでしょう。

この記事では、XRの概要を解説し、企業などによる活用事例をふまえ、今後の可能性について考察していきます。

XRとは

XRは「Extended Reality」の略であり、直訳すると「押し広げられた現実」といった意味になります。XRは幅広い領域を包含する言葉であり、「現実の世界と仮想の世界を融合した技術」の総称として用いられますが、はっきりとした日本語訳は確立されていません。そのまま「XR(エックスアール)」あるいは「クロスリアリティ」と呼ばれるのが一般的です。

XRに含まれる技術のうちには、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)などが含まれます。総じてXRは、画像処理や映像処理を中心に、現実のうちに擬似的な世界を仮構する技術一般を指す言葉だといえるでしょう。

新世代通信システム「5G」の普及や、生活様式として「ニューノーマル」が定着するなか、XR関連の技術は需要の大きな増加が見込まれています。とりわけビジネスシーンにおいて、新しい形のカスタマーエクスペリエンスを開拓する技術として期待されている面も強いです。

統計市場調査プラットフォーム「Statista」の発表によれば、2021年におけるXRのグローバル市場規模はおよそ「310億ドル」と見込まれ、2024年までには3000億ドル近くなると予想されています。

(参照:Statista「Extended reality (XR): AR, VR, and MR」)

急速な発展が期待されるXRですが、以下ではこれに含まれる「VR・AR・MR・SR」の4つについて解説していきます。

VRとは

VRは「Virtual Reality」の略であり、日本語で「仮想現実」と訳される言葉です。一般に、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などの専用装置によって、「架空の世界」や「現実を模した世界」を映し出し、そこへの没入を促す技術を指しています。

VRを構成する要素として、「3次元の空間性」「実時間の相互作用性」「自己投射性」の3つが挙げられます。言い換えれば、VRとは「自分の動きが3D映像に遅滞なく反映されることで、あたかもその空間にいるかのように感じられる技術」であるといえるでしょう。

VRはゲームをはじめとするエンターテインメント業界で普及しはじめましたが、その体験価値の新しさから、現在はさまざまなビジネスに応用されています。

ARとは

ARは「Augmented Reality」の略であり、「拡張現実」と訳されます。VRが一般に「ここではない空間」を創出するのに対して、ARは「目の前にある空間」に対して付加的な視覚情報を投影する技術です。

ARの代表的な事例としては、スマートフォンの画面に映った現実世界の光景に架空のモンスターを表示する「ポケモンGO」が挙げられます。その他、ビデオ通話や映像配信アプリなどで、映っている人の顔を加工したりデコレーションしたりする技術もARの一種であり、身近なアプリケーションを通じて「知らないうちに使っている」ことも多いでしょう。

MRとは

MRは「Mixed Reality」の略であり、訳語としては「複合現実」という言葉があてられます。現実世界と仮想世界を「融合」する技術を指しており、VRとARの両側面を併せ持つことが特徴です。

とりわけ現実を拡張する「AR」とは近い意味にあり、厳密に区分することが難しいケースもあります。ユーザーにとっての違いとしては、MRはより現実の身体感覚との乖離が少なく、「知覚上のリアリティ」を感じやすい特性を持ちます。

たとえば現実の空間に3Dモデルを浮かび上がらせ、実際にそのモデルを操作したり、モデルの一部に触れて関連データにアクセスしたりといった技術がMRの代表例です。

総じて、MRは「目の前にある空間」のうちに「ここではない空間や物体」を映し出し、ユーザーのアクションに反応して関連情報を提供するような技術だといえます。医療分野における手術のシミュレーションや、技術職の研修をはじめ、現実では訓練が難しい分野への応用例が多いことも特徴です。

SRとは

SRは「Substitutional Reality」の略であり、日本語で「代替現実」を意味します。HMDなどを用いて、あらかじめ用意しておいた「過去の映像」を現実空間に映し出す技術です。

技術そのものはVRやAR、MRと共通する点も多いですが、SRは「時間軸を交錯させること」に力点があります。現実の時空間に過去の映像を自然な形で映し出すことにより、それがあたかも今目の前で起きているかのように錯覚させることに焦点があてられているのです。

SRもMRと同様、現実にはシミュレーションが難しい分野への応用がなされており、とくに「シチュエーション別の対策」など1回性の強い状況に対する訓練に用いられる傾向にあります。

XRの活用事例

一口にXRといっても、そこに含まれる技術は多種多様であり、ビジネスにおける導入例も多岐にわたります。ここではVR・AR・MR・SRのそれぞれについて、代表的な活用事例を紹介していきます。

VRの活用事例

VR技術は多くの業界で導入が進んでいますが、今後普及が見込まれる活用方法としては「バーチャル会議」が挙げられるでしょう。

Meta(旧Facebook)は、HMD「Oculus Quest 2」上で利用できるミーティングアプリとして「Horizon Workrooms」を開発し、現在ベータ版を公開しています。

Horizon Workroomsは、仮想の会議室のなかで「アバター」を通じてミーティングやプレゼンテーションを行うアプリです。会話はもちろんバーチャルホワイトボードへの書き込みや、実際のPC画面の閲覧・共有にも対応しています。実際にメンバーが居合わせているような演出と、バーチャルの特性を活かしたシームレスな画面共有により、ニューノーマル時代における新しい会議のあり方を提案しているといえるでしょう。

さらに、VRを通じた「臨場感のあるコンテンツ」も、エンターテインメントやスポーツの分野で発展していくと考えられます。

たとえばNTTスマートコネクト株式会社は、音楽などのライブ映像をマルチアングルVRで配信する「REALIVE360」というサービスを展開。4K/8Kの360度映像をスマートフォンアプリやPCブラウザから楽しむことができ、臨場感が求められるライブシーンに新たな価値をもたらしていくと予想されます。

ARの活用事例

現実の光景に付加的な情報を映し出すARは、極めて汎用性の高い技術ですが、ビジネスへの応用例として目立つのは「ユーザーに使用イメージを抱いてもらう」という形態です。

たとえばIKEAは、「家具を選ぶ前に、実際に置いた感じを確かめてみたい」というユーザーニーズに応え、スマートフォンアプリ「IKEA Place」を開発しました。カメラで家具を置きたい場所を映すと、そこに商品の画像を実際のサイズ感で表示し、設置後のイメージを確かめられるアプリです。画面上では複数家具の設置や移動も可能であり、家具選びに失敗したくないユーザーの思いに応えています。

さらに、ARは建築工事などの分野でも応用が進んでいます。北陸電力・北陸電気工事・平野電業が共同開発した「架線検査記録アプリ」は、それまで高所から測定する必要のあった工事現場のスケールを、スマートフォンのARマーカーで即座に記録できるようにしています。重量のある測定器を高所まで持ち運ぶ必要がなく、業務の安全性と効率を高めるツールとして普及が期待される状況です。

MRの活用事例

MRの技術は研修や訓練など、「シミュレーションを通じた技術習得」といった用途に活用されるケースが目立ちます。

たとえばトヨタ自動車株式会社は、MicrosoftのMRゴーグル「HoloLens 2」を車体整備や修理の現場に導入しています。現実の車体に重なるように、部品構造を示す3D映像や、作業手順書などを表示し、直感的に作業に移ることを可能としました。今後さらに活用の幅を広げることで、作業水準を一定にしながら、技術をスムーズに定着させる効果が見込まれています。

(参照:Car Watch「マイクロソフト、トヨタの「HoloLens 2」活用事例やAI自動運転企業との協業など発表」)

さらに、医療分野への応用例として、「HoloeyesXR」の提供するVR・MR技術が挙げられます。CTスキャンやMRIの検査結果をポリゴンデータに変換し、3D映像として現実の空間に重ねて投影する技術です。手術時の手順確認や共有、学生への学習機会の提供などさまざまな形で利用されています。

SRの活用事例

MRと同様、SRの技術も研修や訓練におけるシミュレーションに活用される例が見られます。

米国の小売企業ウォルマートは、従業員の研修にHMDの「Oculus Go」を導入したことで話題を呼びました。研修に用いられる映像はさまざまですが、過去のブラックフライデーなど現実の映像を多く利用している点が特徴です。過去の映像を利用し、セール時の混雑や非常事態への対応など、1回性の強い状況を想定した訓練を行っています。

(参照:Oculus Blog「Walmart Expands VR Training with Oculus Go」)

XRのこれから

目の前の現実を大きく拡張・改変させるXRは、これからもビジネスや教育などさまざまな場面で活用されていくと考えられます。その効果や影響は極めて幅広いものですが、以下ではいくつかの焦点に絞り、XRの技術が今後のビジネスにもたらす可能性について考察していきます。

新たなカスタマーエクスペリエンスの提供

商品やサービスの購入を考えている顧客に対し、XRを通じて具体的な使用感やイメージを提示できる意義は大きいでしょう。衣服の試着や家具の寸法測定など、「試してみなければわからない」という部分を補完できるため、効果的に商品価値を伝えられると考えられます。

あるいは、仮想現実内での体験そのものが価値になるケースも増えていくでしょう。ライブやスポーツイベントをはじめ、臨場感が求められる分野において「現場で見るよりも迫力のある映像」を提供することも可能になっていくかもしれません。

シミュレーションによる効率的な技術定着

XRの諸技術はすでに、医療現場などで技術習得を目的としたシミュレーションに応用されています。その方法も多岐にわたり、ウォルマートのように過去の映像を再現したものや、トヨタのように手順や構造を表示するもの、HoloeyesXRによる検査結果のポリゴン化など、必要となる情報やイメージに合わせた空間構築が可能です。

研修などを通じて基本スキルを習得する際、全面的に人から教わる方法では、指導のあり方によって定着スキルに偏差が生じやすいと考えられます。XR技術を通じて、均一なマニュアルをいつでも参照できるようになれば、スキルの平準化や研修リソースの削減といった効果が見込めるでしょう。

さらに、現実においては訓練できない1回性の強い状況に対しても備えることができ、緊急時への対策を講じられる点も大きなメリットです。

コミュニケーション形態の変化

仮想空間でのアバター会議をはじめ、離れた場所からでも「場を共有できる」技術の発展により、ビジネス上のコミュニケーションのあり方にも変化が生じると考えられます。画面共有のスムーズさや、プレゼンテーションにおける3Dモデルの共有など、バーチャル空間ならではの利便性も今後さらに高められていくでしょう。

図面や3Dモデルなど、さまざまなファイルを仮想空間上でリアルタイムに共同編集できるシステムも技術的に進展していくと予想されます。これにより、「メンバー間でイメージを共有しながらフローを進める」といったプロセスがスムーズになっていくかもしれません。

さらに、時間軸の異なるコミュニケーションが可能になれば、現実におけるメンバーのタイムマネジメントにも好影響が生じると考えられます。

まとめ

現実の光景に付加的な視覚情報を与えたり、架空の世界を構築したりするXRは、社会生活や産業構造のあり方に革新的な変化をもたらす技術として期待されています。その応用可能性は多方面にわたり、すでにビジネスや教育、医療など、積極的に導入が進められている分野も少なくありません。

XRの「形あるものを仮想的に映し出す」という側面は、商品開発におけるモデリングや測量など、さまざまな産業においてワークフローの改善につながると考えられます。さらに、「コミュニケーション空間を構築する」という側面は、研修やミーティングの効率化など、業種を問わず作業能率の向上につながる可能性もあるでしょう。

知覚や認識の枠組みを一変させるXRは、カスタマーエクスペリエンスのあり方にも少なからぬ変化をもたらすでしょう。技術の発展と普及にともない、これから新たなビジネスモデルを開拓するチャンスが広がっていくと考えられます。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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